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2014年02月10日

「経営理念」

最近読んだ「経営理念」に関する文献。

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『経営理念の浸透:アイデンティティ・プロセスからの実証分析』

 高尾義明・王英燕 2012年


・個人によって経営理念についての態度や捉え方が異なっている可能性がある。

・個人における経営理念浸透は、組織内他者の理念浸透から影響を受けている
 と考えられる。

・本書の目的の一つは、理念の浸透の程度を定量的に測定する方法の開発。

・2008年~2010年 計5社での調査

・金井(1986、1997)は、Bandura(1977)の社会的学習理論を、経営理念の
 浸透に応用し、観察学習モデルを提示。組織成員が経営トップやミドル
 マネジャーの日常行動を、一種のモデル(手本)として観察し、それらを
 手がかりに、抽象的な経営理念を行動レベルに解釈していくというメカニズム

・金井(1989)のピアディスカッションによる「気づき」の共有を通じた新たな
 意味の発見の議論

・本書は、個人における理念浸透を研究対象とする

・経営理念は、意図的に提示された組織アイデンティティーの一部。

・企業にとって、自己存在を問い直すことは不断にある。

・「組織に参加する」のが欧米的。「組織に所属する」のが日本的。

・経営理念の浸透は、組織アイデンティティと個人アイデンティティの融合。
 「情緒的共感」「認知的理解」「行動的関与」の3次元で浸透度を測る。

・経営理念は、抽象的な文言から成り立っており、矛盾する複数の解釈の
 可能性を含んでいることから、構成員が自ら理念の意味を吟味し、主体的に
 理解することが肝要。

・認知的理解を維持するには、理念に関するエピソードや物語が、組織内で
 語られ、理念と一貫したアイデンティティを喚起できるような状況的手がかり
 を、継続的に表出し続けることが重要である。

・理念への行動的関与を高めるためには「高水準の共感をできるだけ維持
 しながらも、自社の理念とは何かをしっかりと従業員に理解してもらう」
 ことが肝要となる。

・従業員それぞれが理念の意味づけをしていけるような理念浸透活動を
 積極的に推進することが必要。

・理念のことを自分の言葉でとらえたり、理解したりするといった、組織成員
 個人の主体背を重んじた取り組みも必要。

・理念に対して反発する社員もいれば、理念との距離を保とうとする無関心
 社員も存在する。

・社会心理学での「重要な他者 significant others」という概念

・個人が重要な他者の目から見る自分の自尊心を高めようと努力し、重要な
 他者との共通のアイデンティティを獲得するのは、他者の目から見られる
 自分を高める方法の一つ。
・観察学習による理念浸透プロセスが生じやすいのは、上司がモデルとなった
 場合である。

・「外集団」にカテゴリー化された上司に対しては、個人が「我々の仲間の
 一員」との意識を持ちがたく、上司によって取り入れている理念的カテゴリー
 も認めたくないという心理が働く。
・経営者が、従業員に対して直接説明を行うことにより、社員の理念に対する 
 理解や共感を高めることができる。

 また、経営者に関する物語や伝説が社内で伝承されている場合、そうした
 エピソードを通じて理念への情緒的共感や認知的理解が高められることも
 ありうる。

・経営理念の浸透が特に問われるのは、難しい問題に直面する場合である。

・上司の理念浸透と個人の理念浸透は、5社すべてにおいて正の関係となった。
 上司は、個人の理念浸透において「重要な他者」であり、かつ「内集団」に
 カテゴライズされているとみなすことができる。

・カスケード式の研修が有効。最も上位の階層が最初に研修を受け、次に研修
 を受けた上位者層が、次の段階の階層が受講する研修の講師役を務めると
 いうことを繰り返していくことで、全社的な理念の浸透を図る。

・「理念の教育・アピール」と「理念に基づく行動評価」は、理念浸透施策と
 しては性質が異なるもの。

・理念の教育、アピールの一つとして、管理職や一般社員に対して研修の機会
 を設け、そこで理念をいかに実践するかということを議論することを通じて
 集団的な意味づけを行っていくことができる。

・理念に基づく行動評価により、人々はどのような行動が社内で評価されること
 を知り、組織が何を重視しているのかを学習していく。

・社員の組織成員性が低ければ、幅広く教育、研修を行うことによって、
 理念に対する理解を深めて、理念浸透を図ることが重要となる。

 こうした研修への参加機会を与えらることが、組織成員性を高める効果を
 もつことも考えられる。

・職場で理念への関心が高い場合には、どのようなことが理念の実践になるかに
 ついて、具体的に社員が語り、議論する機会を設けることなどが考えられる。

・理念浸透を投入することによって、最もモデルの説明力が向上したのは
 組織市民行動3次元のうち「自発的関わり」であった。

・従業員の自発的かかわりを高めたい会社であれば、理念浸透のプロセスに
 おいて理念への理解を深めるとともに、理念を実践する行動がどういうもの
 であるかをより具体的に従業員に提示することが大切。

・理念の内容が、直接的に革新志向に関係したものであれば、認知的理解を
 高めることで、個人の革新行動を高めうるが、革新志向に直接関係するものが
 含まれていない場合には、行動的関与を高めることを通じて、個人の革新行動
 を高めることが可能であることが示された。

・サービス業での調査が望まれる。

○この本、面白い! 理念浸透とは何で、どのように浸透していくのか。
 量的調査に基づいた実証研究。某社様でのプロジェクトに活かせそう!

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『経営理念:継承と伝播の経営人類学的研究』

  経営理念継承研究会 著 2008年

・理念は、その組織が何のために存在しているのかを、社会というスクリーンに
 映し出した姿のようなもの。

・学術の世界は、自然科学(natural science)社会科学(Social science)
 人文(Humanities)の3つの分野からなるが、本書では経営理念に対し、
 人文的(哲学、宗教学)なアプローチをとる。

・文化の諸所の決まり事をよく解釈し身に着け、自己拘束を増した人ほど、
 さまざまな場面で自由にふるまっているように見える

・経営理念という公式ルールの下に、ローカルルールとしての経営戦略が存在。

・経営人類学の視点:「生活共同体」としての企業、
 「現象−解釈(記述)−帰納」という分析スタイル

・京都府綾部の郡是(グンゼ)

・近江兄弟社 ヴォーリズは、マッカーサーと近衛文麿の会見の橋渡しをした

・再建しなくてはと強く思った理由は、理念や創業者の姿勢への尊敬心

・経営理念浸透のメカニズムは、宗教財団の運営に類似。

・物語が、宗教にとって重要な意味をもつのは、それが記憶に残る効果的な
 メッセージの伝達方法であるから。

 物語のパターン:出発、試練、帰還

・組織規模 150の法則 

・掃除は、良い社風づくりに最適。

・3名の掃除指導者:鍵山秀三郎、小山昇、熊谷直幸
経営の掃除道4流派

・名前付け(ネーミング)に再春館製薬のユニークネスが見られる。
 組織のメンバーは、それを日常的に眼にし、耳にし、実際に使うことに
 よって、名前に込められた思いを自分のものとして内在化する。

・経営理念は、経営者の個人的な経営信条を示す理念だり、社内向きで 
 トップダウンの特徴を持つ。

 企業理念は、組織の成員全員が共有すべき基本的価値観を示す理念であり、
 社内外向きに伝えるもの、ボトムアップ、共有といった特徴を持つ。

・旭山動物園の神髄は、動物園の存在意義や理念を常に問い続け、その実現に
 向けた真摯な取り組みを組織的に実践し、発展させようとする姿勢にある。

・動物たちの退屈しのぎに、来園者の動きをうまく利用

・経営理念は、イデオロギー。経営風土は、ヘゲモニー。

・ヤオハン創業者の和田一族は、「生長の家」の信者。

・従業員に対する影響力は、経営風土が、経営理念より、上位を占める。

・「長くて一年、短くても一年」
・経営理念とは、その社会の伝統や文化、宗教や基本的価値観に深く
 根ざしているものであり、それが創業者の哲学や事業や企業の在り方という
 通路を通って、湧き上がってくるものなのではないか。

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●経営理念はパフォーマンスに影響を及ぼすか
  −経営理念の浸透に関する調査結果をもとに

  高巌 2010

・共分散構造分析の結果

 「共感」→「認識」→「行動反映」

 「上司の姿勢」→「共感」「行動反映」

・1)理念への共感をまず醸成
 2)上司の経営理念に対する姿勢をどのように変えていくか

・研修をはじめとする「組織的施策」は、「理念の内容認識」および
 「上司の理念への姿勢」に影響を及ぼしている

・組織的施策が、理念への共感を高める活動になっているか確認する必要あり

・組織に対する情緒的なコミットメント(組織としての一体感)が、経営理念
 への浸透において重要な役割を果たしている

・上司の言動は、浸透施策(教育訓練)によって大きな影響を受ける。

 経営幹部などの上位階層から順に研修を行っていくカスケード式の研修が有効

・危機はチャンス

・ある部門での浸透が進まない場合は、主な原因はその部門長にある。

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●経営理念が経営意思決定に与える影響に関する一考察

  柴田仁夫 2012年?

・経営理念とは、Corporate PhilosophyやManagement Philosophyなどの用語が
 それにあたり、日本では「ミッション」「社是」「モットー」「経営方針」
 などとして経営の規範や方向性を示すことが多い。

・51社に対する質問紙調査の結果、経営者が経営意思決定の際に最も重視する
 のは、経営者倫理や企業倫理ではなく、法令順守・コンプライアンスであった

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