「パフォーマンス・コンサルティング
人材開発部門は研修提供から成果創造にシフトする」
D.G.ロビンソン & J.C.ロビンソン著 鹿野尚登訳
○この本に書いてあることの一部でも実践できると、研修会社の営業は、
仕事の質そのものが変わる。お客様からの見る目も変わってくる。
パワフルな本。
(・引用/要約 ○関根の独り言)
●はじめに
・昔ながらのトレーナーに代わるのは、「パフォーマンス・コンサルタント」
という役割である。その肝となるのは、経営陣のパートナーとして、
優れたパフォーマンスを明らかにし、それを実現することにある。
・コンサルタントにとって重要なスキルは「適切な質問を適切にすること」
○この言葉に、ビビッと来たよなー。
・トレーナーは、知識やスキルが欠如している場合と、職場環境要因が
パフォーマンスに影響を与えている場合を区別した上で解決策を考えるべき。
○パフォーマンス=行動表現?(p115)
●パフォーマンス・コンサルタントとは?(以下PMC)
・事業目標を達成するために何を「行う」べきか、と考えるのがPMCの役割。
この点が「学習する」ことを重視する伝統的なトレーニングプロセスと異なる点。
○ここが、俺の迷いなのかも。
企業内研修講師としては「事業目標達成にストレートにつながる」ような
研修が望ましい。
ただ、参加者個人の「学習」という観点で考えると、そうも言いきれない
ところもあるのかも。
そして、参加者個人の「学習支援」の方に、俺は面白みを感じているのかも。
・PMCには、人材開発にかかわる専門知識に詳しいことも必要だが、
サポートする「ビジネス」についてどっぷりつかることも極めて重要である。
・HPT(Human Performance Technology)は、職場におけるパフォーマンスを
分析、改善、管理していくシステム的なアプローチである。
PMCは、常にHPTの知識をもって、システム的な発想によるアプローチを
しなければならない。
パフォーマンス問題の解決策は本質的に多面的なものであり、一面的なもの
ではない(つまり、研修だけでは解決策にならないのである)。
・4つのニーズ(事業、パフォーマンス、トレーニング、職場環境)
○事業ニーズとパフォーマンスニーズのつながりが、カギだろう。
「売上の最大化」をもたらす「パフォーマンス」は何なのか?
例示では「営業担当がお客様のニーズに対応する製品のメリットを説明する」
とあるが、それが本当にそうなのか?
おそらく他にも色々あるのだろう。
この部分の抽出がきっと重要かつ大変なんだろうな。
○トレーニングニーズのみに対応するのではなく、事業ニーズ、
パフォーマンスニーズ、職場環境ニーズにも目を配る。
その質問をする相手は、様々に存在する可能性がある。
○この本を読んだことで、研修実施前のインタビューをすることが怖くなくなった。
(研修会社にいた時は、ほとんどできなかったなー。)
インタビューをして、特にパフォーマンスニーズを明らかにしようとしている。
●施策設計プロセス
・PMCは、質問しながら自分がどこへ向かって進もうとしているのか
知っておく必要がある。
そのとき役立つのが「パフォーマンス相互関係マップ」という概念モデルだ。
事業成果 パフォーマンス
1.あるべき姿 → 因果関係 → 2.あるべき姿
4.現状 ← 因果関係 ← 3.現状
5.環境要因
・パフォーマンスの「あるべき姿」とは、優秀なパフォーマーが高い成果を
あげるために、何をしているのかを明らかにすること。
・次に「平均的なパフォーマンス」を知ることで、現状を把握する。
・パフォーマンス相互関係マップは、どのような質問が「適切」かを判断する
ツールとなる。必ずしなければならないのは、このマップを完成させる質問。
・トレーニングプログラムで提供されているコンテンツは、パフォーマンスの
「あるべき姿」か、モデルである。
○これは、よくSdさんが言っていたな。
研修で「あるべき姿」(優秀なパフォーマーの行動)を示す重要性。
・モデルを作るときは、模範的なパフォーマーとそのマネジャーが、最も
適切な情報源である。他の情報源が使えないときでもこの2つがあれば十分。
○この本に出てくる質問は、何度見ても勉強になる。
俺だと、訊けていない質問も多いな。
○インタビューだと、インタビューされた当人が知っていることしか出てこない。
当人が知らないこと、意識していないことを引き出すためには、周囲の人間に
聞くことも必要かも。
・「キーとなる必要なもの」とは、ある職務で高い業績をあげるために
きわめて重要な行うべきこと(ベストプラクティス)である。
このベストプラクティスを実践していないと、その職務で高い成果をあげる
見込みはほとんどない。
したがって、パフォーマーがこのキーとなる必要なものに熟達することが
きわめて重要である。
・最も投資効果がよく、重要なアプローチは、ベルカーブの中央にいる大多数の
従業員(平均的なパフォーマー)の改善領域を明らかにすることだ。
○この部分の現状分析が、俺の研修企画には足りないんだろうな。
そして、この部分にも関わっていくことが「真の研修屋」につながるのかも。
・職場環境によって、トレーニングで学んだスキルを使うかどうかが決まる。
学習経験 × 職場環境 = パフォーマンス成果
・職場でのスキル定着を阻害する要因
1)パフォーマー(従業員)の状態
-スキルを使ってもメリットがないと思っている
-スキルに対して十分な自信をもっていない
-スキルを効果的に発揮できたかどうかがわかっていない
-スキルを使ってみて、失敗する
-研修プログラムで重視していることやコンセプトに反感をもっている
-スキルをすぐに応用できる場がない
2)直属上司の状況
-部下に学習したスキルを使うように奨励していない
-彼らが模範になっていない
-部下がスキルを使えるようコーチングしない
3)組織の状態
-業務遂行を妨げる様々なこと
-学習者に対するフィードバックの不足
-スキルを使うことが災いを招く
・データ報告をする際は「情報そのものに意味を語らせること」
結果を棒グラフにすると良い。
●実践のために
・研修の問い合わせ(トレーニングニーズ)を、
チャンス(事業ニーズ達成)にする。
・トレーニングが本当に解決策として適切かどうかを判断する質問が必要になる。
・「あるべき姿-現状-原因(Should-Is-Cause)」の質問をする理由は、
クライアントが問題について何が分かっているのかを明確にすることと、
現状について詳しくはわかっていないことをクライアントに気づいてもらうため。
・プロジェクトミーティングを成功させるためには、ミーティング前に
「あるべき姿-現状-原因」の質問を練っておくことが必要。
・わかっていることは何で、わかっていないことは何かを明確にする。
○「わかっていないこと」を明確に伝える勇気をくれたのは、この本。
・クライアントとの間に信頼関係を築いておく。
●変わるためのヒント
・最終的な成果、パフォーマンス改善に焦点をあてる
・真に価値あるサービスを提供するためには、パフォーマンスのプラットフォームに
移行しなければならない。
●訳者あとがき
・本書のメッセージは2つ。
「人材開発部門は、よい研修をたくさんやっていればいいのか?」という問題提起
「PMCを実践して、業績向上に貢献する人材開発部門になろう」という提案。
・HPTは「成果を変えるには行動を変える必要がある。その行動を変えるには、
知識やスキルを高めるだけではだめで、職場の環境を合わせて変える必要がある」
○07年に初版を購入してから、3回読んだ。
何度読んでも、気づきがある。
自分の仕事の進め方を見直す機会をくれる本。
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