« 「コーチング勉強会」@立教大に参加しました。 | メイン | 「評価・測定」本_200225 »

「研修転移」論文(今城さん特集)_200218

リクルートマネジメントソリューションズの今城さんとは、東大での勉強会時代からのお知り合いです。

IMG_5044.jpg

今回、2月14日の「コーチング勉強会」で久しぶりにお会いできることになったので、それをきっかけに、今城さんの書いた本や論文を改めて読んでみました。非常に勉強になりました!(今城さん、ありがとうございます!)

===

科学性に基づく人的資源管理を進めるために−管理職研修の効果検証を例として−
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsik/24/4/24_2014_036/_pdf

・人事施策は科学的根拠に基づき行われるべきとの考えは、米国では実務家の間で広く受け入れられている。一方、日本の人事の現場はこのような状態とはほど遠いのが現状である。

・RMSが提供する「実践ナビ」と呼ばれる研修後のフォローシステムのデータを分析に利用。

・研修への参加意欲が、研修への評価を向上させる。研修内容が、自分の抱える課題解決に役立つと感じることが、職場に戻ってからの実践意欲を高める。

img015%20%282%29.jpg

・研修直後の実践意欲が高かった人ほど、職場に戻って早いタイミングで実践行動をとっていた。実践を通して、変化を感じた人ほど、実践を継続する可能性が高まっていた。

img015%20%283%29.jpg

・実践ナビのデータは、Kirkpatrickののレベルの検証を行ったものである。上司による部下の行動変容の認知と、部下自身の行動変容の認知の相関は、0.12であった。サンプル数が多いために、有意であるが、値は小さい。
・個人差と環境の相互作用が、結果変数と説明変数の関係性を見えにくくしている。
・上司のパフォーマンス評価を結果変数にすることには問題があるのかもしれない。

・先行研究からは、本人評価と上司を含む他者評価は、それぞれ異なるものを測定している可能性が示唆されている。

・(これまでは)収集しやすい自己評価を用いるか、すでにある人事評価を利用することが多かった。
・(今後は)人事場面での施策の効果を検証する際には(多様な)データ収集が望まれる。

===

集合研修における学びの転移プロセスの検討(今城・藤村 2015)
https://www.recruit-ms.co.jp/research/thesis/pdf/2015JPA.pdf

・研修前に期待を高める(有効性の認知)は、研修での学びの促進や研修直後の転移意図を高める。
・研修終了時に実践意向を高めることが、転移促進のキーである。

img013%20%282%29.jpg

・転移促進のためには、学んだ内容が役立つことを、研修前、研修中、そして、研修後に繰り返し認識してもらうことが重要であることが示唆された。

===

集合研修の転移に関する実証研究1(今城・佐藤・宮澤 2015)
https://www.recruit-ms.co.jp/research/thesis/pdf/2015JAIOP01.pdf

・転移は、Generalization(学んだことを職場で活用するか)と、Maintenance(実践したことを継続できるか)の2つの要素からなる。
・この2つを分けて扱う。「最初の実践 Generalization」と「その後の実践の継続 Maintenance」

・最初の実践は、部下がいることと、学ぶ意欲が高いことが、有意に後押ししていた。
・最初に実践した人ほど、また、自分に変化が生じていることを実感した人ほど、実践を継続することがわかった。
・研修前からの学びに対する動機の高さは、実践の継続も、実践の結果の効果の実感も、直接高めた。

img014%20%282%29.jpg

・本研究の最も重要な結論は、研修参加前の学ぶ意欲は、最初の実践だけでなく、実践の継続においても比較的大きな影響力をもっていたことである。
 
===

集合研修の転移に関する実証研究2(佐藤・今城・宮澤 2015)
https://www.recruit-ms.co.jp/research/thesis/pdf/2015JAIOP02.pdf

・転移で最も重要なのは、研修で学んだことと仕事との関係性を見極め、それを仕事で使おうとする意図である。

・実践目標は、研修での学びの内容と関連して設定される傾向がある。
・実践目標の内「部下」「育成」「コミュニケーション」「権限移譲」「目標」の記述有無が、職場実践の有無と有意な関係にあることが確認された。

・(参加者が)直面する重要な問題の解決につながる実践目標を設定することが、職場での実践につながる。
・管理職2年目以降では、仕事を手放し、部下に任せることが最も取り組むべき課題になる。

・実践目標が、受講者の直面している課題に沿うものであれば、職場実践につながりやすいことを確認した。

===

今城さんの博論を元にした書籍『採用面接評価の科学』(今城2016)

IMG_5140.jpg

・対人認知の内容は「温かさ」と「有能さ」の2つの側面からなる。
・性格五大因子を、更に2因子にまとめた研究結果からは「外向性」は有能さに、「情緒の安定性」は温かさに関連しており、有能さと温かさの両面が一般に評価されていた。

・欧米の採用面接では、評価したい職務上の行動特徴に関して直接の情報収集ができるのに対して、日本の採用面接では評価したい職務上の行動特徴につながる一般の行動特徴が何かを推論した後、その一般的な行動特徴が学生時代のどのような行動として現れるかの推論を行い、その行動に関する情報収集を行う必要がある。

img017%20%282%29.jpg

・このように職務適合潜在力の評価においては、推論を重ねる必要があるため、結果的に予測精度が低下する可能性が高くなる。

img016%20%282%29.jpg

・当初設定した面接評価内容に関する概念的枠組み

img018%20%282%29.jpg

・再検討を行い改訂した概念的枠組み

===

今城さんが、コーチング勉強会で、紹介してくれた文献

『Beyond Levels: Building Value Using Learning and Development Data』(Kraiger & Surface, 2017)
https://trainingindustry.com/magazine/nov-dec-2017/beyond-levels-building-value-using-learning-and-development-data/

・What is of value for whom? 誰にとっての価値なのか?
・主観的な価値判断は、ステークホルダーによってそれぞれ違う。

・2つの質問:
  How well did I do? どのくらい自分は良くできたか?
  How can I do it better? もっと良くするためには?

・L&DにおけるROIを、経営陣が見たがっているというのは、神話である。

・経営陣にとって、最も価値あるデータは、組織が
 −適切なタレントを採用し維持できているか
 −彼らが効果的に仕事をするための準備ができているか
 −経営陣を継げる今と将来の世代を用意できているか という点である。

・評価データが価値を持つのは、ステークホルダーに使われたときだけである。
・常に、2つのシンプルな質問に立ちかえるべきである。

===

今城さんがお薦めしてくれたRMS元社長 大沢 武志氏(1993)の『心理学的経営』。絶版だったものを、RMS社員の方々が、PHPさんに依頼し復刊させたとのこと。

IMG_5149.jpg

・矛盾に満ちた組織の現実をありのままに理解しようとするところに、心理学的経営を論ずる意味がある。
・心理学的経営の目指すところは「人間を大事にする経営」ということになろう。つまりは「個性」を尊重するという考えにたどり着く。本書では、ユングの性格類型論と、MBTIというパーソナリティーテストを中心に、個性の問題を論じる。

・かつてリクルートは若者が生き生きと仕事をしている「不思議な新人類会社」として注目を浴びた。
・若者を仕事に駆り立てる、内的動機付けにとって最も重要な心理条件3つ:自己有能性、自己決定性、社会的承認性

・「ホーソン実験」に参加した6名の少女たちからなる集団は、自分たちが選ばれた集団であること、新しい試みに参加し、皆から注目されていることを知っており、そのことが彼女たちに、特別の心理的効果をもたらした。それが「ホーソン効果」。

・人間は、自然を破壊していくことによって、周囲からエネルギーを摂ることができる。
・人間という生命体は、無秩序な状態から秩序化された状態を自己組織化する過程で、無秩序を放出し、エントロピーを増大させるという矛盾した存在なのである。

・組織において、管理者が発揮すべきリーダーシップは、2つの要素に集約されると考えて大きな間違いはない。「集団維持機能 Maintenance」と「目標達成機能 Performance」

・何ができるかという「使用価値」と、どういう影響力を醸しだすかという「存在価値」の2軸で、企業人評価を行う。いずれも評価が高い人は「できる奴」使用価値は高く、存在価値に難点がある人を「一匹狼」存在価値は高いが、使用価値が不十分な人を「いい奴」いずれも物足りない人を「ダメな奴」と4分類できる。
・社員一人一人の個性に目を向け、人間としてどこまで尊重できるのかを経営の命題とする人材経営の時代において、存在価値という観点からの発想が重要な意味を帯びてきたのである。

img020%20%282%29.jpg

・問題解決にあたって、4つの機能すべてが駆使されなければならない。
・不得意な機能は、日ごろ使うことがないから発達しない。

○こういう本を、社長が書いてくれているリクルートは、やっぱり強いよな〜。

===

今城さん、ありがとうございました! これからも色々教えてください。

●今城さんのFBコメント

ありがとうございます。びっくりするくらいコンパクトに要点がまとまっていて、自分でも参考になります!

===

講師ビジョン 島村さんからのメール

関根さん、こんばんは。ブログ拝見しました!

今回、特に参考になったところは、以下の2点です。
>本研究の最も重要な結論は、研修参加前の学ぶ意欲は、最初の実践だけでなく、実践の継続においても比較的大きな影響力をもっていた

今回、最も気になったところは以下の部分です。
>・転移で最も重要なのは、研修で学んだことと仕事との関係性を見極め、それを仕事で使おうとする意図である。

研修参加前の学ぶ意欲は、一般的に上司による介入があると研修転移が促進されると説明されます。この点は、私もそうだなと感じます。

しかし、上司の介入が現実的にできるのかというと、上司自身も仕事に追われてしまう中で、かなり難しい部分もあるのではないかと思うのです。

1つの例としては、事前課題について上司が参加する部下について、事前課題シートに記入するように教育部門から依頼されるという例があります。このアプローチは、上司自身が記入することによって意外と時間が取られてしまうというデメリットがあります。

一方、参加する部下自身が上司にヒアリングする形式で事前課題のアプローチする会社があります。それは、上司自身が記入するのではなく、部下にヒアリングされ、部下自身が記入するので上司の記入負荷は減りますし、部下の学びに対する主体性が求められるので、有用なアプローチだと考えます。

これは、研修前の上司の関わりを、教育部門の側面サポートで部下自らが動いて上司を巻き込むように設計するということです。

このアプローチは、個人的にとても有用だと感じています。育成側に依存せず、部下自身で上司を巻き込み、自ら評価を得て成長に繋げようとするからです。

この際に部下が上司にヒアリングしたり、確認する内容は、研修テーマにおいて、自分の業務上、なぜこの研修を受けたいのか、そして、どう活用したいと思っているのかを記入しそれついて上司の考えを確認することが大切です。

これにより、研修後の実践や継続的な活用が期待できると考えます。

以上、感想です。いつも勉強させていただいております。引き続きよろしくお願いいたします。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://learn-well.com/xbitmtop/mt-tb.cgi/1393

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)