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『Transfer of Learning in Organizations』

『Transfer of Learning in Organizations』

K.Schneider ed. (2014)

○主にヨーロッパでの研究を集めた「研修転移」の最新本。
 

(・要約 ○関根の独り言)

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Ch1 Introduction

・本書では、組織での学習転移の保証と測定に関する
課題をカバーする。

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Ch2 Transfer of Learning in German Companies

K.Schneider, M.Paltz, and H.Stauche

・Krag(2006)は、Baldwin and Ford(1988)のTransfer process model
 転移プロセスモデルを、120名の研修受講者に対する調査において
 実証した。

 転移モデルにおける「学習者」「研修デザイン」「職場環境」が、  
確かに学習結果に影響を及ぼしていた。

 また「参加者の興味」「上司の関与」「講師や同僚による
 フィードバック」等も転移に影響を及ぼしていた。

・Kurtz and Janikowski(2008)は、80名の研修受講者と
 10名の上司に対する調査により、Transfer barriers転移を阻む壁
 があることを明らかにした。

 「客観的な定義、明確さ、管理の欠如」
 「変化に必要な知識の欠如」
 「従業員自身がコントロールできると思えていない」
 「フィードバックがない」等が、それらの壁であるとした。

・本稿では、ドイツの企業107社を調査し、転移プロセスが
 どのように評価されているのかを明らかにする。

・研修後の転移促進?が最も行われている(72.9%)

・転移促進の方法として、下記が行われていた。

 研修前:需要(受講者のニーズ)分析、期待調査
 研修中:ケーススタディー、学習目標管理、行動計画、
     Learning tandem(二人での学習)
 研修後:学習内容と適用の記述、コーチング、学習目標の評価、
 フォローイベント

・転移評価の方法として、下記(一部)が行われていた。

 研修前:上司評価、テスト、自己評価
 研修中:第三者評価
 研修後:第三者評価、自己評価

・研修転移の確保が有効だと考えていても、
 それがその適用にまでは結びついていない

・研修転移、評価の方法は明らかになったが、まだまだそれらの
 適用は、不十分であり、効果的なものとは言えない。

○う〜ん、原文の理解不足の点はあるけど、

 要するに、各社がどのような研修の転移促進方法と、
 転移されたかどうかの評価方法を行っているかの調査。

 ただ、まだそれらは不十分なものが多い、ということかな。

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Ch3 Enablers and Inhibitors of Learning Transfer
from Theory to Practice

K.Bouzguenda

・本稿では、学習転移をシステムアプローチの観点から分析する

・学習転移は、人生のすべてに関係する:社会化、教育、仕事等。

・研修評価では、3つの問いを検討する:
 1)何を測るか? 2)どのように測るか? 3)何が成果か?

・Training effectiveness 研修効果の指標:
 目標の達成度、研修プログラムの費用、行動や反応への影響、
 学習と転移への意欲 等がある。

・Le Louarn & Wil(2001)の効果測定の4レベル:
 1)Pedagogical effectiveness 教育効果
 2)Behaviors 行動
 3)Output 成果
 4)Organizational outcomes 組織成果(直接・間接)

・3つの見方:リソース、コンピテンシー、ナレッジベースド
 で考えると、転移と模倣困難さは、組織の競争優位につながる。

・学習転移を「目標」「手段」で捉える。それらは補完的。

・学習転移は、二分法で捉えられることが多い:
 1)Positive vs Negative transfer 
 2)Near vs Far transfer
 3)General vs Specific transfer

○2)と3)の違いが良くわからない。

・先行研究によると、学習転移は3つの要素によって決定される:
 1)研修(研修デザイン、研修評価、研修費用)
 2)個人(受講者、講師の特性)
 3)環境(職場、組織構造、組織文化、戦略、経営やHRの役割)

・学習転移は、2つの観点で考えられる:
 1)受講者の職場での行動の形成と再形成
 2)状況に合わせて対応するための知識とスキルの資本化?

・学習転移における組織デザインの重要性を示すために、
 本稿では、Galbraith(1995)の「スターモデル」を採用する:
 1)戦略 2)構造 3)ビジネスプロセスと水平リンク?
 4)HRM 5)報酬システム

・学習転移と組織構造のつながり。

・学習転移のサイクルは、Deming(1986)のPDCAサイクルに基づき
 4ステップで示される:
 1)前の知識とスキルの評価
 2)3つの解決策(採用、外注、研修)の1つとしての研修
 3)転移メカニズムの開発
   ー己評価 同僚評価 コーチング
   MBO BSC
 4)新しい知識とスキルの適用

・チュニジアでの2つの調査:
 1)102社へのアンケート 
 2)フォーカスグループ(20名)へのインタビュー

・各社が実施している研修評価レベル、方法が明らかに。

・学習転移を可能にするものと妨害するものが共存している。

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Ch4 Learning transfer in organizations: an adaptive
perspective centered on the learner and the development
of self-regulation

  J-F.Roussel

・研修で学んだことはほとんど転移されていない。

 研修で学んだことの60~90%は、職場に転移されていない
 (Saks & Haccoun,2004)

 研修で学んだことの10%しか転移していない
 (Naquin & Baldwin,2003;Holton & Baldwin,2003)

 カナダの258社に対する調査でも、研修直後は47%の従業員が研修で
 学んだ内容を適用すると考えているが、半年後には12%、1年後には
 9%に減っている。

 これらの先行研究からも、きちんと転移されている研修内容
 というのは、10~20%の間ぐらいであろう。

・転移というのは、Generalization & maintenance 一般化と維持  
(Baldwin & Ford, 1988)と言われてきたが、最近では
 Adaptation 適応 という見方が出てきた。

 Bell & Kozlowski(2008)は、適応という観点から、学習者自身が
 よりアクティブに学習プロセスのコントロールができるように
 すべきだと主張した。

・本稿は、4つのメタ分析
 1)Baldwin & Ford(1988)
 2)Ford & Weissbein(1997)
 3)Burke & Hutchins(2007)
 4)Blume et al.(2009) を土台に、

 転移を個人と適応の観点から検討する。

・転移の3つの特性:
 1)Generalization 一般化
 2)Maintenance 維持 (Baldwin & Ford,1988)
 3)Adaptation 適応 (Ford & Weissbein,1997)

・適応という転移には「発見学習」「メタ認知」「問題解決」
 といった学習方法やスキルが必要になる。
 (Burke & Hutchins,2007他)

・全く同じような状況はあり得ないし、同じことが同じように起こる
 こともない(Haskell,2001)

・熟達者は、文脈間の共通点を見つけ出すことができる    
(Perrenoud,1997)

・転移のタイプ

 1)Positive - Negative
 2)Vertical - Lateral
 3)Specific - General
 4)Short - Long (Toupin,1995)

 Vertical - Reverse (Haskell,2001)

 Low road - High road (Perkins & Salomon,1989)

 Near - Far (Butterfield & Nelson,1989 他)

・転移には2つの要素が含まれる
 1)Transport 運ぶ
 2)Similarity 類似

・本稿では、上記2要素を含め、学習転移を定義する(p53)

・転移のレベル:
 Haskell(2001)の6レベルを発展させた4レベル(Roussel,2011)
 1)Context transfer
 2)Near transfer
 3)Far transfer
 4)Creative transfer

・転移において、学習者のより積極的な関与を促すには、
 1)Self regulation 自己統制
 2)Metacognition メタ認知 が必要になる。

・上記を促すために、トレーナーには4つのカテゴリーに分けられる
 18の活動がある。

 1)Modeling 
 2)Guided practice
 3)Cooperative practice
 4)Autonomous practice

・Roussel(2011)が、41名の新任マネジャーに行った調査では、
 Far learning transfer 遠い転移に対して、1)2)4)が
 有意に関連していることが明らかになった。

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Ch5 A systemic perspective of Training Transfer

C.Kontoghiorghes

・研修で学習されたことの内、10~15%のみが仕事に転移されている。

・Broad & Newstrom(1992)と、Baldwin & Ford(1988)の著作から、
 転移促進要因と妨害要因を列挙。

・これまでの転移研究は、次のモデルにまとめられる

 1.受講者特性・研修デザイン・研修転移Climate雰囲気
     ↓
 2.学習意欲・転移意欲
     ↓
 3.研修転移
     ↓
 4.個人・組織パフォーマンス

・本稿では、以下が含まれる
 よりシステム的で全体的なモデルを提示したい。

 職場環境 社会技術的システム設計
 仕事設計
 品質管理
 継続的学習環境
 他の要素

○図を見ると、細かいのが、多すぎて、もういいや、って気になってしまう。
 確かにそうかもしれないけど、もう少しシンプルにしてほしい。
 

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Ch6 Integration for Training Transfer: Learning, Knowledge,
Organizational Culture, and Technology

D.H.Lim and B.Nowell

・研修転移の評価に興味をもっているのは、21%の組織のみ(ASTD 2003)

・カークパトリック(1998)の研修評価モデルが、実践家にとっては、
 最も知られている。

・L1とL2は、研修における学習者の経験。
 L4は、高いレベルでの組織結果。

 L1、L2と、L4をつなぐのが、L3 Behaviorであり、ここに転移が関係する

img067.jpg

・図のように、最も単純な研修成果(研修実践家がコントロールできる)
 と、最も複雑な状況(多くの説明変数が存在する)の間をつなぐのが、
 研修の転移。

○この図、分かりやすいなー!確かにそう。

 研修の効果測定と言う時の、レベル感(単純さと複雑さ)の違いが
 一目瞭然。

・研修転移に関する理論3つ:
 1)Identical Elements theory 同一要素説
Thorndike and Woodworth(1901)
 2)Principles theory 原則説? Hoffding(1892)
 3)Cognitive theory of transfer 認知説 

・行動主義者は、状況の合致が転移に重要と考え、
 認知主義者は、状況に合わせて情報を検索できることが重要と考える。

・研修転移プロセスを、他の組織システム(組織構造、ツール、
 リーダーシップと戦略)に統合すべきである。
 それらを包含するのが、学習する組織文化である。

○前半よかったけど、後半はイマイチ。
 色々統合したほうがいいのは分かるけど・・・


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Ch7 Training Transfer in Teachers Training Program:
A Longitudinal Case Study

   F.Pisanu, F.Fraccaroli, and M.Gentile


・研修の転移とは、研修を仕事にApply適用する過程である
 (Kirwan & Birchall 2006)

・本稿では、Holtonら(1996、2000)のLTSIを使用。

・これまで成人学習において、研修転移は長いこと無視されてきた。
 どちらかというと研修で学んだことは自動的に仕事に応用されると
 考えられてきた。

・Gagne(1970)は、2種類の転移を提示:Lateral横 とVertical縦

・Laker(1990)は、Near近い と Far遠い 転移という2種類を提示。

・本研究では、2年半にわたり、4回の質問紙調査を行った。

・LTSIは、アメリカの企業では多数使われているが、教師教育の評価
 に使われるのは、おそらく本研究が初である。

・LTSIの転移要因は、特殊なものと、一般的なものと分かれた。
 いくつかの因子は、クロンバックのαが低く出た。

・本研究の結果から、教員個人のスキルと、動機要因、および
 研修の転移デザイン(教室オブザーブといった活動的な内容)が、
 研修転移に強い影響を及ぼしていた。

 同僚支援や上司支援といった組織要因は、
 それほど影響を及ぼしていなかった。

○教師教育は、土地勘がないからよく分からない。
 Wさんや、Cさんに聞いたらもう少し良く分かるのかも。

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Ch8 Evaluation of Training Transfer Factors:
The FET Model

P.Pineda-Herrero, C.Quesada-Pallares, and A.Ciraso-Cali

・研修転移は、新しい知識の一般化、適用、維持に関わるプロセスである
 (Ford and Weissbein 1997)

・Training研修とは、個人の知識、態度、技術に永続的な変化をもたらす
 為に設計された計画的な学習経験である(Noe and Schmitt 1986)

・本稿では、FET(Factors for the Evaluation of Transfer)
 モデルを提示する

・「研修への満足度」は、職場での態度変容に肯定的な影響をもつ
 (Moreno 2009)

・「転移への意欲」は、研修1年後の転移を予測する(Axtell et al.1997)

・「自己効力感」は、転移と肯定的な相関関係をもつことを
 多くの研究者が実証している(Mathieu et al.1993他)

・「統制の所在」も転移に影響を及ぼす(Colquitt et al.2000)

・Colquitt et al.(2000)のメタ分析では、
 「上司支援」と「同僚支援」が、転移に影響を及ぼしていた。

・「説明責任」も転移に影響(Pineda & Quesada 2013)

・「転移の可能性欠如」は、妨害要因となりうる(Pineda & Quesada 2013)

・「Achieved learning 達成された学習」も転移に関係
  (Colquitt et al.2000)

・「Intent to transfer 転移の意志」の転移への影響を実証した
 研究はまだない。本研究ではこの変数の影響も見る。

○「Motivation」と「Intent」の違いが分からない。
 意欲と意思? 意志のほうが強い?

・1527名の研修(教室・Eラーニング)受講者への質問紙調査。
 研修直後と、2年半後の縦断研究。T2で「転移」を聞く。自己評価。

・3つの独立変数:
 1)転移要素:
    研修満足、説明責任、仕事での必要性、環境機会、内的統制
 2)達成された学習
 3)転移の意思

・この中で、1)転移要素が最も強く転移を予測した。
 2)3)の変数は、今後の研究では外してもよいかも。

・「同僚支援」「上司支援」「転移意欲」は、
 転移にほとんど関係しなかった。

○面白い!「転移への意志、意欲」は影響するかと思ったけど、
 そうでもなかった。

 転移に影響するのは、一つの変数ではなく、複数の変数(転移要素)
 であることが、改めて明らかになったってことかな。

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Ch9 The Measurement of Transfer Using Return on Investment

P.Donovan

・研修転移研究は、研修評価研究から派生して発達してきた。

・研修評価は、教育プロセス向上に関する研究から、20世紀初頭に、
 アメリカで生まれた。

・研修評価の発達は、3つの段階を経ている:
 1)1950年代〜1987年 実践志向、理論無 D.Kirkpatrick
 2)プロセス重視 オペレーション ROI J.Phillips
 3)1996年〜 研究志向 実践基盤 E.Holton

・これら3つの段階は、2つのアプローチへの移行ともいえる:
 1)Nomothetic 科学的 → 2)Ideographic エスノグラフィック

・カークパトリックが、ASTDに書いた4つの記事(1959、1960)で、
 「4ステップモデル」が提示された。

 このモデルのシンプルさが受け、HRD実践家に広まっていった。
 この4ステップにより、実践家は研修評価に関するボキャブラリーを
 得られた。

・カークパトリックは、最初この4つを「ステップ」(一つずつが
 関連していない)と呼んでいたが、後に「レベル」(因果関係をもつ)
 と変更している。(Kirkpatrick 1994)

 「研修」が「Reaction反応」につながり
 「反応」が「Learning学習」につながり、
 「学習」が「Behavior行動」変化につながり、
 「行動」が「Result結果」につながる。

 しかしこの因果関係は、研究では実証されていない
 (Alliger and Janak 1989)

・ASTDの調査では、研修評価を下記割合の企業が行っている
 反応:77%、学習:38%、行動転移:14%、結果:7%
 (Van Buren and Erskine 2002)

・4レベルモデルは、複数の学習要素が含まれていない:
 受講者のレディネス、意欲、研修デザイン、個人特性、仕事とのつながり

・反応には2つある:
 1)Affective 情緒的 2)Utility 有効性 (Alliger et al.1997)

 Utilityは、学習よりも行動転移を予測する。

・「好きという反応が学習をもたらすとは言えない」
 (Tannenbaum and Yukl 1992)

・現在は、4レベル以外に「転移雰囲気」や「転移システム」といった
 ボキャブラリーが出ている。

・研修投資から得られる結果を示すよう、経営陣からプレッシャーが
 かけられ始めた(Rowden 2005)

・Phillips' method of ROI フィリップのROIモデル
 1)Reaction and planned action
 2)Learning
 3)Application and Implementation
 4)Business Impact
 5)ROI

・フィリップスは、ROI分析において外してはならないステークホルダー
 が4者いるとした:
 1)経営陣 2)ラインマネジャー 3)受講者 4)研修スタッフ

・カークパトリックのモデルには、テクニックや段階を踏んだやり方が
 含まれていない。このモデルは理論モデルではなく、分類である
 (Holton 1996)

○この章、面白かったなー。カークパトリックとフィリップスの研修評価
 モデルを紹介。分かりやすい。

===

参考リンク:

「研修の転移」研究会
 http://learn-well.com/blogsekine/2014/03/transfer_of_training.html

「カークパトリック教授の講演」
 http://learn-well.com/blogsekine/2007/06/post_31.html

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