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2011年02月20日

「ラーニングバーX」に参加してきました

2011年2月15日(火)16時30分〜19時
「ラーニングバーX」に参加してきました。

http://www.nakahara-lab.net/blog/2011/01/post_1766.html

スピーカーは「Workplace Learning研究会」で知り合った市瀬博基さんです。
http://twitter.com/hi_learnology

当日は、研究会メンバーも複数名参加してくれました。
(Mさん、Sさん、Kさん、ありがとうございました)

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(・講演内容 ○関根の独り言)

●事前課題本


「文化ナショナリズムの社会学」第7章 日本人論の消費 

「組織エスノグラフィー」第1章

 http://learn-well.com/blogsekine/2011/02/post_335.html

●中原先生によるイントロダクション

・Workplace Learning研究は2つにわかれる

 1)定性的-ポストモダン 人類学 状況論、アクターネットワーク論

    ヨーロッパ中心 8割 それほど日本では知られていない

 2)定量的-実証主義 経営学 組織行動論 心理学、社会学

    アメリカ中心 2割 日本でも比較的知られている

・市瀬さんの研究は、1)の領域

・組織職場が変わる 外部環境の変化 
 
 アメリカでの労働市場のように
 転職環境が整っていない日本ではExitがない。

 そのため個人が外部環境の変化に組織内で適応することが期待される。


●市瀬さんによるレクチャー (PPTレジュメ)

 「ワークプレイスラーニングの政治力学 
  
  〜管理職研修へのコーチング導入・実践プロセスの文化人類学的考察」

   (市瀬さんのオックスフォード大学での博士論文より)


・1990年代末 日本的経営を否定し、多くの企業が成果主義的経営へ転換
 
 2000年代初 成果主義的経営の弊害が叫ばれはじめる

・これまでの「日本」型マネジメント 
 これからの「欧米」型マネジメント

・吉野耕作(1997)「文化ナショナリズムの社会学」の「消費」という
 観点から、分析できるのではないか。理論を消費する。

・分析の枠組み 「文化のツールキット」「行動戦略」

・コーチングの政治力学

 マクロ構造の変化(文化のツールキット)

  ⇒コーチ養成機関、フリーランスコーチ、マネジメント研修担当部署、
    研修参加者の中間管理職、部下である若手社員(行動戦略)

   (生産し消費をするプロセス)

 エスノグラフィーの最初からこういう枠組みができているわけではない
 やりながらでてきたもの。

・研究の出発点となった疑問

  なぜコーチングにおける理想のマネジャー像には、
  「女性」「母親」を連想させるメタファーが数多く使われているのか?

・「理想のマネジャー」像に隠された「母親」

・これまでの主導的な言説であった「父親」的システムが上手く
 いかなくなりはじめ補完的な言説として「母親」的マネジャー像が示された

 上手くいかないのは、システムの問題ではなく、
 部下に対する上司の態度であるとされた

・母親的=日本的 なのに何故コーチングというアメリカの文脈ででてきたのか

・コーチングの経緯 心理療法を用いたワークショップ手法の輸入

 1960年代 グループエンカウンター、HPM、

 1970年代 NLP、アウェアネストレーニング ⇒
 
 1980年代 日本での自己啓発セミナー 

 1990年代 コーチング ⇒

 2000年代 日本でのコーチング

○「心をあやつる男たち」で描かれていた部分かも


・アウェアネストレーニングと自己啓発セミナーの違い

 アウェアネストレーニング後の参加者には、
 極度に自己本位な行動をする者があらわれる

 (他者に教え込まれた感情の排除)

 自己啓発セミナー後の参加者には、
 極度に自己犠牲的な行動をする者があらわれる

 (他者に与えていた不安、焦りの自覚)

・これが、現在の日本のコーチングにもあらわれている(?)

・2つのコーチング

 1)CTP パーソナルファウンデーションプログラム
      −1日中 NO! という習慣

 2)I氏の説く 関わりに気づく

・1)はアウェアネストレーニングの流れ
 2)は自己啓発セミナーの流れ?


・「自己実現の形」

 Lebra(1974)による「解脱会」の分析
 
  自責感→他者中心の考え方→アイデンティティの転換→解放

 こういうプロセスでセミナーも行われている

・母親というメタファーがコーチングで使われている理由

 他者をうけ入れることによる自己実現

・コーチングは管理職研修とは別に発展してきたが、
 同じような文化的規範を共有していた


・コーチングの生産と消費

 大手コーチング会社 
 「相手の自発的行動を促進するコミュニケーション技術」
  これがコーチングを企業に売る際のキラーワードに。

・個人の自己実現から、組織の機能としてのコーチング。労務管理の一環。

・コーチにも「成果主義派」「いやし系派」がいた

・「ブロイラー型マネジメント」から「放し飼いの地鳥」へ。
 柵の中で自由は与えつつ、野生化はさせたくない。

・コーチング研修の一つ アウェアネストレーニングの流れ 

○他のコーチング研修はどうなのかな。


・部下のやる気は上司の態度 その態度は母親的。
 部下にそういう行動をとらせていた自分の行動に気づく。

・今まで構造に向けられていた目が、目の前の関係性に向けられた。
 それがコーチング研修の一つの効果。研修参加者の声から。

・これまで(日本的)主導的言説
 上司=父 秩序を維持するのは、部下の責任

 これから(欧米的)補完的言説
 上司=母 秩序を維持するのは、上司の責任

・首尾一貫して誤解できる構造がある。その可能性があることを
 アクターは自覚する必要がある。

○アクター各自が、好きなように理解する可能性があるということ?


●中原先生によるコメント

・教育=第三者による学習の組織化

 秩序化

・J.Mezirow 負の感情→ジレンマ→
  他者(も抱えている、に与えている)→批判的評価→行動計画

 アウェアネストレーニングと似たような流れ

・「個人に変化しろ」と求めるからには、こういう側面も自覚しておく

・「コーチングとは何か」を鵺的にしておいた方が、組織に導入しやすい
 翻訳しやすい 

○これは言えるだろうなー。営業をやっていて感じること。


・Exerciseのオチが決まっているのなら、Instructionに近いのかも。

・企業研修では関係するアクターが見えやすい。
 (研修会社、講師、教育企画者、参加者、上司)


●長岡先生によるコメント

・上司側の「母性メタファー」が果たした役割の大きさ
 職場での学習がうけ入れられる要因として

 部下側の「守破離メタファー」は誤解されている
 かたくなに離れないことが守破離

・「アンラーン」というツールキットを使った組織化の困難さ
 母性メタファーとも合わない 根づきにくい。完全な個人主義の方が合うかも

・「学習の失敗」をいかに切り抜けるか

 「ダメな部下をどうすればいい?」という質問の背景には、
 「自分はきちんと面倒を見てますよ」というアピールがあるのでは。

 「コーチングで学んだことをやってみたけど、上手くいかなかったよ」
 と言われた時、アクター(研修会社、コーチ)はどのように切り抜けるのか。

・「学習実感」に対するWPL研究者のまなざし
 
 学者が「役立つ」といったら、また広まってしまう。
 「コーチング理論」の消費に関与することになる。

 研究者は、研修ができなくなる。


○最後の問いは考えさせられる。

 研究者としての中立性?を保とうとすれば、
 特定の研修を事業として行えなくなる


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(市瀬さん、中原先生 皆さん、ありがとうございました)

組織エスノグラフィー

組織エスノグラフィー

○ラーニングバーX の事前課題本
 
 読んで良かった。質的調査の魅力。

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(・引用 ○関根の独り言)


・我々は誰も日常の中で、自然に内部者(ネイティブ)と
 なっている場がある。

 内部者になりきると、当たり前だと思うようになってしまった
 文化を読み解くのは難しくなる。

・「暮らしている」「長く属している」「他の人々と上手く過ごす」
 「文化に徐々に気づく」 

 経営学では、組織社会化というテーマがこの問題を扱っている。

・慣れっこになった人に初々しい気持ちを取り戻してもらう上では、
 ありがたいことに、毎年、新人が入ってくる。

・新人こそ極めつけの素人エスノグラファー

・即戦力を買われ請われて入ったという自信のある人なら(違和感を)
 以前の会社で当たり前と思われていた仮定と比べながら

・あらゆる意味のある研究は、フィールドリサーチに根付かないといけない

・方法論的複眼は、記述を豊かにするのに有用だった

・社会科学の使命は、常識では気づかないパラドクスやディレンマに
 光を当てること

○ここに出てくる7つのパラドクスとディレンマにはうならされた。

 小さな企業者として自身が感じていることが、まさに表現されていた。

 研究者の凄み。


・企業者は、成長を恐れていること、成長したくないとも思っていること

○成長というより、拡大はしたくないとは思っている。

 ドラッカーの言葉を「ビジネスの目的は顧客の創造」だけで終わらせてしまうと
 顧客を創造するためには拡大し続けなければいけない脅迫観念に追われる。

 「顧客の創造と維持」まで含めれば、拡大志向は避けられる。
 維持するためには、自社、自分の能力に見合った適正範囲を考えられるから。

・エスノグラフィーは、文学と科学という2つのジャンルにまたがる性格を
 もつ文章の形式

・調査研究という仕事(トレード)の本質は、他者とのコミュニケーションの
 プロセスなのである。

 コミュニケーションとは、書き手が、物事に対する読者の見方を変えようと
 するのだということを意味する。


○この本、面白かった。

 雲の上の人である、金井先生、佐藤先生、クンダ教授の学生当時の苦しみや
 悩みを追体験できる。

 学生さん達にはぜひ読んでほしい本。

 俺も、仕事をしながら、研究の世界に足を突っ込んでいるが、
 研究の世界に両足をどっぷり漬からせたくなるような気持ちにさせられる。

 その辺の折り合いの付け方が、俺自身の課題。


○次は、積ん読になっていた本を読もう。


 G.クンダ 「洗脳するマネジメント」

 金井 「企業者ネットワーキングの世界」

 佐藤 「暴走族のエスノグラフィー」

 Van Maanen 「フィールドワークの物語」
 

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