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「変革を生む研修のデザイン」

「変革を生む研修のデザイン」2010(Training for Change 1994)

  −仕事を教える人への活動理論−  Y.エンゲストローム

○研修講師にかつを入れてくれる本。
 参加者の内的要因(心的活動の変化)に着目。

(・引用 ○関根の独り言)

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●序論

・本書は、文化-歴史的活動理論に基づいて、職場学習(教育)と
 組織学習(経営)の2つの分野の分断を乗り越え越境することを目的とする

・本書の中心的メッセージは、学習と教授は仕事のような他の生産的活動における
 変革と結びつき、そうした変革をめざすということにある

・実りある職場学習が、真剣な理論化や目標志向の指導をなんら経ることなく、
 日常的な仕事の経験からスムーズに生まれると想定するような「経験学習」や
 「アクションラーニング」に対しては異議を唱える

・本書が提案するのは、拡張的学習という一般的な枠組みに基づいた
 探求的学習、教授についてのプロセス理論である

・学習と教授の理論についての最も重要な基準は、その実践的インパクトにある。

○「よい理論ほど実践的 K.レビン」ということかな


・本書は、1992-93年にわたってアフリカで実施された「研修担当者の研修」から
 得られた経験などに基づいて編まれたまったく新しい書物である。

○俺も研修を実施させてもらっているという貴重な経験を、
 研究に上手に活かしていくべ。


・教授(インストラクション)の質は、一風変わった芸当や技術的方法に頼って
 高めることなどできない。
 必要とされるのは学習や教授への理論的な洞察である。

○これは耳が痛いよなー。この問題意識があったからこそ
 大学院に入ったわけだけど。


・学習とは、有意味な構成であり、実践コミュニティへの参加であり、
 所与のものへの批判であり、革新と創造でもある。

・研修や教授は学習を狙いとしている。学習を理解することなしに、教授をうまく
 進めるためのしっかりとした土台は作れない


●第1章 教育・教授・職業研修

・特定の技能や能力の獲得を目的とした教育は、研修と呼ばれる。

・教育には2つの種類がある
 1)仕事の文脈の中でなされる教育 2)体系的な教授(インストラクション)

・成人の職業研修の特徴

 −研修や教授の仕事に関わる人々のうち、教育科学や行動科学を学んだことの
  ある人はごく限られている

・指導の外的要因と内的要因 p13

  外的要因(生徒の観察可能な行動や状況を統制する手段)
  内的要因(生徒の心的活動を導く手段)

・充実した、そして応用可能な学習を成し遂げるには、
 重心を外的要因から内的要因に移すべきである。

○これが、本書のポイント! 確かに講師は外的要因に目が行きがち。
 自分も含めて。


●第2章 よい学習とは何か

・学習を3つの部門(知識、技能、態度)に分けるというよくあるやり方は、 
 こうした誤概念を強化している。

・生産的学習では、知識、技能、態度は、緊密に一体となって溶け合っている

・学習とは世界像の構成 解釈と構成を通して有意味学習が生じる

・学習の基礎は内化、すなわち物質的行為を心的行為に変換すること

・学習者 道具 対象 

○三角形!


・第一次学習:報酬と罰による条件づけと模倣
 第二次学習:ヒドゥンカリキュラム、試行錯誤、探求的学習
 第三次学習:拡張的学習

・いったん表層志向の学習方略が採用されると、深層志向の方略へと
 切り替えるのが非常に難しくなる

・探求的学習の4条件
 1)学習の動機づけ 2)内容の適切な組織化 3)学習プロセスの進行 
 4)社会的相互作用と協働

・動機づけの3タイプ
 1)状況的 外的要因によって一時的にひきつける
 2)道具的 報酬を受ける、罰を避ける
 3)実質的 使用価値を感じた時

・「実り多く楽しい授業」は研修期間の始まりかその前に生徒たちの要望を
 聞き取ることを提案する。教師は、生徒の興味をひかない目標は放棄しながら
 自らの目標とコンフリクトを生じない生徒たちの要望を選ぶ。

 このような考え方は、学習に対するコンフリクトの重要性についての
 誤解を含んでいる。

○これは気をつけないとなー。参加者の要望は聞きつつも、研修の目的、
 目標の遂行によるコンフリクトは恐れない。
 参加者と良い関係を築きながらも迎合はしない。

 「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」の精神かな。

 ただ、講師初心者の場合、聞き出しそのものをしない場合が多いから、
 そこは気をつけないと。


・実質的な動機づけを作り出すために、生徒ができると思っていることと、
 現実場面での技能との間の矛盾に基づく認知的コンフリクトを作り出す。

○「失敗させる」「できないことに気付かせる」それによって学習意欲を高める。

 LWの研修だと、どこでできるか。現状は、指導員研修の最後「叱り方」で
 難しさに気づく参加者が多い。しかしあのパートを前に持ってくることは
 ちょっと考えにくい。少し検討してみよう。

・動機づけのために、コンフリクトを使う目的は生徒に自分の実践と主題事項の
 双方にとって中心的な問題を熟考させることである

・生徒の中に実質的な動機づけを呼び覚ますために、講師は慎重な知的、実践的
 な努力を要する高度な要求と挑戦を、生徒に対して設定しなければならない

 教授は学習の前を進み、学習者を新しく未知なる領域へと導くものでなければ
 ならない。このことは緊張関係が不可避的に生じるということを意味している。

 講師は少なくともその領域のある側面やある部分については、学習者よりも
 よく知っている。この緊張関係を回避せず、意識的に利用しなければならない。

○ここも耳が痛い。数年前のある会社様での研修の失敗は、
 ここに起因しているんだろう。
 
 「この分野に関するエキスパート」という自信をもてていなかった。
 それが参加者にも伝わった。

・学習の6つのステップ

 完全な学習とは、質の高い知識につながる学習、とりわけ主題事項および新しい
 状況でそれを柔軟に応用する能力を自立的に習得することにつながる学習

・(方向づけにより)生徒は課題解決のための「レンズ」を独力で作り出す。

○ここは、ビッと来た言葉。参加者が「レンズ」を作り出す。

・学習者が問題に対する解決策をあれこれ考えて、発話、図表、計画、
 スケッチ、具体的行為などの助けを借りて、自分の説明モデルを再構成
 するときに外化が生じる。

○この辺は特に「指導員フォロー研修」と関わってくるな。


・主に学習を一人の個人という観点から扱いがちだが、学習は常に
 社会的出来事の連鎖である。

・学習は直接、間接に実践コミュニティの中で行われる

・徒弟制の問題の多くは、親方に関わるものである。

・自分の組織から離れて研修することは、学習の強く豊かな源泉とリソース、
 これは徒弟制の強みである、を排除することになるのだ。
 これがパラドックス。

・探求的学習のコミュニティは、職場でも研修でも共に成り立ちうる

・探求的学習では、コミュニティは教室に限定されない。
 普通は、体系的な研修を提供する機関と職場でのチームを結び付ける
 学習のネットワークという形態をとる。

●第3章 よい教授とは何か

・学習は、生徒の活動であり、教授は教師の活動である。指導(ティーチング)
 すなわち教授プロセスの目的は、この2つの活動を出来る限りかみ合わせる
 ことである

・講師には最近接発達領域や構成領域を作り出す責任がある

・研修のセッションは、教授の原理が検討されていないために内部で
 首尾一貫していないことが多い。各講師が自分の好みや勘にしたがって
 授業を行っている。

○これは確かにそうかもなー。


●第4章 教授の認知的目標の設定

・教授の内的要因にもとづく目標がもたらすものは、特に生徒が意識して真剣に
 学習するのを助けようとする試みである。

・教授目標

 外的要因:観察可能な望ましいパフォーマンス(行動目標)
 内的要因:習得すべき内容、またはパフォーマンスの方向づけのベース
      (認知的目標)

・行動目標は十分ではない

・外的なパフォーマンスの構築される基盤になる原理や構成概念の理解を、
 目標として実質的に記述することが重要

 認知的目標は、変化する状況における適切なパフォーマンスを生成し
 モニターするためのツールとなるモデルを描きだす

・認知的目標を設定するということは、生徒にどんな種類のモデルを身につけ
 てほしいのかを知るために主題事項の核心を明らかにすることだと言える

・前提として必要なことは、講師自身がそのような原理を取り出しそこから
 教授のベースとなる説明モデルを構築することができるということだ。

 原理を発見する為に、講師は自分の教える主題の源泉を
 たどらなければならない。

○研修において、参加者に理解してほしい原理は何か。
 例えば、「新人を育成する」という主題における核心、源泉は何か。

・方向づけのベースは様々な方法で提示できる。単純化されたアウトライン
 やテクストつきのモデル図が、多くの場合、最も効率的である。
 本書では図1、図8。

○参加者の概念理解を助ける方向づけのベース「シンプルなモデル図」は何か

・方向づけのベースの5つのタイプ
 1)例示 2)先行オーガナイザー 3)アルゴリズム 4)システムモデル
 5)胚細胞(Germ model) 

・複雑なシステムの裏側にあるシンプルで基本的な原理(胚細胞モデル)を
 発見することで、複雑なシステムも理解できるようになる

・方向づけのベースを定式化するには、まず求めるパフォーマンスを
 定式化しなければならない

・講師は、生徒を探検家にしてやらなければならない。方向づけのベースは、
 生徒を探検家にするうえで優れたツールである。


●第5章 教授内容の選択と編成

・自分の仕事の分野を本質的に習得することなくしては、誰も真に創造的な
 リーダーにはなりえないと言ってよい。

○創造性に関する考え方や技術を、研修で学んだだけでは創造的になれない
 創造性を発揮したい分野のコンテンツの深い理解があって
 初めて創造性を発揮できる

・創造性、批判的思考、コミュニケーション、リーダーシップスキルなどの
 コースプログラム

 これらに特有なのは、方法と雰囲気を、コースの決定的な基準と
 みなしていることだ。

 創造的であることを学ぶには、人は触発され、開放的なムードの中に
 いなければならない。

○「ワークショップ」だけでは、創造的にはなれない。

・概念と本質的なアイデアが、思考と行動のツールになるということを
 軽視している。


・真の理論の本質的特徴は、実質的な事柄や活動を習得するのに
 役立つという点にある

・成人の職業教育で最もよく見られる問題は、研修が無数のバラバラな
 セッションやコースに断片化していて、相互に関連した意味ある全体と
 してみることが難しいということである。

○これは確かにそうだなー。全体のつながり。


●第6章 教授方法

・教授の最も本質的な側面は、内的側面、その時々にに達成されつつある
 心的活動である

・講義を教授の中心にとどめながら、講義の過重負荷や講義による生徒の受動化を
 軽減し相殺するよう、ディスカッションやグループワーク、演習を講義の周辺に
 配置するといった形をとりやすい

○これはあるなー。

・よく計画された講義は、聞き手の側に集中した多様な心的活動を呼び起こすもの

○確かにそうだなー。色々発想を広げさせられる講義もある。
 ただ、講師側の要因ももちろんあるけど、聞き手側の要因もあるかも。
 
 聞き手が抱えている問題や、ずっと考え続けてきたテーマが
 講義によって刺激を受けるとか。

 でも、それを刺激するのも、講師側の「計画された講義」によって
 可能なのかな。参加者の「実質的な動機づけ」を行ない、方向づけの
 ベースを作ることで。

・学習は、学習者にとって意味のあるひとつながりの課題をめぐって
 構築されなければならない。

・課題は、現実の仕事の場面、つまり真の実践コミュニティの中で
 見出されるべきである

・賢明な講師であれば、生徒課題バンクを作り、それによって課題の記述、
 課題を行う際の指示、評価基準、解答例などを継続的に使用、改善できる
 よう蓄えていく

○これはいいなー。

・指導の目的は、質の高い学習(生産的な探求学習)を達成することである。

・講師は、生徒の学習プロセスの観点から見た指導の各段階の機能に気づくべき。

 9ステップ 
 1)準備 2)動機づけ 3)方向づけ 4)新しい知識の伝達と精緻化
 5)体系化 6)実践化 7)応用 8)批評 9)評価と統制


●第7章 教授計画

・(教授計画の多くは)教授の外的要因に限定されている

・指導の内的要因から始まる指導計画が必要

・カリキュラムの目的は、教授−学習プロセスを導きモニターすることにある


●第8章 指導技術

・指導技術(ティーチングスキル)の外的要因には、
 1)プレゼンテーションスキル 2)対人関係スキル
 3)組織化スキル 4)視聴覚メディアや情報テクノロジーに関する能力

○一般的な講師向け研修で協調するのは、確かに外的要因だなー。


・熟練した指導の内的規準

 良い教師は「なぜ」を問う 

 1)教師はテーマ単位に対して、どのくらい優れた方向づけのベースを
   作り出すことができるのか

 2)あるトピックについて、一連の教授的手立てをどのくらい上手く
   デザインできるか

 3)生徒に対して色々と要求はするが敬意をもった関係を築けるか


●第9章 結論

・指導の黄金律 7つ


●解説

・拡張的学習と探求的学習はどのような関係にあるのであろうか

・拡張的学習が、発達的ワークリサーチによって支援されるように
 探求的学習は、「一連の教授的手立て」によって支援される


・中原(2006)によれば、職業研修や人材育成には、
 大きく2つのデザイン論がある
 「インストラクショナルデザイン」と「学習環境のデザイン」

・エンゲストロームにとって「中立的な教師など存在しない」

○教師、講師ではなく、「ファシリテーター」という立ち位置だと、
 「中立的」になろうとするかも。 


・いま自分の行っている指導がどのような教授機能を果たしているのか
 (探求的学習のプロセスのどこを実現しようとしているのか)、生徒は
 どんな方向づけのベースを 用いているのかを意識することだろう

・学習のプロセス理論は、疑問の余地のないルールとしてではなく、
 作業仮説として利用されるべきである。

○こう言ってもらえると気楽だな。色々なやり方を試してみよう。

 それが講師にとっても第二次学習 探求的学習になるのかも。

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