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360度フィードバックに関する文献

「360度フィードバック」に関する文献。

(「フィードバック研究会」で読んだものも含む)

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Atwater & Waldman(1998)

360 degree feedback and leadership development

・360度フィードバックは、1990年代の最も顕著なマネジメント革命。

・目的は、マネジャーの自己認識を高めること。

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Waldman, Atwater, & Antonioni(1998)

Has 360 degree feedback gone amok?

・360度フィードバックの起源は、1950年代の「人間関係運動」に
 まで遡れる

・ODの主要な形として、サーベイ/フィードバックがあった。

・360度フィードバックが盛んにおこなわれる理由として
 1)他社も実施しているという環境的プレッシャー
 2)公式な考課プロセスとして使用したという欲求
 3)政治的意図での活用

・360度が、能力開発ではなく評価目的で使用されると、
 評価者の35%以上が、評価を変えた(London & Smither 1995)

・360度を人事考課で使用していた会社の半数が、1997年にはその使用を
 やめていた。(Timmreck & Bracken 1996)なぜなら従業員が否定的な
 態度をとったことと高い評価しかつかなくなったからだ。

・360度の質問項目はカスタマイズされるべき。

・360度の質問項目は、その組織が価値を置く行動が反映されているべき。

・エラーを防ぐためにも、評価者側への研修を行うべき。

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Brutus, Fleenor, & London (1998)

Does 360-degree feedback work in different industries?

・本人評価と他者評価が一致することは、効果的なマネジメントと
 関係するとされてきた(例:Atwater & Yammarino 1992他)

・6つの組織タイプでの360度フィードバックの違いについて検証。

・公的組織と民間組織の間で、違いが出た。

 公的組織(学校、政府、軍隊)のほうが、高く評価する傾向がある。

 民間組織(医療、製造、金融)のほうが、客観的に評価している可能性。

 公的組織は、同僚をより肯定的に評価している可能性。

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DeNisi & Kluger (2000)

Feedback effectiveness: Can 360-degree appraisals be improved?

・フィードバックは特定の状況においては効果的ではなく、
 傷つけることもある。

・Ammons(1956)のレビューにより、フィードバックはパフォーマンスに
 肯定的な影響を持つということが、心理学の最も受け入れられる原則と
 なってしまった。

・しかし我々のメタ分析では、38%の研究で、フィードバックが否定的な
 影響をもったことが明らかになった。

・我々は「フィードバックは普通は有効。でも常にではない」と言いたい。

・フィードバックにより、関心が「タスク(課題)」に向いているなら
 良いが「セルフ(自己)」に向くと上手くいかない。

・全てのフィードバック介入は、下記であるべき:
 1)タスクにのみ焦点
 2)セルフ(自己)に脅威を与えない
 3)パフォーマンス改善の情報を加える
 4)目標設定も共に行う
 5)他者のパフォーマンスではなく、本人のパフォーマンスに焦点

・360度は能力開発のみに使われるべきと言われてきたが、一度組織が、
 このようなデータを集め始めると、彼らはそれを他の目的に使いたくなる

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Ghorpade (2000)

Managing five paradoxes of 360-degree feedback.

・問題は、プライバシー、正確さ、効果に関わっている。

・360度は高額のため、組織としてはそれを他の目的でも使いたくなる。
 能力開発のためのものだったのが、考課目的で使用されるようになる。

・考課で使うなら、徐々に。そして、従業員から見て公正で、脅威を与えず
 メリットがあると感じられるようにすべき。

・正直に回答することが、正確な回答になるとは限らない。
 評価者に、ガイダンスや研修を行うべき。

・CCLの360度「Prospector」は、12の質問紙(11人の同僚が回答)で、
 195ドルである。 

 http://www.ccl.org/Leadership/assessments/assessment360.aspx

・組織に、信頼、解放感、共有の雰囲気を作る必要がある。

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高橋潔(2001)

 多面評価法(360度フィードバック法)に関する多特性多評価者行列分析


・多面評価法に関する先行研究を要約すると、以下の結論が引き出せる:

1)多面評価研究には、科学的立場と実務的立場が共存する

2)多面評価法は、人事考課(上司評価)のフィードバックより肯定的に
  受け止められ、また施策自体が長期にわたって受け入れられやすい。

3)自己評価と他者評価の間には、顕著な食い違いが見られる反面、
  他者評価間には、一致が見られやすい

4)自己を適正評価もしくは過小評価する人ほど、
  他者評価が高くなりやすい

  評価時に、自己を過大評価をする人ほど、その後のフィードバックに
  よって行動変容や業績向上などの効果が強くあらわれる

5)多面評価の効果は、比較的長期にわたって継続し、
  特に業績が低い管理者、もしくは中程度の管理者のほうが、
  行動変容や業績向上につながりやすい

・多面評価法に関しては、全体的に見て適度に信頼性が高いと言える。

・大手食品製造会社の管理職(177名)と他者(1187名)からデータを収集

・分析の結果、本人評価は他者評価と食い違いやすく、反面、他者間では
 評価が一致しやすいという傾向がみられた。

 これらから、多面評価法は、収束的妥当性と弁別的妥当性の観点から見て
 心理統計的に十全な特性が確保されているとは言い難い。

・評価する側の経験の無さや不慣れさなどが原因して、評価される側の行動
 が漠然と全般的に評価されてしまっている。

・多面評価法の妥当性を向上させるための4つの方法
 1)具体的な職務行動と評価すべき領域との間に直観的な対応づけを行う
 2)より厳密な職務分析に基づき日常的職務行動を評価項目に反映させる
 3)評価領域数や評価項目数を減らす
 4)評価者訓練により、行動観察と評価の精度を高める

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Conger & Toegel(2002)

 Action learning and multi-rater feedback as leadership
development interventions: popular but poorly deployed.

・リーダーシップ開発の手法として、アクションラーニングと、
 多面評価がある。

・この2つは、よく使われているが、上手く使われていない。

・ALが上手くいかない理由は
 1)一度きりの学習経験になっている
 2)プロジェクトとリーダーシップ開発のつながりの弱さ
 3)内省的学習をする機会が少ない
 4)チームでの問題解決や学習を強調することへの制約
 5)プロジェクト成果へのフォローアップへの欠如

・正しい自己認識は、効果的なリーダーシップの発揮につながるが、
 自己評価はあてにならないことが多い。

・多面評価の面白さは、評価結果が、周囲の要求や価値基準によって
 異なるという点にある。正しい、間違っているということではなく
 全てが有用な情報。

・他者評価と不一致が起こったとき、マネジャーは次の行動をとる
 1)きちんと努力して、行動を変える
 2)他者から見える部分のみ、ふるまい方を変える 
 3)自分の行動の理由を説明し、正当性を訴える
 4)不満が出ていることに背を向ける

・匿名で評価結果が集計されるため、正直な回答が得られる。

・多面評価は効果が高いが、センシティブである。

・多面評価の最も利用される目的は、能力開発である。
 しかし、人事考課と組み合わせると、能力開発の効果にネガティブな
 影響を与えることがある。

・評価に用いると、自分の肯定的な部分だけに目を向け、自分の現状を
 ふり返ろうとしなくなる。

・多面評価の目的が、評価であった場合、自己と他者との間に
 食い違いがあると、マネジャーは、自分の見せ方を変える
 (戦略的自己呈示)というテクニックを使うことがある。

・行動を変えるよりも、自己呈示のほうが楽。

・一石二鳥を狙おうとする企業があるが、能力開発と評価をを同時に
 狙おうとすると、能力開発を妨げたり、情報をゆがめたり、
 モチベーションの低下につながるため、避けたほうがよい。

・自己レベルに介入されたとき、マネジャーはアイデンティティの
 危機に陥る。リーダーシップ開発とするためにはタスクレベルでの
 かかわりをすることが望ましい。

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Thach(2002)

 The Impact of Executive Coaching and 360 Feedback
 on Leadership Effectiveness.

・コーチング(360度フィードバック含む)は、リーダーシップの
 育成に効果がある。

 281名を対象に、6ヶ月間。リーダーシップ効果を60%増加させた。

・コーチングのステップは、3~6が多いが、次の3つを含むものが多い。
 1)契約 2)データ収集 3)コーチング

・360度フィードバックのフォローとして、個人コーチングが行われる。
 それは、評価よりも、成長を目的としているから。

・360度は、評価目的になりすぎないよう注意。

・自分で改善したい行動のみを取り上げた「ミニ360度」を、
 6ヶ月後に実施。

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Rai & Singh(2013)

A study of mediating variables of the relationship between
360 feedback and employee performance.

・360度フィードバックを行っているインドの4つの企業を調査。
 198の回答。

・360度を導入していない2社と、
 評価制度としても導入している2社の比較。

・5つの仮説を検証。支持された。

 1)360度フィードバックは、従業員のパフォーマンスに
   肯定的な影響を持つ

 2)対人コミュニケーションが、上記関係に完全な媒介効果を持つ。

 3)LMXの質は、上記関係に少しの媒介効果を持つ。

 4)仕事生活の質は、上記関係に完全な媒介効果を持つ。

 5)組織支援の認識は、上記関係に少しの媒介効果を持つ。

img136.jpg

・本研究により、360度フィードバックと
 従業員パフォーマンスの関係が実証された。

・本研究対象企業では、360度が、
 能力開発と人事考課双方の目的に使用されていた。

 この結果から、360度フィードバックは、能力開発にプラスして、
 人事考課のシステムとしての活用できる可能性がある。

 これは先行研究で言われてきたこと(360度は能力開発目的のみで
 使用すべき)とは違う結果である。

 おそらく、360度が透明性のある状態で、信頼と解放感ある雰囲気の中で
 行われた場合、従業員は建設的批判と欠点を受け入れるのかもしれない。

・「対人コミュニケーション」「LMXの質」「仕事生活の質」
 「組織支援の認識」の4つを、360度フィードバックの効果を最大化する
  ためにも組織は配慮すべき

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●参考:「フィードバック研究会」 
      http://learn-well.com/blogsekine/2015/10/post_449.html 

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