「認知過程研究~知識の獲得とその利用」

お薦めの本

「認知過程研究~知識の獲得とその利用」
  稲垣 佳世子, 鈴木 宏昭, 亀田 達也

○人がどのようにものごとを知ろうとするのか。
 認知心理学の考え方がわかる。

(・引用/要約 ○関根の独り言)
●認知過程を研究するとは
・外界から与えられる情報に従って、その都度適切な行動を選択している。
このような働きを心理学では「認知」と呼ぶ。cognition, cognitive
・外界についての情報を利用して、適応に役立てる。認知の本質。
・外界→入力系→中央系→出力系→外界
・特定領域に関する既有知識をどれほど多く持っているかが
「能力」を決定している。
・年齢が同じであれば同じような考え方をするはずだとはいえない。
認知過程の違いは、年齢の差によるよりも、その領域に関する
既有知識の量の違いによって生じる。
●子供が世界を理解する仕方
・幼児が素朴理論をもつということは、幼児はピアジェが描いていたよりも
ずっと有能な存在であるといえる。
・2~6歳児でも、物理的因果性を理解している。
○次女(3歳)もだいたいわかっているような気がする。
最近では「昨日、今日、明日」という時間感覚をわかり、
かつ言葉で表現できるようになってきたように見える。
前はごっちゃだったけど。
・子供が誤信念課題に成功し「裏をかく」方略が使えるようになるのは、
4歳以降である。
・幼児は、生物現象に対して、生気論的因果(体内の臓器の働きによって
現象が引き起こされる)による説明をしていると考えられる。
○臓器にも何らかの意志があって、動かしていると考える方が、
子供には分かりやすいからかな。
 胃に目がついていたり、心臓がバックンバックン自分で動くような
 絵があったりするし。
・幼児は人間についての知識を使って推論していく「擬人的」であり、
 かつ活力の働きに訴えるという意味で「生気論的」である。
●概念変化:知識の大幅な組み替え
・特定の領域での経験を積むにつれ、その領域での知識量が増大してくるが、
 同時に累積された知識の間で大幅な組み替えが生じることがある。
 これを「知識の再構造化」「概念変化」と呼ぶ。
・「自発的概念変化」「教授に基づく概念変化」
・「自発的概念変化」は、素朴理論の改訂によって起こる。
 幼児が「生気論的因果説明」から「機械的因果説明」に変わる過程。
・新しい情報の提示によって学習者に自分のこれまでの理解が不十分で
 あることを自覚させる。自分の知識に不整合のあることに気づかせる
 (認知的葛藤)方法が「教授に基づく概念変化」である。
 しかし、これは容易には生じない。
・討論は、概念変化を促しやすい。
○やはり他者と話すことは、その人の考え方に何らかの変化を与える上で有効。
・教師が特定の類推を使うよう勧めることで、子供の科学的概念の理解を
 容易にしようとする。
●熟達者と初心者の違い
・熟達者の技能は高度に自動化されている。
・近年の熟達者研究の端緒となったのはサイモンらの研究。
・一つの分野での経験を通して、豊かな知識を獲得した人は、
 そのうちの一部をほかの分野に転用できることも少なくない。
・練習の目的が変化する。初級者は「正確な遂行」上級者は「より適切な問題解決」
○これはあるだろうなー。初級者は「言われたことをきちんとやる」
 上級者は「言われたこと以上をやる」ということかな。
 上級者は、自分が今何をすべきか、なぜやるのか、それならば、
 どうやるのか、など一歩下がって踏み込んで考えられるんだろうな。
 初級者は、とりあえず与えられたことをやることに精一杯。
●熟達化の社会・文化的基盤
・熟達は優れて社会、文化的な達成といえる。熟達の所産は社会に還元され、
 それが社会的、文化的基盤となって、次の世代の学習者を育てていく。
・「道具の身体化」道具が身体の延長のように感じられてくる。
●問題解決の基本図式
・認知科学的には、問題とは現在の状態と望んでいる状態が一致しない
 状況を指す。問題の解決とは、様々な行為や操作によって、この2つの
 状態の差をゼロにすること、すなわち望ましい状態に達成することを指す。
・問題解決とは問題空間(problem space)を探索し、ゴールに至る
 適切な経路(オペレータの系列)を見つけだすことである。
・2種類の問題:良定義問題(well-defined problem)
 不良定義問題(ill-defined problem)
○ビジネスの世界で出会うのは、やっぱり不良定義問題が多いんだろうな。
●教科学習における問題解決と転移
・文章題「今日、太郎君は3時におやつとして、あめを5つもらいました。
 夕方にはまたあめを3つもらいました。今、太郎君はあめをいくつ
 もっているでしょうか?」
○長女(6歳)だと、「3時にもらって、すぐ食べちゃうから
 (夕方までもたない)今はもらった3つだけ」と答えそう。
●外的資源を用いた問題解決と学習
・認知的に負荷のかかることがらを外的表彰に配置させることは、
 教育において本質的な重要性をもっている。
○全部自分で覚えておこうとせずに、外に記憶を出しておく。
 俺のこのブログもそうだよな。
・人はもし外部にすぐ利用可能な資源がある場合、これを利用して
 問題解決をする強い傾向がある。
○無理して頭の中で考えようとせずに、外的道具を使って問題解決を
 しようとするということ?
・ペアで問題解決を行うと、片方が課題実行者(task doer)となり、
 もう片方がモニター(monitor)となることが多い。ペアの場合には、
 実行と観察評価が自然な認知的分業によって円滑に行われ、
 より生産的な別の可能性に気づく可能性が高まる。
・外的資源と人間との関係については、近年問題解決以外の様々な
 分野においてもトピックになっている。ギブソンに端を発する
 生態心理学は、全く新しい観点から理論化しようとしている。
○アフォーダンス理論
●創造的問題解決
・自力で解決できる人は、そうでない人に比べて多様な試行を
 はじめから行っている。標準的な型にとらわれずに、様々なやり方を
 試すことで、問題解決が促進されている。
・到達すべき状態が言語的には示されているが、具体的なイメージは
 与えられていない。そのイメージを作り出すこと自体が解決なのである。
○これはビジネスの世界でもそうだろうなー。あいまいもことした言葉を、
 具体的なイメージとして描き、形にしていく。
・グループの多様性が高く、かつ類似性も高いと、より創造的な
 アイデアが生み出される。
○多様性があって、かつ類似性があるメンバーの組み合わせが難しそう。
・創造的な問題解決の鍵は「多様性」と「適切な評価」である。
 多様な試行を促しながらも、ゴールに向けたものであるかを適切に評価する。
●推論の諸相
・類似性と差異の発見としての推論
○そういえば「論理は対の理解」ということを言っていた
 論理学の先生がいたなー。
・血液型と性格の間に関係は見いだされていない。
●判断・推論におけるバイアス
・人は複雑な情報に対して素早くおおまかな認知的処理をする
 ヒューリスティック(発見法)を用いる。
・最適な手がかりに基づくヒューリスティックによる決定とすべての
 手がかりを用いた重回帰分析に基づくシミュレーションの結果を比較すると、
 その成績は同等の正確さをもつことがある。
○直観は案外正しいってこと?
●批判的思考とメタファ的思考
・批判的思考(critical thinking)とは、自分の推論過程を意識的に
 吟味する反省的思考のこと。
・これまでの学校教育では、領域知識を教えることが中心であった。
 批判的思考力を高める教育をするということは、学習者をよき思考者
 (good thinker)や市民に育てることを意味する。
・批判的思考力を高める教育として、
1)メディアの批判的読解、視聴
2)討論
3)レポート作成
4)グループ活動
・メタファ的思考には、ヒューリスティックと共通する側面があり、
 過剰な一般化や実体化の危険性があるために、そのアウトプットを
 批判的思考の評価基準を通して見ることが重要である。
●認知と社会的相互作用
・ペアで話し合いながら進めるとアイデアの独創性が高まった。
・発言せずにいるメンバーも理解の深まりが見られた。うちなる対話を通して、
 能動的に授業に参加している。
○これは集合研修でもよく見られるよな。グループ討議で、積極的に
 発言していなくても、自分の中でよく考え理解を深めている人。
 SPでいうと「クラブ」タイプに多いかな。
・知識の少ない人がモニター役になって共同認知過程を促している。
○これは新人にも当てはまるかも。彼らの素朴な質問によって、
 熟達者が「そういえば何でだろう」と考えるきっかけになる。
・討論において、攻撃側と防御側の立場に分かれる、つまり
 「仕事の分業」が行われると、理解活動のいっそうの活性化を促す。
○確かにそうだよなー。一人で主張し、それに対する反論と、
 さらにそれに対する反論を考えるのは、きついもんな。
 人が分業することで、理解を深めることができる。
 これは面白いなー。
・社会的相互作用が効果をあげるのは、
1)共有可能性と局所的な正誤判断の困難性がある
2)ねばり強い吟味ができる
3)メンバー間の役割分化がある
4)話しやすい雰囲気がある
●談話理解
・認知心理学において、日常生活の様々な活動の中で実際に
 生成されたひとまとまりの意味を構成する言語テキストや
 その言語を生み出す状況や文脈を含む活動を「談話(discourse)」と呼ぶ。
○よく意味がわからないな。
●教室における談話
・測定可能な量的時間(クロノスの時間)と主観的感覚を伴う
 質的な時間(カイロスの時間)
○楽しい時間はあっという間。つまんない授業は時間のたつのが遅い。
 こういう呼び名があったんだー。
・教室内で活発な議論が起こるためには、教師があらかじめ答えが
 わかっていないような真正な質問(authentic question)を行ったり、
 ほかの生徒の発言をふまえた質問(uptake)をし、また生徒の回答に
 コメントするような評価や質問が必要である。
○これは集合研修でも同じだなー。自分に足りない部分でもあるが。

投稿者:関根雅泰

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