09年4月17日(金)夕方 Learning Bar @ 東大
「みんなで“やる気”を科学する」に参加してきました。
この日まで4日間連続で「OJT研修」が続いていて、家に帰っていなかったので、
早く帰りたい気持ちもあったのですが、
募集人員を上回る人気のセミナーなので、疲れた足と気持を奮い起こして
小雨降る中、東大に向かいました。
ふり返って考えてみると、正直当日参加しようという「やる気」は下がっていました。
・研修の疲れ
・出張続きの疲れ
・家族との時間がとれないむなしさ
・足もとの悪さ(雨のため)
そんな中、自分が参加しようという「やる気」はどこから起こったのか?
・中原先生の主催
・抽選で参加させてもらっている
・テーマが面白そう
・参加者に企業教育担当者が多い
・何か新しい発見がありそう
・参加しないと後で後悔しそう
参加しないことによる「信頼関係の減退」「学習機会の損失」という負の側面と、
参加することによる「信頼関係の構築」「学習機会の獲得」という
ポジティブな期待があったのかも。
その二つを秤にかけて「やる気」を出したのかも。
周囲から見ると比較的何にでも前向きに「やる気」をもって取り組んでいるように
見える自分でも、やる気が下がる時がある。
主には
・身体が疲れている時
・家族と過ごす時間が少ないと感じている時
に、そういう状態になるようです。
さて、それはともかくとして参加した「ラーニングBar」の様子です。
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(・講演内容 ○関根の独り言)
1.「やる気」の常識を考える
株)JTBモチベーションズ 代表取締役 大塚雅樹氏
・ハイパフォーマーもモチベーションは完璧(常に高い?)わけではない。
不満も当然抱えている。
・モチベーションの高い人は、プライベートでも仕事の話をしている。
(プライベートでも仕事の話をするから、モチベーションが高まる?)
社外の人と交流する際に、自分の仕事を面白おかしく話すことにより、
自分の仕事を客観的に認識することができる。
・業績の良い組織は、多様なモチベーターをもつ人材が集まっている。
・モチベーションの高い人は、ボキャブラリー(語彙)が多い、増えてくる。
モチベーションの高い組織は、一つの共通言語だけでなく
様々な言葉が飛び交っている。
・ボキャブラリーが増える要因は、社外の人との接点。刺激を受ける。
・21世紀型のハイモチベーション組織とは、自分の仕事を多彩なボキャブラリー
で表現することができるビジネスパーソンがたくさんいる集団である。
○社外の人との接点の場としてのラーニングBarで話すテーマだから、
こういったお話をされたのかもしれないが。
「自分の仕事を他者に面白おかしく話す」これが自分はできるか?できているか?
自分の仕事=企業研修講師
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2.ミドルの「やる気」を科学する
リクルートマネジメントソリューションズ 石井宏司氏
・ミドル=部下をもつ課長クラス
・RMSの調査結果 2007年 547名の課長クラス
「マネジャーにやりがいを感じている」 52%
「マネジャーをやってて良かった」 48%
「マネジャーとして能力発揮できている」 45%
○約半分が否定的意見という状況は「やる気がある」状態とは言えないのでは?
約半分のマネジャーの下についた部下は、どのような状況にあるのか。
・「マネジャーをやってて良かった」と感じる理由
裁量が広い、部下育成成長、組織での目標達成
○自分の判断で動ける。これが「やる気」のもとなのでは。
担当者レベルでは決めて動けなかったことが、マネジャーになるとできる。
「自分で決めることができる」
しかも組織という「自分で決めることが難しい環境の中で」
独立した自分にとっては、「自分で決める」ことは当たり前のことで、
これは空気のように当然の状態になっている。
・やる気がある人、無い人の差として
「仕事時間のプレイング比率」「マネジメント補佐役の存在」
「成長経験があるという回答比率」が目立った。
・ミドル(課長)のやる気は、3年目までは上昇。4年目から下降。
「マネジャーとしての成長経験を持つ」=「部下育成、成長」「組織目標の達成」
ことがやる気上昇に影響。
・ミドルのやる気を上げることが本当に優先順位の高いことなのか?
結果的にやる気もあがる別のことに手を付けるのか?
○これは、確かにそうだよなー。
個人経営の小さな会社を経営していて思うのは
「やる気」よりも「戦略」の重要性。
間違った方向に、やる気をもって進んでいったとしても、待っているのは自滅。
最初に入った会社(教材の訪問販売。今はない。)は、宗教的なぐらい前向きな
モチベーションをもって高いやる気で仕事をしている人が多かったが、結局失敗した。
経営者が指し示す方向が間違っていたら、ヘンにやる気が高い状態だと、
皆が同じ方向を向いて一心不乱に進むから、軌道修正がききづらいのかも。
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3.ワーク・モティベーションの測定
近畿大学 経営学部 山下京教授
・「やる気」という言葉には、すでに価値(やる気=良いこと)が含まれている。
・ベストセラー「虚妄の成果主義(2004)」では、デシの内発的動機付けを引用。
・ワークモティベーションと企業業績の関係を調査
外発的動機付けだけ、内発的動機付けだけだと、業績は高くない。
・新卒採用を重視する姿勢を示すと、従業員の内発的動機付けが高まる。
・企業統治のスタイルとして、米国=資本主義 日本=人本主義
企業と従業員との安定した信頼関係があれば、ノウハウの伝授も行われる。
○自分がアカデミックな世界に入ったら、
研究者 → 教育担当者(研修企画者) → 現場従業員(研修参加者)
を上手くつなぐ存在になりたい。
「分かりやすさの弊害」はあるかもしれないが、「分かりやすさ」を求めたい。
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4.社会的構築物としての「やる気」
産業能率大学 情報マネジメント学部 長岡健教授
・「誰の」やる気が問題なのか?
・「やる気がない」と判断される側
「やる気がない」と判断する側
・他者から「やる気がある」と判断されるのは、
やらなくても許される範疇の仕事に対しても自主的に取り組み、
想定されるレベル以上の成果を目指して主体的に行動している。
+
行動の結果が、評価者の利益に合致している。
・「評価者の利益」誰のための「やる気」という問題
1)本人の主体性が高く、かつ評価者が得る利益が大きければ、評価者から見て
「やる気」あり。
2)本人の主体性が高くても、評価者が得る利益が小さければ、評価者から見て
「やる気」?
→ 独立起業の準備に励む社員。会社を内部告発する従業員。
3)本人の主体性が低く、評価者が得る利益も小さければ、評価者から見て
「やる気」なし。
4)本人の主体性が低くても、評価者が得る利益が大きければ、評価者から見て
「やる気」?
→ 反抗せずに、組織に染まる? 言われたことを唯々諾々と行う?
・「部下にやる気がない」と見えたら、「本人の意識の問題」とすぐに考えずに、
→ 本人は「やる気がない」とは思っていない可能性
→ 本人は主体的に行動しているが、その方向性が上司の求めるものでない可能性
→ 上司の示す評価基準に対する“第三の反応”である可能性
・RHC石井さん?「部下の成長も、上司の望ましい方向に成長しているのであれば、
成長と認められるのかも」
○このあと近くの参加者2名と一緒にディスカッションをしたが、
この長岡先生の話に対する反応が多かった。
「こういう視点はもったことがなかった」
モノの見方が変わったという意見が出た。
短時間で、大人のものの見方を変える、というのはすごいことだと思う。
やはり、自分たちでは考えもしなかった視点を提供されると、人は素直に驚き、
その見方を受け入れるのかもしれない。
○参加者とのディスカッションの中で
「やる気は下がっていたけれど、成長はしたという経験がある」という話がでた。
厳しいプロジェクトで、やる気そのものは下がっていたが、
あとからふり返ると、成長していた。
RHCの石井さんの「部下のやる気が下がるような試練を与えることも必要」
という言葉とも重なるのかも。
○チューター制度をとっている会社で、チューターが現場で孤立してしまう、
という話が出た。そこで、昨年度はマネージャーの育成責任を明確にして、
チューターを支援するよう現場に指示を出したそうだ。その結果、チューターの
孤立感は、減ったそうだ。
○組織に属している限り、評価者である上司の視点は重要だろう。
○いつかは皆組織を出ることになる。(定年退職)
ずっとマネジャーとして、部下を持つことはできない。
会社という組織の中で認められてきた権威、権力、ルールがあるから、
マネジャーとしてやっていけるという人もいるのだろう。
○自分は独立してから、今回のBarで取り扱ったような
「やる気」が下がったことはないのかも。
すべて自分で決めて行動できる。これが大きいのかも。
組織に属しているからこそ「できること」「できないこと」がある。
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今回のラーニングBarでも大きな学びがありました。
企画してくださった皆さん、ありがとうございました!
(中原先生が書かれたラーニングBarの様子)
http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/04/learning_bar_21.html
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