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「トランジション(移行)」本『高校・大学から仕事へのトランジション』

○新人の早期適応支援を考える参考に。

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・学校から仕事へのトランジション(移行)は「フルタイムの学校教育を修了して、安定的なフルタイムの職につくこと」と定義される。

・中原・溝上編(2014)は、初期キャリアへの適応の一つを、組織社会化と見なして、初期キャリアまで拡張した学校から仕事へのトランジション研究を行っている。

・保田・溝上(2014)の結果、大学時代の経験、とりわけ「二つのライフ」(大学1,2年次に将来の見通しを持っていて、その実現に向けて努力していたかどうか)が、組織社会化に最も効いていることが分かった(.16)。

・後期近代の社会において、若者が自身(内側)に準拠点(価値や信念、目標)を置き、それに基づいて行動や活動を外側(環境や社会)に放射していく、すまわち「インサイドアウト」の力学が新たに求められるようになった。

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・学校卒業即就職という「間断のない移行」は、これまでの日本社会においては、堅持すべきものであった。

・サロウの「職業競争モデル」 仕事待ち行列の並び順を決める要因が「訓練可能性 Trainability」。
・企業はできるだけ早く「訓練可能性」の高い学生、生徒を囲い込もうとすることにあり、それが「間断のない移行」をうながすことになる。

・労働経験が無いということは、訓練費用が高い労働者ということになる。

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・大学教育において、学生を「育てる」とは何なのか?大学生にとって習得すべき「学力」とは何なのか?

・入学試験政策は、ここ20年の間に大きく変化した。この変化を荒井(2005)は「入試政策から接続政策へ」ととらえ、入試が厳しい選抜試験から、緩やかな適性検査へと変化したと述べる。

・ホワイトカラーの3職種が「頭脳(ブレーン)」と「手(ハンド)」に分解した。

・学校で習得すべき能力には、旧来のアビリティだけではなく、コンピテンシーも含まれる。

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・「後期近代」は、流動化、リスク化、不安定化、個人化、再帰化、グローバル化等の諸特徴が近代社会よりもはるかに高まった社会。

・コンピテンシー論で重視されているのは、行動を生み出す原因となり、潜在的で開発困難とされるコンピテンシー。

・OECD-DeSeCoのキーコンピテンシーの3カテゴリー
 1)道具を相互作用的に用いる 2)異質な人々からなる集団で相互に関わりあう 3)自律的に行動する

・A.トフラーは「21世紀の非識字者は、Learnし、Unlearnし、Relearnすることのできない人たちだ」(1970)

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・社会に漕ぎ出ていくための主体的準備に、在学中から取り組んでおく必要がある。

・キャリア教育は、非日常の教育活動であるがゆえに、容易に「イベント化」してしまう危険性もある。「華やかさ」の裏側には、教育実践としての「薄っぺらさ」が潜んでいるのかもしれない。

・キャリア教育の大半が目指す人材像は、相変わらずの「正社員」モデルであり、今ある労働市場に何とか入り込み、そこで適応していくことのできる人材なのではなかろうか。

・キャリア教育には、本田(2009)が主張するような意味において「適応」だけではなく「抵抗」を教えていくという側面が絶対に必要である。

・若者の側が、身を守る抵抗力をもちえず、ひたすらに適応主義的にだけ振舞っていたら、いいように食い物にされるという危険性は、否定しえない。

・厳しい労働市場を漕ぎ渡っていくために必要な社会認識や身を守る術を身につけるべき。

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・アイデンティティ資本モデルの仮定:人は、人生で出会う葛藤を、自分にとって意味があり、成長をもたらすようなやり方で解決しようとしつつ、特定の形式での貢献を求める社会的要請と結びつけながら、ライフステージを歩み進める。

・後期近代社会において、ライフコースはより「個人化 individualized」されてきている。不可欠なのは様々な資源。

・アイデンティティ資本モデルは、人は個人化の過程で、アイデンティティ投資をすることによって、後期近代の制度の穴や欠陥を利用したり補完したりすることができることを提案している。

・アイデンティティ資本モデルは、ある程度、現代の後期近代の高等教育の文脈を、上手く生きている者と、生きていない者とを分別することができる、とは言えるようである。

・後期近代のアイデンティティ資本のポートフォリオ

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・後期近代のアイデンティティ市場において、力強く伍していくのに必要とされるもの。

・アイデンティティ資本モデルとは、上手く資源を交換している者からどのように学ぶかの方法であり、資源を交換することに苦労している人に、その知識をどのように伝えていくかの方法なのである。

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・「やりたいこと」を通してアイデンティティを実現しようとしていることが、かえって彼らをフリーターという不安定な地位に押しとどめることになる。

・仲間意識の強さや、相互扶助のシステムが、かえって彼らを社会経済的に不安定な地位にとどめておいてしまう。

・若者のパーソナルネットワークに、どのような他者が含まれているのかは、若者の進路決定にとって重要な意味を持つのである。

・多元性が高いほど(自己の多元化)、自分自身を好きで、自分に自信があり、時間的展望や高い対人関係スキルを持ち、自己啓発的な態度を示すという、分析結果。

・難易度の高い大学の学生ほど、友人関係に恵まれていないと感じ、対人関係スキルが低く、自己啓発的な意識や態度を持っていない。

・調査データが示唆しているのは、自己の多元化が、進路意識と肯定的な関係を持っているということ。

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・自己のアイデンティティの形成、維持をもっぱら個人の能力や努力にゆだねようとする傾向こそが、かえって若者一人一人のアイデンティティ危機を強めているのではないか。

・ひきこもりやニート状態にいる若者たちの仕事への移行にとっては「居場所」のような中間的段階がまず必要。

・「運命決定的」な岐路では、外部からの支えが必要。

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・「やる気を失っている大学生にどのような支援や介入をすれば、彼らは成長しますか?」という問いに対して、コテ先生は間髪入れずに「Too Late!」と答えた。

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参考:『活躍する組織人の探求

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●講師ビジョンの島村さんから頂戴したメール

関根さん

こんばんは。ブログの感想お送りします。今回は、事例ではなく感想の共有になりますが、よろしければ、読んでいただけたら嬉しいです。

(参考になった点)
>大学1,2年次に将来の見通しを持っていて、その実現に向けて努力していたかどうか)が、組織社会化に最も効いていることが分かった(.16)。
>若者が自身(内側)に準拠点(価値や信念、目標)を置き、それに基づいて行動や活動を外側(環境や社会)に放射していく、すまわち「インサイドアウト」の力学が新たに求められるようになった。

(感想)
大学だけでなく、組織においても次のポジションへ向けて、前もって努力している人がより活躍する傾向にあると思います。2つ上のポジションの人がどのように捉えるのかなど日々意識することが大切だと思います。

働く上での価値観や信念は、人それぞれ異なリます。学生の時に不遇の環境にいた人は、その劣等感をバネに組織の中で飛躍する人もいます。一方で、震災以降、より社会のためにという価値観をいただくようになった人もいます。先日、知り合った学生も働く上でのビジョンが明確な方がいました。ただ、ビジョンがないといけないわけではなく目の前の楽しいことをやっていく先に人生を切り開いていくタイプの人もいるようですので、色々だなと感じます。


(参考になった点)
>労働経験が無いということは、訓練費用が高い労働者ということになる。
>若者の側が、身を守る抵抗力をもちえず、ひたすらに適応主義的にだけ振舞っていたら、いいように食い物にされるという危険性は、否定しえない。
>・厳しい労働市場を漕ぎ渡っていくために必要な社会認識や身を守る術を身につけるべき。

(感想)
厳しい経済環境の時は、訓練費用が高い労働者は採用されづらくなり、顧客から求められなくなリます。職場には色々な酷い環境もありますし、経営が人を軽んじることもある。

私が受けてきた大学教育では、現実的に悪い職場環境下に置かれた時や、自分が不遇な環境に置かれた時の対処法に関する教育はほとんどなかったという印象です。困難を取り超えていく術を身につけることはこれからの若者の必須条件といえると思います。自分の身は、自分で守る。そして、社外に良きメンターを持つことも必要だと思います。社内という閉ざされた環境だけに身を置いておくのは非常に危険だと思います。

以上です。

いつも勉強させてもらっています。学生から社会人へのトランジションの話はとても興味深いです。引き続きよろしくお願いします。

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講師ビジョン株式会社
代表取締役 島村 公俊

(島村さん、いつもありがとうございます!)

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