« 「OBM」本 | メイン | 「トランジション(移行)」本 »

2016年秋 東大授業「経営組織論」(1)(2)(3)人材マネジメントの基礎

2016年 秋学期の東大大学院授業「経営組織論(Organizational Management)」を
受講させて頂けることになりました。

http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/6919

(中原先生、ありがとうございます!)

その分、2冊のレジュメを担当します。

===

第1回目から3回目までは「人材マネジメントの基礎」
ということで、

(1)『人材を活かす企業』
(2)『隠れた人材価値』
(3)『新・日本の経営』 を読みます。

IMG_7285.JPG

事前に読んだ本の抜粋と、私自身の意見、そして授業での議論を
さし障りのない範囲で共有します。

(・本の抜粋 ○関根の独り言 -授業での意見)

===

(1) 『人材を活かす企業』 J.フェファー(1998・2010)


・戦略にばかり気を取られるよりも、
 社員の能力形成に努力を払う必要がある。

・真の競争力は、企業文化、高い組織力から生まれる。
 これは、他社が模倣することが難しい。

・企業規模と収益性の間には、ほとんど関連性が見られないか、
 実質ゼロであった。

・人材重視の経営を実現できるのは、八分の一の経営者。

・収益性、業務の質、生産性を向上させるには、
 従業員の労働意欲を高めて、組織力を高めること。

・人材管理の主要な4要素:
 1)柔軟な職務設計 2)労働者の教育訓練
 3)成果に応じた報酬制度 4)雇用の保証

・人材管理から、企業利益を生み出すための7つの条件
 1)雇用の保証 2)採用の徹底 
 3)自己管理チームと権限の移譲
 4)高い成功報酬 5)幅広い社員教育
 6)格差の縮小 7)業績情報の共有(OBM)

参考:「OBM」本
    http://learn-well.com/blogsekine/2016/10/obm.html

・企業理念と経営は、終始一貫させることが重要。

・社員の価値とは、経験から得た明文化できない知識をもっていること

・管理職の仕事が多すぎるのは、部下に介入しすぎて、
 権限委譲が十分でないからでは。

 実践的な情報は分散化させ、現場の担当者が自分の仕事を
 自己管理できるようにすべき。

・離職率が低いと、サービスの点数が高かった。

・相互依存の原則:受けた好意は返し、社会的恩義に報いる

・個人の貢献度が評価できるような出来高給や業績給を
 導入しやすい組織は、組織にしておく意味があまりない。

・人材管理の鍵は、結局のところ、経営者の
 社員に対する考え方に依存する。

・人材重視型戦略の効果

img232.jpg

・信頼関係の束としての企業


○一倉定先生が読んだら怒りそうな本。
 「また、内部管理の話か!事業=市場活動だ!」と。

 http://learn-well.com/blogsekine/2016/07/post_463.html

 ランチェスター戦略の竹田先生も、
 「収益性の差は、従業員の質ではなく、社長の質。
  市場シェア1位の強者か、それ以外の弱者かの違いに
  よる社長の戦略次第。」と言いそう。

 http://learn-well.com/blogsekine/2013/06/post_386.html
 
○この本の著者はおそらく、RBV(リソース・ベースド・ビュー)、
  上記お二人は、おそらくポジショニング・ビュー。

 http://learn-well.com/blogsekine/2013/02/post_378.html

○順番はありそう。

 1.よい戦略 2.よい人材管理

 どっちかだけではだめ。ただ、1があって、2だと思う。

○間違った方向に進みながら、社員が頑張れば何とかなる!ことはない。
 社長のやっていることが間違っているなら、社員が正しくやってもダメ。

○一倉先生流に言うなら「責任を負ってない社員に、決断させるとは
 何事か! 決断は社長の仕事。実施が社員の仕事。」

○経営者の人に対する考え方が、「Y理論」か「X理論」かにつきそう。
 
 この本を読んでほしいのは、「X理論」の経営者だと思うけど、
 「Y理論」の経営者ほど、こういう本を読んでいると思う。

===

(2) 『隠れた人材価値』 

C.オライリー & J.フェファー(2002・2015)


・経営トップが、使命、価値観等を真摯にとらえ

・人材こそが何よりも重要な資産であると信じている

・採用した後で、社員の熱意や才能を引き出している

・まずなすべきは、揺るぎない価値観を生み出すこと。
 次に、それにふさわしい戦略を決める。

・他社との違いは、いかにそれを実践しているかという点。
 
・価値観、戦略、人材の整合を取ること。

・経営トップの一貫した姿勢

●サウスウエスト航空

・大概のスキルは、後から習得することができる、。
 人間としての姿勢が良くない人はいらない。

・個人的資質にとどまっていたリーダーシップを
 「組織的システム」へと転化させた

●シスコシステムズ

・選択するのは顧客

・テクノロジーを手に入れるということのは、人材を獲得すること

・M&Aを成功させるには、前もって社員に方針を伝えることが欠かせない

・危険な兆候:委員会を開かなければ何も決められない、社員の功績を
 大々的にたたえることができない、社内競争にばかり気を取られる等

・新入社員の初出勤日は「この上もなく重要な8時間」

●メンズ・ウェアハウス

・秀逸のサービスが、ライバルからの差別化戦略を担っている

・この会社は、人材育成会社である。

●SASインスティチュート

・モンテッソリーの理念「創意工夫は教え導くものではなく、
 暖かく見守るもの」を重んじている

・自分たちだったら、どういった待遇を望むかを思い描き、
 後から入社してくる人々もそれと同じ待遇で迎えたいと考えた。

・社員を責任感ある大人として扱い、素晴らしい仕事をしてくれる 
 はずだと期待する。

●PSSワールド・メディカル

・業界トップであることから得られるメリット

・「顧客の玄関先では、君がCEO」 配送ドライバーにCEOの肩書

・大きなことをやり遂げる方法を教えることはできる。
 大きなことをやり遂げたいと思わせることのほうが大変。

・効率の良い組織を作りたいなら、全員参加でなければならない

●AES

・過度に管理する必要はない。社員に任せておけばよい。

・社員に権限と責任を与えることを主眼。

●NUMMI

・ピアプレッシャーは強烈。

・工場を動かすノウハウのあるHRが、NUMMIには存在する。

・「管理されなくたって、俺たちはちゃんとやれる」

・経営陣とスタッフの一番大事な仕事は、生産現場の
 従業員をサポートすること。

・信頼を培うには、完全にオープンな経営スタイルが必須。

・ホンネが、経営者の言葉や態度、素振りに見え隠れする。

●サイプレス・セミコンダクター

・ハンズオン(実践)タイプの経営者

・経営哲学と個人的な信念は表裏一体の関係にある

・サイプレスは、2つの戦略を同時に追求している。

・望む人材に振り向いてもらえない職場を作ってしまった。

●すべての社員のもてる真価を存分に引き出す

・現在いる社員の才能を充分に活用し、社員の隠れた
 モチベーションを引き出すことに、成功の鍵があった。

・経営者が、どれだけその価値観に関して率直であるかが
 唯一の問題である。

・成功の源泉として、整合性が決定的に重要。

・どれだけ決定権を社員にゆだねているか

・参加式意思決定では、社員に意見を求めるが、
 最後にはリーダーが断をくだす。

 権限の委任では、社員は相談を持ちかけるが、
 最後には自分で判断を下し、結果に対して責任を負う。

●解説

・成功を阻む「5つの壁」
 1)認識 2)行動 3)知識およびトレーニング不足
 4)システム 5)あきらめの壁

・本書のCEOは、社員一人ひとりを尊重し、決して人間は一般的に
 こうであるというような動機づけの方法をとっていない。

 現実を積極的に受け入れ、X理論とY理論の葛藤の中で
 苦悩しながら、自らの価値観との整合性を取りつつ、
 成功を獲得したといえよう。

===

○「独裁すれども、独断せず」 近鉄の佐伯勇氏
  「正しいワンマン経営」 一倉定先生

 参加式意思決定が、「独裁すれど独断せず」
 権限の委任が、一倉先生が否定する「民主的経営」かも。

 そもそも、経営者と社員では、負っている責任の範囲が違うのでは?

 社員が負えるのは「逆さまのピラミッド」的に、顧客対応のみ。
 社長が負うのは、会社の命運そのもの。


○ときがわカンパニー(同)が、自らの「価値観」と「行動」の
 整合性をとるなら・・・

 価値観:地域で、自ら仕事を生み出せる人を手助けする

 行動:
  1)ときがわカンパニー(同)に関する情報を公開する(OBM)
  2)メンバーからの提案を歓迎する
  3)メンバーを起業家として遇し、仕事を任せる

 ということになりそう。


○俺がもし、従業員数百人の会社を任されたとするなら、
 この本と、前の本を参考にするかもしれないけど、
 これらはあくまで「内部管理」の話であり、大事なのは「市場活動」。

 どうやって顧客を「創造し、維持する」かに注力するはず。

 それを考えるために、前からいる社員の知恵を借りたりしながらも、
 最終的には、社長として自社の位置づけ「ポジショニング」を決めると思う。

 利益が出る形を考え(戦略を作って)そのうえで、社員に実行してもらう。
 その時に、今回の2冊で学んだことが生きると思う。

○「ポジショニング」か「リソース」かではなく、両方だと思う。

 自社のポジショニングを決めるためには、自社の強み(リソース)を
 知らないといけないし、
 自社の強みを活かせるポジショニングを決めないといけない。

===

●10月19日の授業 

 (久しぶりの東大赤門。中学生が記念撮影中)

IMG_7252.JPG

-戦略とは、誰に対して、何を提供し、そのために何をもつのか
 (伊丹先生の定義)

-持続的「競争優位」を保つには?
 勝ち続けるにはどうしたらよいかが、この本の裏テーマ

-競争優位を得るための、経営学の考え方3つ

 1)ポジショニング・ビュー

  皆が戦っているところをさける。
  利益を生みだせる市場を見つける。

  1970年代、M.ポーター

 2)RBV リソース・ベースド・ビュー

  他社がもてないものを持つ。
  模倣可能性が低い(人の育成は真似しにくい)

 3)Dynamice Capability Vies 動的能力視点

  動的に能力を高める、仕事が高度化する場や機会を持つ

  1990年代 野中郁次郎

-「人材戦争」War for talent  優秀な人材をめぐる戦争

 優秀な人材を採るために、公平な試験はない。
 どんな手を使ってでも採らなくてはいけないという背景がある。

-いかに採用して、ひきとめる(Retention)か。

-個々人の「Motivator」が違う中で。

-人のモチベーター、アトラクト(魅力を感じてもらう)するために

 1)制度 でひきつける
 2)面白さ
 3)理念  
    これだと、職務没頭、役割外行動、革新行動が期待できる
 4)リワーディング
 5)エンプロイアビリティー
    学習機会、能力を高める機会を与える(例:コンサル)
 6)経営経験

-人を大切にする経営と、経営者の責任はトレードオフではないのでは

-理念というからには、トップダウンになりがちでは?

 「理念がわかる」とはどういう状態か?
  理念を復唱できればよいのか?
 
  理念の「内容認識」+「具体的行動」が必要では。
  理念の具体化には、ボトムの人たちの考えが必要になる。

-社長は、自分と同じように考えられる人材を必要としているのか?

(この時は、この問いに答えられなかったけど)

 「必要としている」と言いながらも、本当は
 「必要としていない」のかも。

 「社長と同じように考えられる人材」なら、既にその会社を出て、
 他の会社で、社長をしているはず。

 少なくとも、ときがわカンパニーでは、
 そういう関わりをメンバーとしていきたい。

===

●中原先生のFB記事(2016年10月19日)

大学院授業「経営組織論」。人材獲得・リテンション戦争を
勝ち抜くための人事戦略。

フェファーの「隠れた人材価値」を読んだ後で、優秀な人材を
雇用するためのモティベータについてディスカッションしました。

===

●10月26日の授業に向けて、アベグレンの古典『日本の経営』を読む


(3)’ 『日本の経営』 J.アベグレン(1958・2004)

・日本の産業が、成功をおさめたのはなぜか。
 欧米から導入した技術を、日本の価値観に基づいて構築した
 企業組織に取り入れたから。

・英米型の見方では、会社は資産を組み合わせたもの。
 日本の企業は、社会的組織であり、共同体である。

・1955年〜56年にかけて、19の大企業、34の小企業の工場を調査。

・工業化について、欧米型でもソ連型でもない第三の道を
 歩んでいるのが日本。

・日本とアメリカの企業の違い。
 従業員が会社の一員。終身の関係が原則。

・一般従業員も経営幹部も頻繁に職と会社を変わるのが
 アメリカの特徴。労働の移動性が高い方が好ましいとされている。

・日本では、企業の経営者が、国全体の利益という大きな観点から
 経営を考える姿勢をもっている。

・雇用に責任を負う考え方は、さらに国の経済的厚生のためにも必要。

・アメリカ企業の基準から見れば、不必要な仕事が驚くほど多い。
 お茶くみ、掃除係などの下働きがきわめて多い。

・日本企業は、人員の選考にあたって、何よりも学歴を重視する。

・日本の教育制度は、現在、アメリカで一般的な六三三四制に
 したがっている。これは占領当局によって導入されたもの。

・アメリカとの違いとして、学校を卒業すると同時に入社するのが
 事実上、会社に入る唯一の道。

・人材の流動性の低さ。

・選考過程の中心になるのは、学力試験。

・「安定した性格」の人を採用することを望んでいる。

○これは、今でもそうかも。

・経営陣に加わるためには、ごく少数の有名大学を卒業していなければ
 ならず、こうした大学に入学できるのは、家柄の良い若者。

・従業員は、特定の職務のために雇ったのではなく、経歴、人物、
 一般的な能力の質を評価して雇ったのであり、これらの質が高い
 からといって有能な従業員になるとは限らない。

 だが、ある従業員が役立たないと判断しても、解雇することはできず
 最終的には役には立たないとしても、少なくとも害にならない職務を
 見つけるしかない。

・採用制度の結果、従業員が3グループにわかれる
 1)中学から採用された行員のグループ
 2)大学卒業者のグループ
 3)高校を卒業したグループ

・基本給は、年齢と学歴という2つの要因だけで決まる。

・会社は従業員の衣食住など、生活のすべてに対して責任を負う
 と見られているし、会社自身もその責任を認めている。

○若者の地方回帰と同じように、以前の「村集団」のような企業なら、
 逆に、若者が魅力を感じる?

・日本企業の公式の組織には、明確に分かれた2つのグループがある:
 工員と職員。

・上司と部下の関係は、家父長制と呼べる要素が強く、親子関係に
 良く似ている。

 管理職の間では、特にそうだが、現在の状況を言い表すには、
 親分子分という言葉よりも「閥」という言葉のほうが重要である。

・アメリカ企業では、それぞれの職務を遂行できるように、すべての水準
 の従業員を訓練する精巧な制度が作られているが、日本企業には
 このような研修制度はほとんどない。

 訓練は大部分、OJT(職場内訓練)によって行われており、
 上司や先輩から仕事を学んでいる。

・日本企業には、正式な研修制度がないので、部下と上司の関係が
 一層密接になり、基本的に家父長的な関係によって、従業員を
 会社に結び付ける絆が一層強まっている。

・企業組織とその指導者は、都市化が進んでおらず、伝統的だった
 戦前の日本の生活と見方に、直接に密接に結びついている。

・農村出身者のほうが「性格が安定している」という。この「安定」とは
 工場の労働条件や人間関係を不満なく受入れ、騒ぎを起こさない
 ことを意味している。

・日本では、人件費も固定費であり、状況の変化にしたがって、
 調整するわけにいかないものである。

・アメリカの生産方法は、労働の役割を最小限に抑え、組織を
 非人格化し合理化するように設計されるようになった。

 日本に必要なのは、人間的な関係のなかで、労働を最大限に
 活用する生産方法である。

・今回の研究の結果から、日本は近代工業の技術を導入したが、
 同時に、日本人の伝統的な習慣と態度に合わせ、近代産業を
 導入する以前からあった社会制度に合わせて、独自の企業組織を 
 作り上げたように思える。

・日本の社会構造を理解するためには、3つの考え方を理解すべき:
 1)血族 2)階層構造 3)共通の守護 (シュテッツェル)

・企業内の人々を見ると、二つの集団が特に、組織に適応するのが
 若干むずかしいと感じているよう:若者と女性

●解説

・日本の経営の三種の神器と呼ばれる終身雇用、年功序列、
 企業別組合の3つが日本的経営の本質的な特徴であるということを
 最初に指摘したのは、本書である。

・文化は、海外の企業が真似できない日本企業の独自資産。

・終身雇用の制度のもとでは、人の採用にあたって極めて慎重な
 手続きが取られていたことを知ったのは驚きであった。
 いつの間にか採用はおざなりになっていると感じるのは私だけだろうか。

===

(3) 『新・日本の経営』 J.アベグレン(2004)

・今回も同じ5社から学んだ点が分析の中心:NEC、住友電気工業、
 住友化学、東レ、新日本製鐵

・日本は矛盾した性格:
  極めて豊かで、類を見ないほど、社会が健全な国。
  日本は常に自国を卑下。

・21世紀に日本が直面している問題のうち最も深刻な点は、
 この自信のなさ、特に若者の無気力だと言える。

・ここまで豊かな国で、経済成長は必要なのだろうか?

○ただ、普通の人は、その豊かさを感じていないのかも。

・日本の将来にとって、研究開発を成功させることがカギになる。

・1950年代に「日本的経営」が確立。合意に基づく意思決定、
 終身雇用制、年功制に基づく昇給と昇進、企業内組合が、
 日本的経営の柱。

・1990年代初めになって、経済環境が突然大幅に変化。
 
・日本企業がもっとも大きく変わったのは、財務の分野であり、
 人事の分野は変化が最も小さかった。

・終身雇用制は終わっていない。

・日本企業の経営システムは、基本的な部分で継続性を維持している。

・日本ではほとんどの国と違って、企業の生命がきわめて長い。

・日本の会社は、自己の存続を目的とする共同体であり、
 売買の対象になる物的な資産の集合体ではない。

○だから、会社の中では、個人が生きづらい。

・高成長の時代に生まれた2つの問題
 1)ほとんどの産業で企業数が多すぎる
 2)事業多角化の行き過ぎ

・どのような事業でも成功を収めるには、圧倒的な市場シェアを獲得する
 まで、その事業に資源を集中させる経営戦略をとる必要がある。

 事業の的を絞ることが不可欠なのだ。

・総合電機9社の問題は、戦略の完全な失敗に起因している。
 経営戦略のもっとも基本的な原則を無視した結果なのだ。
 
 一つの事業に絞り込み、その事業で支配的な地位を獲得した後に
 はじめて、次の事業に進出し、その事業に絞り込んで支配的な地位を
 獲得するのが、戦略の基本だ。

・勝ち組企業は、事業を絞っている。
 すぐれた戦略を、たくみに着実に実行して、成功をおさめている。

・NECは、事業の絞り込みや支配的なシェアの獲得には、ほとんど注意を
 払わないまま、拡大路線を追求した。原因は経営戦略の失敗にある。

○そう!だからこそ、社長が間違った戦略を取っているのに、従業員から
 力を引き出しても無駄。それが、フェファー先生らの本で感じていた疑問。

 1.優れた戦略 2.着実な実行 

 この2に、「人材マネジメント」が関わってくる。

○「小さな市場で、大きなシェアを」が、目指すべき道。
 アベグレン先生は、人事だけでなく、経営を分かってる!

・規模がものをいい、世界企業との競争がある産業で、企業の数が多す
 ぎた。解決策は、合併によって規模を拡大し、事業効率を高めること。
 この動きは、1990年代半ばに始めっており、この時期に再設計の
 必要が強く認識されるようになった。

○2社目にいたころ(1999年〜2005年)金融、製薬は、企業合併が
 多かった。取引先の名前が変わることが良くあったな〜。

・日本企業では、雇用関係は終身のものなので、人員削減は、
 大量解雇の方法と使わずに達成された。

 子会社、関連会社への出向、転籍と、新卒採用の削減。

 新卒採用という入口を閉めて、定年という出口を開いておけば、
 人員の調整はある程度まで自動的に行われる。

○これが、1995年〜2005年にかけての就職氷河期ともつながってくる。

・日本の女性が、労働力としてもっと活躍するためにカギになるのは、
 子育て支援サービスの充実である。

・日本には、ロボットなどによる自動化に有利な条件がいくつもある。
 まず、労働コストが高い。それに対して、資本コストは低い。

・日本が大量の移民を受け入れるべきだとする主張はばかげている。

・「和魂洋才」という言葉が、日本の産業の成功をもたらした経営
 スタイルの特徴をある程度まで示している。

・日本的経営の主要な特徴3つ:
 1)企業と従業員の間の「終身の関係」という社会契約
 2)年功制
 3)企業内組合

・労働組合の役割が低下したのは、彼らの目標がかなりの部分まで
 達成されたから。

・日本企業にとって最大の利害関係者は、従業員である。
 株主は、投資に対するリターンを得る権利はあるが、それ以上の権利を
 もたない。

・メインバンク制度は、日本型資本主義の基本的な要素。

・会計報告が、単独ベース中心から、連結ベース中心に変わった。
 この変更の影響は大きい。

 業績が悪い事業を子会社にして、本体から分離すれば、子会社の
 損失は親会社の単独決算に反映されない仕組みになっていた。

○隠して育てるチャンスも作れたのに、それが無くなったということか。

・日本の教育の質は極めて高い。

・日本がアメリカの支出にただ乗りしているのは、軍事ではなく、
 高等教育の分野。

 日本の優秀な学生が、アメリカの最高レベルの大学で教育を受け、
 研究する機会を存分に活用しているからだ。

・企業統治に関する英米型の見方は、会社とは完全に株主の所有物
 だとする見方から導き出されている。

・アメリカの企業統治では、経営者の貪欲が、野放しにされており、
 これが所得分布の極端な不平等をもたらす大きな要因になっている

・アメリカ企業は「経済的企業」日本企業は「共同体」

・日本企業は、社会組織であり、家族であり、共同体であり、村。

・多角化した企業では、企業文化が薄まっていく。

・ファミリー企業の成功率が高い理由:意思決定が速く、
 従業員の愛社精神が強く、事業について長期的な見方ができる。

・ゴーンの動きは、クライスラーのアイアコッカがとった行動に良く似ている。
 1)前任者の間違いをすべて償却して、膿を出し切る
 2)売れる資産はすべて売る
 3)事業を大幅に縮小する
 4)仕入れ価格を容赦なく引き下げる

・AFLACのエイモスは、1972年に大竹美喜を雇った。

○大竹会長には、2社目の仕事で何度かお会いしたな〜。


●訳者あとがき

・日本で成功している企業がじつは、技術面では最新のものを取り入れ
 開発しているが、経営組織という面では、日本的な価値観を維持して
 いる企業。

・前著は、アメリカの研究者を想定読者としている。
 本著は、日本の企業関係者を想定読者としているように思える。

 だから、日本の経営の利点を見失わないように、読者を励ますように
 書かれていると感じた。

===

●10月26日の授業

IMG_7289%20%28480x640%29.jpg

-意図せざる整合性:会社が用意しなくても、そこそこ動くようになる。

 OJTもそう。終身雇用で年長者がいてくれて、上の人の給料が高い。
 だから、学び手側のモチベーションも上がった。

-日本的経営
 1)終身雇用:組織キャリアvs自律的キャリア
 2)年功序列:職能給(毎年上がるはず)vs職務給
 3)企業別組合:労使協調が基本、対立しない

-組合が、影の統治システムになっている。
 人材育成機能、組合の役員が、経営者に。

-制度の内的整合性が高い。それが日本企業の強さ。

-日本企業の強さを、維持すべきか?変えるべきか?変えるとしたら?

○大企業なら、年功序列は無理でも、終身雇用は維持できるのでは?
 労働人口が少なくなる中、人を大事にせざるを得ない。

 1995年〜2005年にかけての就職氷河期で採らなかったつけが
 今でている。34歳〜44歳が企業内に少ない。

 バブル入社の40代後半は多く、2006年〜2016年に採用された20代も多い。

 今の少ない30代が、40代にあがる今後の5年〜10年で、ミドルマネジャーの
 つらさは増すのかも。

○うちみたいな零細企業は、組合なし、年功給も無理、終身雇用も無理。
  ただ、「終身」的関わりはできるかも。

  相手も起業家だから、当然終身でコミットメントはしてくれないだろうし、
  それは期待しない。こちらもできないし。

  ただ、なんだかんだ言って、一生、仕事仲間として、
  今のメンバー(LW,TCとも)とはつきあっていくのかも。

  最初から「一生いっしょにいよう」とは約束できないけど。


-企業内労働組合という強みは残すべき。
 隠れた人材育成機能、中間をバイパスして、経営陣とやりとりできて
 経営を学ぶ機会にもなっている。

○組合をそういう目線で見たことはなかった。面白い!
  
-年功給は崩れている。昇格しないと昇給しない。

-日本的経営は、施策間の内的整合性は高いが、外部環境との
 外的整合性は低いのでは。

 終身雇用はよくとも、年功給に納得する外国人従業員は少なそう。

-ホステージ(囚われ)理論

 生産性が高い若いときは、働き過ぎ。
 低くなるオジサンになったときは、給料が高くなる。
 
 転職すると、それだけの給料はもらえない。だからオジサンは会社に居座る
 フリーライダーをいかに減らすかが、最近の人事施策。

-右肩上がりの成長なら、年功序列が約束できた。今は難しい。

-Pay for performance は、営業ならやりやすいが、それ以外だとやりづらい
 
-終身雇用 Lifetime commitment メンバーシップ型

 組織に疑問を持ってはいけない。持たれないようにしないといけない。
 リストラすると、組織への不信感が生まれる。


●中原先生のFB記事(2016年10月26日)

大学院・授業「経営組織論」。アベグレンの議論をもとにしながら、
人材施策の内的整合性について考えました。

日本の人材育成は、日本企業がもつ人材施策の諸特徴(終身雇用・年功序列
・企業別組合)の内的整合性に支えられていたと僕は思います。

今後、近い将来、これをどのように発展させていけばいいのか。
変えるのだとすれば、何を変えていけば良いのか、を議論しました。


===

皆さん、ありがとうございました。

来週は「採用」に関する授業です。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://learn-well.com/xbitmtop/mt-tb.cgi/1291

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)