「“組織社会化”に関する論文の要点まとめ」
新入社員が組織に「馴染んでいく/染まっていく」過程を研究する領域が
「組織社会化論」(organizational socialization)です。
「学校から職場への移行(school to work transition)を果たした新人が、
いかにして職場になじんでいくのかを多角的な視点からとらえているのが
組織社会化論である」(尾形)
組織社会化研究で著名な尾形先生や竹内先生ほかの論文のポイントを、
私の理解の範囲でお伝えします。
(・引用/要約 ○関根の独り言)
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●新人の参入が組織・職場・個人に与える影響
尾形 真実哉 (神戸大学大学院経営学研究科 博士後期課程)
○2005年の論文?
・既存の組織社会化論では、新人が環境から影響を受け、学習し社会化されていく
という議論は多いものの、新人が環境にも影響を与えているという相互作用の
視点が欠落している。
・広範な組織社会化論を俯瞰することができるレビュー論文として
Bauer et al.(1998) Fisher(1986) 高橋(1993)がある。
○読んでみよう
・文化触変(acculturation)というアプローチ
・定性的データを、グラウンデットセオリーアプローチで分析。
・古川(1986)は、マンネリ化を防止するために、組織内部に多様性を、異質性を
抱え込むことであると指摘し、その方法の一つとして人材の新規採用をあげている
・新人が上司や同僚に“上司らしさ”“先輩らしさ”“社員らしさ”を認識させ、
社会化を促進させるエージェントにもなっている
○これは面白いなー。言われてみればそうかも。
新人が入ってくることで、先輩らしくなる。
・尾形(2004)は、新人のストレスの一つとして「モニターストレス」をあげている。
職場の関心が全て新人に向けられることで、新人にストレスを与えてしまっている
もの。新人をサポートしようと思う意識が高い職場ほど、逆に新人にストレスを
与えてしまうというパラドックス。
・新人が職場に参入して、社会や組織での現実にショックを覚える現象が、
「リアリティーショック」であるのに対し、新人が既存の組織構成員に及ぼす影響を
「ニューカマーショック」と呼ぶことができるであろう。
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●新人の組織適応課題
-リアリティ・ショックの多様性と対処行動に関する定性的分析
尾形 真実哉 (神戸大学大学院経営学研究科 博士後期課程)
○2006年1月
・若年就業者の適応課題とされるリアリティショック(reality shock)に焦点を
定め、若年就業者の職場適応と定着を阻害する要因について深く理解することを
目的とする。
・既存研究 Hall(1976)、Schein(1978)、Dean(1983)、鈴木(2002)
ほとんどの既存研究が、組織参入前に個人が抱く期待やイメージと実際の
組織現実とのギャップや相違によってリアリティショックが生じると定義。
・既存研究はリアリティショックという現象の理解が硬直化しており、
リアリティショックの多様性の存在を看過させてしまっている。
・また既存研究では結果としての離職行動だけを論じており、新人の対処行動は
看過されてしまっている。
・Strauss and Corbin(1990)は、質的タイプの研究に適しているものがあると主張。
・金井(1990)は、比較ケース分析の強みを主張。
・リアリティショックの3構図
1)既存型リアリティショックの構造
楽観的、非現実的な期待 → ← 厳しい現実
↓
既存型リアリティショック
2)肩透かしの構造
厳しさへの期待 → ← ぬるい現実
↓
肩透かし
3)専門職型リアリティショックの構造
厳しい現実が待っているという覚悟 → ← 予想を超える過酷な現実
↓
専門職型リアリティショック
・リアリティショックを生じさせる前提要因は「期待」だけではない。
「期待、過信、覚悟」という「見通し(perspective)」が、
リアリティショックを引き起こす前提要因。
○看護師以外の職業で「専門職型リアリティショック」にぶち当たるのは?
消防士、自衛官、とかかな。
・既存研究では説明できないリアリティショックの多様性が見出され、そのような
多様性を生じさせる要因として、リアリティショックを生じさせる前提要因と、
組織現実の多様性の存在があることを(本論文では)提示した。
・リアリティショックへの対処行動の多様性
1)肯定的 自己完結型 対処行動
リアリティショックを克服することを成長の機会ととらえ、自分で努力し
学習し、克服していこうとする。
2)肯定的 他者依存型 対処行動
他者からの支援によって克服する
3)否定的 自己完結型 対処行動
自分自身に無力感を覚え、リアリティショックの克服から逃避したり、
諦めたり、妥協したり、解決を先送りしてしまう。
4)否定的 他者依存型 対処行動
直面しているリアリティショックを上司や先輩、同僚などに原因を帰属させる
・リアリティショックの効果として、短期的には「職務と組織への適応」ができること、
長期的には「キャリア適応力」の形成。
・新人がリアリティショックを感受する対象として、仕事、組織、自己、人間関係の
4つに分類される。
・これら4つに関する事前学習としてインターンシップは効果的。
○本田先生の本だっけな、インターンシップの効果は限定的というのがあった
気がする。調べてみよう。
・「既存型リアリティショック」に遭遇している新人の克服を援助するためには、
ケアリングや教育制度の充実化を図るとともに、再動機づけを行うことも必要。
・「肩透かし」に対する組織の対処方法として、新人に責任、自律性を提供すること
が一つ。
・「専門職型リアリティショック」への対処法として、職場全体が新人を
バックアップする制度を充実させること。
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●若年就業者の組織社会化プロセスの包括的検討
尾形真実哉
○2008年3月
・予期的社会化(anticipatory socialization)は、
組織社会化(organizational socialization)の前段階。
・個人の組織社会化は、組織に参入する以前から始まっていると主張。
・Feldman(1976)は、予期的社会化の段階において社会化プロセスをスムーズに
する2つの指標を提示し、この指標が個人にとってポジティブであればあるほど
この後に続く社会化ステージもスムーズにいくことを指摘。
2つの指標は「リアリズム realism 」と「適合 congruence」である。
・予期的社会化に影響を与えるものとして3つ。情報の質と情報源、訓練、期待。
Wanous(1973、1992)は、離職行動を抑制するためには、採用候補者が
職場参入前に抱く非現実的な期待を抑制することが必要であると指摘し、
そのためには採用プロセスの際にネガティブな側面も含めた現実に基づく
職務情報を採用希望者に提供することを提唱した。
それがRJP(realistic job preview)である。
・組織に参入した新人が遭遇する課題は2つ。新人の内面で生じるメンタルタスクと
組織や仕事について学習しなければならないというラーニングタスクである。
・リアリティショック発生のメカニズムとその帰結:文献レビューからの統合
○これ分かりやすいなー。
既存研究をしっかり理解し、自分のものとしない限り書けないんだろうなー。
・Louis(1982)は、新人が機能的な組織メンバーとなるために成し遂げなければ
ならない基礎的なタスクの一つとして「関係するプレイヤーをマッピングすること」
をあげた。
○これは研修でやっている「人脈マップ」とも関連するなー。
・レビューされた組織社会化プロセスの「学習内容」を、尾形が分類。
1)仕事に関する知識、スキル、能力、言語
2)職場の同僚に関する名前、地位、趣味や性格、バックグラウンド
3)組織内、職場内の人間関係
4)組織文化と職場文化
5)組織内政治と職場内政治
6)伝説や儀式などに関する組織の歴史
7)組織や職場で評価される、あるいは評価されない行動パターンや
具体的な評価方法、評価基準
8)組織や部門の役割
9)組織内、職場内での自分の役割
10)競合他社や取引相手、顧客、支店、子会社などの外的環境、ネットワーク
・新人の組織社会化を促進する役割を果たす「社会化エージェント」
・Louis, Posner and Powell(1983)は、社会化アイテムとして「訓練」「経験」「人」
の3つをあげた。
組織社会化を援助する要因として、特にピア、上司、年上の同僚との相互作用の
3つの重要性を指摘。
・最近のメンタリング研究では、1対1の関係性よりも1対複数で形成される
部分的メンタリングの方が、プロテジェに良い影響を与えることが指摘されている
(Higgins 2000)
○これ読んでみよう!
・Fisher(1986)によると、新人がどのようにしてエージェントを選択するかは
あまり知られてはいない。
・新人自身が様々な仕事経験から良質な人間関係を築き、その中から尊敬できる
人物を自分自身の意思でメンターとして選択することが、最も有意義な
メンターとプロテジェの関係性と考えられる。
○これは確かにそうだよなー。
会社から「この人があなたのメンターです」と与えられてもなー。
・Feldman(1977)は、社会化における加入儀礼を、従業員としての適性の増加に
役立つ「タスクイニシエーション」と、従業員としての受容感の増加に
役立つ「グループイニシエーション」の2つにわけて捉えている。
・新人が円滑な組織への社会化を達成するためには、職場グループに受入られる
ことの重要性が指摘されており、それはグループの風土や職場文化、職場内の
人間関係などの職場要因が関連していると考えられる。
・Van Maanen and Shein(1979)は、組織の採用する社会化戦術を6つの次元に分類
・Gundry and Rousseau(1994)は、新人が経験するクリティカルインシデント
(重要な出来事?)は、新人の重要な学習機会となっており、そこからの学習が
新人の行動規範に影響を与えていると指摘。
・Van Maanen(1976)の適応モデルは、職場や組織から新人が受入られるかどうか。
若林(1995)は、新人が経営目標と職場慣行を受入れられるかという適応モデル。
・Sheinによると、昇進などのコンスタントな再社会化のプレッシャーが存在している
ため、組織内で創造的個人主義を維持することは特に困難だと主張。
○これは確かにそうだろうなー。組織に染まらないと、組織からは評価されない。
・Bauer et al.(1998)は、組織が個人の組織社会化プロセスを理解することの
重要性を3つ提示している。
1)コスト削減に有益
2)従業員の内面に影響
3)組織文化を伝達する手段
・Chao(1988)は、組織社会化が個人に与える潜在的な欠点として
新人の役割過負荷(role overload)を上げている。新人にとって主要なストレス。
・田尾(1995)は、過剰な帰属意識は、反社会的な行為に無神経にさせると指摘。
○これはあるだろうなー。
1社目の販売会社は、この過剰な帰属意識を醸成しようとしていたのかも。
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●若年就業者のキャリア展望と組織定着の関係に関する実証研究
-専門職従事者と非専門職従事者との比較を通じて
○2008年12月
・企業と個人の関係性は本当に短期的になったのか
・加護野、小林(1991)は、終身雇用制と年功序列制の密接した関係性を
若年期の「見えざる投資」で説明した。
このようなシステム下においては、企業と個人の間に長期的な関係性が約束
され、途中で会社を辞めることは損失となった。
・日本においては、組織と個人の間で、長期的な関係性を構築することを前提に、
キャリア形成が行われることがふさわしいと考えられる。
・本稿の仮説は、組織内での明確なキャリア展望を抱かせることによって、
組織への愛着や定着を促進することができるというものである。
・若年就業者の組織への定着を促進するためには、組織におけるキャリアの展望を
抱かせることが重要であり、そのためには若年就業者にキャリア展望の先行要因
となる受容感や成長感を抱かせる経験をさせ、幻滅感を抑制することが重要な
組織的施策になると言える。
・尾形、金井(2008)は、早期離職者と在職者のインタビューデータを分析し、
その相違として、在職者は現在の仕事経験が将来の理想自己に「連鎖」している
のに対し早期離職者の場合は、現在の仕事経験と理想自己の間に「断絶」がある
ことを見出している
・組織や職場から受け入れられたと感じる受容感を生起させるためには、
グループイニシエーションを通過させることが重要である。
・若年ホワイトカラーと看護師のキャリア展望の先行要因として双方に影響を
与えていたのは、成長感のみであった。
若年就業者のキャリア発達のキーワードとして成長感をあげることができる。
・加藤(2004)は「キャリアミスト」と「キャリアホープ」というペア概念を提示。
キャリアミストとは「自己の将来キャリアに関する不透明感」
キャリアホープとは「自分の将来に関する不透明感の中でも、自分にとって
望ましい状態に到達できる可能性はある、という感覚」
・加藤(2002)は、自分の将来に関する情報が全て得られて、先が見えてしまったと
同時に、将来への希望も失ってしまうことになる。
キャリア展望の良さと不確実性の高さのバランスが重要であろう。
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●導入研修が新人の組織社会化に与える影響の分析
-組織社会化戦術の観点から
尾形真実哉
○2009年3月
・A社において、導入時研修が、新人の組織への適応にどのような役割を
果たしているのかについて分析、考察する。
○タマノイ酢?
・個人の社会化を促進させる組織からの働きかけを社会化戦術
(socialization tactics)と呼ぶ。
・日本における社会化戦術の典型が、新人教育(OJTやOff-JT)と言える。
・OJTが有効な人材育成手段である最大の理由は、それが仕事を実際に行った
経験を通じての学習だからである。(守島 2004)
・小池(2005)は「フォーマルなOJT」という概念を提示。
フォーマルなOJTは、職業的社会化を促進する傾向が強いのに対し、
公式メンターは、組織文化に関する社会化を促進する。
・日本企業の新人研修は、新人の既存の組織構成員の足並みを揃えること重点。
文化的社会化の側面が強い。
・A社の導入時研修では、肉体的トレーニングも行われる。
・A社の導入時研修には、新人の組織社会化に影響を与えている特徴として
「厳しさ」と「不変性」がある。
・導入時研修の「厳しさ」が与える効果
1)タブラ・ラサ効果
2)ヨコとの連帯感の醸成
3)タテへの信頼感の醸成
4)自己効力感の醸成
5)組織コミットメントの醸成
・Louis(1980)は、新人が新しい役割を身につけるプロセスには、
古い役割を一気に捨て去るプロセス(tabula rasa process)と
徐々に古い役割を脱ぎ捨てるプロセス(event-anniversary process)があると主張
・Van Maanen(1976)は、新人に地位、価値、品位、評価を下げる経験
(debasement experiences)をさせることが有効と指摘。
これは厳しさや屈辱を与えることで、新人を型にはめていくプロセスで、
新人の自己イメージを取り上げ、以前の役割を手放すことを強制し、新しい
行動的性質を創造させることができるからだと言う。
・Aronson and Mills(1959)は、ある集団の成員になるために厳密な入会手続きを
経験した個人は、その集団に対する自分の好意度を増大させると結論づけた。
・導入時研修の「不変性」が生み出す効果
1)コミュニケーションツール (共通の話題)
2)メンバーシップの獲得 (先輩社員の新人への適応も促進)
・導入時研修によるネガティブな感情も、研修が進むにつれて解消されていく
・A社の導入時研修は、通過儀礼と捉えることができる。
新人や既存成員といった個人に影響を与えているだけでなく、組織文化の継承と
いったマクロ的な効果も存在している。
・欧米型の仕事の知識やスキルを重視する職種別採用ではなく、新卒一括採用が
一般的な日本においては、新人に対して仕事の知識やスキルよりも、組織の
文化や行動規範を理解させることの方が、優先事項になると考えられる。
・A社の導入時研修は、肉体的、情緒的な側面が強調されており、それが
実践的な内容であることを新人やトレーナーの口から聞くことができた。
○これは先日の「人材教育フォーラム」での日本旅行の事例(スパルタ教育)や、
お手伝いしているJ社の話とも重なるのかも。
ただ、単発研修の厳しさだけでなく、A社のよう会社全体のかかわりがないと
効果も限定的なのだろう。 組織社会化という観点から考えても。
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●新人参入の組織論的考察 -職場と既存成員に与える影響の定性的分析
尾形真実哉
○2006年?
・バブル期には多くの人員を採用したにも関わらず、バブル崩壊後に長い間、
新卒採用を凍結したことによって、企業内の人口構成はいびつなものとなった。
・なぜ新卒採用を行うことが有益なのであろうか
・学校から職場への移行(school to work transition)を果たした新人が、
いかにして職場になじんでいくのかを多角的な視点からとらえているのが
組織社会化論である
・Bell and Staw(1989)は、新人は環境からの働きかけに対して受動的な存在
(people as sculpture)ではなく、能動的で自己社会化への動機付けをもつ側面
(people as sculptor)であると主張。
・Feldman(1994)は、新人は環境にも影響を与えていることを提示。
・既存研究と本稿の分析視点の比較
社会化されていない新人 ← 職場・既存成員 (既存研究の視点)
社会化されていない新人 → 職場・既存成員 (本稿の視点)
○こうやって明確に示せたらいいなー。
・定量的手法は、理論の立証や確認をするという課題のために発展し、
定性的手法は、理論を発見する、あるいは生成するという課題のために発展。
・新人参入の影響の関するまとめ
1)個人レベル
+ ポジティブ ← (新人の果たす役割)社会化エージェント
学習機会の創出、指導機会の創出、原点回帰、
モチベーション向上、職務再設計
- ネガティブ ← ストレッサー
心理的負荷、時間的負荷、職務負荷
2)集団レベル
+ ポジティブ ← ファシリテーター、変革エージェント
集団学習機会の創出、コミュニケーションの活性化、職務再設計
- ネガティブ ← ボトルネック
仕事の停滞、信頼関係の亀裂
・今まで雑用をこなしていた若手社員は、自分の職務遂行の負担であった雑用を
新人に任せることで、雑用から解放され本来業務だけに集中できる。
・新人の参入が既存成員間のコミュニケーションを活発にしたり、他部署との
コンタクトが再生できたりする。
・組織は新人を参入させることによって、既存成員に「出会いの場」と「議論の場」
を意図的に作りだすことができる。
・新人は、ほぼ外部者の視点で職場に参入してくる。
新人こそ枠を外すチェンジエージェントになれる可能性を秘めている。
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●組織社会化施策が新規学卒就職者の組織適応に与える影響
竹内倫和(明治大学経営学部)竹内規彦(愛知学院大学経営学部)
○2004?
・入社1年目と2年目に実施した縦断的調査に基づき検討する。
・欧米を中心にして、組織社会化戦術の組織適応に対する影響の検討は
されているが、日本ではこれまでほとんど検討が行われていない。
・組織社会化に対する因子分析結果より「課業次元」と「組織次元」の
2因子が明らかになった。
・3つある「文脈的」「内容的」「社会的」組織社会化戦術のうち、
「社会的」組織社会化戦術が、新規学卒者の組織への社会化を高めると同時に、
結果変数として入社後1年間の組織コミットメントの変化量に対して
正の有意な影響を与えていた。
社会的社会化戦術の重要性が示唆される結果となった。
・社会的社会化戦術とは、組織メンバーが新規参入者の役割モデルを果たす、
あるいは新規参入者が組織メンバーから効果的なソーシャルサポートを受ける
ことを意味しており、メンタリングに近い役割といえるだろう。
・新規学卒者は、非公式メンターシップなどの社会的社会化戦術を受けることに
よって、組織への社会化を高めかつ組織への積極的な関与を高めたものと思われる
・組織社会化の中で「組織次元」のみが結果変数に対して有意な影響力を有している
ことが明らかになった。
職務(課業)に関する社会化は、結果変数に対して有意な影響を与えない一方で、
他方組織に関する社会化は、組織への積極的意欲や目標や規範、価値観への
受容度を高め、転職意思を抑制させることが分かった。
・入職後においては、本研究によって効果が確認されたメンター制度など
社会的社会化戦術を企業が積極的に導入することが一つの方策として考えられる。
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●新規学卒就職者の初期キャリアにおける態度変容とリアリティショック
-縦断的調査に基づく検討
竹内倫和(明治大学経営学部)
○2003年?
・組織社会化とは「組織への新規参入者が、組織の規範、価値、文化を習得し、
期待されている役割を遂行し、職務遂行上必要な技能を獲得することによって
組織に適応すること」(高橋、2002)と定義される概念である。
・入職1年目と2年目の縦断的調査に基づいて、新規参入者の態度変容および
リアリティショックの態度変容に対する影響の検討を試みた。
本研究の結果、以下の点が明らかになった。
・入社後1年間において、新規参入者の勤労意欲が低下することが確認された。
新規学卒者は組織の目標や規範、価値観の受容度を低下し、新しい知識や技術を
獲得しようという意欲(モチベーション)も低下していることを示唆。
それと同時に転職の意思も高めている。
・新規参入者の態度変容に対して、リアリティショックが否定的な影響を与えて
いることが確認された。
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●新規参入者の組織社会化メカニズムに関する実証的検討
-入社前・入社後の組織適応要因
竹内倫和(東京富士大学経営学部) 竹内規彦(東京理科大学経営学部)
○2009年
・新規学卒者は、入社後の初期キャリア発達課題として、組織への社会化を通じ、
円滑な組織適応を果たすことが求められている。
・本研究の分析フレームワーク
○すっきり整理されていて分かりやすい。こういうのを作れたらなー。
・(調査1)調査方法は、新入社員研修を実施している企業において、
質問紙の配布、回答を依頼した。合計297部の回答を得た。
・(調査2)183名の新規学卒者の入社直後と1年後の質問紙調査。
○研修での質問紙配布。これなら俺もできるかも。
・(調査1)企業が求職宣伝施策を行うほど、新規学卒者の転職意思を抑制する一方、
広報施策を行うほど、転職意思を高める傾向があることを示した。
・(調査2)企業が新規学卒者向けの組織社会化戦術を積極的に展開することにより
新規学卒者の組織適応に必要な態度や行動、知識が獲得され、この組織社会化
学習内容が高まることによって、1年後の組織適応が高まるという一連の
プロセスが明らかになった。
・本研究によって
1)初期採用施策の中でも「求職宣伝施策」を企業が積極に展開することによって
入社直後の新規学卒者の組織コミットメントが高まり、転職意思が抑制される
ことが明らかになった。
2)入社前の個人要因と入社直後の組織適応との関連に関して「自己キャリア
探索行動」のみが、入社直後の新規学卒者の組織コミットメントおよび
達成動機を高めることが明らかになった。
3)入社直後の組織適応が社会化学習内容に正の影響を及ぼし、組織社会化で
必要な学習内容を獲得することによって、1年後の組織適応が高まるという
一連のプロセスが明らかになった。
4)企業施策である組織社会化戦術が、新規学卒者の組織社会化学習内容を
媒介して、1年後の組織適応に正の有意な影響を及ぼすことが示された。
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●新卒採用プロセスが内定者意識形成に与える影響-製造業大手A社のデータを用いて
林 祐司 (首都大学東京)
○2009年
・一般に企業の採用プロセスは、機能面から整理すると「選別 selection」と
「誘引 recruitment」の二面に分けることができる。
・新卒採用プロセスが、内定者意識形成に与える影響について「誘引」という
側面から実証的に分析する。
・本稿では、採用広報プロセスと採用選考プロセスが、企業の従業員の最初期に
ある内定者が企業に感じる魅力という意識に対し、どのように影響したかを
明らかにする。
・竹内ほか(2008)は、どのような採用広報施策が有益なのかを、我が国のデータを
もとに分析した貴重な研究。
求人広告など募集活動で使用する媒体を魅力的にする「求職宣伝施策」が
組織コミットメントと転職意思(抑制)に有益な結果をもたらすことを明らかにした
・Allen,Mahto & Otondo(2007)では、企業の採用ウェブサイトに満足している者
ほど企業に対する印象が良いことが明らかにされている。
・本稿の分析結果から、総じて採用広報や採用選考を適切に行うことで、
新卒採用プロセスは、組織的予期的社会化の一助となることが示された。
・好感度が高い説明会を開催することで、採用広報プロセスは、有益な
組織的予期的社会化施策になりうると言える。
・採用担当者の対応の好感度が高いとき、望ましい意識形成がなされうる。
○これは確かにあるよなー。K社でもよく聞いた。
・いわゆる「圧迫面接」は企業への評価を下げる可能性がある。
○採用プロセスそのものが、現場配属後の新人の仕事、職場への適応や、
離職にも影響してくるということか。
採用のとき好印象をもっていれば、職場でも頑張ろうとするということかな。
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