皆さん、こんにちは。関根です。
さて、「成果につながる営業教育」第七号のテーマは「研修内容を現場で実践させるには?(1)」です。
前号で、研修内容が現場で実践されない原因は「研修室」「職場」「客先」にありそうだ、ということを確認してきました。
今回は「では、どうしたら研修内容を現場で実践させることができるのか?」について考えてみたいと思います。
「営業スキル研修」で学んだ内容を現場で実践させるには、次の3点がポイントになります。
1)「研修室」で「これは使える!」と思わせる。
2)「職場」で研修内容を忘れないようにさせる。
3)「客先」で使ってみて「使える!」実感を与える。
1)研修室での納得感
営業スキル研修を受けた時に「これは確かに使える。効果的だ」と思わない限り、営業はスキルを使おうとはしません。その為に彼らが納得感をもてるような研修内容、研修の進め方、講師の力量が重要になります。研修内容と研修の進め方については第五号「営業スキル研修を選ぶ際のポイント」で確認をしました。
講師の力量に関しては、正直その研修を実際にやっている所を見たり、企画者である皆さん自身が研修を受講してみない限り、分からないでしょう。ただ、講師自身が営業もしているのならば、その営業の進め方を、または彼が属する会社の営業の進め方を見れば、営業スキル研修のレベルも推し量れるのではないでしょうか。ある意味偉そうに「営業のあるべき姿」を指導する立場にあるわけですから「言っていることが出来ているのか?」を見ることにより、その講師の力量を見ることが出来ます。
私自身は、研修の講師でもあり営業でもありますので、営業スキル研修で伝えていることの実践を常に心がけています。「研修内容の体現者」自分自身が「生きているモデル」であるという認識で行動しています。(たまに上手くいかないこともありますが)
また、納得できる研修という観点で重要なのが「研修での気づき」です。「気づき」とは「経験が整理されること」「成功・失敗の理由が分かること」「腑に落ちること」です。短期的な研修の成果でもある「気づきを与える」こと。何故、気づきを与えることが、研修では重要なのか?それは「自己納得」が「行動変容」を促すからです。「あ、なるほど。そういうことだったのか。だからこの間の面談は失敗したんだ。」という風に自分で納得しないと、人はなかなか自分の行動を変えようとはしません。逆に納得すれば、行動を変えようとします。
イリノイ大学教育開発センターのマクガイヤーさんという方が、こんなことを言っています。「教育とは単に教えることではなく、学習者の行動を望ましい方向に変容させ、かつそれを習慣づけることである。教育は習慣形成をもって終了する。」研修での気づきにより、行動が変わり、それが習慣化することが教育そして営業研修の最終ゴールである。研修室で納得感のある営業スキル研修を受け、気づきが得られても、それだけでは足りません。習慣化させる為に重要なのが、「職場」での意識的活用です。
2)職場での意識的活用
研修内容が実践されない最大の理由は、研修内容が普段の仕事とリンクしていないことです。その結果、時が経てば、研修内容を忘れてしまいます。では、研修内容と日常業務を連動させる為にどうしたら良いのか?忘れさせない為にはどうしたら良いのか? まずは、研修内容を忘れさせない為にどうしたら良いかを見ていきます。研修内容と日常業務との連動は次号以降で見ていきます。
研修内容を忘れさせない為には、本人の努力、上司の指導、職場メンバーの協力、が必要です。
まず、「本人の努力」ですが、研修内容を自分の営業活動に結びつけ、それを実践するように心がけることです。ただ、研修最後のアンケートに「これからは研修で学んだことを職場で実践していきます」などと書いている人に限って、やらないケースがほとんどです。 また、「よし、やろう!」と思ってもどうやっていいのか分からないこともあります。
そこで、研修室での研修中に「現場でどうやって活用したらよいのか?」を本人達に考えてもらうのが効果的です。研修では駆け足で色んな事を学んだという印象を受ける参加者も多いので、いったん立ち止まって、現場の活動に結びつけて考えられるようにします。
例えば「先ほど学んだスキルは現場のどんな場面で使えそうですか?」といったテーマでのグループディスカッションを研修の途中に入れます。すると参加者は、それまでに学んだ内容を現場の活動に落とし込んで考えることが出来ます。
また、現場で実践させる為のツールを提供することも有効です。ツールといって、面倒くさい入力があるモノやフォローアップシートなどといった書き込みの多いモノをやらせようとしても逆効果になります。それではどんなツールが良いのか?
参加者に聞いてみると、現場で活用するためには「何をやれば良いかが明確」「面倒くさくなく」「実際に使える」モノが良いという声が多く出ます。研修を受けた参加者が困るのが「で、結局何をどうやったら上手くいくの?」が分からないまま研修が終わってしまうことです。そこで、例えば新規開拓先への訪問ならば、その時に何をすれば上手くいくのか、一枚のシートに全ておさまるようなツールがあると便利です。
第三号で「質の高い面談」を実現するには、面談の準備が重要である、ということを確認しました。現場で実践させるためのツールとして効果的なのが「面談準備シート」です。
この「面談準備シート」は、「訪問の目的」を明確化し、その目的に沿った準備を可能にします。お客さんの立場に立ってどんな疑問をお客さんが持つかを想像し、その疑問に応えるための準備をする。研修で学んだスキルをどうやって使えば良いのかがすぐ分かる。
「面談準備シート」は、研修中のロールプレイの準備の際に実際に使ってもらいます。すると参加者から「これは使いやすい」「簡単だ」「面談の流れが事前にイメージできる」といった声が出てきます。私自身このシートを使って、普段の営業活動をすすめていますが、「準備の時間が節約できる」「的はずれな面談にならない」「お客さんから感心される」といった点からも、シンプルですが非常に有効なツールだと思っています。
面談前に常に「面談準備シート」を使うことにより、研修内容を思い出すことが出来ます。(詳細は添付資料をご参照下さい)
「職場メンバーの協力」という点では、やはり職場メンバーも研修内容を理解していることが大事です。良く言われますが「研修内容の共通言語化」がない限り、研修内容の職場実践は難しいと言えます。ではどうやって「共通言語化」を図ればよいのか?
一番良いのは、メンバー全員が同じ営業研修を受けるということです。ただ、コスト面等で難しいという会社さんも多いかと思います。そこで、良くとられる方法が、マネージャーが講師役となり、現場展開を図ったり、研修を受けた担当者をトレーナー役とし、職場で研修内容を伝える、といった形です。また、e-learningで研修内容を伝えるという方法もとられます。
ミーティング、営業会議、ちょっとした立ち話の時に、研修で学んだ言葉、例えば「信頼の確立」や「問題の共有」が出てくれば、研修内容を忘れませんし、共通言語化が図られているしるしだと言えます。
最後に、研修内容を職場で意識させる際に最も影響力をもつ「上司の指導」に関しては、第九号から掘り下げていきます。
3)客先での実践
研修内容の実践を習慣化させる一番の方法は、それが上手くいって、お客さんから認められ、受注につながることです。「研修で学んだことをやってみたら、上手くいった」この繰り返しが、習慣化になります。上手くいくための近道は前述の「面談準備シート」を活用することと、「上司の指導」です。
研修内容の具現化である「面談準備シート」を活用し、面談の準備に力をいれることにより、お客さんからの評価は確実にあがります。お客さんは準備をしっかりしてくる営業を認めますし、また評価をしてくれます。認められた証としての受注や、受注に結びつかなくても口頭で褒めたり、担当者の上司にその評価を伝えてくれます。
お客さん、営業ともに満足できる「両者満足」の面談を実現するためにも、「訪問目的」を明確化し「面談の準備」に時間と労力をかける。それを簡単に実現する「面談準備シート」を活用する。「面談準備シート」を活用させる為に「納得感のある研修」を提供し、使い方を教え、実際に使ってその効果を確かめる。職場では研修内容をメンバー全員が理解し、共通言語となっている。上司の指導も研修内容に基づいている。
ところで、皆さんの会社では、研修室で納得感のある営業研修を提供していますか?
職場での共通言語化が図られていますか?
営業が職場で研修内容を忘れないようどんな工夫をしていますか?
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