2012年夏「経営学習論」(5)越境学習

授業

授業の最後は、組織の境界を越える「越境学習」がテーマです。

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7月11日(水)
・Engstrom, Y.(2004) New form of learning in co-configuration work. Journal of workplace learning. Vol.16 No.1/2 pp11-21
○文献訳は私が担当しました。手ごわかったです。
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・組織内外 組織を取り巻く境界
・これまでの授業 
  -Socialization 
  -Experience
  -Oversea
  -Resocialization
・現代社会論 Liquid(液状)化、Globalization
  Solidなものが溶解していく社会
 アンカーがほしいが。不安が増す社会。
  Sennette 不要とされる不安
・組織の枠 Boundary 以前はくっきり、今はぼんやり Blur
・M&A、2社での共同設立会社
・1970年代 教材、教師を見る研究
 1980年代 学習は現場で起こっている(職場学習)
 1990年代 Engestrom 
 それまでは、個人を見る「学習」上部構造
  下部は「労働」生産構造
 2000年代 組織内外の学習 
  Boundary crossing、Boundaryless
・Learning と Mobilization(移動)
・1920年代 行動主義的学習論 Skinner
  個体の中で何が起こっているのかは見ない
 1)偶発的行動 2)正と負の強化 3)行動、認知をコントロール
 強化「される」主体として、人を見る
・1960年代 認知主義的学習論 Dewey、Piaget
  個体の中で起こっているのは「概念、シェマ」
  個体⇔環境 フィードバックを得る
・ Vigotsky 
  個体→ 媒介(他者、道具)→環境 3項関係で見る
・ここまでの学習は、個体の変化=学習 と捉えている。
・分析単位は個 ここに異を唱えたのが、レコンチェフ、
  形にしたのがエンゲストローム
・1980年代 Engestrom
 1)見ていくべき単位は、上部と下部構造 活動システム(分析単位は組織)
 2)要素間の矛盾→拡張的学習→システム(組織)の変化
・どこかが変わると、どこかに矛盾が出てくる。
  活動システムを変えていくのが、学習。
 例)病院におけるX線機械(道具)の導入、主体(医者)、対象(患者)
・エンゲストロームは「学習」とは言わない 「拡張的学習」「学習活動」と呼ぶ。
・エンゲストロームにとって 研究=変革
 DWR Developmental Work Research 発達仕事研究 Action Research
 現場に介入 状況を三角形で見える化して「どこを変える?」とせまっていく
 こういう研究は少ない 論文になっているものは最新のものではない
  査読を待っていると時間だけ過ぎる
・分析単位がどんどん広がる
・Association 連携 
・あらゆるものが、Co-configuration work 協同構成的仕事でない仕事の方が、今は少ない
 
 協同構成的でない仕事の代表格としては、一昔前の大学(縦割り)
 https://twitter.com/nakaharajun/status/222940265437081601
・各活動システムから派遣されて、一緒に仕事をする(結び目)
  そこから持ち帰ると、以前いた組織で矛盾が起こる それが変革につながる
 例)サッカーの日本代表 チームから派遣 代表として仕事 戻るとチームも変わる
・Knotworking から、先は見えてこない
・学習のメタファー 
 個人:1)獲得 2)参加 の二つ 第3のメタファーはまだ無い
 組織:1)拡張 
・組織の中で起こっていることを記述する 
・顧客(対象)が変わっている中、下部構造(ルール、共同体、分業)を変えたがらない
  官僚組織。その場合、個人落ち(主体)になってしまう
・この言説で一番得をするのは誰かを考える
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7月25日(水)
・Engstrom, Y.(2009) Wildfire activities: New patterns of mobility and learning. International journal of mobile and blended learning. Vol.1 No.2 pp1-18
・1980年代後半~2000年代
  Lave & Wenger(1991)コミュニティへの参加としての学習
 Staticなコミュニティ
 周辺的から中核的参加
・Participation metaphor=学習
  ~らしく振る舞えるようになる
  (行動、Identityの変化
 「うちの~は」内/外
・Lave & Wengerへの反論 by エンゲストローム
 1)コミュニティはDynamicに変化する
  
 2)多重成員性 Multi membershipをやりくりしている
    それをとらえていない
 3)線形的に変化するように見えるが、実際は
    Communitiesを移動する Mobility移動としての学習
・これらの批判から、状況的学習論は混乱していった
  現状の複雑さを記述しきれていない
・今後は一つの組織の一つのアイデンティティだけで、
 やっていくのは難しいかも
・Liquid社会
・Wildfire野火という概念も流行っているとは言えない
・ポストモダン的で論文も何を言っているかわからないかも
・世の中で起こっていることにアプローチしようとしている
・New challenge
 -境界と学習(無境界/非境界)
 -共振性(Virus)
 
 -更新性 Update 
 -緊急のコンテクスト
・フラッシュモブ ハッカソン 
・デュルケーム 祝祭としての学習
 日常:経済的活動 ⇔ 非日常:非経済的 コンサマトリー(自己充足的)
・合衆的祝祭 不特定多数、自由意思、集合的活動
 この辺がエンゲストロームと似ている
・学習もカーニバル化しているかも
・今起こっていることを記述しようとしている
・「越境学習」「祝祭としての学習」「野火」等は、
 ある程度の学習を終えているというのが前提
 「もちよる」ということはある程度の専門性をもっている
 独力で達成できないことを、周囲の力を借りて行う
 のる人、のれない人がいる
・ある程度の学習を終えた人が更に上に行く
  ある程度の学習をしている間に、学習がつまらなくなって
  しまう人もいるかも
・格差(もつ者ともたざる者)が固定化するかも
・新保守主義(ネオリベラル)自己責任論
・社会的属性によって起こる学習を記述する形になるかも
 グランドセオリーが作れない 皆ちがって皆がいいという状態
・生産であって、学習では無いのでは
・越境学習的なものは、個人が主体
  だからこそ、Archive化が重要かも 全部がフローに
・誰かが誰かに というイニシアチブが、
  学びのイニシアチブが個に移ってきている
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刺激的な授業でした。ありがとうございました。

投稿者:関根雅泰

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