新入社員が、自分なりの「成功パターン」を見つけようとする際、
経なくてはならない段階、越えなくてはならない壁があります。
それは、「自分にはできない」と感じる不安です。
S字曲線を注意深く見てみると、実は、一旦、線が下がっています。
(Sを横にしてみると、分かります。)
新入社員の成長に照らし合わせて考えてみると、
一旦「成長が下がる」あるいは「自分が成長していない」と感じる時期がくる、
ということです。
この「自分が成長していないと感じる時期」について、別の切り口から見ていきます。
これもご存知の方が多いかと思いますが、「成長の4段階」という考え方があります。
(教育会社の研修や、「インストラクター・トレーニング」などを受けると
出てくるかもしれません。)
人の成長には、4つの段階がある。
1.無自覚の無能 Unconscious Incompetence
2.自覚せる無能 Conscious Incompetence
3.無自覚の有能 Unconscious Competence
4.自覚せる有能 Conscious Competence
1.無自覚の無能とは、「自分ができないことも分かっていない」状態をさします。
新入社員の入社当初の状況です。
本人達は、「自分はこの厳しい就職戦線の中、選ばれてきた。自分ならやっていける!」
いい意味で自負もあり、プライドもある。
ただ、周囲から見ると「おいおい、お前達は、何もできてないぞ。」
でも、本人は分かっていない。そんな状態が「無自覚の無能」です。
それから彼らは、様々な失敗や、先輩社員との仕事を経て、だんだんと気づいてきます。
「あー、自分には、あんな風にできない。」
「自分は、まだまだだなー。」と感じる。
「自分ができないことに気がつく」これが「自覚せる無能」という状態です。
この段階に入ると、新入社員は、自信をなくし、不安を感じます。
「自分にはやっていけないのでは?」
「このままで大丈夫なのか?」
だいたい、配属されて、数ヶ月、フォローアップ研修の時期(秋)あたりです。
だからこそ、皆さんもこの時期は、「フォローアップ研修」を企画し、
「ガス抜き」などをされているのかと思います。
この「自覚せる無能」の時期は、新入社員にとっては「壁」でもあるのですが、
別の見方をすると、次の段階(有能)に行くために必要な「踏み台」であるともいえます。
「自分にはできない」「自分はまだまだ仕事というものをきちんと理解していない」と
気がつく時期ということですから、吸収力があります。
「なんとかしたい」「困っている」という時期ほど、学ぶ意欲が高まるということです。
逆に、いつまでたっても「無自覚の無能」の新入社員は困ります。
「あ、こんな感じでいいんだー。」
「まー、なんとかなるんじゃないの。」
周囲の先輩の影響もあるのかもしれませんが、
あまり深く考えず、悩まずに、社会人生活を送ってしまう。
数年立つと、周りも何も言わなくなり、悪い影響を、後から入ってくる
新入社員に与えてしまう。
つまり「自覚せる無能」という段階、S字曲線で一旦成長が下がる時期、
新入社員にとっては「壁」と感じる時期も、新入社員の今後の成長にとっては
必要な段階であるということです。
ですから、私達、教育担当者にできることの一つは、
彼らを早く「自覚せる無能」という段階にあげることです。
そのために、「君は、〜ができていない」「ここが、だめだ!」等、
言いづらいことも言わないといけません。
あるいは、現場に出し、先輩と仕事をさせる。
意図的に失敗させる。
研修内で恥をかかせる。(憎まれ役になったとしても)
などなど、彼らが「自分にはできない」「自分はまだまだだなー」
と感じるようにしてあげる必要があります。
新入社員にとっては「壁」と感じる時期も、
次の成長には、必要なステップです。
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