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ワークプレースラーニング2007「ミドルの学びを支援する」


東京大学で開催された産学共同シンポジウム

 ワークプレースラーニング2007「ミドルの学びを支援する」

に参加してきました。(07年9月7日開催)

台風の影響もあり、交通機関が心配でしたが、

何とかたどり着くことができました。

当日の講演で、私の印象に残った点を中心にお伝えします。

・講演内容 ○関根の独り言

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1.学習者としてのミドルについて考える
  
   〜非・経営学的視点からの問題提起〜

     産業能率大学 長岡 健先生

・「男性、40歳、課長」モデルによる育成の行き詰まり
・新たな「ミドル」のモデルを示す必要性がある

・ミドルを、「一人前以降」ととらえる

・人材育成部門は、「一人前以降」の学びにコミットしていないのでは?
・「初心者から一人前」までの学びに焦点をあてているのでは?

・「一人前から熟達者」になる過程の学びにおいては、
 「社外ネットワークを通じた学習」が重要。


・「一人前以降の人材育成」における4つの問題

 ■「初心者を一人前にする研修」という手法の限界
 ■「上手が下手を教える」という価値観の呪縛
 ■「現場への不介入」という規範の容認
 ■ 経営実務における「熟達化モデル」のジレンマ

・一人前以降には、多様な学習軌道がある。

・まず「初心者から一人前」になるために、
 「ビジネス実務家としてのDue Process(当然の手続き・事柄?)の修得」が必要

 まずは一人前になるために、「やるべきことをやる」

・「一人前以降」は、3つのルートが考えられる。

 1)リーダー (ビジョンを描く人)

 2)適応的熟達者 (問題解決者?)

 3)イノベーター (破壊者)

・一人前の実務家ならば、自分が進みたい学習の方向性をデザインする
 プロセス自体にコミットすべきである。


○4つ目のルートとして、

 適応的熟達者=専門家=エキスパート というのも考えられるのでは?


○一人前以降は、
 「リーダー」になるか
 「イノベーター」になるか
 「適応的熟達者」になるかを選ぶ。

 そうなのかな?

 一人前以降は、

 「適応的熟達者=専門家=エキスパート」の道を選ぶか
 「適応的熟達者=問題解決者=マネージャー」の道を選ぶかになるのでは?


 「リーダー」と「イノベーター」は、育ち方が違うのでは?

 初心者から一人前、

 一人前から「リーダー」「イノベーター」へと育っていくのか?

 「リーダー」はありそうだが、
 「イノベーター」は、破天荒な育ち方をしそう。

 

○「一人前以降の学習」においても、「社外ネットワーク」だけでなく
 「現場での経験」が重要な学びのリソースとなるのでは?

 一人前以降も、
 「現場での経験」(自分の経験)
 「社内外のネットワーク」(周囲の人々)
 「書籍・雑誌・新聞等からの情報」(先人の知恵)から多くを学ぶのでは。

○起業家(ミニ経営者)である自分は、何から学んでいるか?

 研修会社での仕事を通して、一人前になった後、
 独立起業した自分は、どのように学んでいるか?


 「日々の仕事」「顧客や取引先との話」
 「本・雑誌・新聞」
 「先輩経営者の話」「起業している仲間の話」「セミナー・講演への参加」
 「研修の実施」「参加者の反応」
 「コーチとの振り返り」「文章を書くこと」・・・

 
 (自分は「適応的熟達者=エキスパート」の道を選んだのかも)

 (自分には「上司」がいない。その分、周囲の人から
  意識的に学ぼうとしているのかも)


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2.ワークプレースラーニングとは何か?

   東京大学 中原淳先生


・「ミドル=一人前になった後の人」に期待される役割は、
 「熟達したマネージャー」「リーダー」「イノベーター」の3つである。


・一人前になる前なら、育成手法は「研修」が主である。

・ただ、ID理論が使われていない「教え方に配慮がない」一斉講義では、
 参加者の記憶には残らない。
 (半年後に、あらすじを思い出せる人2%、キーワード29%)

・ワークプレースラーニングは、仕事に付随する学びの全てである。
 「研修での学び」+「現場での学び」の総体

・今までは「研修室=学ぶ場所」「現場=仕事をする場所」ととらえられてきた。

・今後は「現場=仕事をしながら学ぶ場所」ととらえる必要がある。

 
・適応的熟達者を育成するためには

 1)新規の課題に次々と遭遇すること
 2)他者とのコミュニケーションを通して仕事を遂行すること
 3)一旦現場を離れて「振り返ること」ができること
 4)「業務の概念化」(マイセオリー作り)が可能であること

・経験学習モデルを当てはめて考えてみると

 業務→経験 →振り返り→概念化 となる。
 (現場)    (研修室)
 

○研修で、経験を振り返り、概念化(マイセオリー)したものを、

 現場に持って帰って、適用する。

 
 マイセオリー(教訓)にまで落とし込めれば、

 現場での適用(意欲も含めて)も可能か。

 
 知識・技能獲得として、研修室で行われた学びの場合、

 その現場活用は難しい。「やってみよう!」と思わない場合が多いかも。

 (人から与えられたものだから)

 
 その点、自分の経験から導き出された教訓であれば、

 現場活用もスムーズに進むかも。

 (自分で導き出したものだから)


 であるならば、講師・ファシリテーターとしての役割は、

 参加者の経験の振り返りと概念化の支援 および

 現場での適用支援 ということになるかな。


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3.職場フォローを強化して“競争に勝てる若手ミドル”を育成

   東京電力(株) 総合研修センター 所長 高津 浩明氏


・30歳以下の若手技術者を育成する「実践力開発プログラム」を、
 年齢ごと3つのステップに分けて実施している。

・各ステップごとの職場実践に重点を当てている。

・職場実践時に指導にあたる上司にも研修を実施。
 (部下の研修も覗き見させている?)

・コースマスターを育成し、職場を訪問して実践を後押しさせている。

・9名のコースマスター(事前にファシリテーターとしての教育を受けている)
 が、職場を訪問し「上司・受講者・コースマスター」の三者面談を行っている。

・上司が部下の研修を理解しているので、話し合いが前向きに進む。

・展開前には、各職場を回って周知活動をした。

○やはり展開前の根回しが大事。事前の協力依頼。プロセスへの関与。


・職場の改善、業務計画の目標達成のための活動として、今回の
 「実践力開発プログラム」を位置づけているので、現場の協力が得やすい。

○仕事の一環としているので、研修内容の現場実践が促しやすい。

・職場での上司のかかわりが、研修内容の定着度ならびに参加者の
 意欲向上に影響していることが明らかになった。

・上司の関与度合いは、研修参加者自身の実践度合いに大きく影響する。


○上司の関与度合いを増やすためにはどうしたらよいのか?

 ◇展開前に協力を依頼する(決まったこととして押し付けない)
 
 ◇上司にも研修を受けてもらう(現場での関与の仕方を教える?)

 ◇上司に部下が研修を受講している様子を見てもらう

 ◇第三者(コースマスター)が、現場実践を促す(思い出してもらう)

 ◇通常業務との結びつけを行う(仕事の一環として研修内容の現場実践がある)

 
 大事なのは、上司に「関係ないよ、ではない当事者意識」と
 「やって当然、仕事だから」的な意識をもってもらうことかも。


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4.経営的視点をもったマネージャーの育成に向けた取り組みについて

   YKK ap(株) ビル建材人材育成室 脇本 歩氏 


・YKKグループの社風として、
「一人一人が経営者」「若い人に仕事を任せれば成長する」がある。

・OJTを重視する社風がある。(お任せジョブトレーニングと揶揄)

・社員教育に対する考え方は、下記の通りである。

 「OJTを支援する教育企画」「集合研修は社員に刺激を与える手段」

・OJTのメリットは、暗黙知の獲得、深い商品知識、
 コミュニケーションスキル、自立意識等がある。

・逆にデメリットとして、上司や配属先によって成長度合いが異なる、
 視野が狭くなる、大所高所から判断できない、経験則中心になるという点がある。

・マニュアル化の難しさと、教育を受ける側の資質の問題を感じている。


・30代に対するリーダー研修と、
 研修実施後のアクションラーニングを実施している。

・研修受講後、テーマを選んだ上で、アクションラーニングを通して、
 最終的に会社への提言をプレゼンする。


・40〜50代の支店長クラスへの教育として、ビジネス誌の購読と

 レポートコンペを行っている。

・ビジネス誌は自費で購入してもらっている。(半分会社負担)

・身近な上司が、レポートコンペの審査員をするので、逃げられない。


・日常的な社会人は、次のように学習するのでは

 「情報のインプット」「仕事で試す」「成功失敗を経験」


○日常的な社会人の学習という考え方は、おもしろい。

 これに「振り返り」と「概念化」が入るのが、中原先生のモデルなのだろう。

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5.パネルディスカッション

【松尾先生】

・一人前になった後は、固着しやすい。(自分のやり方にこだわる)

・研修で場を変えたり、考える機会を与えるのは有効

【長岡先生】

・現場で学習できないからアクションラーニングを実施する。

・現場では「緊急度が重要度を凌駕する」
 
 大事だと分かっていても、できていないことを、アクションラーニングでカバーする。


・アクションラーニングとは、相互学習グループによるプロジェクト型学習

 学習者自らが課題設定を行う。
 非専門家がファシリテーターとして、つかず離れずくっつく。


・イノベーターは、一人前になる前から道を分けるという考え方もある。

・ただ、日本の会社では「一人前じゃない奴が何を言っても受け入れられない」

 という風土をもつところが多い。


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6.グループ経営と連動し、分権化する組織と人事の役割

   HOYA(株) HRDセンター ゼネラルマネージャー 有沢 正人氏


・極端に、地方分権的な人事を行っている。

・グローバルエグゼクティブプログラムを実施。

 経営を担いうる人材を選抜し、OJTにより育成する。


・OJT(On the Job Tough Challenge)

 厳しいアサインメントにより育てていく

 難しいエリアでの、二桁成長を目指させる。

・2〜3ヶ月に一回、人事マネージャーと大学教授が訪問し、

 悩みを聞き、問題点の構造化を手助けする。

 だが、最終的な責任は本人が負っている。


○厳しい仕事が、本人を育てるという考え方。

 確かに、経営者(本シンポで言う「リーダー」)の場合、

 修羅場経験を通した学習が大切かも。


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7.事業成長と個人成長の両立を実現するマネジメント

    株)リクルート (人事総務広報)取締役 水谷 智之氏


・「トライ&エラー」がしやすいビジネス
 
 この「トライ&エラー」の数を増やすことを意識している。

・採用にこだわっている。

 当事者意識をもって、自分で走れる人間の採用に注力。


・「お前は何がしたい?」「あいつ最近成長してる?」が

 よく使われる言葉。

・2年目社員にも大きなクライアントを担当させる。

 足りないことを許容する。たくさんの失敗をさせる。

・知識、能力よりも、最後は「当事者意識」が大事と思っている。

・当事者意識は濃淡はあっても、人は必ずもっていると考えている。

・当事者意識を醸成するには、
 都度「お前はどうしたい?」と問いかけることだと考えている。


○「当事者意識が何より大事」

 これは確かにその通りかも。


 最後に、他人のせいにして逃げるようでは、成長できない。

 最初から最後まで「自分のもの」として仕事に取り組むことで、

 多くを吸収して学び、成長するということなのかも。

・ミドルの機能として

 1)マーケットの兆しをつかみ
 2)兆しを事業プランとして提案し
 3)プラン遂行の戦略を描き
 4)現場でやりきる力 が求められている

・商品が強くなると、マーケットの声を聞けなくなってくる。

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8.パネルディスカッション


【松尾先生】

・自分で自分を育てる力 = 経験から学ぶ能力 が大切

・成長/学習 = f( 経験から学ぶ力(吸収力)× 経験の質(組織特性))

・HOYAもリクルートも、挑戦的な課題、経験をさせることで、

 成長を支援している。


○「自分で自分を育てる」ためには、どうしたらよいのか。

 ◇前向きに飛び込んで経験する

 ◇(自分をどこに向かって育てていきたいのか)進むべき方向性をもつ
 
 ◇経験を振り返って教訓化する

 ◇自分をほめる などかな。

【長岡先生】

・2事例の共通点は「教えていない」こと

・ミドルの学びを支援するには「教えないこと」が大事なのでは

・学習 = 日常における変化していくプロセス

 教育 = 上記を効果的、効率的に支援する活動 ととらえる


【中原先生】

・リーダー育成においては、ジョブアサインメントが重要
 

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9.リフレクション 


【中原先生】


・ミドルは、支援が少ない割りに、期待される役割が多様化している。

・新人と幹部には研修が多いのに、ミドルが少ない
「U字型」の人材育成をしている企業も多いのでは。

・ワークプレースラーニングにおいては、学びを広くとらえる。

 様々な機会と手法をRemixする必要がある。
 そのためにも、各手法の強みと弱みを理解する必要がある。

・実務と研究が手を結ぶ必要があるのでは

 そう思って、今回のシンポでは事例と理論をバランスよく紹介した。

・心理学者のJ.ブルーナは、人が理解する際には

 Pragmatic mode と Narrative mode の2つがあると考えた。

                   以上

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今回のシンポジウムも刺激的でした。


色んなアイデアが浮かんできます。

これからも東大で行われるイベントには、積極的に参加しようと思います。

(企画してくださった中原先生をはじめとする皆さん、ありがとうございました!)

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