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組織と技能〜技能伝承の組織論

組織と技能〜技能伝承の組織論 2003年

 松本雄一

○技能形成のカギは「状況的実践」(やってみる)と
 「共同体の地図」(誰が何に詳しいか)の構築。

===

(・引用/要約 ○関根の独り言)


・経営学はこれまで、ひとのもつ「知識」に焦点をあててきたで

・RQは、経営組織での技能の形成において、どのような
 メカニズムが存在しているのか である。

・OJの有効性を主張する研究は多いが、それは結局「どのように
 技能形成を行うのか」という具体的な議論へはつながっていない

・本書の狙い
 1)学習者の視点からの人材育成論
 2)ホワイトカラーの技能形成を見据えた研究
 3)技能概念の再考と新概念の導出

===

●第1部 先行研究のレビュー

・経営学における技能研究として、まずKats(1955)をあげたい。
 「技術的技能 Technical skill」
 「人間的技能 Human skill」
 「概念的技能 Conceptual skill」

・技能熟練の研究は、労働経済学、特に労働過程論の分野に
 おいて盛んに議論されてきた。

 Braverman(1974)「社会的分業」「個人的分業」

・小池(1986〜)知的熟練は主にOJTによって形成され、その
 測定に用いる指標には(1)経験のはば(2)経験の深さ
 (問題処理のノウハウ、変化対応のノウハウ)がある。

・Mace(1950)は、技能の概念を心理学研究を基に整理。
 「身体的技能 Physical skill」
 「知的技能 Intellectual skill」
 「社会的技能 Social skill」

・Fitts & Posner(1967) 3段階の技能の学習モデル:
 自分の体の動きに集中して学習する段階
 用いる状況の中での実践によって学ぶ段階
 集中を必要としない段階にまで慣れて行く段階

 集中して学習した技能を日常の状況の中でならしていく
 という指摘は、OJTの基本的考え方として興味深い

・哲学者は「内容についての知識 Knowing that」と
 「方法についての知識 Knowing how」の区別が重要と指摘。

 Knowing that=知識、宣言的知識
 Knowing how=技能、手続き的知識

・Anderson(1980) 2種類の知識
 「宣言型知識 Declarative knowledge」
 「手続き型知識 Procedural knowledge」

・Dreyfus & Dreyfus(1986) 熟達のステージモデル
 人間の熟達化の段階を5段階に分類
 「ビギナー」「中級者」「上級者」「プロ」「エキスパート」

・波多野・稲垣(1983)を課題状況の変化に柔軟に対応して
 適切な解を導くことのできるような熟達者を「適応的熟達者」
 と呼んでいる

・高度な熟達=成果を生み出す下位の能力
        +能力を使い分けるメタ能力

===

・Simon(1996)は、学習(Learning)について「環境に適応する
 能力における、多少なりとも固定的な変化を生み出すシステム
 の変化」と定義し、学習に「環境適応能力」と「変化」が
 関係することを示している。

・Hedberg(1981)は、
 学習-学習棄却(Unlearn)-再学習(Relearn)という3つの
 プロセスの循環からなる学習のサイクルモデルを提示した。

・主に初期の組織学習は、組織における行動の「適応」を
 学習の結果として捉え、その適応プロセスを見ることで
 組織における学習を研究しようとした。

 その端緒とも言えるのが、Cyert & March(1963)である。

・Argyris & Schon(1974、1978)の理論の前提となっているのは
 「行為の理論 Theory in action」であり、彼らの理論は
 のちの「知識」を鍵概念とする組織学習論の基礎となった。

・知識の獲得=組織学習という考え方を決定づけたのは、
 野中(1990、Nonaka & Takeuchi 1995)であろう。

・個人の学習を組織に援用しようとした研究(Argyris & Schon:
 シングルループ、ダブルループ学習や野中:知識創造)は、
 技能形成と良く似た側面をもつ。

・組織学習の理論は大きく、組織目標や環境に対して行動を
 変化させる「適応」としての学習と、行為の理論や知識を
 獲得する「知識獲得」としての学習の2つのカテゴリーに
 分けることができる。

===

・組織学習の研究では、組織的観点はあるものの、実践という
 観点からの研究が衰退してしまった。

・認知心理学における状況的認知(Situated cognition)研究は
 心理学と組織学習研究双方の良いところを併せ持ったもの。

・Hutchins(1989,1991)
  社会的分散認知(Sociall distributed cognition)

 作業者は他の人が何をしているか全て把握していなくても、
 自分の持ち場で自分の作業をしていくことで、全体としての
 作業が進行する。

 「助け合い」に関わる概念として「観察視界」:
 各メンバーが見たり聞いたりできる部分の限界

・Orr(1990)「共同体の記憶 Community memory」

・Lave & Wenger(1991)「正統的周辺参加」

 2人が徒弟制の再考と「状況性」のよりよい定式化において
 用いるのが「脱中心化」という方略である。

 正統的周辺参加においては「学習者は否応なく実践者の共同体
 に参加するのであり、また知識や技能の修得には、新参者が
 共同体の社会文化的実践の十全的参加(Full participation)
 へと移行していくことが必要」であるとする。

・文化心理学と認知科学の融合を試み、文化心理学研究の端緒
 となったのは、Cole & Scribner(1974)である。

 彼らは文化差によって人間に認知的能力差が生じるとする
 学説を否定した。

・状況(文化)の中で受動的に生きる存在ではなく、実践を
 通じた相互構成があるからこそ、同じ文化の中で多種多様な
 人間が生まれるという文化心理学の考え方は、組織の人材育成
 に新しい視点を提供するであろう。

○面白い!

 組織社会化→多種多様性 のヒントになるかも。


・野村(1989)は、学習者が言語による指導の「あいまいさ」を
 知的努力で補完することが重要であるとしている。
 
 これは生田(1987)の「解釈の努力」と通じるところがある。


・組織記憶(Organizational memory)に関する研究

 組織に必要なのは、組織のどこからどのように情報を
 引き出せるかを知ることであり、組織内外での相互作用を
 通じて絶えず組織記憶を発達させていく環境を整えること。

・状況的諸要素の中で、学習者は状況に応じて行動し、また
 状況に働きかけることで技能を獲得していく。もっとも顕著
 な例は、組織や共同体における他者との相互作用である。

 先輩や上司から与えられる仕事に従事したり、協働して仕事を
 行うことは、OJTとして効率的に技能を獲得できる機会である
 ことはいうまでもない。

・Lave & Wenger(1991)で示されているように、技能形成は
 学習者が身を置く組織や共同体における「参加」と密接に
 結びついている。

・Wenger(1998)共同体の中や外での実践を通じて、学習者が
 「布置 Constellation」言いかえれば「共同体の地図」を
 構築することが、技能形成に影響を与えるのである。

・コンピタンス=スキル+インテリジェンス+α

===

●第2部 事例研究

・調査目的は2つ
 
 1)どのように「スキル」と「インテリジェンス」の形成を
   行っているのか

 2)熟達者がどのようなコンピタンスをもっているのか

・掃除をしながら観察する

・マニュアル化の利点は、必要な時にいつでも参照できるという
 利便性、アクセス可能性(Accessability)にあると考えられる。

 知識や技能の「ありどころ」「蓄積場所」としてマニュアルは
 大きな力を発揮する。

 重要なのはそれを用いる人が自分の状況にあてはめ、実践して
 見ることでしか技能は形成されないということである。

・生協協同購入担当の職員は、自分の担当区域である現場にでると
 基本的には1人で全ての仕事をこなさなくてはならない。

○Yさんと一緒。

・失敗のリスクの少ないところから順に仕事を任せる。
 失敗のリスクという観点からカリキュラムが構成されている。

・模倣による学習の利点は、模倣をしているかぎりは、大きな
 失敗はないということ。

・自分で判断するということがインテリジェンスの形成に
 欠かせないこと。

 生協職員の技能形成にとって「放り出される」というのは
 非常に理にかなった方法であるといえる。

○面白いなー。放り出しによる技能形成。


・新人はブランドに「染まりきっていない」また先輩より若い
 感性をもっていることもあり、しばしばこれまでの製品には
 ないようなデザインを描いてくる。

 「新人は学ぶだけ」という徒弟制的な考え方に対して、新人
 の実践によって共同体の先輩も学ぶことができるという、
 新たな視点を提供する。

○組織個人化にもつながってくる。

・Orr(1990)の主張するように、全ての知識や技能を自分の中に
 持っている必要は必ずしもなく「自分の知らないこと、出来ない
 ことをどこの誰が知ってそうか、できそうかを知っている」
 ということがむしろ重要。

○「共同体の地図」構築 「組織記憶」の活用

・「共同体の地図」(Wenger;1998の言う「布置」)の構築。
 新人が自らの経験のなさを、他部門との協働によって補い
 また新しい製品につなげていくプロセスは、新人の技能獲得
 に対して有効な示唆を与えるもの。

・雑用に埋め込まれた技能

・雑用と技能の関係を全く示唆しないというのではなく、かと
 いって雑用の意味をいちいち指摘する時間もないだろうから、
 最初にその関係のみを説明し、技能の内容については新人に
 学びとってもらうのが現実的な方策。

○「解釈の努力」を促す

・組織に参加する手段として掃除
 役割をもって組織に参加できる。

・先輩の成員から見れば、技能の獲得および組織への参加に対する
 「障壁」を作っている。それを越えるための「対価」が雑用。

○面白い!「教えてやるんだから、雑用ぐらいしろ」って感じかな

・新人、先輩デザイナー双方に、技能の獲得において「雑用」が
 大きな役割を果たしていることが分かる。

 新人は雑用に携わることでそこに埋め込まれた技能を獲得し、
 同時に組織への参加を果たすことができる。

 先輩は「雑用」という対価を自らの技能を伝承することに対して
 求めるのである。

 雑用を技能伝承を促進する接点として捉える。

===

・技能形成を含めたすべての人材育成は「自学」のプロセスである
 (伊丹・加護野1993)

・これまでの人材育成の議論は、学校教育の延長上にあり、企業
 側の「教育」という視点が中心であり、学習者がどのように
 学ぶのかという視点が不足していたのではないだろうか。

 その一方、OJTの有効性を主張する研究は多いが、それは経験
 学習(Learning by doing)としての枠組みを示しているのみで
 あり、現場で技能形成を行う人々に対して「どのように技能
 形成を行うのか」という具体的な議論へはつながっていないのが
 現状である。

○確かに!

・本書では、学習者を主体とした「状況的実践」としての技能形成
 を、人材育成のあるべき姿として提示した。

・Wenger(1998)は、実践によって共同体の「布置」を構築すると
 表現した。

 この「共同体の地図」といえるものの構築が、技能形成に大きく
 影響している。

・教授者から学習者へと「教える」技能形成のモデルから、学習者
 が状況的実践によって相互構成的に学習のカリキュラムを形成し
 共同体の地図を形成していくといった「学ぶ」技能形成のモデル

・技能形成にはその技能へのコミットメントが重要。

○「威光模倣」や「競争意識」がカギになるかも。

・「現場への放り出し」は、状況的実践を軸にした技能形成に
 とって理想的な環境と言える。

・自分の技能だけでなく、他人の技能も把握して使い分けられる。
 これはホワイトカラーに必要とされる技能。

・技能形成は、結局自分でやってみること、状況の中での実践なし
 に形成することは不可能。

===
 

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