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2012年12月30日

若年者就業の経済学

若年者就業の経済学

太田 聰一 2010年

○内部育成重視が若年者雇用に及ぼす影響


(・引用/要約 ○関根の独り言)

===

●1章 若年雇用問題とは何か

・若年者の雇用環境の悪化は、日本社会に様々な問題をもたらす
 1)人的資本レベルが長期的に低迷する
   (技能や技術を最も効率的に吸収できる時期の無業状態)
 2)貧困の連鎖
 3)少年犯罪発生率の上昇
 4)自殺リスクの上昇
 5)年金制度の維持困難
 6)晩婚化、未婚化、少子化を促進

・若年者=15歳〜29歳

・若年正社員の仕事で失われたのは「よい仕事」(大企業の
 事務職、専門技術職、販売職)であり、増えたのは中小企業
 におけるサービス職という最も給与水準が低く、労働時間も
 長いものであった。

・フリーター数は、2003年をピークに減少傾向にあったが、
 2009年には再び増えた。

 フリーターは「不本意就職」の側面が強いので、景気が良くなる
 と減少し、景気が悪化すると増加する関係がある。

・1992年から2002年の若年無業者数の増加は、若年者が直面した
 雇用環境の悪化によってもたらされたと考えられる。

 しかし若い人の「就業意識」がそれらを悪化させているという
 意見も根強い。

 例えば「就業意欲が衰えたため」「こらえ性がなくなった為」等

・若年期が職業能力の開花にとって大事な時期であることを
 考えると、ニート期間が将来の獲得能力を低下させる可能性が
 高い。

・若年者が仕事をしたくなくなったから、フリーターやニートが
 増えたという見方は妥当しない。


●2章 若年失業のダイナミクス

・若年失業の特徴
 1)適職探しの期間であるため、自発的失業が多い
 2)入りやすく、出やすい
 3)中高年に比べて、高い失業率


●3章 「就職氷河期」がもたらしたもの−世代効果

・1990年代の不況期に学校を卒業した世代は、就職の間口が狭い
 時期にあたった為「氷河期世代」「ロストジェネレーション」
 と呼ばれ、その後も経済的に不利な状況におかれている

・高卒では不況時に就職した世代ほど、規模の小さい企業に
 勤めている可能性が高くなる

・一度の転職だけでは、世代効果が解消しにくい

・不況期に学校を卒業した世代は、不本意就職に陥りやすく、
 それゆえに離職傾向が高まると言える

・仕事の世界での自己研さんの機会すら与えられていない若者が
 「生まれ年」(これが卒業年をかなりの程度きめる)という
 本人の動かし難い要素によって人生を左右される理不尽さ

・賃金水準、就業形態、転職行動に世代効果があることが明らか


●4章 企業による若年の採用−なぜ新卒者が好まれるのか

・1990年代初頭はほぼ60%であった若年採用比率は、
 2008年には50%にまで落ち込んでいる

・規模の大きな企業では、自前で人材育成を行う傾向が強いため
 採用のうち若年の占める割合が高い

・新卒一括採用をおこなう理由
 1)社員の年齢構成を維持できる
 2)他社の風習などに染まっていないフレッシュな人材を
   確保できる
 3)定期的に一定数の人材を確保できる
 4)面接や選考を短時間で効率的に行いえる
 5)能力の高い人材を確保できる

・日本企業は、新卒正社員を自社内における長期的な人材育成の
 対象とみなしている

・自社内での人材育成を目指す企業は、若年層の採用を重視する
 傾向がある

 ベッカー(1962)「人的資本の理論」

 自社内での人材育成→企業内で形成されるスキル=他企業では
 通用しにくい「企業特殊性」の高いもの

・OJTによって企業特殊的なスキルのウェートが高まる

 若い方が訓練内容をよりスムーズに吸収できるとするならば
 新卒採用は極めて魅力的となる

・自社で訓練を行うことを前提とした労働者に対しては
 「自社の色に容易に染めることができるかどうか」と言う点も
 考慮材料になる。

・人材育成を重視する企業にとって、正社員として採用したいのは
 真面目で、教えたことを吸収するスピードが速く、定着性の高い
 労働者にほかならない。

○自社内人材育成を行えるのは、教えたい「正解」がある場合
 (例:T社)

・日本企業が雇用削減を行う場合には、その大きな部分を若年者
 の採用抑制に頼っている

・バブル崩壊後、多くの日本企業は自社の長期的な存続にすら
 自信を失ってしまい、将来への投資であるはずの若年正社員
 採用まで大幅に削減するようになった。

 将来の不確実性の増大に対して、雇用調整の柔軟性を確保する
 ために、非正社員のシェアを増やしていった。

 そのため、新卒者で正社員になれなかったものが、大量に
 フリーターになるという現象が生じたと言える

・不況期に若年採用が抑制されるのは、「それが最も容易に実行
 可能な人員削減策」であるから

・「内部育成のジレンマ」

 企業は内部で育成した人材が途切れないよう、従業員の年齢構成
 を最適なものに保ちたい。そのためには好不況にかかわらず、
 若年層の安定的な補充が求められる。

 その一方で、自社人材の育成が効果を上げるためには、長期雇用
 の維持が必要となり、不況期における人員調整の際には採用抑制
 をせざるを得なくなる。

・若年採用比率が高い
 1)雇用成長が高い(成長産業)
 2)企業規模が大きい(自社内人材育成を重視)
 3)臨時・日雇い労働者の割合が低い

・大企業では業務の分業化が進むとともに、スキルの企業特殊性
 が高まるので、自社人材の育成が重要となる。

・新卒採用数に影響を及ぼしているのは、企業規模。
 (規模が大きくなるほど、新卒採用が増える)

・中途採用数に影響を及ぼしているのは、業績変化と売上高。
 (業績好調な企業では、中途採用が増える)

・幹部社員(=新卒社員)の人数は、企業規模に依存

○企業規模が大きくなるほど、幹部社員の人数が多くなるので、
 新卒採用数が増える

 企業規模が大きくなるほど、分業化が高まり、スキルの企業内
 特殊性が高まるので、自社内人材育成重視となる。

 そのため若い新卒社員を採用し、長期雇用を前提に、OJTを行う

・1990年代以降の成長の停滞と成長期待の終えんこそ、現在の
 若年雇用問題の根源。

○企業側の不安

 右肩上がりの成長の終えん、将来の不確実性の増大
 既存社員を辞めさせることはできない

 →新卒社員の採用抑制

・日本企業が新卒者を重視する背景には、自社内人材育成により
 企業内特殊スキルを身につけさせることを重視する特性を反映

・不況期の日本企業は、若年者の採用を抑制するという雇用調整
 方法をとることが多くなる。

 長期不況の場合には、企業は「投資人材」としての若年正社員
 の人数を減少させる。

 これが「就職氷河期」を生み出した主因


●5章 労働者間の代替関係と若年雇用

・労働市場における割り当て現象 Rationing の発生
 =椅子取り合戦

・企業が特定の労働者のタイプを優先的に雇用すると、別のタイプ
 の労働者の就業機会が狭まる可能性が生じる

・世代間で職業分布の類似性が高まってきている
 
・従来は若年中心であった仕事に、中高年が進出してきている

・世代間の職業の垣根が低くなることで、仕事をめぐる競争が
 激化することも考えられる

・「置き換え効果」

 若年と中高年が雇用において代替関係にあり、何らかの理由で
 中高年の雇用が優先されることがあれば、若年雇用にマイナス
 の影響が生じる可能性

・「パラサイトシングル説」への反論(玄田2001、2004)

 若年層の就業機会は中高年の雇用保障の犠牲になっていると主張
 若者がかじることができるぐらい中高年の脛が太いのは、若者の
 犠牲のもとに、中高年の雇用が保障されてきたから

・中高年(45~59歳)の過剰感が強い企業は、新規正規採用比率
 が低くなっている(川口2005)

・置き換え効果の頑健性を示す研究が多い

・「インサイダー・アウトサイダー理論」
  (Lindbeck & Snower 1988)

 長期不況等で、インサイダー(既存労働者)の枠が小さくなる
 時は、そのしわ寄せがアウトサイダー(失業者、新卒者、転職
 希望者)に集中する

・置き換え効果の存在と存立背景を理解した上で、緩和策を模索
 していくという姿勢。

 もうひとつ可能なとりくみは、企業内のスキル継承の効率性を
 高めて、若年と中高年が「学び手」と「教え手」としてより
 補完的な関係を形成するよう 促進すること。

○M社での「教え合う風土作り」の取組みも参考になる


●6章 地域の若年労働市場

・若年の就業機会が地域によってかなり異なる

・地方では十分な量の仕事が無いことが、最も深刻な問題。
 全国一律の若年雇用対策は、各地域のニーズにマッチしない
 可能性あり。


●7章 教育と訓練−日本の雇用システムと若年者の育成

・日本企業における訓練の基軸は
 「仕事をしながらの訓練 OJT」である

・日本ではOJTのウェートが他の先進国よりも高く、
 そこで培われたスキルが企業特殊性が高いことから、
 労働者の定着性が高くなっていると理解されている

・2009年度「能力開発基本調査」によれば、正社員の訓練に関して
 OJTを重視する企業の割合は、7割。

・OJTがどのように遂行されているかについては、小池が詳しい

 効率的な訓練方法は、ベテランによるマンツーマン教育である。

 一つの作業ができるようになると、関連する他の作業に
 取り組ませる

 幅広いローテーションによるスキル形成が重要

 このような教育を進めるにあたって必要なのは、人的・時間的
 余裕である。

・実地方式によるOJTは、製造現場だけでなく、ホワイトカラー職 
 でも広く行われている普遍的な方法

 職場で生じている問題を解決するためには、実際に職場で働いて、
 上司や先輩のアドバイスに従いつつ、身につけることが重要

・スキル継承がスムーズになるよう報酬制度や人事制度を組み立てる
 必要性

・スキル継承のモデル分析 p220

 スキル継承、企業業績、若年作用は、深く結び付きあっている

・スキル水準の向上効果は「費用低下」と「補完」効果を通じて、
 若年採用にプラスの影響を及ぼす半面、「労働節約」効果という
 マイナスの効果も生じる

・効率的にスキル形成ができる企業ほど、訓練対象の若年者を多く
 採用するのでは

・新卒採用数の増加は、若年1人当たりの教育訓練投資料を引き上げる

・新卒大学生が、中小企業を敬遠する理由
 1)賃金が低い、福利厚生の格差(企業の大きさが報酬の高さを規定)
 2)大企業への就職の最大のチャンスが新卒時であり、
   中小企業に就職してから大企業に転職するチャンスが小さいため
 3)キャリアパスが不明確

・訓練受容性を巡っての競争

 労働者にとっては、自らの訓練コストが低い、あるいは訓練受容性が
 高いことをアピールする必要が生じる

 銘柄大学出身で、協調性と積極性を兼ね備えている人材こそが、
 最も企業が求めるタイプとなる

・2006年調査 半数弱の企業で若年正社員の退職に困っている

・転職希望が生じやすいのは
 1)十分に情報を得ずに入社してしまった場合
 2)会社の初期教育が十分ではなかったと判断している場合
 3)会社で相談相手がいない場合
 4)頻繁に休日出勤などがあって労働条件が厳しかったりする場合

・小池(1999)現代の生産職場で求められている技能は
 「匠の技」よりも「推理の技」

・学校で蓄積される基礎学力は、その上に企業内訓練による能力向上を
 開花させるための土台

・早期離職に対応するには、若年者が働きやすい環境を整える努力が必要

・新卒者の資質が低下したと判断する企業は、新卒採用ではなく、
 即戦力重視の中途採用や非正規従業員の活用への代替を模索する傾向

・大学が就職の「避難所」として機能している


●8章 若年雇用政策の展開−そのロジックと留意点

・企業で十分にスキルを身につけるチャンスの少なかった「就職氷河期」
 の若年層に効果的な職業訓練を行う環境を整備する必要がある

===

2012年12月28日

2012年10月〜12月の活動

2012年12月28日(金)

お世話になっている皆さまにお送りした近況報告メールの一部です。

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【近況報告】

今回は、2012年10月〜12月の活動について、
ブログへのリンクを中心に簡単にご報告します。

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●仕事

 研修は「指導員研修」「新人フォロー研修」「指導員フォロー研修」 
 を中心にお手伝いさせて頂きました。

 (昨年度のアンケート結果
 
  指導員研修 
   http://www.learn-well.com/blogmanabi/2012/07/2011ojt.html

  指導員フォロー研修
   http://www.learn-well.com/blogmanabi/2012/09/2011ojt_1.html )


 詳しくは書けないのですが、研修以外では、ある会社様での教育体系構築に
 今年度の初めから関わらせて頂いています。

 修士論文を書きながらだったので、スケジュール的にはきつかったですが、
 非常にやりがいのある仕事なので、ぜひ良いものにしていきたいと思っています。


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●大学院


 3年間通った大学院ももうすぐ終わります。

 1月末まで授業とゼミがあり、
 3月上旬にはゼミ合宿、3月末に卒業式です。

 早いもんですね〜。


1)授業「日本文化論」

 仕事や研究とは直接関係ない授業を毎学期1つはとるようにしています。

 今学期は江戸研究で有名な山本博文先生の「日本文化論」です。

 新渡戸稲造の「武士道」をテキストに、歴史TVなども見ながら、
 武士の特質を中心に考えていきます。

 留学生も多いクラスなので、意見交換が楽しいです。

 http://learn-well.com/blogsekine/2012/12/2012_6.html


2)中原ゼミ 英語文献

 2012年冬学期の中原ゼミ英語文献は、
 
 The Oxford Handbook of Organizational Socialization 2012
 オックスフォード ハンドブック「組織社会化」2012 です。

 組織社会化研究の最新レビュー論文集です。勉強になります。

 http://learn-well.com/blogsekine/2012/11/2012socialization.html


3)人材育成学会での発表 12月9日

 「新卒社員の組織社会会を促すOJT指導員と
  職場メンバーの支援行動に関する実証研究」

 の発表をさせて頂きました。
 修論のネタになるコメントも頂きありがたかったです。

 大学院卒業後も、人材育成学会での発表は
 隔年程度でも続けていきたいと考えています。


4)修士論文 第1稿 12月17日

 「新卒社員の組織社会化を促す
  社会化エージェントの役割分担に関する実証研究」

 修論第1稿を早い段階で書きあげられたのは、嬉しかったです。

 それもこれも調査にご協力下さった方々と、中原先生を始めとする
 ゼミメンバーのご支援のお陰です。どうもありがとうございます。

 今は、1月9日提出に向けて、修論第2稿を鋭意執筆中です!


5)最近読んだ本

 日本の職業教育―比較と移行の視点に基づく職業教育学
  http://learn-well.com/blogsekine/2012/12/post_373.html

 「失われた20年」と日本経済−構造的原因と再生への原動力の解明
  http://learn-well.com/blogsekine/2012/12/20.html

 高品質日本の起源−発言する職場はこうして生まれた 
  http://learn-well.com/blogsekine/2012/12/post_375.html


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●家族

 一昨日から、長女(小4)と次女(小1)は、友達と一緒に
 「雪だるま合宿」に参加しています。

 新潟の民宿に泊まり、雪で思いっきり遊ぶというものです。
 高校生から小学生まで異年齢で色んな事をやるようです。

 3泊4日の長丁場で、しかも初めての参加なので、親としてはちょっと
 不安もありますが、きっといい経験になるでしょう。
 帰ってからの土産話が楽しみです。

 家では、長男(3歳)が、おもちゃや、父ちゃん、母ちゃんを一人占め
 状態で楽しんでいます。


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●地域

1)とうちゃんずで「子ども祭り」

 新しく参加してくれた父ちゃん達と、保育園の子ども祭りに参加しました。
 父ちゃんだからできる、身体を使った遊びが中心です。

 準備段階から飲み会まで盛り上がり、楽しかったです。

 「地元の人との関係」「婿さんの苦労」「育児の悩み」など、
 普段話せないようなことも話せる貴重な集まりになってきた気がします。

 http://tokigawa-machi.seesaa.net/article/301213723.html


2)ときがわ町で「プレーパーク」作り

 里山で子供達を遊ばせる「プレーパーク」の企画を、
 町近辺在住の方々と練っています。

 以前から父親仲間と「やりたいね」と話してきたことだったので、
 少しずつ話が具体的になってきているのが嬉しいです。

 
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【今後の予定】

 年末は、12月28日(金)まで仕事をし、
 年明けは、1月4日(金)からスタートします。

 ただ修論提出が、1月9日(水)なので、年末年始も修論執筆は続けてます。

 通常、年末年始に行っている「一人合宿」も、今年は修論提出後の
 1月中旬に行います。

 「一人合宿」の後、皆さんに、2012年のふり返りと、
 2013年の目標についてご報告します。


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長文に最後までお付合い頂き本当にありがとうございました。
これからも時折こういった形で近況報告等をさせて頂けましたら幸いです。


お陰さまで、会社も8期を無事終了することができました。

何とかやってこられたのも皆さんのお陰です。本当にありがとうございます。
今後ともご指導ご支援のほどよろしくお願いします。

よい年をお迎え下さい。

2012年12月24日

高品質日本の起源−発言する職場はこうして生まれた 

高品質日本の起源−発言する職場はこうして生まれた 

小池和男 著 2012年

○「査定」を通じた技能向上。
 適正のある人に高度なOJTの機会を与える。

===

・一国の国際競争力の枢要な要素は、職場の中堅層の働き。

・企業の国際競争力の根幹にかかわる事柄へ発言していく方式が
 いつごろから日本で見られるのか?

・海外日本企業調査(小池2008)の最も重要な結論は、職場の労働者の
 発言が、その企業の効率に大きく寄与していることであった。

・本書における3つの指標:
 1)品質への発言
 2)定期昇給制の出現
 3)労働組合の発言

●第1部 品質への職場への発言

・戦前期日本の技能は、企業特殊的ではなく、かなり一般的で技術の内実を
 もつ技能をそれなりに形成し、国際競争を勝ち抜いてきたよう

・日本では、科学的管理法のいう標準化を、米よりもはるかに広い範囲に
 適用し実施した

・職場調査で用いる方法は、まず職場の最末端単位(10人前後の組織)を
 観察する。

 その職場のベテランに「普段の仕事」と「問題」「変化」について聞く。

・問題=品質不具合、設備の不具合
 変化=人の変化(欠勤した人の代わりができるか、新人に教えられるか)
    製品、生産量、方法の変化

・1930年代前半、戦前最盛期の日本綿業が、英綿業を追い越した理由は、
 低賃金ではなく、製品の品質が高かったからだという仮説を提示したい。

 その品質の良さは、職場の生産労働者の高度な技能、それに基づく発言
 に幾分かよっているという仮説。


●第2部 定期昇給制の出現

・定期昇給は、激しい個人間競争のある査定つきであることを強調したい

・定期昇給は、上司の査定により、対象者の技能向上も反映していると
 考えられる

・日本にはかなり前から労働者の創意工夫を活かす方式が職場にあった
 (のではないだろうか)

・江戸期のホワイトカラーにも定期昇給があった

・生産労働者への定期昇給制の適用が、日本では西欧よりはるかに早く
 産業化のむしろ初期からあった。

 これは、生産労働者の技能を中長期に向上させていく方式が、より早期に
 根付いたことを意味している。


●第3部 知られざる貢献−戦前昭和期の労働組合

・日常の労働組合の活動を明らかにしたい。

・組合があることで、どれほど組合員の暮らしを支えることができたか。

・労働組合ができたことで、ケンカ、欠勤が減少し、風紀が良くなった事例

・企業は仮に終身雇用を標榜しても、すべて面倒を見ることはできない。
 働く人の自助努力は、個人の力だけでは足りず、自分達の組織を作り、
 働かせていくことが肝要。そうしたことを積み上げてきたのが、総同盟の
 組合ではなかったか。

・戦争で働き盛りの男性が応召された後、いかに家族の暮らしを支えるかが
 労働組合の抱える大問題であった

・高賃金国が、世界市場で生き抜くには、高品質の製品、サービスで勝負
 するほかない。そして高品質を生み出すのには、職場の中堅層の発言こそ
 重要である。

・高度な技能の形成にもっとも肝要な方法は、OJTである。より高度な仕事に
 つき、高度な経験を積む。しかし、高度な仕事には限りがあり、誰でも
 そこにつけるわけでない。選抜が欠かせない。

 候補者の技能レベルが低いと、高度な仕事のOJTは上手くいかない。
 OJTの機会を提示するのに、候補者の技能や適性の認定が必要になる。

・アメリカでは、差別を最小にするために、先任権方式とってきた。
 入社年月日順に、賃金のより高い仕事へ昇進する。
 (ただし、大卒ホワイトカラー層には、この方式をとってない)p358

・日本では、差別を覚悟して、技能や適性のより高い候補者にOJTの機会を
 与えてきた。

 年功制と言われてきたが「査定」を欧米よりもはるかに広く多くの人に
 適用し、柔軟に技能を高めてきたのが、1920年代の日本であった。

===

2012年12月23日

「失われた20年」と日本経済−構造的原因と再生への原動力の解明

「失われた20年」と日本経済−構造的原因と再生への原動力の解明

深尾 京司 著 2012


○データに基づく処方箋:答えはシンプルなのかも

===

・1991年にバブル経済が崩壊して以来、日本経済は20年以上にわたって
  停滞してきた。

・日本にとってまず必要なのは、20年にわたって続いてきた貯蓄超過問題
  を克服するために、民間の消費や設備投資を回復させること。

 消費拡大のためには、雇用拡大による家計の不確実性を減少させること

・日本の労働時間あたりの実質生産(労働生産性)は、米国の6割弱であり
 まだまだキャッチアップの余地が残されている。

 大きな生産格差が残っている事実は、日本が豊かになる大きな可能性が
  残されているということ p70

・1990年代以降、人口一人当たりの労働時間が大幅に減少

・日本は、ICT投資や無形資産投資について、他の先進国に後れをとっている

・TFP(全要素生産性)上昇を加速する上では、ICT投資を促進する政策が有効

・日本企業は、研究開発支出を行う一方、企業の経済的競争力を強化する投資
 (組織改編への支出や、労働者をオフ・ザ・ジョブ・トレーニングするため
  の支出)が特に少ない

===

日本の職業教育―比較と移行の視点に基づく職業教育学

日本の職業教育―比較と移行の視点に基づく職業教育学

寺田 盛紀 著 2011年

○企業内教育の変遷が良くわかる
 (ドイツの職業教育との比較)

===

・1998年 大卒就職者が高卒就職者を上回った

・高卒求人の低下につれて、
 大卒以上に高卒「無業者率」が増大

・学校が就職オリエンテーションと就職あっせんを行う
  のが就職の日本的メカニズム

●第9章 企業における人間形成と教育
     −OJTの職業教育学的検討

・企業内教育について、労働経済学、経営学、産業心理学、
  産業社会学だけでなく、教育学方面からのアプローチ
  も必要

・労働省職業能力開発局『民間教育訓練実態調査報告書』1986 p3  
 によるOTJの定義

「就業中に上司や先輩が部下に対して種々の教育的配慮を加えつつ
 その仕事に必要な知識・技能を習得させる教育訓練」

・OJTは職場ないし職務に即した教育訓練

・OJTは1940年代以降の管理・監督者に対するアメリカ式定型集合
 訓練(CCS、MTP、TWI、JST)の普及後、1960年代に一般従業員の
 教育訓練様式として、企業内教育体系整備の中に位置づけられた。

 OJTが制度化された理由として、
 1)米国製OffJTに対する批判
 2)イノベーションに好都合
 3)新規学卒者の一括定期採用による教育ニーズ
 4)終身雇用により、企業内での子飼い養成を志向しやすい
 5)反知性(理論)主義 などによる

・1970年代以降 内部労働市場論の登場により、OJTは理論的に補強される
  ことになる。

 労働市場の内部化の為には、高学歴者の採用と企業内教育訓練の整備が
  成立条件となり、経済的優位にたっていた日本をその典型的な国として
  内部労働市場論者が評価。

・1980年代後半には、「脱OJT」「OJTからOFFJTへ」と主張され始めた。
 ホワイトカラーないし技術者層の人材開発戦略としてOFFJTが位置づけ


*参考 https://twitter.com/nakaharajun/status/278696025307369472

 企業内教育の振り子(Moving Pendulum) :
 
 1940年代、戦後、国策として米国式定型トレーニングが輸入。
 1960年代、高度経済成長下においてOJTが人事制度として
      本格的に制度化。#nakaharalab

 1980年代、脱OJT論、MBA教育の隆盛。
 1990年代、ポストバブル期、OFF-JT・OJTの衰退。
 2000年代中盤以降、OJTルネッサンス。#nakaharalab


・OJTの教育方法

 定型訓練に含まれる部下育成の技法は、ほぼ例外なく、ヘルバルト学派の
  段階教授法を基に、1910年代以降第二次大戦にかけてアメリカで開発
  された職業分析(Trade and Job Analysis)による課程編成を通じて
  確立された。

・1948年に導入されたTTT(Teaching Teachers to Teach)方は、ヘルバルト
  学派チラーの分析、総合、連合、系統、方法という5段階教授法に対応
  させて、準備、提示、応用、試験、討議批評という5段階を定めている

・TWIは、ヘルバルトの明瞭、連合、系統、方法という4段階教授法と
  職業分析を通じて、アレンにより具体化されたもの。

・TWI、JIによるOJTの教育方法
 1)習う準備をさせる(課題の提示)
 2)作業を説明する(説明、演示)
 3)やらせてみる(間違い直し)
 4)教えた後を見る

・1960年代後半以降、企業で集中的に行われたOJTの問題点
 1)上司が常に良き指導者とは限らない
 2)計画的訓練が難しい
 3)業務遂行と訓練実施の両立が難しい

・OJTをいかに系統的に編成するか、カリキュラム化するかが、
  企業内教育の課題


・若者の早期離職 大卒者は近年40%に近付いてきており、筆者は
 「7.5・4現象」と呼んでいる。

===

2012年12月13日

2012年冬学期 授業「日本文化論」

大学院最後の学期、授業「日本文化論」を受けています。

普段の仕事や研究の喧騒を離れ、時がゆっくりと流れているような授業で、
私はとても好きです。

さし障りのない範囲で、授業内容をシェアします。

===

●第1回 2012年10月10日


・日本文化とはどういうものか考えてみよう

 日本の外交体制がどういうものだったのか

・NHK TV「さかのぼり日本史」山本先生が監修、出演
 「外交としての鎖国」

・番組 1回目

 1793 日露交渉 松平定信 鎖国政策の遵守 これがその後の外交の基礎

 外国の情報を、オランダ風説書等から得ていた

 「武威」が幕府の成立基盤

・番組 2回目

 1720 唐船打払い令 徳川吉宗 密貿易を取り締まる

 薬を輸入→原料を栽培→国産化 自立経済 輸入に頼らず国内で回す
 鎖国により、国産化が進んだ とめたことで国内が育った

●第2回 10月17日

・番組 3回目 

 1640 オランダ商館を出島に 徳川家光 キリスト教国の排除
  
 ポルトガル(カソリック:貿易+宣教)を追放 侵略の恐れ
 オランダ(プロテスタント:貿易のみ)商人として「将軍様の御被官」

 日本からアジアに出て行くと、ポルトガル、イスパニアから報復される

 キリスト教の気味悪さ 殉教 死体の一部を聖遺物として扱う
 一向一揆と違い、統制しきれない怖さ

・番組 4回目

 1621 貿易統制 徳川秀忠 大名が力をつけないように

 家康の朱印船貿易時代の自由さは無くなった 

 武器輸出を禁じた 兵員や奴隷のアジアへの販売も
  サムライがアジアで傭兵になった(タイでの山田長政)

・鎖国による平和(外国との戦争が無い状態)が国富をもたらした

・鎖国はしていたが、オランダ、中国とはつながっていた
  科学者は、ヨーロッパの科学技術をオランダ語(蘭学)で学び、
  オランダが最新では無いと分かると、英語で(洋学)学んだ。

 朝鮮の鎖国政策は、全て閉ざしたものであった。

○授業に、台湾、韓国、エジプトから来た人もいて面白い


●第4回 (3回は欠席) 10月31日 

・武士道はマネジメントのマニュアルぽい (理系院生の意見)

・侍(さぶらう)=貴人に仕える 

・武者:職能 侍:存在

・武士らしい武士=侍

・封建制が無いと、武士道はなりたたない 上下

・神に仕える僕=上に仕える忠義 

・キリスト教的メンタリティー


●第5回 11月7日 

・親の為の孝 切腹はダメ 自分の体を傷つける

・儒教 忠(日本)孝(中国)

・名声は、明治から追及されはじめた
 「武士道」は、明治の青年が言っているなというところもある

○新渡戸が説明した「武士道」以外の武士道を知るためには
 (武士道は明文化されていないから)


●第6回 11月21日

○「武士道」担当レジュメ ↓

レジュメを見る

・韓国の徴兵制やキリスト教の話 (韓国人留学生から)

・騎士道と武士道は、封建性もあり比較しやすい

・戦士階級には道徳が必要


●第7回 11月28日

・葉隠 「武士道は死ぬことと見つけたり」というのは、
 江戸時代の特殊な文脈で言われたこと 

・無謀な行動をしたけれども、腰ぬけではない つまり恥ではない

・武士は責任を問われる 

・徳川吉宗が法を整備した


●第9回 12月12日 (12月5日は仕事で休み)

・赤穂事件 12月14日の打ち入り

・喧嘩両成敗が天下の大法であった
 
・しかし、綱吉は浅野にのみ、切腹を命じた

・公正でなかった処分(片落ち)

・忠義や自己犠牲というよりも、
 武士の面子を重視した結果とも言える


●第10回 2013年1月16日 (風邪で休み)

・岡倉天心 「茶の本」 

●第11回 1月23日 (授業最終日)

・津山藩洋学の群像 宇田川家、箕作家、津田真道

・洋学 「横を縦に」 (海外文献を日本語訳に)

・ハングリーさが無い幕臣よりも、田舎の藩士のほうが、
 人生を切り開くために、学問(翻訳)で身を立てようとした。

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●特別編 3月12日(火)14時〜16時 「日本人とは」 

・授業を受けて、各自が「日本人とはどういうものか」を、
 A4一枚程度のレポートとして提出。

・それをもとに意見交換。