「OJTの実際~キャリアアップ時代の育成手法」
寺澤弘忠著
○OJTについて歴史的背景から今後の在り方、具体的な方法論まで
幅広く学べる本。
(・引用 ○関根の独り言)
・人材育成の基本は「仕事が人を育てる」
・OJTが今後も日常の職場において、上司の一連の管理行動の中で
行われることは従来と異ならない。
ただこれまでと異なることは、①その対象が単に仕事に必要な
知識、技能、態度の習得、伝承にこだわらないこと
②従来のように上から下、すなわち上司から部下への一方通行ではなく
教え、教えられながら「共に学び、共に育つ」という変化、拡大がなされた。
・「教育とは何か」を意味論から整理すると「教育とは、教え、かつ育てるという
行為を同時に行うことであり、人を善くしようという意欲や気持ちにささえれた
すべての行動や発言」ということができる。
○ここが教育の難しいところだよな。まずは自分を律していかないと。
・なぜOJTが企業内教育の中心となってきたのか、その理由は
1)職場で部下に最も影響力をもつのは上司である
2)職場の問題はその職場の責任者である上司でなければ解決することが難しい
3)職場の実績や業績は上司と部下が行った仕事の総和である
○確かに、OffJT(集合研修)に関わる講師として、
職場での活動に影響を与える難しさを常に感じている。
職場で最も影響力をもっているのは、その職場の責任者である。
だから、その者から指導を受けるOJTが、企業教育の中心だというのはうなづける。
ただ、職場の問題が、その職場の責任者の行為によって引き起こされている
ケースもある。それは、部下へのOJTでは解決しない。
その職場の責任者に対する、その上からのOJTが必要になる。
(役員→部長、部長→課長 といった感じ)
ここのOJTはあまりなされていないのではないか。
・OJTを広く、企業における「仕事の伝授」という大きな枠組みでとらえる。
OJTの2つの側面
1)職場の日常業務の円滑な遂行
2)個人の自立、成長、巣立ち
・多面的といわれる管理、監督者の役割を体系的に整理した研修プログラムに
MTP(Management Training Program)がある。
MTPに基づきOJT実践のステップを考えると
1)仕事の改善 2)仕事の管理 3)部下の育成 4)職場の人間関係
の4つになる。
・職場における管理、監督者(上司)の何気ない行動と発言は、常に部下に
大きな影響を与えており
全管理行動=部下の指導育成行動=OJT行動→リーダーシップ行動
という枠組みでとらえるべき。
・日常の何気ない管理、監督者の行動と発言をあえて「OJT」となづけたのは、
これまで無意識的に行ってきた日常の管理行動を、常に部下の指導育成に
結びつけて、自覚的、意識的に行っていくためである。
・OJTを成功させるためのツールとして、現場から圧倒的に多い要望は、
「体験談、事例集を作成してほしい」である。
○これは、確かにそうかも。
OJT研修でも「他指導員、他職場、他社での事例を知りたい」という声は多い。
せっかく参加型研修を実施し、参加者の生の声を研修内でも
出してもらっているのだから、これを上手く活用していかないともったいないな。
特に「OJTフォロー研修」で、半年新人指導を行っての「苦労と工夫」を
あげてもらえば、そこから「体験談、事例集」は作れるかも。
・これまでOJTというと、とかく部下の問題として受け止められがちであったが、
実際には上司自身が問題となっていることが多い。
・上司の立場になったとき、自らの体験をふり返って「良かったこと」を
OJTとして実践していけばよい。
○OJT研修内で、参加者自身の経験をふり返る「教え下手・教え上手」は、
やはり大事なパートだな。
・今日のように技術革新の著しい時代には「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」
ということわざのように、上司といえども部下から学ぶことがある。
更に職制上の上司と部下という関係だけでなく、他部署あるいは他社の人々
からも多くのことを学ぶ機会がある。
これらの周囲の人たちすべてからあらゆる機会を利用して勉強することが大切。
○ここに「ネットワーク型OJT」の意義があるかも。
ただ、新入社員のOJT担当は多くの場合、職場の責任者であり
影響力が最も大きい上司ではなく、一先輩社員だ。
影響力がそれほど大きくない彼らが、自分の職場だけでなく、他部署、
他社の人々にも協力してもらってOJTを進められるかどうかがカギだ。
そのためにも、まずは職場の上司に理解してもらい協力してもらう必要がある。
上司が「ネットワーク型OJT」という考えをまず理解する必要があるのかも。
・OJTに関するQ&A
○研修内でも個別具体的な事例(今まさに参加者が困っている問題)に対する
解決策を求められることが多い。
そのときに、講師である私自身が答えるのもよいが、
次のような質問をしてもよいのかも。
-どんな状況なんですか? もう少し詳しく教えてください。
(他参加者にも聞いてもらう)
-何が原因なんでしょう?
-過去出会ってきた先輩や上司でしたら、どのように対処すると思いますか?
-ご自身は、どのように対処すればよいと考えますか?
-他の参加者の方は、どう思います? (他参加者にふる)
他にも良い質問の仕方があるかも。
○「答えを求められる」これは、OJT研修においてよくあることかも。
「Aという新人が、~だ。どうすればよいでしょう?」
(何か答えると)
「それは既にやったのですが、うまくいかない。どうすれば」
この繰り返しになってしまうこともある。(私の力不足もありますが)
やはり研修や外部講師に「こうすれば上手くいく!」という答えを
求められてしまうことは仕方ないのかも。
十人十色な新人に、十人十色なOJT担当者が関わっていくなかで、
「こうすれば“絶対”上手くいく!」という“魔法のリンゴ”のようなものは
無いと思っている。
その限界を分かった上で、かつ参加者の役に立つ研修を提供していきたい。
・本当のOJTは、日常のごく自然な上司と部下の接触の場にある
・なかなか思うようにいかない部下の場合、まず与えた仕事の必要最小限は
きちんと行わせ、職場や周囲にマイナスの影響を与えないような配慮をすべき。
OJTの中には、マイナス要因を防ぐ要素もある。
○これは、悲しいかな、確かにあるかも。
ただ、複数の部下を持つ上司と違い、1人の後輩しかいないOJT担当者で、
その新人がこういう対象者だときついだろうな。
・今日でもOJTというと、多くの企業や職場では
1)あらかじめ育成必要点を把握し
2)その教育(指導、育成)の計画をたて
3)その計画に基づくOJTを実施し
4)その結果を評価し
5)さらに必要に応じてフォローを行う というパターンが形作られた。
・OJTのPlan-Do-Checkの流れをさらに面倒にしたのが、1)を把握するために
設定された日常業務把握のための職務分析の導入であった。
・OJTで最も大切である実施の部分(Do)がないがしろにされ、ラインの管理、
監督者にとっては、フォーマット類を出さないと・・
・これまでOJTの推進、定着が上手く進まないといわれてきたのは、実はこの制度、
しくみ面からのOJTである。もともとは日常業務遂行過程でのOJTを補完、補充する
ために活用していくのが本来の姿。
○「OJTは面倒くさいもの」という現場の見方は、こういう書類、フォーマット類の
記入に一因があるな。
○人事関連の人たちからは「OJTが機能していない」という言い方をよくされるが、
これは制度、しくみ面からのOJTだけを意味してはいないだろう。
新人に関してのOJTでいえば、
-外(人事)から見ると、なかなか新人が育っているように見えない。
-現場で育ててほしいのに、新人が放置されがち。
-OJT担当者はいても、新人の面倒を見ていない。
-新人の声をフォロー研修などで聞くと、面倒を見てもらっているように見えない。
-メンタル面で問題を抱える新人や離職する新人の数が多い。
などの状況をとらえて、現場での「OJTが機能していない」という言い方に
なるのだろうか。
彼らが何をもって「OJTが機能していない」と言っているのかを、
私自身がしっかりとらえておかないとな。
・部下のすべてが仕事にやりがいを求めているわけではない。上司は、すべての
部下にチャレンジングな仕事を用意する必要はなく、決められたルーチンワーク
をしっかり行ってほしい部下には、それなりの仕事の目標を与えればよい。
○これは確かにそのとおり。ただ、これを新人へのOJTを担当する先輩社員に
伝える際には、注意が必要かも。
・これからのOJTの特徴としての指導育成の方法
上司先輩は「教える人」、部下後輩は「教えられる人」という一方通行的な
受け止め方だけではなく、上司先輩も知らないこと、できないことは
部下後輩と「ともに学ぶ」という相互啓発の時代となった。
・OJTの特徴は、自分を取り巻く周囲の第三者(他人、特に上司先輩)の
アドバイスと援助によって自己啓発(能力開発)を行い、自らの自立、巣立ち、
成長を図り、企業内(組織内)で有用な人材となること、すなわち
仕事ができる人材になることを目指してきた。
・(動機に主体性があるキャリア開発に対して)OJTは、その出発点において
「他人のアドバイスと援助」ということで動機が従属的であり、その狙いも
1)仕事の知識、技術、態度の習得、伝承と
2)日常業務の円滑な遂行として受け止められてきた
この意味でOJTはあくまで企業人(組織人)としてその枠内で役に立つ人間として
企業の生産性向上に寄与することが基本であった。
・これまでなぜOJTの重要性や必要性が叫ばれながら、推進、定着しなかったかは、
それがいつも他人ごととして受け止められ、受け身の姿勢だったから。
・OJTがキャリア開発から学ぶこと、それは主体性の哲学。
○OJTがいつも他人ごととして受け止められ、受け身の姿勢だったから
OJTは定着しなかった。
これは、確かにそうかも!
そんな中でも主体的にOJTを実施する先輩社員もいる。
「自分も教わってきたから、後輩にも教える」という人たち。
(エリクソンの世代継承性?)
OJTをしてもらえなくても、自ら仕事を学びとってきた人たちもいる。
○OJTを(教える側も教わる側も)「やらされ仕事」にせずに、
主体的に取り組むものとするには・・・
・ビジネスコーチングの基本スキルとプロセスを、OJTの一環として活用していく
ことは、何ら矛盾しない。これまでのOJT実践過程で曖昧であったことを
補完、補充するものとして有益なこと。
・日常業務の遂行にあたって過去の経験や知識、技能がいかせない時代に変化した
ことであり、職場における管理監督者、リーダーは自ら的確な「答え」を
提示することが難しい時代となった。
そこで、ビジネスコーチングがアメリカから紹介され普及してきた。
・ビジネスコーチングでは人間性の理解にあたって「性善説」を前提にして展開
されている。
OJTで対象としている人間性は、必ずしも性善説を前提にしていない。
きわめて多面性をもった複雑なものであり、性善説を前提にした画一的な
接触、対応だけではすまされないことがある。
○全く余談ですが、著者の寺澤さんは、私が以前住んでいた
埼玉県寄居町に住んでいらっしゃいます。
いずれお会いする機会を頂戴できればと考えています。
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