書籍「仕事の覚え方」に紙面の関係で載せきれなかった
「おまけの話」をご紹介します。

●わかりやすく「話す」コツ
簡潔明瞭で分かりやすい話をするためのコツを
確認しておきましょう。ポイントは、3つです。
(1)話す内容を整理する
 相手に話す前に、まず自分の頭の中を整理する必要があります。
 自分でもよく分かっていない話を、相手にわかってもらうのは難しいからです。
 
 これは上司への報告、関係者への連絡、先輩への相談、
 お客様への説明、会議での発表、プレゼンテーションなど、全てに当てはまります。
 分かりやすく話すためには、まず、話す内容を整理することから始めます。
 話す内容を整理する際に役立つのが、「サンドイッチ・フォーマット」です。
 拙著『教え上手になる!』でもご紹介していますが、このフォーマットを使えば
 簡潔明瞭な説明ができるようになります。
 詳細は前掲書にゆずりますが、フォーマットの肝は、
 自分が伝えたい内容を「3つに絞る」という点です。
 「3つに絞る」ということは、それ以外は話さないという選択をする
 ということでもあります。話す内容を整理するということは、
 「何を話して、何を話さないか」を決めることでもあるのです。
 話がダラダラして「何が言いたいのか分からない」という人は、
 えてして「何を話さないか」を決めずに喋っています。
 頭の中に浮かんだことを全て伝えようとするので、
 相手にとっては分かりづらいのです。
 まずは、自分の頭の中を整理する。
 これが、分かりやすい話をするための最初のポイントです。
 
(2)口に出して話す練習をする 
 あなたが本気で、分かりやすい話をしたいと考えているなら
 「口に出して話す練習」をすることをおすすめします。
 いくら頭の中で整理されていても、紙に書いても、
 パワーポイントで資料を作ってみても、
 口に出して話すと上手くいかないことはよくあることです。
 「話す」というのは、「口」を動かして「音」を出して
 「言葉」を伝えるという作業になります。
 私達が考えている以上に、高度で複雑な作業をしているんですね。
 しかも目の前に相手がいて行うわけですから、緊張感や不安感から、
 頭で思っている通りに進まないことも多いものです。
 役者がリハーサルをしてから本番に挑むように、
 大事な発表、プレゼンテーションの前には、
 「口に出して話す練習」をすべきです。
 何度も練習しているうちに、
 余計な言葉がそぎ落とされ簡潔明瞭な説明ができるようになります。
(3)場慣れする 
 分かりやすい話ができるようになるためには「場慣れ」も必要です。
 人と話すのが苦手だからといって、そういう機会を避けていたら、
 ますます出来なくなります。それが更なる苦手意識を作っていきます。
 なるべく、自分から「話す」機会を作る。
 「アウトプット(発信)」する場を増やせば増やすほど
 「インプット(収集)」は増えてきます。
 情報は発信した人のところに集まるものです。
 怖がらずにどんどん「話す」機会を作っていきましょう!
●仕事で道に迷わない「マップ」術
 「マインドマップ」は、イギリスのトニー・ブザン氏が考案したものです。
 私自身は「人生に奇跡を起こすノート術:マインドマップ放射思考」(きこ書房)で、
 マインドマップという手法を知り、大げさですがその後の人生が変わりました。
 「マインドマップ」の詳細については、ブザン氏のいくつかの著書に
 譲りますので、ここでは私がどのように活用しているのかという例と、
 仕事覚えへの応用という2点だけお伝えします。
 まず、私自身は「マインドマップ」を発散的ツールとしての「メモ」と、
 収束的ツールとしての「ノート」の二つの切り口で活用しています。
 例えば、お客様と面談し相手の話をメモにとるときも、
 マインドマップの手法を用いています。
 お客様のいったキーワードとそれに関連する内容を、
 どんどん書き出していくというやり方です。
 以前は、7〓8ページ使っていたものが、
 A4一枚に不思議とおさまるようになりました。
 
 マインドマップで人生が変わったと実感する機会の一つが、本の出版です。
 前著『教え上手になる!』も、今回の本も、文章を書き出す前に
 マインドマップを使っています。マインドマップがなければ
 本を書くこともできなかったでしょう。
 更に、研修の企画を練るときや講演で話す内容を考えるときも、
 マインドマップを使っています。つまり何か「アウトプット(発信)」
 する前の「プロセッシング(整理)」の段階で、マインドマップを使っているのです。
 マインドマップは、「発散と収束」の両方の要素を兼ね備えています。
 例えば、何か企画を練る際は、とりあえず「メモ」的にマインドマップで、
 アイデアを発散させていきます。ここで私が意識しているのは、
 コンサルティング会社のマッキンゼー社が提唱する
 「MECE」(モレなくダブりなく)でいう「モレなく」という部分です。
 マインドマップに書き出すことで、情報が「モレなく」網羅されているのかを
 チェックします。次に、そのアイデアを「収束」していく段階
 (つまり「ダブりなく」ですね。)で、マインドマップに色をつけていきます。
 この作業を通して、情報を整理していくのです。マインドマップを用いると、
 情報の洪水に埋もれたり、アイデアがまとまらなくなったりするという状態を
 避けることが出来ます。
 つまり、マインドマップは頭の中が道に迷わない
 「マップ(地図)」であるということですね。
 あなたが、仕事で学んだ内容を整理するときや、
 何か企画を考えるとき、あるいはプレゼンで発表する
 内容を考えるときなどにも、マインドマップは使えるツールです。
 最後に、マインドマップを仕事覚えに活用する方法について述べます。
 それは仕事の「全体像」を把握する際に、マインドマップを使うというやり方です。
 例えば、自分の仕事は何なのか「仕事マップ」を作ってみたり、
 所属する部門は会社全体のどういう位置にありどんな役割を持っているのかを
 「組織マップ」として作ってみたり。
 あるいは、自分が相談できる相手、質問にいける相手をはっきりさせる
 「人脈マップ」を作ってみたりと。
 マインドマップを使えば、自分がどこにいるか分かりづらい、
 道に迷ってしまいそうな「ビジネスの世界」を上手に進んでいくことができます。
 
 特に「仕事マップ」は、仕事覚えが進み、仕事理解が深まるほど、
 精度を増していきます。あなたが「学び上手の初級ランク」として、
 仕事の「型」「成功パターン」を見つける頃には、
 この「仕事マップ」をしっかり描けるようになっているでしょう。
 「仕事マップ」が描ける人は、仕事が見えている人ですから。
●組織目標を自分のものにする方法
 ここでは「目標」を2種類にわけて考えてみます。
 「組織から与えられる目標」と「個人の目標」の2つです。
 「組織から与えられる目標」というのは、私達が雇われている理由と
 考えることができるでしょう。
 
 「こういう仕事を、この程度まではしてほしい。
 そのためにあなたを雇ってお金を払いますよ」といった側面が、
 組織から与えられる目標にはあります。
 会社が私達に期待するものでもあり、お金をもらっている私達が
 果たすべき義務や責任であると考えられます。
 そしてこういう目標は、だいたい上司から与えられます。
 営業なら「今年度はこのくらいの数字をやってね。」など。
 ただ、「与えられる」という言葉の印象どおり、
 組織からの目標はえてして「上から与えられたもの」「自分ではどうしようもない」
 他人事のような感じをもってしまう人もいます。
 しかし、組織に属する人間として結局その目標を
 前提に評価をされるわけですから、どうせなら納得いく「自分の目標」に
 落とし込めたほうがいいわけです。
 だからこそ、組織からの目標を「自分のもの」とできるように
 私達自身が働きかけたほうがよいのです。
 例えば、上司との目標設定ミーティイングの際に納得いくまで
 話を聞いてみるなど。
 あるメーカーで営業をされていたFさんは
 「組織から与えられる目標に、20%上乗せして自分では目標を設定していましたね。
 プラスアルファを設定すると、思った以上の力が出せたので。」
 といった工夫をされていたそうです。
 また別のやり方として、組織の目標と自分の目標に
 「折り合い」をつけるという方法もあります。
 組織の目標を達成することが、自分の個人的な目標達成にも
 つながるという状況を作り出すということですね。
 例えば、将来独立起業するという個人的な目標に向けて、
 現在与えられた仕事を、そこに向けて活かしていくような感じです。
●目標設定の「はぐき」の法則
 最後に目標設定の考え方だけ簡単に確認しておきましょう。
 ここでは私自身の例を中心にお伝えします。
 私の場合、目標を「長期」「中期」「短期」の3つに分けて考えています。
 「長期目標」は、60歳までにやりたいことです。
 大きなことを言いますが「日本の教育を変える」「家族を幸せにする」と
 いった目標がここに入っています。
 「中期目標」は、3〓5年の期間に「やりたいなー」と
 思っていることを漠とですがあげています。
 ここには会社の事業内容や研究したい分野などを入れています。
 「短期目標」は、1年間の目標をもとに、半年、1ヶ月、1週間単位で
 細かくしていっています。
 そしてこの「短期目標」を立てる際に
 意識しているのが「はぐき」という考え方です。
「は」:測れるか? 「ぐ」:具体的か? 「き」:気合がはいるか? の3つです。
これはいわゆる「SMART」という目標設定の基準と同じような考え方です。
・Specific 具体的か?
・Measurable 測定可能か?
・Achievable 実現可能か?
・Relevant 適切か?
・Timed 期限は?
「SMART」の頭文字は人によって様々な言い方がされています。
ただ言っていることは、だいたい一緒です。
「測れるか」「具体的か」「気合が入るか」
私は「はぐき」で目標設定しています。
例えば、お恥ずかしいのですが、
2006年4月には、こんな目標を立てました。
・2007年4月には「学び上手になる!」研修を十社が導入している
・2007年4月には4冊目の本が書店に並んでいる など
達成できたかできなかったのか、
きちんと測れるよう「数字」を意識して入れています。
また、プライベートでは妻との約束として下記目標もあげています。
・2009年4月には自然豊かな環境で新しい家に住んでいる
 こうやって宣言してしまえばやらざるを得ませんね(笑)。
●コントロールできるのは準備だけ
 「Plan」の最後は、「準備」です。
 計画まで立てたら、あとは実行に向けて細かい準備をしていきます。
 「準備」と「実行」の2つを「コントロール(管理)のしやすさ」
 という観点でみると、私達がコントロールしやすいのは「準備」です。
 例えば、プレゼンテーションを「実行」する際は、相手がいますので、
 その場を思い通りにコントロールするのは難しいですよね。
 思ってもみないことが起こったりもしますので。
 本番をコントロールするのは難しいことです。
 それに対して「準備」は私達がコントロールできます。
 要は「準備の時間をとったかとらないか」です。
 これは私達自身で管理できることですから、
 準備していないのは私達の責任になります。
 一流のスポーツ選手たちも準備をコントロールすることを重要視しています。
 本番では色々なことが起こりますからね。
 柔道の谷亮子さんはあるインタビューでこんな風に答えていたそうです。
 「私が準備をすれば勝てる。準備できない試合には出ない。」
 準備の大事さと結果とのつながりを言い表した言葉ですね。」
 自分の例で恐縮ですが、私が仕事覚えの初期の頃、
 先輩が評価してくれたのはこの「準備」でした。
 プレゼンにせよ、お客様との面談にせよ、先輩の目から見れば「本番」での
 私はたいしたことはありません。
 ただ、その本番に向けてどれだけ「準備」をしてきたか、そこを見てくれました。
 まだ半人前の段階でも、私達の「やる気」を示すことはできます。
 それが「準備」に力をいれることなのです。
 ただ、「準備をしっかりやったので、本番がだめでも勘弁して下さい」
 という言い訳のためではないですからね。
 本番をコントロールすることは難しい。
 私達にできるのは「準備」をコントロールすることである。
 準備をコントロールするということは、
 いわば準備の時間をどう捻出するかという「時間管理」の側面が
 強くなります。
 結局「準備」は「やるかやらないか」です。
 しっかり準備して実行にのぞみましょう!
以上、書籍「仕事の覚え方」に載せきれなかった「おまけの話」でした。

投稿者:関根雅泰

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