「組織社会化」に関する論文のまとめ(2)

東大大学院

南山大学 高橋先生「組織社会化研究をめぐる諸問題-研究レビュー」です。
初心者の自分にとって、組織社会化研究の全体像が見渡せる
素晴らしいレビューです。

(・引用/要約 ○関根の独り言)
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◎組織社会化研究をめぐる諸問題-研究レビュー
  南山大学 高橋弘司 1993
●社会化の概念をめぐって
・本研究の目的は「組織社会化 Organizational socialization」に
 関するこれまでの研究を批判的に検討し、組織社会化研究において
 今後取り組むべき諸問題について考察を行うことにある。
・組織社会化とは、もとは社会学の一用語である「社会化」の
 下位概念である。
・統一的な組織社会化の見解はいまだ提出されていない。
 諸定義を集約してみると、3つの共通要素が存在する。社会化は;
 1)成員性の習得である
 2)学習の過程である
 3)他者との相互作用を通してパーソナリティを社会体系(システム)
    に結びつける過程である
・組織社会化の定義を集約すると「組織への参入者が組織の一員となる 
 ために、組織の規範、価値、行動様式を受入れ、職務遂行に必要な
 技能を習得し、組織に適応していく過程」と定義できる。
・組織社会化と類似した概念に「職業的社会化 occupational/vocational
socialization」がある。
・これまでの組織社会化研究では、両概念の区別があいまいにしか
 行われていない。
・本稿では、組織社会化には「職業的側面」と「組織的側面」とが併存する
 という立場をとる。
 そしてより正確には、この2つの側面をそれぞれ「技能的側面」と
 「文化的側面」と呼ぶことにする。
 「技能的側面」は、組織の中で達成される技能形成を表し
 「文化的側面」は、組織における個人の文化受容を表している。
・技能的側面は個人の「職業人性」を、文化的側面は個人の「組織人性」
 を示す指標となる。
・個人にとって、組織社会化の達成とは、両方の側面を必要なだけ充足
 することである。
・組織社会化研究において、技能的側面と文化的側面とを組織社会化の
 達成指標として分化、仮定することは極めて有効。
 今後広く定着することを望む。
○確かにこうやって2つに分けて考えると分かりやすい。
 研修テーマとしての「仕事の教え方」は、新人の「技能的側面」の
 充足を手助けするために、組織が企画する。
 「ビジネスマナー」や「仕事の学び方」は、新人の「文化的側面」の
 充足支援が主たる目的になる。
○「社会化の心理学ハンドブック」を読んだ時、職業的社会化は項目として
 あったけど、組織社会化が無かったのを不思議に思った。
●組織社会化の研究テーマ
・組織社会化の要件として基本になるのは「組織」と「個人」である。
・組織→個人
 組織は、組織社会化の促進策として「社会化戦略」や「社会化戦術」を
 行う。
・個人→組織
 「参入前の社会化」の時期に、個人は参入後の組織社会化に連続する
 「予期的社会化」を行う。その主な内容は「期待形成」である。
 
 現実ショックと幻滅経験の大きさは、個人の組織社会化の正否と関係が
 あり、特に離職率の増加と密接な関係がある。
 そのため、組織は個人が参入する前に、過大な期待の鎮静化を図ること
 がある。これを「現実的職務予告」と言う。
 「参入後の社会化」の時期に、個人は多様な社会化の諸課題に直面し、
 その課題の達成することで、個人は学習し、態度変容を起こしていく。
 個人の態度変容を、組織への適応の達成、あるいは組織社会化の成功と
 みなす。
○この過程で、新人は「自分の個性が失われてしまう」「型にはめられて
 しまう」という恐れを抱くのかも。
・個人の組織社会化の成否は、何らかの結果(組織コミットメントの低下、
 離職率の増加)となって現れる。
 組織社会化の達成や態度変容は、極めて心理的なプロセスであり、
 測定も困難。
・組織社会化の研究テーマは、図2のようにまとめられる。
○分かりやすいなー。こういうのが書けるようになるためには、
 よくよく先行研究をした上で、自分の頭で考えることが必要なんだろうなー。
 俺の研究テーマはどこにあてはまる?
 (5)組織による働きかけ=社会化促進策
 (4)参入後の社会化 (特に態度変容?)
 (6)組織社会化の結果
 新入社員を指導するOJT担当者 = 組織社会化のエージェント
 その働きかけ = 社会化促進策
 OJT担当者のみならずその他の職場構成員(他部署も)の関わり 
  = 相互作用領域? 
 社会化促進策と言っても、フォーマルな施策というより、
 メンバーによる関わりというインフォーマルな働きかけの影響が、俺の
 見たいテーマ。
 「組織社会化の結果」として、組織コミットメント、職務満足、離転職
 があげられているが、新人の「成長」という観点も入れられないか。
 OJT担当者としては、自分が教えた(=組織社会化を支援した)新人が
 成長してくれることが大きな喜び。
 では、新人が成長したとはどういう状態なのか。
 それは彼らが、自分で仕事を回せるようになった時、提案をしてくる時、
 相談や質問が的を射たものになってきた時、数字があがるようになった時、
 仕事を任せておける状態になった時、などだろう。
 そうすると、それは組織社会化の「技能的側面」の達成が主であり、
 「文化的側面」は必要最低限の前提条件かもしれない。
 組織のルール(明示化されたもの、暗黙のもの)に従うのは、
 当たり前のこと。
 それができているという前提で「技能的側面」の充足がはかられ、
 目に見える成果として現れたときに、OJT担当者は新人が成長したと
 判断するのでは。
 つまり、組織社会化の結果として、今挙げられているものは、より
 「文化的側面」を強調しているのでは。
 「技能的側面」の結果を現す指標は他にもあるのでは。
●組織社会化研究の個別テーマ
(1)参入前の社会化
・予期的社会化のエージェント(マスメディア、学校)が、個人に非現実的
 かつ理想的な期待を形成させ、そのために個人の組織への適応が阻害
 されるメカニズムを明らかにした。
○日本では「就職活動」が、予期的社会化のエージェントを果たしている
 側面もあるのでは。
 就職活動での「自己分析」「自己アピール」等が、
 「自分の好きなこと、強いことを活かす」
 「自分のやりたい仕事を探す」ことを過度に強調し、
 そういう仕事ができるという期待を抱かせてしまっているのでは。
 それは、新人が「この会社を希望した理由」を聞かれた時
 「自分がやりたい仕事ができそうだから」と答えるのに現れているのかも。
 実際に職場に入ると、自分がやりたい仕事ができる訳ではない。
 でも、なかなか内定がとれず、面接でも厳しさを味わっていると、
 それが予期的社会化となり「世の中は厳しい」「会社に入るのは大変」
 と新人に思わせることになるのかも。
 その分、内定がとれ、会社に入れた時には、組織内社会化はスムーズに
 進むのかも。
 あ、でも「リベンジ転職」とかもあるか。自分の第一志望でない会社に
 入った場合。
 うわべだけ「組織社会化されてますよ」と新人が猫を被り、いざ転職の
 チャンス(景況)が来た時に出て行くということもありえるか。
(2)組織参入
・組織参入(organizational entry)の中心テーマは、
 現実ショック(reality shock)と幻滅(disillusionment)である。
・Dunnetteら(1973)は、幻滅経験の大きさと離転職の増加との間に
 密接な関係があることを明らかにした。
・若林ら(1980)は、幻滅経験は新入社員のキャリア発達の主観的側面
 に、ごくわずかしか影響を及ぼさなかったと報告。
(3)現実的職務予告
・現実的職務予告(realistic job preview RJP)についての主な研究
 課題は、その効果に関してである。
・Wanous(1992)は、現実的職務予告が離転職率に与える効果を実証した。
(4)参入後の社会化
・組織社会化の課題(学習、達成内容)は、いくつかのカテゴリーに
 分類される。
○この辺は、前にまとめた論文に書いてあったぞ。(尾形さんの研究レビュー)
  /blogmanabi/2009/11/post_157.html
・組織社会化を個人の学習のプロセス、特にモデリング(modeling)に
 基づいた社会的学習(social learning)のプロセスとする見方はポピュラー。
 (Bandura 1977 Weiss 1977 佐々木1990等)
・組織社会化研究のうち、最も特徴的な分野は、段階モデル(ステージモデル)
 である。だが、その内容は疑問視され、有効性も実証されていない。
・態度変容の問題も、今後の発展が望まれる分野。
(5)組織社会化の促進策
・Van Maanen & Schein(1979)は、社会化戦術の他次元性を明らかにした。
 6次元
○これは、この間中原先生に勧めれた英語論文「Toward a theory of
  organizational socialization」に書いてあったぞ。
 少しずつ繋がってくるなー。やっぱりどんどん論文を読もう!
(6)組織社会化の結果
・組織社会化は、様々な結果変数の原因変数とされることが多い。
 結果変数の代表例として、
 -職務満足(job satisfaction)
 -組織コミットメント(organizational commitment)
 -職務関与(job involvement)
 -動機づけ(motivation)
 -離転職(turnover) など
(7)研究対象となる組織
・組織イコール企業である必要はない
 
(8)研究対象となる個人
・新規参入者(newcomer)を研究対象とすることが多い。
・組織内部の場に存在する社会化のエージェントに着目した研究も
 少数ながら見られる(Wanousら 1984)
○この論文読んでみよう!
 「Organizational socialization and group development: Toward
and integrative perspective」
○俺が注目したいのは、新入社員に対するOJT担当者。
 つまり「組織社会化のエージェント」
 彼らの働きかけ方(より効果的な社会化戦術、特に技能的側面)
 彼らの任命基準(どんな人物がふさわしいのか? 人脈多し;仮説)
 新人の受け止め方
 などについて明らかにしたい。
●組織社会化研究の視点
・組織社会化研究の質を落としている原因は、不十分な研究視点と、それに
 基づく不適当な研究フレームワークにある。
・これまでの研究は主として2つの視点から行われている
 視点A キャリア発達論の立場 Schein と Van Maanen
  -変数設定があいまいにある傾向が強く、実証研究が困難になる。
 視点B 組織行動論の立場 Buchanan, Feldman, Wanous ら
  -独立変数と従属変数が設定され、統計的処理を多用した検証をする。
●今後の組織社会化研究の方向性
・組織社会化研究のフレームワークは、
 次の2点を満たしていることが望ましい。
1)組織行動論の視点に基づいた実証研究であること
2)縦断的な因果関係を変数間に想定すること
・実証研究の蓄積の少なさは重要な問題。
・基礎的な研究も十分に行われていない。
・社会化の他の下位概念と比較する研究も不十分。
 特に、職業的社会化に関しては、様々な方向性から比較がなされるべき。
○この論文で、組織社会化の全体像がつかめそう。
 自分の研究テーマが、どこに当てはまりそうなのかが
 何となく見えてきたかも。
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投稿者:関根雅泰

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