「聞きとりの作法」
○企業を対象に質的調査を行う際の具体的方法が細かい点まで分かる。
(営業活動における顧客ヒアリングでも役立つ)
(・引用/要約 ○関根の独り言)
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●はじめに
・企業での聞きとりの方法をかんがえる本
・数量分析だけで説明できる現象は決して多くない。
むしろぬけおちてしまう情報が案外に多い。
・この本の主な目的は、企業の中での聞き取りの方法を具体的に説明すること。
従の目的は、数少ない事例を調べてどこまで広い適用性を主張できるかを考える。
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●調査計画ー聞きとりの前に
・全ての探求は、まず問題の設定から始まる。それはその人の問題関心による。
○問題の設定は、本人しかできない。
自分が何を知りたいのか、明らかにしたいのか。
確かにそうだよなー。他者から「これ研究テーマとして面白いんじゃない」と
本人が興味ない分野を言われても、しらけてしまうだろう。
・「例」こそ質的で非数量な事柄を追求する手掛かりである。
・話し手のコスト、特に時間を配慮する。意識せざる傲慢に気をつける。
○確かにそうだよなー。時間を割いてくれる相手への配慮。
俺は、この配慮が足りなかったなー。手土産とか特に。すみませんでした。
ただ、コストだけでなく、聞き取りによって相手に与えるメリットもあるのでは?
話し手にとってのメリットは何か?
-語ることで、本人がふり返る、内省の機会
-自分の経験が整理される 新しいことに向かうきっかけとなる?
-気持良く語れることそのものの楽しさ
-自分の経験が研究者にとって意義あるものとわかる 経験への誇りを喚起
・仮説の設定が、実験計画の要である。ここを練り上げておかないと、既に
わかっていることしかわからない。
・第一段階「分析概念」の設定とは、説明さるべきもの=被説明変数、
それを説明する要因=説明変数、ときにその間に働く媒介変数を用意する。
理由も考えておく。
その前にやっかいなのが、被説明変数の例えば技能の高さを、どのようにして
測定するかという問題がある。
技能が高いとどのようなことが起こりそうか、そのあらわれ方を想定してみる。
例えば、技能が高いと「問題への対応」と「変化への対応」が良くこなせる、など。
○これは大事だよなー。
俺の研究の場合「新人が成長した」ということを、どう測るのかという問題がある。
特に、第三者から見て「あの新人は成長した」と見られるのはどういう状態なのか
を明らかにしたい。
それは、本人の行動を見て
-仕事を任せられる 期日内に終わらせられる
-報告、連絡、相談が的確
-スケジュール管理が自分でできている
-自分から何か提案してくる
とか。
あとは、他の新入社員(同期や後から入ってきた新人)を見て比較で評価するかも。
-(Aに比べると)~ができる、わかっている
-(Aよりも)早い段階で
とかかなー。
ここは、もう少し深く考えてみよう。
・聞きとりは、話し手と聞き手の共同作業。
共同できるほど、努力してきたこと、せめて勉強してきたことを、話し手に
分かってもらうことが大切。
○これは、営業も一緒だよなー。その会社について勉強してきてくれないと、
お客様は話す気になれない。
・仮説は複数用意しておくこと。
・話し手は、日ごろ大いに痛感していることがある。それをズバリ聞かれれば
聞き手が当初思っていたことよりもはるかに深いことを話し手は語ってくれる。
○これはあるだろうなー。
しかも外部の人間に言われると「我が意を得たり」って感じで
熱く語ってくれるんだろう。
そのヒットポイントを探すのが、仮説設定なんだろうなー。
・タイ、マレーシアと日本の技能比較をした際、まず「どこを見たら」その技能の
異同がわかるのか、それを探した。
○「どこを見たらわかるのか」これが大事なんだろうなー。
ここが分かれば、そこをチェックポイントにして観察すればよい。
・企業での事前勉強として、有価証券報告書を読んでおく。
・比較しながら語ることのできる人に、聞き取りをすると良い。
比較こそが、事実に接近する近道である。
・もっともよく知る人の話を引き出すには、その人が主人公である場でこそ
聞かなければならない。
○これが俺はできていなかったなー。今までのインタビューでは、教育担当の方に
セッティングして頂き、応接室や会議室で話を聞くことが多かった。
本来は、職場まで行って話が聞けるといいんだろうなー。
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●聞きとり
・「なかば構造化した聞き方(half-structured interview)」
・聞くべき要点をまえもって良く考えておく、仮説の重要性。
・実際の質問は、相手の答えにのって聞いていく。
・具体的に聞いていく。
○具体的に聞くためには、ある程度その職場や現場の様子がわかって、それを
表現しながら、特定して聞いていかないとだめなんだろうな。
・何か答えがでたら、最近の「例」を聞く。
量的な分析と違い、事柄の分析、つまり質の面についての追求の場合、
例こそ命である。
・聞き取りはある程度、軽々しく決断できる人のほうが向いている。
・聞き取りはできるだけ職場で行いたい。機械のそばに立ったまま、あるいは
職場の詰め所や休憩室で行う。
・職場での滞在時間を長くする。
○これが俺の今までの聞き取りではやってなかった点だよなー。
・まず組織を大まかに説明してもらい、その後焦点の職場をやや詳しく見せてもらう
・比較こそ事実への接近の大道である。できるだけ多くの職場を見ておくこと。
・相手からされる質問から、逆にどんなことに困っているか、それがよくわかった。
○これはあるよなー。OJT研修をやっていてもそう。
-新入社員へのほめ方、叱り方(特に叱り方)
-マナー、身だしなみ等の注意について
-相手のモチベーションの高め方
-個別具体的な対応(~という新人にはどうすれば)
-上手な教え方、効果的、効率的
-新人の現状レベルの見極め方
-忙しい中での指導時間確保の方法
-育成計画の立て方、その運用の仕方
こういう質問が多くでてくる。この辺が、OJT指導員の困っていること。
・聞き取りノートが、もっとも大切な一次資料となる。
メモは浄書しておく。箇条書きではなくフルセンテンス。文章にして。
・ノートは保存し、門外不出とする。相手のプライバシーのために。
・聞き取りノートをくり返し読みなおし「コーディング」する。
内容を一言で言いあらわす見出しをつけること。
・草稿を話し手にチェックしてもらう。
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●聞きとり調査の説明力
・聞き取り調査の説明力、数少ない事例を調べてその妥当性を主張する、を
数量的な方法と比較する。
・聞き取り調査や事例調査でないと、逆に肝心な実態に迫れないこともあるのでは。
・聞き取りと数量分析、双方で補いあえないか、三角法で。
・名目論 nominalism と 実在論 realism の対立。
もし名目論をとれば、個別具体的な知識こそがほんものの知識となる。
他方、一般的な概念が存在するという実在論をとれば、多くの事例が存在し、
数量分析が欠かせなくなる。
・個別例を、なぜ、どうやってと深くじっくりと聞いていけば、これだけでも
広く他にも適用できそうなモデルが引き出せそうだ。
わずかな事例であればこそ、深く掘り下げることができ、かえって広く説明力の
ある一般的な仮説を形成できる。
○「聞き取り前に仮説を設定し、聞き取りでその仮説を検証しつつ磨きをかける。
その上で、量的調査でその仮説の妥当性を検証する」という方法をとるといいのかな。
・深く見るには、事例の数が多すぎてはできない。
ていねいな聞き取りは思いのほかに、一般的な仮説を構想する途なのだ。
○そういえば「新人を1人で育てず周囲の協力を得ながら行う」という
“ネットワーク型OJT”の仮説を思いついたのも、あるメーカーで指導員の方の
話を聞いていたときだったな。
あの人のおかげで、その可能性に気づけた。ありがとうございます。
・数少ない事例の聞き取りに基づく仮説がどれほど一般性を主張できるか。
その方策として、
1)聞き取りの事例をまずはなるべく小さな「種」の中におさめる
2)その上で2~3の種にわたって観察事例を拡張する
・聞き取り調査で主要な変数の見当をつけ、それを複数の種の多くの個体に
アンケート調査で聞いて確かめるという順序。
この折衷主義=三角法 Triangulation こそが本道となろう。
・聞き取りを先に、アンケート調査はその後に。
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