『戦略サファリ:戦略マネジメント・ガイドブック』

お薦めの本

『戦略サファリ:戦略マネジメント・ガイドブック』
ヘンリー ミンツバーグ (著), ジョセフ ランペル (著), ブルース アルストランド (著)
斎藤 嘉則 (翻訳) 1999年

○戦略論を10スクールとして提示。
  ポーターさんにはやっぱり手厳しい。

(・要約 ○関根の独り言)
===
・学問としての経営学が未成熟な日本においては、経営学、ことに戦略と
 いうと、ポーターそのものであると捉える傾向が強い。
●サファリツアーのねらいと構成
・盲目の男たちと象の寓話
 
 一部分を捉えただけで、全てを分かった気になる
・戦略の5つのP:戦略=
 Plan, Pattern, Position, Perspective, Ploy(策略)
●デザイン・スクール
・基本モデルは、アンドルーズの「SWOT分析」
・戦略策定と実行を分ける:思考と行動の分断
 
 これは教室でのケーススタディー学習には好都合。
●プランニング・スクール
・目標と戦略をわけようとする
・CEOは戦略プランを設計せず、むしろ承認を与える役割。
●ポジショニング・スクール
・戦略形成プロセスとは、分析的な計算に基づいて、包括的なポジションの
 中から、一つを選択すること。
・意味が明確な格言は、意味が明確な他の格言と矛盾する可能性がある。
・ポジショニングスクールは、まさにコンサルタントの為に仕立てられた。
・ポーターのいうような戦略の特定化は「柔軟性を損ね、組織の視野を
 狭めてしまうのではないか」とミラーは疑問を提示。
・ポジショニングスクールが伝えたかったのは、現場に出て学べ、ではなく、
 机に向かって計算しなさい、ということであった。
・ポーターは「日本企業にはほとんど戦略がない」としているが、
 ミンツバーグらは「ポーターこそ、日本企業から戦略を学ぶべき」
●アントレプレナー・スクール
・上記3つは「規範的スクール」
 ここからは「記述的スクール」
・中心となる概念は「ビジョン」リーダーの頭の中で創られ、または思い
 描かれているメンタルな戦略の表現。
・戦略的思考とは:
 前を見る、後ろを見る、上から見る、下を見る、横を見る、越して見る
 全体を通して見ること。
・ベニス曰く「それが本当にビジョンなら、忘れはしないだろう」
・戦略はリーダーの頭の中に存在する。それはパースペクティブであり、
 長期的な方向性に対する感覚であり、組織の将来像でもあるのだ。
●コグニティブ・スクール
・起業家の心の中を分析することによって戦略形成のプロセスを解明しよう
 とする
・意思決定時のバイアス:
 裏付ける証拠を探す、一貫性の欠如、保守性、新情報の優先、
 思いだしやすさ、釘つけにする、相関の幻想、選択的知覚、逆行性、
 成功と失敗の理由、楽観主義、希望的観測、不確実性の過小評価
・戦略を公にすることで、戦略の変更に対する心理的な抵抗が生まれる
・知識を系統づける心的構造(フレーム、スキーマ、コンセプト、メンタル
 モデル等の呼び名で知られる)の存在が、戦略的認知には不可欠。
●ラーニング・スクール
・創発的戦略と組織学習が主要テーマ
・ストラテジスト(戦略家)は、時の経過に従って学習する。
・問題の本質は、戦略策定と実行を分けてしまうこと、つまり思考と行動を
 切り離すことにある。
・ワイクの言うEnact(想造)は、React(反応)への対比
・知識創造企業において、特に重要なことは、暗黙知を形式知に変換する
 ことであり、そこではミドルマネジャーが重要な役割を果たす。
・ラーニングスクールは、合理的な計画性と上手くバランスをとるもの
・学習の注意:
  日常業務も効率的に行う必要性、集団志向、
  エスカレートするコミットメント、高くつく
●パワー・スクール
・パワー=影響力の行使
・組織における政治の世界:
  最も重要な意思決定は、限られた資源の配分に関わること。
・政治のベネフィットとして、相互チャネルの提供がある。
●カルチャー・スクール
・ある組織を他の組織と区別するものが「カルチャー」
・マッキンゼーの7S
・企業は、市場の不完全性から、その優位性を導き出している
・ルメルト曰く「もし2人の学者が同じアイデアをもっていれば、そのうちの
 一つは余計である」(同じことを違うラベルで言いたがる)
●エンバイロンメント・スクール
・組織では無いもの全てが「環境」
・条件適応(コンティンジェンシー)理論から派生。すべて「何か次第」
●コンフィギュレーション・スクール
・戦略はパターンであり、時間の経過に伴い一貫性がなくなり、矛盾がでる。
 つまり、それは全てに通用する総合的な戦略はないということを意味する。
・戦略だけでなく、組織構造はまた、流行にも従うのだ。
・ミンツバーグの「変革キューブ」戦略と組織、両方を変える必要性。
・全ての理論は間違いである。現実は常にもっと複雑なもの。
 しかし、マネジャーは欠点のある理論の中から選択しなければならない。
○だからこそ、ポーターさんの3つ「差別化」「コスト」「集中」は分かりやすいし、
  それこそ「選択」につながる。
 うちみたいな小企業であれば、ポーターさんで「選択」(→選択肢は「集中」)
 しておいて、動き始めたら「学習・修正」というのが現実的かも。
●新たなるパースペクティブ
・必要なのは、整然とした理論ではなく、優れた実践なのだ。
○戦略的に考えるというのは「多方向から見る」こと、というのが面白い!
===

投稿者:関根雅泰

コメントフォーム

ページトップに戻る