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2020年03月26日

「組織社会化」本『人材開発研究大全(抜粋)』

2020年3月25日に実施するオンライン研修「先行研究に学ぶ!新人適応支援の原理原則」のために、改めて読んだ「人材開発研究大全」です。

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「組織社会化」に関連する章を抜粋して載せています。

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第3章 企業の視点からみた「大学時代の経験の効果」

・中原(2014)は、選抜ツール研究を概観した上で、個人の将来の業績を予測するために最も有効なのは「実際に仕事の一部に従事させること」だとしている。

・本研究の結果から「授業外のコミュニティを持っている学生」「大学生活が充実している学生」ほど、(入社後に)プロアクティブ行動をとっているという結果が見られた。

・大学と企業での経験は切り離されたものではなく、関連が深いものなのである。

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第4章 学校から仕事へのトランジション

・本研究では、企業でのキャリアの躍進を、組織の中で革新的な行動がとることができること、つまり「個人の革新行動」と定義した。

・個人が革新的な行動をとるには「信頼の蓄積」が必要であり、その前提として、組織社会化の進展、つまり組織になじむことが重要である。

・組織の中で個人が革新的な行動をとるには、前段階として、与えられた仕事をその期待通りかそれ以上にこなすことができる業務能力を有していることが必要なのである。

・個人が革新的な行動をとるにはその基盤として、組織社会化と業務能力の向上が必要であるといえる。

参考:
『高校・大学から仕事へのトランジション』
http://learn-well.com/blogsekine/2020/03/post_509.html

『活躍する組織人の探求:大学から企業へのトランジション』
http://learn-well.com/blogsekine/2016/10/post_476.html

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第8章 入社後の初期キャリアに対する就職活動の影響

・「就職活動を通じた変化」は、入社3〜5年目の「仕事への自信」と「満足・定着意思」の両方に正の影響を及ぼすことが分かった。その影響は「第一希望の企業に入社」できたことよりも大きい。

・「就職活動を通じた変化」がんかえれば、企業側が初任配属で様々な配慮をしたとしても、それを好意的に受け止められず、OJTの効果が上がりにくかったり、職場における「居場所」が確保しずらかったりといった状態に陥る。

・就職活動で「自己探索」と「環境探索」を行うことで、働くことに対する意識のポジティブな変化が起こり、その結果、入社予定希望に対する満足度に影響を及ぼしていると考えられる。

・「就職活動を通じた変化」につながるよう支援していくことが求められる。

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第9章 組織社会化研究の展望と日本型組織社会化

・「組織への参入者が、組織の一員となるために、組織の規範・価値・行動様式を受け入れ、職務遂行に必要な技能を習得し、組織に適応していく過程」(高橋1993)

・高橋(1993)による定義は、多くの組織社会化の定義を集約してまとめあげているという点で、組織社会化に関する定義の最大公約数として適用することが可能である。

・図3
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・ネガティブな側面も含めた、現実に基づく職務情報を正確に提供するRJP(Realistic Job Preview)は、若年層の早期離職を抑制できることが、メタ分析でも実証されている(Phillips 1998)。

・我が国においては、職務(Job)だけでなく、組織全体についての現実的な事前説明(Realistic Organization Preview)や、組織内でのキャリアパスについての事前説明(Realistic Career Preview)が必要であり、情報範囲の拡大が求められる。

・Schein(1988)では、社会化に対する個人の反応を「反抗」「創造的個人主義」「服従」の3つのタイプに分類している。このうち、タイプ1と3は、社会化の失敗を意味している。
・タイプ2の反応を作り上げることが、多くの組織の方針。組織は職場における重要な価値観や規範は受入れ、そこは上手く順応するが、その中でも自分らしさや自分の信念に基づき、創造的な思考や行動をとることができる個人が「創造的個人主義」である。

・図6
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・個人を上手く組織に社会化させることは、個人だけではなく、組織にとっても有意義である。

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第10章 OJTとマネジャーによる育成行動

・OJTとは「職場において行われる訓練」であり、通常は1対1の指導の形態をとる。

・OJTを、単に知識、スキルを移転する行為としてではなく、個人が経験から学ぶことを支援する行為として、そして、オープンタスクに従事する人材を指導するために、問題解決を支援する活動として、OJTを位置づけなければならない。

・OJT研究の起源は、第一次世界大戦時に造船所で実施されていた職業訓練方法にさかのぼる。アメリカの技術者C.アレンは「見せる→説明する→やらせてみる→チェックする」という4ステップからなる指導法を考案した。

・クローズドタスクの場合は、演繹的OJT
 オープンタスクの場合は、帰納的OJTが、行われることが多い。

・優れたOJT担当者ほど、経験から学ぶ能力を伸ばす形で、部下、後輩を指導していることが分かった。

参考:
OJT研究会(2014)
http://learn-well.com/blogsekine/2014/07/ojt_6.html

OJTに関する英語本
http://learn-well.com/blogsekine/2014/07/ojt_5.html

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第11章 OJTと社会化エージェント

(これは、私と中原先生で書いた章なので、カット)

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参考:
「面と線でとらえる新人教育〜OJTと組織社会化の知見を参考に」(関根2014

「効果的なOJT指導員制度の設計・運用ポイント〜「プレマネジメント経験」という観点から(関根・三澤2017

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第12章 OJT指導員の支援行動

・指導員の支援行動を「最終的に、新人のエンパワーメントをはかる(ことがらをなす力をつける)何らかの意図をもった新人の行為に対する働きかけであり、その意図を理解しつつ、行動の質を維持、改善する指導員の一連のアクションである」と定義する。

・指導員の「組織コミットメント」は、新人の「業務遂行」能力に対する「委譲・人脈拡大」という指導員支援行動の効果を押し上げる働きがあった。

・新人への権限の委譲は、失敗をともなうことも多いと思われる。指導員の組織コミットメントが、この覚悟を後押しする一つの要因となっている可能性がある。

・人脈形成を重視している人の組織コミットメントが高い。

・指導員「指導」という支援行動が、新人の業務遂行能力を減退させてしまうという結果になった。着実に能力を獲得している新人に対して、指導といういわば一方向的な支援行動をとり続けることは、新人の自律性や能力獲得を阻害する(恐れがある)。新人に対しては、能力や時期に見合った支援行動を提供することの重要性がうかがえる。

・指導員の経験を転機と位置づけ、指導員に任命されたキャリア中期の社員の組織コミットメントを高めることができれば、それが支援行動と融合し、プラスの結果につながる可能性が考えられる。

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第14章 新人研修

・新人研修の効果は、仕事に関する知識やスキルを習得させることではない、それよりも、新人が仕事をしていくための心理的準備や会社への愛着を醸成させるためのメンタル効果の方が重要である。

・なぜ、新人は、会社への愛着や仕事への満足感を研修によって醸成することができるのであろうか。それが「知覚された組織支援 Perceived OrganizationalSupport:POS」という概念で説明できる。

・組織サポート(HR施策)は、若年ホワイトカラーの組織コミットメント、成長感、職務満足、離職意思の低減に、ポジティブな影響を及ぼしていることが分かった。

・その中で最も多くの成果変数に影響を及ぼしていたのが「能力開発」であった。

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・新人研修の効果は、POSを感受させ、組織に対する愛着や忠誠心を醸成させ、長期的に定着させる意識を醸成させることを目的とすることが有益である。

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第16章 中途採用者の組織再社会化

・鴻巣ほか(2011)によると、中途採用者の社会化が高く実施されているほど、中途採用者が組織内において、革新行動を担う傾向がある。

・中途採用者が、組織参入時に抱える困難、学習課題には「人脈学習課題」「学習棄却課題」「評価基準、役割学習課題」「スキル課題」という異なる4つがあることが分かった。

・前職と現職が同職種の人の方が「学習棄却課題」を抱える。

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第18章 元外国人留学生の組織社会化

・社会化とはまさに主体の経験からの学習(経験学習)の過程にほかならない。

・上司による精神支援と文化面の支援が十分に得られない場合、技能的社会化は果たせたとしても、文化的社会化を果たせない状態になることが予想される。

・日本人上司の支援を得やすい個人は、異文化間ソーシャルスキルにおける「間接性」を発揮していた。

・経験学習行動が、技能的社会化にも文化的社会化にも影響を及ぼしていた。

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参考:
オンライン研修「先行研究に学ぶ!新人適応支援の原理原則」を実施しました。

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●講師ビジョン 島村さんからのメール

関根さん

こんにちは。ブログ拝見しました。今回も感想を共有させてください。

(参考になった点 
・OJTを、単に知識、スキルを移転する行為としてではなく、個人が経験から学ぶことを支援する行為

(感想 
・どうしても知識や、スキルをどう教えるのかという技術的なことに、目が行きがちなのを踏みとどまらせてくれるような気がしました。OJT担当としては、まず、新人に1年間を通じてどのような経験をさせるのかという計画を立てることが大切ですし、その経験から多くを学ぶように支援するOJTとしての関わりが大切だと感じます。最初は、新人が経験学習サイクルを回せるようになるのを帆走し、最終的には、新人本人が経験学習サイクルを回せるようになるのがゴールだと感じています。

(参考になった点◆
・新人研修の効果は、POSを感受させ、組織に対する愛着や忠誠心を醸成させ、長期的に定着させる意識を醸成させることを目的とすることが有益である。

(感想◆
・私が新入社員だった時に、組織に対する愛着や忠誠心は、上司や先輩の営業同行をさせていただく際に、行き帰りでの会話で営業の仕事を通じて自社の良さについて色々教えてもらう中で、だんだんと育まれていったような気がします。リアルでもオンラインでも上司や先輩との仕事の話を通じて、自社の良さの話などを伺う中で醸成されるのだとするとオンラインでの対話、チャット、メール、映像などあらゆる手段を通じた密なコミュニケーションがこれからの時代にはより求められるなと感じます。

(参考になった点)
指導員「指導」という支援行動が、新人の業務遂行能力を減退させてしまうという結果になった。着実に能力を獲得している新人に対して、指導といういわば一方向的な支援行動をとり続けることは、新人の自律性や能力獲得を阻害する(恐れがある)。新人に対しては、能力や時期に見合った支援行動を提供することの重要性がうかがえる。

(感想)
これは、私が質問術という本を書いたきっかけでもあるのですが、教えすぎると新人本人が考えなくなってしまうということを体験したことがあります。OJTが新人から離れた後、2年目になった元新人が主体的に動けなくなるという現実がよくありました。OJTに年間を通じて頼り過ぎてしまった弊害です。

質問や問いを通じて、新人に考えさせることが大切なのですが、これについては、時期に見合った支援行動の重要性がよく言われます。

私は、質問には感想を聞く質問だったり、気持ちを聞く質問だったりと色々な種類の質問があるので、新人の能力や時期を問わず、どんどん質問をして考えて発言させる機会を初期の段階から増やしていくことが大切だと考えています。

以上です。今回のブログも大変参考になりました。

小池都知事の発表後、新人研修実施の最終シナリオが変更され、自宅から新人研修を受ける企業が増えてきたようです。

在宅勤務しながら、組織社会化をどのように進めていくのか?
在宅勤務しながら、業務をどのように教えるのか?
在宅勤務しながら、どのように主体性を伸ばしていくのか??
在宅勤務しながら、どのように会社に愛着を持たせるのか?

このようなことを考えるきっかけを頂きました。今回も貴重な情報をありがとうございます!

(島村さん、ありがとうございます!)

2020年03月19日

「トランジション(移行)」本『高校・大学から仕事へのトランジション』

○新人の早期適応支援を考える参考に。

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・学校から仕事へのトランジション(移行)は「フルタイムの学校教育を修了して、安定的なフルタイムの職につくこと」と定義される。

・中原・溝上編(2014)は、初期キャリアへの適応の一つを、組織社会化と見なして、初期キャリアまで拡張した学校から仕事へのトランジション研究を行っている。

・保田・溝上(2014)の結果、大学時代の経験、とりわけ「二つのライフ」(大学1,2年次に将来の見通しを持っていて、その実現に向けて努力していたかどうか)が、組織社会化に最も効いていることが分かった(.16)。

・後期近代の社会において、若者が自身(内側)に準拠点(価値や信念、目標)を置き、それに基づいて行動や活動を外側(環境や社会)に放射していく、すまわち「インサイドアウト」の力学が新たに求められるようになった。

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・学校卒業即就職という「間断のない移行」は、これまでの日本社会においては、堅持すべきものであった。

・サロウの「職業競争モデル」 仕事待ち行列の並び順を決める要因が「訓練可能性 Trainability」。
・企業はできるだけ早く「訓練可能性」の高い学生、生徒を囲い込もうとすることにあり、それが「間断のない移行」をうながすことになる。

・労働経験が無いということは、訓練費用が高い労働者ということになる。

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・大学教育において、学生を「育てる」とは何なのか?大学生にとって習得すべき「学力」とは何なのか?

・入学試験政策は、ここ20年の間に大きく変化した。この変化を荒井(2005)は「入試政策から接続政策へ」ととらえ、入試が厳しい選抜試験から、緩やかな適性検査へと変化したと述べる。

・ホワイトカラーの3職種が「頭脳(ブレーン)」と「手(ハンド)」に分解した。

・学校で習得すべき能力には、旧来のアビリティだけではなく、コンピテンシーも含まれる。

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・「後期近代」は、流動化、リスク化、不安定化、個人化、再帰化、グローバル化等の諸特徴が近代社会よりもはるかに高まった社会。

・コンピテンシー論で重視されているのは、行動を生み出す原因となり、潜在的で開発困難とされるコンピテンシー。

・OECD-DeSeCoのキーコンピテンシーの3カテゴリー
 1)道具を相互作用的に用いる 2)異質な人々からなる集団で相互に関わりあう 3)自律的に行動する

・A.トフラーは「21世紀の非識字者は、Learnし、Unlearnし、Relearnすることのできない人たちだ」(1970)

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・社会に漕ぎ出ていくための主体的準備に、在学中から取り組んでおく必要がある。

・キャリア教育は、非日常の教育活動であるがゆえに、容易に「イベント化」してしまう危険性もある。「華やかさ」の裏側には、教育実践としての「薄っぺらさ」が潜んでいるのかもしれない。

・キャリア教育の大半が目指す人材像は、相変わらずの「正社員」モデルであり、今ある労働市場に何とか入り込み、そこで適応していくことのできる人材なのではなかろうか。

・キャリア教育には、本田(2009)が主張するような意味において「適応」だけではなく「抵抗」を教えていくという側面が絶対に必要である。

・若者の側が、身を守る抵抗力をもちえず、ひたすらに適応主義的にだけ振舞っていたら、いいように食い物にされるという危険性は、否定しえない。

・厳しい労働市場を漕ぎ渡っていくために必要な社会認識や身を守る術を身につけるべき。

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・アイデンティティ資本モデルの仮定:人は、人生で出会う葛藤を、自分にとって意味があり、成長をもたらすようなやり方で解決しようとしつつ、特定の形式での貢献を求める社会的要請と結びつけながら、ライフステージを歩み進める。

・後期近代社会において、ライフコースはより「個人化 individualized」されてきている。不可欠なのは様々な資源。

・アイデンティティ資本モデルは、人は個人化の過程で、アイデンティティ投資をすることによって、後期近代の制度の穴や欠陥を利用したり補完したりすることができることを提案している。

・アイデンティティ資本モデルは、ある程度、現代の後期近代の高等教育の文脈を、上手く生きている者と、生きていない者とを分別することができる、とは言えるようである。

・後期近代のアイデンティティ資本のポートフォリオ

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・後期近代のアイデンティティ市場において、力強く伍していくのに必要とされるもの。

・アイデンティティ資本モデルとは、上手く資源を交換している者からどのように学ぶかの方法であり、資源を交換することに苦労している人に、その知識をどのように伝えていくかの方法なのである。

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・「やりたいこと」を通してアイデンティティを実現しようとしていることが、かえって彼らをフリーターという不安定な地位に押しとどめることになる。

・仲間意識の強さや、相互扶助のシステムが、かえって彼らを社会経済的に不安定な地位にとどめておいてしまう。

・若者のパーソナルネットワークに、どのような他者が含まれているのかは、若者の進路決定にとって重要な意味を持つのである。

・多元性が高いほど(自己の多元化)、自分自身を好きで、自分に自信があり、時間的展望や高い対人関係スキルを持ち、自己啓発的な態度を示すという、分析結果。

・難易度の高い大学の学生ほど、友人関係に恵まれていないと感じ、対人関係スキルが低く、自己啓発的な意識や態度を持っていない。

・調査データが示唆しているのは、自己の多元化が、進路意識と肯定的な関係を持っているということ。

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・自己のアイデンティティの形成、維持をもっぱら個人の能力や努力にゆだねようとする傾向こそが、かえって若者一人一人のアイデンティティ危機を強めているのではないか。

・ひきこもりやニート状態にいる若者たちの仕事への移行にとっては「居場所」のような中間的段階がまず必要。

・「運命決定的」な岐路では、外部からの支えが必要。

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・「やる気を失っている大学生にどのような支援や介入をすれば、彼らは成長しますか?」という問いに対して、コテ先生は間髪入れずに「Too Late!」と答えた。

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参考:『活躍する組織人の探求

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●講師ビジョンの島村さんから頂戴したメール

関根さん

こんばんは。ブログの感想お送りします。今回は、事例ではなく感想の共有になりますが、よろしければ、読んでいただけたら嬉しいです。

(参考になった点)
>大学1,2年次に将来の見通しを持っていて、その実現に向けて努力していたかどうか)が、組織社会化に最も効いていることが分かった(.16)。
>若者が自身(内側)に準拠点(価値や信念、目標)を置き、それに基づいて行動や活動を外側(環境や社会)に放射していく、すまわち「インサイドアウト」の力学が新たに求められるようになった。

(感想)
大学だけでなく、組織においても次のポジションへ向けて、前もって努力している人がより活躍する傾向にあると思います。2つ上のポジションの人がどのように捉えるのかなど日々意識することが大切だと思います。

働く上での価値観や信念は、人それぞれ異なリます。学生の時に不遇の環境にいた人は、その劣等感をバネに組織の中で飛躍する人もいます。一方で、震災以降、より社会のためにという価値観をいただくようになった人もいます。先日、知り合った学生も働く上でのビジョンが明確な方がいました。ただ、ビジョンがないといけないわけではなく目の前の楽しいことをやっていく先に人生を切り開いていくタイプの人もいるようですので、色々だなと感じます。


(参考になった点)
>労働経験が無いということは、訓練費用が高い労働者ということになる。
>若者の側が、身を守る抵抗力をもちえず、ひたすらに適応主義的にだけ振舞っていたら、いいように食い物にされるという危険性は、否定しえない。
>・厳しい労働市場を漕ぎ渡っていくために必要な社会認識や身を守る術を身につけるべき。

(感想)
厳しい経済環境の時は、訓練費用が高い労働者は採用されづらくなり、顧客から求められなくなリます。職場には色々な酷い環境もありますし、経営が人を軽んじることもある。

私が受けてきた大学教育では、現実的に悪い職場環境下に置かれた時や、自分が不遇な環境に置かれた時の対処法に関する教育はほとんどなかったという印象です。困難を取り超えていく術を身につけることはこれからの若者の必須条件といえると思います。自分の身は、自分で守る。そして、社外に良きメンターを持つことも必要だと思います。社内という閉ざされた環境だけに身を置いておくのは非常に危険だと思います。

以上です。

いつも勉強させてもらっています。学生から社会人へのトランジションの話はとても興味深いです。引き続きよろしくお願いします。

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講師ビジョン株式会社
代表取締役 島村 公俊

(島村さん、いつもありがとうございます!)

2020年03月15日

オンライン研修実験(1)「研修開発ラボ:オンライン版」を実施しました。

ラーンウェルの関根です。

2020年3月13日(金)ダイヤモンド社様@渋谷で、「研修開発ラボ:オンライン版」を実施しました。

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12時、皆で昼食を食べながら、打ち合わせ。(日本だじゃれ活用協会 代表でもある鈴木さんから「初のイベント〜なので、それにふさわしいおべんと〜をお願いします」という無茶ぶりをされながら、美味しいお弁当をご用意くださったダイヤモンド社の広瀬さん、ありがとうございました。)

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2月21日に、3月13日(金)研修開発ラボ:講師実施編のキャンセルが決まりました。しかし「ただキャンセルにするんじゃもったいない!その日をおさえてくださった参加者もいるわけだし、せっかくだからオンラインで実験してみよう!」と、ラボメンバーと打ち合わせを重ねて、今日を迎えました。

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技術サポートをしてくれているチーム企のKazumaが、メインファシリテーター 講師ビジョンの島村さん、ラーニングクリエイトの鈴木さんと、最終確認。

13時過ぎ、アクセスリハーサルで、早めに、Zoomにログインしてくださった参加者と、鈴木さんがやりとり。ああいうウェルカムな雰囲気づくりは、さすがです。

(参加者には、メインセッション時は、ミュートにするよう指示。ミュートにしていない時は、ホスト側が見つけて、ミュートにしていく。そうでないと、音が入って、聞こえにくくなる。)

13時30分、鈴木さんの進行でスタート。13時40分、立教大学 中原先生も急きょ参加して下さり、メッセージを発してくれました。

・オンライン学習は、今後の人材開発の一丁目一番地
・(オンライン会議等の活用は)ビジネスの基礎スキルとなる。
・「今年は無理だから」「人材開発は後回し」という風潮になるかも。
・こういう時だからこそ、学びを止めない。
・新人もチャレンジしているのだから、我々もチャレンジすべき。
・ピンチをチャンスに変えていこう。

(中原先生、大学も大変で忙しい中、ありがとうございました!)

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13時55分、島村さんの進行で「オンライン意見交換」がスタート。(76名が参加)

・4月に、新人集合研修ができないと、現場に何が起こるのか? 逆にメリットは無いのか?
・年間を通じて、新人を育てていくとしたら?

という問いに対して「ブレークアウトセッション」で、少人数のグループに分かれ、意見交換をします。

私は、私含め3人のグループに入りました。鈴木さんの発案で、Googleスプレッドシートに、意見を記入します。こうすれば、他グループの意見も後で見ることができます。(ただ、セキュリティーの関係で、Googleスプレッドシートが開けない会社さんもありました。)

その後「メインセッション」に戻ってきて、他グループで出た意見を共有します。

・どの集合研修を削るか?
 (集めない分、交通費・宿泊費のコストを削減できる)
・新人の横のつながりをどう作るか?
 (LINEでグループを作成する、小グループでの活動を増やす)
・現場OJT担当への負担が増えるのでは?
 (新人の知識、技術レベルのチェックシートを作り、新人の現状把握ができる状態にして、現場に送り出す)

といった声が上がりました。

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15時、終了後、ラボメンバーで打ち合わせ。次のセッションの準備に入ります。90分、集中して、Zoomに向き合った為か、少し頭が痛くなったので、窓を開けて換気をします。

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15時30分、鈴木さんの進行で「オンライン研修での講師術」をスタート。(69名が参加)

オンラインで研修を「準備」「実行」する際の「難しさ」と「工夫」を、ブレークアウトルームで共有します。私は、6名のグループに入りました。たまたま、風間さんと同じグループだったので、彼に進行役を任せ、私は書記役として、Googleスプレッドシートに記入をします。

メインセッションに戻り、クラスで意見を共有します。その後、鈴木さんから、Zoomの「使える機能」の説明や、オンラインで研修を運営するコツを講義してもらいました。

16時45分ごろ、座りっぱなしで、お尻が痛くなったのと、なんとなく画面上の参加者の顔が疲れているように見えたので、急遽、ラーンネクストの栗原さんに「整体セッション」を、オンラインでお願いしました。

・こぶしでほっぺたをグリグリ
・こぶしで、眉毛の上、おでこ、生え際をグリグリ。
・椅子から立って、伸びをして、脱力〜。

同じ動作を、25人の映像(5×5)が、同時に行っている様は、何か一体感があって良かったです。

16時55分、参加者との質疑応答をします。チャットも活用し、なるべく多くの方の質問を拾えるよう心掛けました。

個人的には、参加者から上がってきた「オンライン研修は、参加者と一緒に作り上げていくもの」という言葉がとても印象に残りました。完璧なものを用意するというよりも、スピーディーに、参加者と即興的に作っていくというのが、オンライン研修の良さからもしれませんね。

17時05分、終了。

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17時30分、人数は一挙に減ってしまいましたが、オンライン懇親会に入ります。

今回は実験なので、あえて個室で飲むメンバーや、近くで飲むメンバー(ハウリングするか)を作り、懇親会をやってみました。

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懇親会の進行役 ラーンフォレストの林さん。

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18時ごろ、お笑い芸人オシエルズにも参加してもらい「オンライン漫才」をやってもらいます。彼ら曰く、観客の反応が見えない中「無観客漫才」をするのは、地獄のようとのことでした。

その後「レーザーポインター」「中原淳」といったネタを使った即興漫才も披露してくれました。私たちは見慣れていますが、今回初めてオシエルズの即興漫才を見た参加者は、そのすごさにびっくりしてくれていました。

(参考:オシエルズの漫才「オンライン研修の可能性」)

19時、終了! 参加者の皆さん、お疲れさまでした。ありがとうございました!

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19時30分ごろ、ラボメンバーと良く行く居酒屋で「飲み会議」。ここは、オンライン中継はされていないので、気楽に飲みます。皆さん、お疲れ様。今回の企画運営にご尽力下さったダイヤモンド社の広瀬さん、永田さん、ありがとうございました!

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●ラーンフォレスト林さんのブログ記事 

2020年03月10日

「研修転移」本『越境する対話と学び』

伊藤精男先生の論文で引用されていた本。長岡先生、岡部先生、堤さんといった知っている方々も寄稿されている。

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・「喜び」としての「学び」
・「喜び」を味わうために、コミュニティは作られなければならない。
・我々は「教わり学ぶ」という根深い発想から離れる必要がある。

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・エンゲストロムは、熟達による学びを「垂直的学習」とするならば、越境による学びを「水平的学習」と捉えるべきだと論じた。
・越境による学びは、何かに熟達するプロセスとは違って、ものの見方が変わるプロセスであり、更には自分自身の在り方が変わっていくプロセスでもある。
・佐伯(1995)は、「ヨコ」の学習と「タテ」の学習を区別する。「ヨコ」の学習とは、個人があるテーマについて熟達していくタイプの学習である。「タテ」の学習とは、自分のできることそのものを拡張し「何が価値のあることか」を学ぶことである。

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・活動理論は、ロシアを中心に展開されてきた心理学のアプローチで、ヴィゴツキーの影響を受けながら、レオンチェフが展開した。

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・活動理論では「道具」を必ず分析に含めるのがユニークな点。
・ヴィゴツキーの考え方には、人間は道具を通して世界と関わっている、という基本的な認識がある。

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・研修と実践の乖離改善には「研修で知識を十分学ばせ、現場でそれを適用させる」転移モデルから脱し、現場を直接改変していく越境モデルが必要になる。

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・研修での「人と人」「人とモノ・環境」との相互行為の特徴と、現場でのそれらとの違いを良く調査、検討し、研修での相互行為を、より現場のそれに接近させる方法を検討する必要もある。

・現場を良く知る人物や、管理者らと協働で研修を設計していくことが、状況間の乖離改善には求められる。

・行動主義や認知主義が、個人の変化を学習と捉える「個体主義」の立場にたつのに対し、活動理論は、集合体や相互行為といった人やモノとの関係性の変容を学習と捉える「関係論」の立場にたつ。

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・組織にとって好ましい行為や考え方を個人が身につけた時にのみ「学習」とみなされる。学習の評価において重要なのは、共同体にとって何が「正統性をもつ(Legitimacy)」とみなされるかである。

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・組織を変えたいと思ったときは、継続的、長期的に活動を続けることで、蓋然的に、必ず変わる、ということを理解した。ただし、ある集団が変わるには、時間がかかることも理解し、非難や拒絶の声を恐れず、あきらめない覚悟も必要である。

・組織の仕組みや流れをじっくりと見通し、いくつもの「筋」を見つけ、その「筋」に捕らえられたままの状態でも参加できるように工夫することが、プロジェクトを仕掛ける側のまさに業務である。

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・コミュニティには、すでに歴史的に生み出してきた(時に眠った)有用な知恵や資源(変化の種)が存在する。

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・境界を越えつつも維持するという緊張関係から、創造は生まれる。

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・コミュニティの質向上を図るには、参加者のお客様意識を排除し、HRDMコミュニティの一員として、日本の人材育成に貢献することに参画しているという共通認識を作り上げることが大切。

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・大澤(2008、2009)は、戦後の日本社会を「理想の時代」「虚構の時代」「不可能性の時代」と3つの時代区分で把握している。「不可能性の時代」としての現代社会の特徴の一つとして「第三者の審級の撤退」があげられる。

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・大学というメタファーを用いたまちや地域コミュニティとのかかわりを実現する方法。

・功利的な合目的性や特定の目的を設定しないことで、アンラーン的、学びほぐしの効果を発揮させる。

・墨東大学では、一方的にまちでの体験を消費するだけではなく、まちとの関わりを持ち、その成果をまちに還元することを目指し、卒業制作を卒業要件として義務付けた。

・目的を、あえて曖昧にすることで、人々をゆるやかに巻き込むモビリティが形成されたとも考えられる。「浮遊する行為 floating action」「根無し草的実践」と呼ぶことができる。

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・集団の内か外かという境界が比較的クリアであるのが「うつわ型」「箱型」の集まり。ゆるやかだったり、つかの間だったりするが、何らかの時に一気に集合する活動が「拡集的ネットワーク」である。

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【参考】
デザインド・リアリティ

変革を生む研修のデザイン

組織開発研究会」(2011年6月〜7月)

「経営学習論:越境学習」(2012年7月)

『Learning as Transformation 変容としての学習

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○研修の現場実践を促すために、知識・スキルの「転移」を図ろうとするのではなく、文脈1(研修室)と文脈2(職場)を横断する「越境」として捉えるというのは面白い!

 文脈1(研修室):短時間、一時的、本人にとっての重要度低
 文脈2(職場):長時間、継続的、本人にとっての重要度高

文脈2(職場)から、たまに、文脈1(研修室)に、越境することになるので、
そこで、自身のものの見方やあり方を再検討する機会とする。

ただ、そこから、元の文脈2(職場)に戻った時には、文脈1(研修室)で起こった変化の持続が難しい。

文脈2(職場)と、文脈1(研修室)の類似性が高いほど、転移は起きやすい。しかし、違う文脈を横断する「越境」にはなりにくくなる。そうすると、自身のものの見方やあり方を再検討する機会とはなりにくい。

う〜ん、まだまだ考えてみよう。

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●講師ビジョンの島村さんからのメール

関根さん、いつもブログを拝見しています。ありがとうございます。今回も感想と事例をお送りします!

(特に参考になった箇所)
研修から文脈2(職場)に戻った時には、文脈1(研修室)で起こった変化の持続が難しい。文脈2(職場)と、文脈1(研修室)の類似性が高いほど、転移は起きやすい。しかし、違う文脈を横断する「越境」にはなりにくくなる。そうすると、自身のものの見方やあり方を再検討する機会とはなりにくい。

(感想)
一人で研修を受けるとどうしても、組織の問題で実践しづらいなどが生じてくるなと思います。部門単位で研修を受講するのがいいと思いました。部門別でその部門の課題解決に繋がる研修を企画することで、みんなで組織を変えようという様になるのだと思います。

(事例)
とある会社の技術部門で社内会議の時間がいつも長くなり、残業時間も増え、非効率な状況をなんとかして変えたいと考える責任者がいた。今まで何人かの部下が会議のためのファシリテーション研修を受講していたのは知っていたが、なかなか実践に苦しんでいるようだった。そこで、責任者は、部門全体で研修受講をしようと思いたった。内容も技術部門の会議テーマをもとに実践的な会議ファシリテーションを学べるようにして、その研修内で今後の会議ルールをみんなで決めた。そして、それを実践してみて、ルールを部会でアップデートしていく事を取り決めた。徐々に技術部門全体で、会議ルールを実践していくようなり、研修内容をみんなで職場で実践し、効率化が実際に進んでいった。

以上です!引き続きよろしくお願いします。

講師ビジョン 島村

(島村さん、いつもありがとうございます!)

2020年03月05日

「研修転移」論文(伊藤精男先生)_200302

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伊藤精男先生
http://ras.kyusan-u.ac.jp/professor/0000833/profile.html

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研修効果の転移条件〜アクターネットワーク理論の視点から
http://54.64.211.208/dspace/bitstream/11178/310/1/02_Itoh.pdf

・Kirkpatrick(1998)の4水準モデルは、研修効果の把握に関して、共通言語を作り出した点に最大の貢献がある(Wang, Dou and Li, 2002)。

・「研修効果の転移(レベル3)」を促す職場要因の多くは、社会的、心理的側面に焦点を当てた「人的要因」を注視したもの。

・しかし、現実場面における人間行動において、本人を取り巻く自然物あるいは人工物(道具などの「非人的要因」)等の影響をも無視することはできない。

・人と「アーティファクト(道具を含む人の活動を組織する媒体)」の関係をも踏まえた視点からの考察において、ANT:Actor Network Theory アクターネットワーク理論が有用。ANTでは、人、モノ、社会、技術等は、相互に切り離すことができない状態で存在しており、非人的なアクターも、人と同等のアクターとして捉えられる。

・ANTでは、人の行為能力は、環境との関係によって変わり得ることを示唆している。

・「営業日報というモノ」の存在が、H所長のパート社員とのコミュニケーションを改善したいとの意図を具体化したと言いえる。

・支援ツールの現場での活用に失敗した事例は、「社会-道具的ネットワーク」の構築に失敗したもの。

・「研修効果の転移(レベル3)」を考察していく上で「文脈横断」の考え方は、有益な視点を提供してくれる。「研修効果の転移」とは、まさに研修場面(文脈1)での学習内容を、現場(職場:文脈2)で活用するという文脈横断ケースであると捉ええる。

・文脈横断の考え方によれば、研修場面(文脈1)で学習したことを現場(職場:文脈2)で、そのまま「それを適用させる」という「転移モデル」から、異なる文脈を結びつける「越境モデル」への脱する必要があるとする(香川2015)。

・「越境モデル」を踏まえて、香川(2015)は、研修における学習内容を「受講者=(職場に戻った)実践者」が、職場で活用するには、周囲がそれに相当する活動を行っていることが不可欠であるとして、職場そのものの改変が重要であると指摘する。

・(H所長の営業日報への一言コメント記入は)異なる文脈をつなぐ媒体として機能したものと捉ええる。

・異なる文脈を結びつける「境界的オブジェクト」としてのアーティファクトの重要性が示唆された。


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研修転移研究における新たな視座
http://repository.kyusan-u.ac.jp/dspace/bitstream/11178/7914/1/02_Itoh.pdf

・現時点での研修転移研究における知見の到達点として、職場環境の有り様については、1)研修内容の職場での活用、実践における上司のサポート、支持の必要性、2)研修内容の試行機会、時間の確保が重要である旨が共通して指摘されている(中原2014)。

・しかしながら、関根・斉藤(2017)が指摘するように、研修転移研究において「職場」は、いまだブラックボックスに近いものとなっており、転移促進における職場上司や同僚の支援が必要であることは明らかになっているものの、どのようにすることが支援となるのかについて、そのメカニズムまではわかっていない状況にある。

・「社会身体 body social」の考えによれば、本人を取り巻く環境(状況)を変えれば、自らもその一部として構成されている本人のそこにおける行動も変容せざるを得ない。

・社会学的な知見においては、人がある行動をとる場合に、それを説明する視座には大きく2つの立場がある。一つは「性向主義(個人の性格特性を含む、過去に経験したもので身体化された特性によるとするもの)」であり、もう一つは「文脈主義(現在置かれている行為の文脈によるとするもの)」である。

・Lahire(1998他)は「性向+文脈=行動(実践)」という公式を提唱し、人(行為者)がとる行動(実践)原理を説明しようと試みている。

・職場における成員間での相互作用には、ある習慣化した身体図式が作られており、それが一定の習慣的行動(ルーティン)を引き出している。職場におけるそのようなルーティンに巻き込まれていく中で、成員は行動を一定方向へと誘発されていく。この知見は、転移促進を図るうえで、重要な手掛かりを提供するものであろう。

・ミラーニューロンは、他者の行為を自らの脳内で鏡のように映しだす神経細胞群であり、あえて努力しなくても、他者のその行動を見ると自動的に起き(神経が発火し)同じように反応するとされている。

・他者への共感や他者の意図予測の土台は、ミラーニューロンシステムにあると考えることができる。

・一定の習慣的行動(ルーティン)を引き出す状況を作るためには、少なくとも実現したい内容(行動)を、一定数の職場成員が実践しているという状況(それを相互に見ることができるという状況)を作ることが不可欠であるといいえる。

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・研修転移を実現するには、組織ルーティンの問題にまで踏み込む必要がある。

・Sunstein(2015=2017)は、行動経済学の視点から、人の行動をある特定の方向へと向けさせるには、ナッジ(柔らかく押しやるもの)が必要であり、気づかなくともそこにあるという何らかの「デフォルト(選択肢の初期設定)」が、効果的なナッジとなりうることを指摘する。

・研修転移の実現において職場における上司等が、まず考えるべきことは、意図的支援(サポート、フィードバックなど)というより、デフォルトになりうるものの設定といった「条件整備」であると言えよう。

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〇1)職場(文脈2)が、どういう状況にあるのかを把握し、研修(文脈1)を、企画設計する。2)研修(文脈1)から、職場(文脈2)に、横断しやすいよう、デフォルトになりそうな人工物を利用する。3)職場(文脈2)で、多くのメンバーが、その人工物を使っている状況(ルーティンとなっている)を作る、ことこそが「研修転移」ということかな。

〇3)の状況を作るためにも、職場の責任者の理解と協力、最初に熱心に動いてくれる推進者、それを見て真似てくれるフォロワーとかが重要になってくるんだろうな〜。そうなると、やっぱり組織開発的な働きかけになりそう。

〇あとは、既にその職場(文脈2)で、ルーティンになっているものと、研修後に実践してほしい行動とを結びつけられるといいんだろうな〜。そうなると、やっぱり現場を知らないと、研修は組み立てられない。

○引用されていた「越境的な対話と学びとは何か」(香川2015)の本を買って、読んでみよう!

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講師ビジョンの島村さんから頂戴したメール

関根さん

おはようございます。ブログ早速読ませていただきました。
以下、特にヒントを得たところに、事例を記載してみました。

(引用部分)
「越境モデル」を踏まえて、香川(2015)は、研修における学習内容を「受講者=(職場に戻った)実践者」が、職場で活用するには、周囲がそれに相当する活動を行っていることが不可欠であるとして、職場そのものの改変が重要であると指摘する。

(具体例1)
コーチング研修を社内の手挙げ研修で受講。引き出すスタイルはとても有効に感じ、職場で実践して上司に報告したが、上司から「まずはバンバン指示出して数字とってこい!」と言われてしまう例。上司を含めた職場の考え方が変わらないとなかなか実践し続けるのは難しいこともあります。


(引用部分)
・「社会身体 body social」の考えによれば、本人を取り巻く環境(状況)を変えれば、自らもその一部として構成されている本人のそこにおける行動も変容せざるを得ない。

(具体例2)
ここは、その通りで本人に実践する意欲があるのかが問われると思います。とある優秀人材は、研修を受講する際は、職場での具体的な実施場面をある程度、上司と握ったうえで受講する者もいます。研修を受ける前に自ら転移を前提に動いているのです。


(引用部分)
・一定の習慣的行動(ルーティン)を引き出す状況を作るためには、少なくとも実現したい内容(行動)を、一定数の職場成員が実践しているという状況(それを相互に見ることができるという状況)を作ることが不可欠であるといいえる。

(具体例3)
新しいテーマを社内で広めるときは、一定数の職場成員が実践する状況を作りだすために2つのステップを踏むことが多いです。昨今ですとイノベーション文脈でクリエイティブシンキングやデザイン思考の導入などがこれにあたると思います。

1)影響力が高い人をまず受講させ、拡散させる
2)共通言語化を早めるために全階層教育に入れる
いずれにしても時間がかかるものだと思います。

職場の環境という組織開発視点について考えさせられたとても興味深い内容でした。いつもありがとうございます。

島村

(島村さん、こちらこそいつもありがとうございます!)