「心理学・社会科学研究のための調査系論文の読み方」
浦上昌則・脇田貴文著
○論文に対する苦手意識が減る本。
これからもがんばって論文を読もう!という気にさせてくれる。
(・引用/要約 ○関根の独り言)
1.論文とは
・この本は、人の心を研究対象とし、統計(推測統計)を使った論文を
読めるようになることを目指すもの
・論文も統計も、研究者が示したいことを示すために使う手段
・論文や統計が分かると、研究というものがとても楽しいものだということが
一層はっきりわかる。
○ぜひ!こうなりたい!
・「何がわからないかをはっきりさせておく」ことが、学ぶ際の大事なポイント
○「何がわからないのかが分からない」時期が、大変なんだよな。
・研究の一部として論文に仕上げるという作業がある
・論文を書く作業は、研究活動で得られたことの中から論文に必要不可欠な
ものを選出し、話の展開に破たんのないように再構成することといえる
ひとつの論文の背景には、そこには表現されていない様々な研究活動がある
研究活動のすべてが論文に記してあるわけではない
・論文は、書かなければならないことを、ルールに沿って記した文章
・論文は常に「問題と目的」「方法」「結果と考察」「引用文献」の4つから
構成される
・論文の全体構造は「明らかにすべき問いを示し、それに対してどのように
答えられるのかを記す」という自己完結的な形をしている
問いを示して、それに答える
無意味な寄り道をせずに、直線的に答えまで進む
・論文では、そのように言える根拠が常に求められる
資料自身に語らせること著者の仕事
・現実と研究の世界の往来が必要。
その往来を担当する部分が主に「問題」と「考察」
○なぜ自分がこの研究をするのか。この研究の意義は。
それに答える部分なんだろうな。
・論文には一定の形式がある。単純な構成なので、慣れてしまえば
他の文章より読みやすくなる。
・同業者である研究者、専門家に読まれることを前提にしている。
・研究者などの専門家は、研究の結果だけを知りたいのではない。
その結果にたどり着いたプロセスを含めて、できるだけ詳しく知りたい。
・論文においては客観性が非常に重視される。
他の誰が考えても同じ結論に達することができるような論理的整合性が
求められる。
・研究の目的にてらして必要十分な文章、図表を意識する
論文を書くことは、自分の立てた目標に向かって一本の道を作るようなもの
○今後は、こういう指導を受けるんだろうな。
「なぜ、この文章、図表を?」「根拠は?」「~が足りないのでは?」
・研究の出発点を導く作業は、それぞれの研究者の自由な発想に任されている。
この目の付け方が研究のオリジナリティーになっていく
・3種類の読み 1)分析的読み 2)総合的読み 3)批判的読み
・批判は、その研究を良いところも悪いところも含めて自分のものにし、
更に自分が進んでいくための手段
○やっぱり、先行研究が大事なんだろうな。
・研究が明らかにしている範囲(限界)を意識すること
2.測定
・対象をとらえる(数字に置き換える)
・観察できる領域(観測変数)観察できない領域(潜在変数)
○見えないものをできるだけ見えるような形にする
3.統計
・論文では多種多様な統計的分析が用いられている
その多くは、2つに分類できる
1)平均系:平均値を用いて検討
(t検定、分散分析)
2)相関系:指標間の関連を検討
(相関係数、偏相関係数、因子分析、重回帰分析、共分散構造分析)
・分布:データの散らばりの様相
平均値を見ると同時に分布を見る。
散らばりが小さいということは、平均値近くにほとんどのデータが集まっている
・統計的検定の考え方
「前提となる条件の下で生じたこと(結果)が、確率から考えてめったに
起きないことであれば、前提を間違ったものとして判断する」
帰無仮説:間違った前提、否定される仮説
対立仮説:帰無仮説が否定されることで、正しいことが証明できる仮説
4.因子分析・t検定
・因子分析において、研究者が注意するのは、項目のまとまりの良さと説明率
できるだけ少ない因子に、できるだけ多くの情報を載せるポイントを探す
・因子分析は試行錯誤で何度も繰り返す分析
・因子分析の2つのステップ
1)因子を抽出
2)初期解(最初に出た因子)に回転という操作をかけ結果を読み取りやすくする
・まとまりが認められた時点で、因子に名前を与える
よい因子名には 1)測定したい構成概念の表すものとして適当
2)他の因子と明確に区別 3)項目のまとまりとうまく対応、イメージしやすい
・因子分析は、項目のグルーピングを通して、その背後にある概念の構造を
探索する手法
観測変数から潜在変数を推定する
・t検定は、2群の母集団における平均値の差を検討する検定
5.1要因分散分析・相関係数・偏相関係数
・1要因分散分析は、2群以上の母集団における平均値の差を検討する方法
ANOVA Analysis of Variance
・分散分析も統計的分析のため、まずは帰無仮説が必要
・研究者の読みをデータが裏切る場合もある
・相関係数:2変数間の直線的な関係の強さを数値化したもの
-1.0 もしくは 1.0 に近づくほど、強い直線関係が認められる
0 に近づくほど、2つの変数間に相関はない。無相関の状態。
6.2要因分散分析・因子分析
・測定結果をもとに統計的検定を行うので、測定の信頼性が大事
・調査対象者を限定することにはメリットとデメリットがある
・因子分析の利用法には2つの方法がある
1)探索的:因子構造が不明、データから構造を探る
2)確認的:因子構造が既知、実際データに認められるか検討する
・交互作用:2つの要因のうちどちらかだけで説明できる影響でなく、
複合的な効果
・初期解だけでは、かたまりがあるのか分かりにくいため、
回転(バリマックス、プロマックス)という操作を行う
・t検定や分散分析は「影響」を分析しようとする検定
2要因分散分析では、影響をあたえるものが2つになる。
7.重回帰分析
・従属変数(説明される変数) 独立変数(説明する変数)
○新入社員の成長?(従属変数) OJT担当者の存在 周囲の協力度(独立変数)?
・パス path とは道筋のことで、要因間をつなぐ経路のこと
・重回帰分析は、回帰式とよばれる関数によって、1つの従属変数の値を
いくつかの独立変数で表現しようとする分析
・独立変数と従属変数は、説明の向きを示すのであり、因果を示すわけではない
・パス解析:重回帰分析を繰り返すこと
8.共分散構造分析
・ダミー項目:分析には利用しない項目 調査者の意図が伝わることを防ぐ
・モデルがデータを上手く表現できているかどうかを確認するのが、
共分散構造分析
モデルの改良ができる
・共分散構造分析は、利用範囲が多様
○この本で自分が学んでいることは、大学院に行った人や研究者には
当たり前のことが多いんだろうな。
「こんなことも知らないの」「なぜいまさらこんなことを」と思われてもよし。
知らないことは恥ではない。その過程を楽しむべ。
○この本を読んだだけでは、良くわからなかったことが、こうしてブログに
文字として書くことで分かるようになってきたこともある。
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