「未来の学びをデザインする」
美馬のゆり・山内祐平 著
○読み終わると自分で「学びのデザイン」をしたくなる。
切り口がシンプルで考えやすい。
(・引用/要約 ○関根の独り言)
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●未来の学び
・本来の楽しい、知的探求の活動
それが「未来の学び」
・認知心理学者は「学習」を知識獲得の行為として考えた。
・文化人類学者は、ある役割をもって共同体に参加する過程こそが
「学び」と考えた。個人の頭の中だけで起こる個人的な活動ではない。
・学びを構成する重要な要素が「空間」「活動」「共同体」
その3つの切り口から、未来の学びをデザインする方法に
ついて見ていきたい。
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●空間
・アトリエ的学習空間では、他の学生の進捗状況や
教員のコメントもわかる。
・講義型の授業では、他の同級生が何を考えているのかわからない。
同じ授業を一緒に受けていても、それは教員と学生の
一対一の関係となっている。
・美術系の学習で行われていることは、ものを作る、
他者の目にさらす、振り返って考える、こと。
・近年、学習は社会文化的インタラクション(対話)や
実践共同体への参加の過程であると言われている。
・学校における空間には、子供観、知識観、学習観が
色濃く反映されている。
・「学級王国」をサポートする装置である伝統的な「ハモニカ校舎」は、
受け身であり、画一的であり、抑圧的であるという思想が背後にある。
・円形スペースにより、誰もが参加者、発表者となるという
参加型、協調型の学習理念が強調されている。
○空間は、その空間をデザインした人の考え方が、
色濃く反映されている。
一つの方向を向いた教室をデザインした人は、
学習はそういうものだという思想をもっている。
以前、ある会社の研修施設の立て替え時に意見を求められて、
その研修施設に行ったことがある。
参加型・対話型の研修を行いたいが、
そういう研修にあう部屋を作りたいとのこと。
参考までにいろいろアイデアを聞きたいとのことだったので、
思いつく限りのアイデア(突飛なものも含めて)を伝えた。
その方が異動になってしまったので、
その後の進捗がわからないが、今度確認したい。
せっかく貴重な時間を割いて、集合研修に呼ぶからには、
その空間をより良いものにしたいという思いからだろう。
築数十年建った研修施設も多いだろうから、
今後はそういう空間にも配慮したものが増えてくるかも。
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●活動
・心理学者ヴィゴッキーは「人は社会、文化の中で媒介物/媒介者を
通して知識を構成する。
そこで重要なのは、仲間、教師、道具、制度などである」
という社会的構成主義という考え方を打ち出した。
・エッカートは、知識の獲得の仕方の違いに注目し、大人から
教わった知識の個人的習得を得意とする子供たちを
「生まじめタイプ(Jocks Jタイプ)」と呼び、学校外で
仲間と共有しながら知識を伝播させる
「非まじめタイプ(Burnouts Bタイプ)」とカテゴリー化した。
・学習者がもの作りを通し、他者とのコミュニケーションを広げ、
その一方で概念的知識を深めていく。
自分で何かを作ることが、社会との接点にもつながっている。
・ものづくりを中心とした学習形態に「ワークショップ」がある。
・制作活動を中心とした教育系のワークショップには、共通した
構造として「つくって、語って、振り返る」という3段階の活動デザインがある。
「つくる」ことで、抽象的な思考にとどまらない
身体性を伴った深い気づきが起こりやすい。
「語る」ことで、作品の積極的な意味付けを行い、
問題意識がわき出てきやすい。
「振り返る」ことで、反省的思考を促し深層の認識や
態度の変化につなげていくことができる。
・スファードは、認知心理学と状況学習論の枠組みを
「獲得メタファ(Acquisiton Metaphor)」と
「参加メタファ(Participation Metaphor)」として対比した。
・近代教育を支えてきた論理は、教育内容から構成された
カリキュラムであった。学ぶべき領域を先に規定し、
その領域で重要な概念を簡単なものから難しいものへ並べていき、
どのくらいの時間をかけて学ぶかを決めていく。
このやり方は学習者に、学習の意味を提示するのが難しいという
欠点がある「なぜ今これを勉強しなければいけないのか」
という問いに答えにくい。
・共同体に埋め込まれている学習であれば、共同体にとって
必要なことであれば、学ぶことに意味が発生する。
自分が何かを行うことで共同体の中で認められ、
その共同体に深く参加していくのであれば、
その過程で学ぶ意味を見つけやすくなる。
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●共同体
・学習者にとって必要な共同体とは何か
・認知的徒弟制の4段階
モデリング→コーチング→スキャフォルディング→フェーディング
○これは「OJTフォロー研修」で参考になる考え方
・このような徒弟制のモデルは、教育内容が教科書という形で
流通する前には、教育の中心的方法であった。
・徒弟的な学びを、共同体への参加のプロセスとして
理論化したのが、レイブとウェンガーらの研究。
・数理科学の研究者や学生が集まる「湧源クラブ」は、
実践共同体の好例。
・アイデンティティは、自ら学び続けていくためには欠かせない
「学習のための背骨」だといえる。
・実践共同体の成立と深化に必要なのは、関心の共有と
それを支える共通の目的をもつこと。
・教えることは、同時に学ぶこと。感覚で理解していたことを、
言葉に翻訳して伝えなければならない。
・異質な共同体が出会い「学びの共同体」を作るためには、崩壊しない
範囲で新しい創造のための「葛藤のマネジメント」が必要になる。
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●学習環境をデザインしよう
・あとは実際にやってみること。
それは「つくって、語って、振り返る」を実践することに
他ならない。それがよりよいデザインにつながってくる。
・未来の学びのための環境をどうやってデザインするのかの方法論を
「空間 Space」「活動 Activity」「共同体 Community」の
3つの要素から考える。
○「よし、やろう!」と思って、この章を読むと、どんどん入ってくる。
ただ、読むよりも、実際に使おうと思って読むのでは、やっぱり違う。
中原先生のご厚意で参加させて頂いた慶応MCCのメンバーと、
あるテーマで「学びの共同体」を持続できたらと考えている。
案が固まったら、メンバーに投げかけてみよう。
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