« 「新しい公共支援事業」に関わることになりました。 | メイン | メンタリングに関する論文他のまとめ »

社会人で東大大学院を目指される方に

6月上旬に、東大大学院学際情報学府での入試説明会がありました。
http://www.gakkanfellows.com/?p=291

今年はゼミで独自の説明会も開きました。
http://www.nakahara-lab.net/blog/2011/05/611.html

以前から「仕事をしながら大学院に通えるでしょうか?」という
ご質問を頂いていますので、この機会に自分の考えを整理してみました。

================================

2010年4月から東大大学院 学際情報学府に入学し、1年ちょっとが過ぎました。

仕事をしながら、大学院に通う中で気づいたことが、3つあります。

(あくまで私が感じたことです)

================================

1.平日1日以上は、大学院で過ごすことが必要なり


社会人の方からは「夜の授業や週末の授業は?」と聞かれますが、
ほとんど無いといってよいです。

修士卒業に必要な必須授業ほど、平日の昼間にあります。

eラーニングも多少ありますが、1学期に2〜3の授業程度です。

結局は、平日昼間の授業をどこかで取らないと
必要単位を集めることができません。

(私はゼミがある火曜日に授業を入れられるよう調整してきました)


東大に通う社会人大学院生は、仕事を辞めるか休業している方が多いです。

私は自営業者ですので、比較的時間の自由がききますが、

勤めていらっしゃる方ですと、勤務を続けながらの大学院通学は
現実的には厳しいと思います。

やはり平日1日〜2日は大学院で過ごす必要があるからです。


社会人学生が多い当ゼミの経験範囲内ですが、一つの目安として・・・

・平日3〜4日 で 2年で卒業

(修士1年の時に集中して授業をとり、修士2年で論文を書く)

・平日1〜2日 で 3年かかる

(長期履修制度で、2年半かけて授業を少しずつ取り、論文を同時に書く)


長期履修制度に関しては、2年を最長4年間まで延ばせます。

私は気楽に「3年あるから余裕でできるべ」と思っていましたが、
修士2年目に入って「あせり」を感じてきています。

同期の修士2年生たちは、必須単位を取り終え、
着実に修論執筆に向けて動き出しています。

そんな中、自分だけ「足踏みしている、置いてかれる感」があります。

長期履修制度で、1年遅れで修論を書くということは、
こういう精神的負担とも戦う必要がでてきます。


あくまで私見ですが、東大大学院は「社会人には特に厳しい」かもしれません。

「社会人だから」という甘えや融通がきかず、

逆に「社会経験あるんだったら、それなりのもの(論文)書けますよね」
あるいは「社会人経験はあっても、研究では実績無いですよね」

というプレッシャーを感じます。


そもそも他大学院のように、
積極的に社会人に門戸を開放している訳でもないようです。

「優秀な研究者の育成」が目標でしょうから、
学生も社会人も関係ないというスタンスなのかもしれません。

あるいは「中途半端にしか大学院に通えない人なら、来なくてもいいですよ」
ということなのかもしれません。


1年ちょっと通って、東大大学院の厳しさを肌で感じています。


(別に冷たい人達が多いという意味ではありませんよ。
 後述するように、求めるレベルが高いので、厳しいという意味です。)


================================

2.「研究者養成の機関」であるという認識が必要なり


前述したように、東大大学院は「研究者養成」の側面が強くあります。

大学院は「教育志向」「研究志向」と分かれますが

(「社会人大学院へ行こう」山内祐平・中原淳編著
  http://learn-well.com/blogsekine/2009/04/post_227.html )

東大大学院は「研究志向」だと思います。


研究重視ということは「論文を書ける」ということです。

それに必要な基礎知識は「自分で身につけてください」というスタンスです。


社会人大学院生の多くが期待する「体系的な知識を身につけたい」
という要望に応えるのは、他の大学院(教育重視)かもしれません。


一から教えてくれるというよりも、

「え、そんなことも知らないんですか。自分で勉強して下さいよ」

といった感じです。


私は、学部を卒業した後、12年ほど社会人をした後に、大学院に入りました。

今まで論文を書いたことはありません。
(恥ずかしながら、論文を読んだこともほとんどありませんでした)

今は「論文の読み方」から始まり「研究の組立て方」「調査の仕方」
「論文へのまとめ方」等を、一から学んでいるところです。

(こういった研究の方法論を一流の先生方の身近で学べるというのは
 東大大学院の利点かもしれません。)


ゼミの社会人大学院生は、他の大学院で修士をとってから、
東大の大学院に修士1年から入りなおしています。

(いきなり博士課程に入らずに)やはりそれだけ厳しいようです。

つまり私の場合は、まず一般の大学院で求められる修論レベルに達し、
更に東大大学院(研究者養成機関)で求められる修論レベルに達するという
「2段階での追いつき」が必要なようなのです。


こうやって入学前は見えなかった自分の実力が、大学院に入って、

・授業で出会う他の学生さん達の優秀さに圧倒され
・ゼミで頂くコメントの鋭さや
・自分が有益な質問やコメントができない無力さ を通して

少しずつ分かるようになってきました。


○ツイッター 

 「ゼミ発表後は落ち込む」
  http://twitter.com/#!/masahiro_sekine/status/78079859963854848

 「その年で学ぶのってきつくないですか」
  http://twitter.com/#!/masahiro_sekine/status/78083579791425537

 「必死すぎて痛々しい」
  http://twitter.com/#!/masahiro_sekine/status/78227692620759040

================================

3.学生さんや周囲に相談することが必要なり


こうやって苦しい状況に追い詰められて感じるのは、

・先行研究の必要性 と

・周囲に相談する必要性 です。


私もそうですが、社会人は今までに壁を乗り越えてきた経験があるので、
「なんでも自分で解決しよう」としてしまうところがあるかもしれません。

しかし、自分だけでいくら考えていても、なかなからちがあかず
煮詰まるだけです。


年が近い学生さん達は、こういう時、気楽にお互い愚痴を言ったり、
相談しあったりしています。

社会人は変にプライドもあって(私もそうです)
なかなか素直に相談出来ないのかもしれません。

そもそも大学院にいる時間が短いので、接点が少ないのも一因です。


その点、当ゼミの他の社会人大学院生(女性)達は、学生さんとの
コミュニケーションが上手く、良く相談もしています。


私自身の課題としては、まず学生さん達やゼミの先輩達との接点を
増やすことと、気軽に相談することです。

(そのための時間をこちらも確保すること)


そういう意味で、社会人大学院生は、年若い先輩学生さん達に
素直に教えをこえる姿勢が必要になると思います。


================================

以上、東大大学院に通って1年ちょっと経って感じたことです。


そういえば去年も入学して2カ月たった時点でふり返りを行い
感じたことを書いています。


今読み返してみると、このころは、まだ厳しさを分かっていませんね(苦笑)

http://learn-well.com/blogsekine/2010/06/post_321.html


社会人で東大大学院を目指される方にとって、
何か役に立つ内容となっていましたら幸いです。


少し厳しめに書いていますが、社会人大学院生を応援しています!

お互い頑張りましょう!

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://learn-well.com/xbitmtop/mt-tb.cgi/961

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)