「組織と個人~キャリアの発達と組織コミットメントの変化」
鈴木竜太
○入社7年目が転機。
20代~30代の若手社員の組織コミットメントの変化が見て取れる。
(・引用/要約 ○関根の独り言)
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●第1章 本書の目的と立場
・人と組織の関係は、どのように変化していくのか。
・コミットメントという言葉に対応する言葉が、日本語では多様。
・組織行動論において研究されてきた組織コミットメントの概念を用いる。
○俺の研究も「この領域」で「この概念」を使ってと
明確に示せるといいんだろうなー。
・仮説発見型の研究。本書では、理論的な仮説の構築を目指す。
・理論の土台とするのは組織論。
・現場発の理論を目指す。データ対話型理論の構築方法に基づいて。
・本書では3つの調査対象に対して、定量的と定性的の2つの方法をとる。
○俺もこの両方をやってみたいなー。
指導員に対しては、定量的、統計的方法。
新入社員に対しては、定性的、質的方法。
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●第2章 見過ごされてきた課題
・いくつかの研究トピックや概念が置き去りにされてきた
・組織コミットメントの概念
1)情緒的コミットメント
~感情的な愛着、同一化と没入
○シャインの本や、DECの本を読んでおこう。
2)功利的コミットメント
~サイドベットを失う恐れ(付属的賭け理論)
組織を離れることで無価値になる、個人がそれまでに投資した価値
○日本だと「企業内特殊スキル」もこれに当てはまるのかも。
・「媒介変数アプローチ」は、勤続年数とともに組織コミットメント
が強くなるという前提。
・「変数探索アプローチ」は、組織コミットメントを変化させる
要因を探索した。(例:くぐり抜けた障害の多さ、物理的移動の前後)
・組織コミットメントは、キャリアの中でどのように変化していく
のか。この問いに答えるためには、長期の継時的調査(longitudinal study)が必要。
○俺が新入社員の成長をおう際も、この継時的調査が必要かも。
・組織コミットメントは、入社半年間で単調に減少することがわかった。
・キャリア初期における組織コミットメントの変化に関する
もう一つの主たる発見事実は、初期の組織コミットメントの減退後、
組織コミットメントが高くなるという事実である。
・キャリアが進展するにつれ、組織コミットメントが強くなる。
・組織コミットメントは必ずしも勤続年数とともに単調に増加しない。
・本書は、初期の付属的賭け理論には、組織コミットメント研究の体系化
による限界を乗り越えるエッセンスが潜んでいると考える。
○こういう切り口を見つけられるといいんだろうなー。OJT関連で何かあるかな。
・付属的賭けが健在化する局面として、Beckerは4つあげている
(文化的予測、没人格的/官僚的手続き、社会的地位への適応、対面の相互作用)
・付属的賭けが大きい人ほど、組織へのコミットメントが強いという
基本仮説のもとに実証研究がおこなわれてきた。
しかし統一的な発見事実は得られず、付属的賭け理論の妥当性は、
十分に検証されていない。
・付属的賭け理論の十分な検証がなされないまま、組織コミットメント研究は
情緒的コミットメントによる体系化に焦点を移し、付属的賭け理論への
注目度をなくしていく。
・付属的賭け理論は、存続的コミットメントとして3次元概念に吸収されたことで
情緒的コミットメントの研究との融合がなされた。
・付属的賭け理論の最も特徴的な側面は、付属的賭けを失う時に初めて自身の
コミットメントが顕在化すると考える点である。
○これは確かに言われてみれば面白い点。
失うことの怖さから、自分がそれに縛られていることを知る。
・変化やプロセスといった動態的な問いには、定量的方法は向かない。
・勤続年数による組織コミットメントの変化の姿は、社会化過程における研究を
除き、経時的な調査によるものはほとんどない。
○俺もこうやって、自分の研究のオリジナリティーをアピールしたいなー。
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●第3章 日本的なものと普遍的なもの
・日本の方が組織コミットメントが強いという通説を、研究結果は支持せず、
アメリカと比べて同じか、やや低いという結果を示した。
・日本における組織コミットメントの発達過程は、入社5~6年目までは低下し
その後上昇するJカーブを描いた。
2つの解釈がある「期待と現実のギャップ仮説」「先払い、後払い仮説」
・組織コミットメントは、初期から中期キャリアにドラスティックな変化をする
可能性を示唆している。
・初期キャリアの出資が「人質」として捉えられているため、途中で企業を離れる
と、この「人質」が取り返せなくなる。「見えざる出資」
○これも右肩上がりで、給料が上がっていくという前提だもんなー。
頑張っても返ってこない(今の年金のように)なら、
頑張る気を維持するのは難しい。
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●第4章 調査の概要
・3つの対象に、2つの調査方法
(質問票による定量的調査と、インタビューによる定性的調査)
・定量的方法が「鳥の目」によるデータ収集というならば、
定性的方法は「虫の目」によるデータ収集といえる。
・定性的方法で理論を構築するために、Glaser&Straussの
「データ対話型理論の発見」の方法に準拠した。
○この人たちの本は、読まないと。
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●第5章 組織コミットメントとキャリア変数
・定量的調査の目的は、定性的調査データの分析や考察において、
土台となる事実を確認することと、定性的調査の焦点を絞ること。
・パートタイマーは、別の職場に移ることが容易であると言える。つまり愛着が
あるからこそその組織にいるのであって、そうでなければ辞めていると考えられる
フルタイマーは、たとえ愛着が低くても、功利的に組織と結びついていることが
考えられる。
・これまでの先行研究の結果と同様に、勤続年数、年齢、職位のキャリア変数は
情緒的コミットメントと功利的コミットメントの2つの変数と正の相関関係が
示された。
・フルタイマーの情緒的コミットメントは、キャリアの初期から中期にかけて
停滞し、キャリアの中期以降に急激に発達するJ字型の傾向がある。
・フルタイマーは、1年目から2年目に情緒的コミットメントが低下し、その後
停滞した後キャリアの中期から急激に上昇する。
・p127 定量的調査からの発見事実。
・パートタイマーの場合、組織コミットメントの強い人の方が組織に居続ける。
フルタイマーの場合、その時点での組織コミットメントが低くても組織に居続ける。
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●第6章 7年目の転機
○このタイトル、魅力的。
・組織コミットメントの変化に準じて、4つの段階があると考えられる。
1)急激な低下(社会化過程)2)停滞 3)停滞 4)急激な強化
・社会化過程とは、新人が組織になじんでいく過程
・リアリティショックは2つのタイプに開けられる。
1)組織イメージと現実のギャップによるもの
2)仕事内容へのショック
・リアリティショックは、キャリア初期の組織コミットメントを低下させるが、
長期的には影響はないと結論付ける研究もある。(Mowday 1982)
○これ、読んでみよう。 Employee-Organization linkage これかな。
・リアリティショックによる組織への違和感や疑問の解消が先送りにされて
仕事への適応が優先されることによって、新人はそのまま社会化過程を過ごす。
この先送りにより、新人の組織コミットメントは低下し、停滞したままで、
社会化過程を過ごしていくことになる。
・組織への違和感や疑問、理想と現実のギャップとの折り合いの付け方は、3つ。
1)2年目になり周りが見えることで
2)考えないまま先送りにすることで
3)割り切ることで
・1年が終わり、一通りサイクルをこなすと、仕事に慣れ、仕事への緊張感が
失われてしまう。
・「慣れ」や「くり返し」によって、仕事が上手くやりこなせることが、仕事への
意識を低下させ、組織へのコミットメントを弱くさせる。
・先行研究では、自分の職務が豊かであると感じている人ほど、組織コミットメント
が高いことが示されている。
それは仕事の挑戦的な要素が、仕事への意識を高め、組織への貢献意識を高める
ためであると考えられる。
その反対に、職務への順応による定型感と単調感は、組織コミットメントの停滞
を助長すると考えることができる。
○これは難しいよなー。あとは本人のタイプにもよるのでは。
単調な仕事だからこそ職務満足が高くなりそうなタイプの人と、
常に挑戦的な仕事を与えてくれることに感謝するタイプの人。
・研修は、組織と個人の関係を改めて内省する1つの機会とも捉えられる。
日常業務を離れて、客観的に自分と仕事あるいは会社組織との関係を見直す
機会を提供する。
○研修の意義。 日常業務を離れて、自分と組織の在り方を考える。
同時に「寝た子を起こす」ことにはならないのかな。
考えずに、疑問を先送りして、7年目に組織コミットメントが上がるなら、
それまで研修しないという選択もあるのでは。考えさせないという。
でも、それでは「考える社員」の育成を標榜するなら矛盾するか。
そういえば、鈴木さんのこの後の本で
「自律のチャンスを与えられた社員の方が、実は組織コミットメントが高まり、
組織に居続けてくれる」とあった気がする。(確かめよう)
そうだとすれば、研修で「寝た子を起こす」のもいいのかも。
・キャリアドリフトが、組織コミットメントを停滞させるのは、ドリフトによって
組織と個人の関係を考える機会が存在しないから。
・入社7年目から急激に組織コミットメントが高まることが発見された。
その要因は2つある。
1)組織内での昇格によるもの
2)転職の選択肢の減少によるもの
・新卒者の場合、入社7年目前後で30歳に達する。
・日本労働研究機構(1997)の調査では、日本企業において最初の選抜が行われる
平均は、入社7年目であることが示されている。
・昇格という一つの変化が、組織へのコミットメントを変化させる節目となるのだ。
○7年目前後に、昇格しなかった人はどうなるのかな。
それでもやっぱり選択肢の減少から、組織コミットメントは高くなるのかな。
その会社にしがみつく状態。
・p161 初期-中期キャリアにおける組織コミットメントの変化
○この図も分かりやすいなー。俺もこういうのを自分の研究で書けるようになりたい
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●第7章 キャリア上の転機による組織コミットメントの変化
・p187 Schein(1978)のキャリアのコーンモデル
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●変わるコミットメントと変わらぬコミットメント
・組織の節目
・組織変革前と変革後の組織風土の変化
・ある転機が、誰にとっても組織コミットメントを変える転機となる訳ではない
その転機を、本人が「変化」と感じることが必要。
・「主観的な組織」という存在。
○これは面白いなー。確かに言われてみればそうだ。
Aさんにとって、X社と、Bさんにとっての、X社は違う。
本人の受け取り方、感じ方、価値観に関係する部分なんだろうなー。
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●終章 結論
・組織コミットメントの変化を促す転機の特徴の一つに、責任の増加があり、
それによって組織と自分の価値観を一体化させていることが示された。
・本書の結論は、勤続年数が長くなればなるほど、組織コミットメントは強く
なるが、その関係は直線的、比例的なものではなく、勤続年数の長期化に伴う
様々なキャリア内での要因の複合が、組織コミットメントに影響を与えている
ことが示された。
○J字型。組織の節目。転機
・日本的キャリア育成システムが、組織コミットメントの長期的な変化に影響を
与えていることが、本書の分析から示された。
○遅い昇進、入社7年目の選抜、ローテーション
・初期から中期キャリアプロセスの重要性。
会社に慣れてから中心的存在として活躍できるまでの10年ほどの期間を
いかに過ごすか。この点が見落とされがち。
・本書では、2つの相反する含意を提示する。
1)キャリアドリフトが起こらないように、常に組織の中での自分の位置づけを
はっきりさせることにより、組織と個人の良質な関係を構築するという考え方
2)キャリアドリフトを起こしたままで、自分で組織と自分の関係を模索させる
ことによってこそ、良質な関係が構築できるという考え方
・どちらにせよ(20代から30代前半)は、キャリアにとって重大な時期であることを
認識することが重要。
・転機を大事にしてほしい。
○俺の場合、
24歳で、大学卒業。
25歳で、1社目就職
27歳で、2社目転職
33歳で、独立
37歳で、大学院入学。
特に、20代後半からの2社目で得たことが大きかったなー。
仮に1社目だけで独立したり、あるいは2社目に違う会社に行っていたら、
今とは違った状態になっていただろうなー。
改めて感謝します。
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