2010年9月13日(月)~15日(水)@伊香保で、
東京大学大学院 中原研究室と山内研究室の合同夏合宿が開催されました。
さし障りの無い範囲で、どんな様子だったのかをご報告します。
●準備
修士1年生6名で、合宿の準備をします。
・先生方の日程調整
・合宿先の選定
・参加者への案内
・「学習プログラム」の割り振り
・宿とのやりとり
・お酒の準備 等
夏学期が始まってすぐの4月中旬から準備を始めます。
「統括/しおり」「宿」「学習プログラム」という3つの役割に分けて準備します。
その他に、学習プログラム内で、自分が担当する「偉人」について
ポスター(A48枚のスライド)にまとめるという準備もあります。
合宿では、「偉人(心理学者、教育学者)の古典的研究を学ぶ」ということで、
修士1年は、J.ピアジェ、L.S.ヴィゴツキー、J.デューイ を、
修士2年以上が、B.F.スキナー、K.レビン、D.ショーン、
Y.エンゲストローム、A.ブラウン、J.レイブを、
それぞれをペアで担当し、資料にまとめます。
私は、修士1年の女性と一緒に、J.ピアジェを担当しました。
恥ずかしながら、名前もよく知らなかったので、ゼロからの勉強です。
「良くわかる発達心理学」や「キーワード心理学」といった辞書的な本で、
大まかな概要をつかみ、次に「ピアジェ入門」等、他の研究者が書いた
ピアジェに関する本をよみ、最後にピアジェ本人の著書を読みました。
不完全な理解ながら、何とか資料をまとめ、合宿本番に臨みます。
●合宿
私の家(埼玉県ときがわ町)からは、伊香保まで車で1時間半ほどです。
宿に直接集合します。
車を走らせながら「なんかここ来たことあるなー」と思いつつ
宿の駐車場に車を入れた時「あ!このホテル泊ったことある!」と思い出しました。
実は、長女が小さかった頃、妻と3人で伊香保に来たことがあり、
たまたまその時泊ったホテルだったのです。びっくりでした。
11時半ごろ、修士1年と早くついた中原先生と一緒に、
伊香保の有名な石段そばのうどん屋で昼ご飯を頂いた後、セッティングを始めます。
1日目 「ポスター発表」と「なりきり活動」
2日目 「ポスター発表」と「なりきり活動」+「個人ポスター作成」
3日目 「グループ共有」
あいだに、飲み会やバーベキューが入ります。
(学生さん達と先生方は、かなり遅くまで飲んでいましたが、
私は途中で抜けさせてもらいました。
子供たちと夜8時過ぎに寝る生活をしているので、
9時すぎには、エンジン切れを起こすためです。)
「ポスター発表」では、15分間で自分たちがまとめてきた偉人について紹介します。
「なりきり活動」では、それらの発表を聞いて
「偉人について理解した」という前提で、偉人になりきって、質問に答えます。
(偉人のお面をかぶります)
質問カードを引いて
「あなたの主張を一言でいうと?」
「今生きていたらどんな研究をしたい?」
「批判したい教育の形は?」などに、即興で答えます。
かなりハードです。
カードをひく順番は、知識豊富な、教授→助教→博士課程→修士課程 です。
つまりエライ人から順々にカードを引きます。
このやり方は、いいなーと思いました。
先輩方の答えを聞くことで、後輩には学びになります。
この順序が逆であったら、修士1年はシドロモドロになるだけで、
あまり大きな学びは無いかもしれません。
またポスター制作も、二人ひと組でやるところがミソだと思いました。
お互いに作業を分担しながら、足りない知識や間違った理解を補えると思いました。
ポスター発表を聞きながら、私が学んだことを、メモ書き程度ですが、列挙します。
(・他者の発言 ○関根の独り言)
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●J.Dewey
・道具主義 問題解決の手段
・進歩主義的教育 内部からの発達 ○ピアジェとの関係は?何が発達すると考えたのか?
・学ぶべき知識がある ○社会化との関係
・社会とつながっている学校 ○魅力的!
●J.Pjaget
・構造主義と各時期の活動/教育の適時性との関係は?
下部構造があって上部構造がある 前のステップを経て次に移行する
・「どんな学びの場を?」
色々なレベルが一か所に集まっているのが現代の教育
より発達段階に応じた 年齢別 教育をやりたい あるいは先生の数を増やしたい
・学びの構造 観察、発言 学習段階を構造としてとらえる
子供の認知発達構造にあったカリキュラム
・習熟度 発達を、誰がどう判断するのか?
能力別クラス編成 テストで振り分ける
それを実施したのが? ブルーナー
・ブルーナーは、ピアジェの発達段階の影響を受けている
・同化と調節という環境を作る それが行われないのが、詰め込み
・発明家と創造者になるべき人がなればよい。
それがピアジェの考え方 一種のエリート主義。ピアジェは組織社会化には反対する
・(能力が低くて)社会的に恥ずかしいという点についてピアジェは関知しない
・「どんな研究を?」
発達段階にあった課題を与えたい 同じ教材をマスに与えない
・7~12歳 学校にあっている
・前操作期と具体的操作期のつなぎが大事 切り替わりが急
・アン ブラウン 読解力
・高次な思考能力にあったカリキュラム
・「何を面白いと思って?」
細かく見る 観察 発話 成長が目に見えてわかる
・皆が同じように反応するのが面白い(ほぼ同じ年齢の子供なら)
・認知 こういう構造をもっている
・人間も生き物だよね 生物を見るまなざし 段階、構造を獲得しながら発達していく
・「主張、理論を一言で」
人の認知は段階を経て発達する。自分には自分の発達があるから大丈夫
個は偉大だ! 人間は環境とやりとりして成長する。相互作用。段階。人それぞれ
・ピアジェの前の行動主義心理学は、外側(S→R)を見ていた
ピアジェは「中」を見た
・ピアジェが行動主義心理学とどう違うのかを整理するとよい
●D.A.Schon
・「人は一度たりとも同じではない」
・ダブルループ学習の主体は組織 行為についての省察の主体は個人 二つは違う概念
○Expertは、Reflective Practionerになることを求められているのか
○大人になってからの発達は? 状況との対話によって促される?
●L.S.Vygotsky
・37歳で死去
・ヴィゴツキーの着眼点
1)単独で解決できる課題 2)他者からの手助けによって解決できる課題
○これは新人育成にあてはまりやすい 他者からの支援 ここでスキャフォルディング
・子供の自己中心的言葉は、思考(内言)にいくちょっと前
・ピアジェの言う発達との違いは? 何がヴィゴツキーは新しかったのか?
他者、道具に着目した点
・ピアジェとヴィゴツキーの発達の違い
1)道具、他者がいないと発達しない (ピアジェは、本人のみ)
2)頭の中の構成物を想定していない (ピアジェは、シェマを想定)
三角形モデルが重要
主体 媒介物(道具、言語)対象 成果物
・ピアジェは、発達を一連の流れとし、個体を見ていた
自分が働き掛ける 高次な精神的適応
・ヴィゴツキーも子供について研究
・スキナー、ピアジェ、ヴィゴツキーの関係 違いと似ている点を理解する
これが分からないと、エンゲストローム、レビンを読んでも分からない
もっと深い話し、議論をするためにも
●B.F.Skinner
○内観法(中)→観察可能な行動(外)→構造(中)?
・行動の原因=環境 外部からの働きかけのみ 生物の中には注目しない
○それに注目したのが、ピアジェ?
・スキナーが与えた影響 ツイッターによるSocla
・「一言で」
見えないものを語ってはいけない。その前の心理学は、中身、内観法であった
・「現在生きていたら」
コンピューターが発達したから色々やりたいのでは
当時は軍隊でティーチングマシンが使われていた?
「認知革命」にも一言いいたいのでは
・正しい反応を引き起こす刺激 身の回りですぐ実践したい(子供に試すとか)
・スキナーは、量よりも個別にこだわった
・1か0の結果 それがティーチングマシン そのアンチテーゼが認知革命
○スキナー 外の行動 S→R
ピアジェ 自分と外界 相互作用
ヴィゴツキー 他者と道具 ?
●J.Lave
・肉加工職人の徒弟制 上手くいってない事例として
他の人の仕事が見えない 資源にアクセスできない
・正統的周辺参加は、学習を見る一つの見方
○サヴァティカルで1年間レイブは休んだ。こういう期間って大事だよなー。
・正統的周辺参加は、ほとんどの組織では起こりにくい
「組織の在り方」としての正統的周辺参加
組織社会化は、全ての組織に起こる「学習の一つの形態」
・レイブは左翼的? 人間を解放したいと考えている
・正統的周辺参加ができる組織が望ましいと考えている?
・「良い学習者像は?」
○積極的に資源にアクセスしようとするのが、正統的周辺参加における望ましい学習者では?
・徒弟制も学習を妨げる可能性がある
・全体のどの部分なのかが正統的周辺参加だと分かりやすい 自分がどの位置にいるのか
・組織社会化の学習課題として達成しないといけない役割がある それとは別の
アイデンティティが、正統的周辺参加では言われている?
・アイデンティティの確立=自分づくり
・レイブは数字やプロセスに興味をもっていた
・レイブの考える「日常」は、複雑で葛藤のあるもの 選択肢が多い状況?
●K.Lewin
・「よい理論ほど実際に役立つものはない」「研究なくして実行なし、実行なくして研究なし」
・レビンは大きな枠組みを提案した「場の理論」「グループダイナミクス」
・MITが組織論の中心になるのは、レビンの貢献の一つ。
・感受性訓練 Sensitivity Training Tグループ
「場の理論」が背景。 集団の相互作用を通じて、対人的共感性を高めていく共感技法。
・OSTやWorld Cafeも似ている。
・現在、南山大学のみ
・1970年代 「火の玉営業マンを育てる訓練」として、
感受性訓練が日本において実施され、爆発的に広がった。
つるしあげに近く、社会問題になった。質の低い講師も多かった。
「心を操る男たち」は読んだ方が良い。
●Y.Engestrom
・Vygotsky理論を発展させた 社会、文化、歴史
・「活動理論」:状況のモデル化
「拡張的学習」:創造的過程を示唆
・三角形
主体が対象に関わる際に媒介するのが「道具」「共同体」
主体が共同体に関わる際に媒介するのが「ルール」
共同体が対象に関わる際に媒介するのが「分業」
・ヴィゴツキーが、行動の要因として文化的人工物を入れたのが画期的。
・エンゲストロームにとって、矛盾がキーワード。
・現場(状況)を、三角形で分析。 三角形を使って組織を分析する。
・「理想とする学者像」は、Vygotskyやレイブかも
個人レベルよりも、人と人との関係を見ようとした。
・「理想とする学習者像」は、矛盾に気づきつつ、越境していく学習者。
・「批判したい」のは、行動主義、矛盾のないプログラム学習、他者との関わりがなく
一人で課題に取り組む
・エンゲストロームは、学校について触れてない
フィンランドの教育は、民主的、対話的。
レイブは意識的に、学校について触れることを避けている。
・「一言でいうと」 見える化、可視化しようとした人ではないか。
知識習得に閉じていた学習を、学習の周りに何があるか、全体の図を描いた人。
・Vygotskyは、Marxを下敷きにした。
マルクスは、労働、経済を社会的構造の中で位置付けた それを学習で行ったのが、Vygotsky。
マルクス→ヴィゴツキー→エンゲストロームという流れ
・1980年代に、ヴィゴツキーの弟子を、アメリカに連れてきた。
そこから、ヴィゴツキーのリバイバルが始まった。
・構造主義は、変数が変われば、構造が変わるとした。
下位構造→上位構造
マルクスは、労働力、土地、道具が、歴史を変えていく変数?であるとした
●A.Brown
・「自信を与えてくれた人」小5
・相互教授法 Reciprocal Teachingの効果を数値で示した
・Jigsaw method ジグソー法
○今回のポスターもジグソー法?
・「どんな子供も学べる」と考えた そのための効果的な教授法を編み出した人
・上手く学べない子は、どうやって学べば良いかを分かっていないだけ
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2日目の午後は、これまで聞いてきた9人の学者の関係をマッピングします。
個人作業で、先生方も同じ課題に取り組みます。
これはかなり苦しみました。
頭をグルグル回しながら、2時間フルに取り組みます。
先生方や先輩方は、小1時間程度で作業を終らせ会議室を出て行くのですが、
修士1年は最後まで残って作業を続けています。
なんとか作り上げたマップです。↓
3日目の午前中は、「好きな学者」ごと5つのグループに分かれ、その学者を中心に、
他の学者がどのような位置づけになるのか、そして自分の研究はどの学者に近いのかを
グループでマッピングします。
私は、B.F.スキナーを選びました。
助教や博士課程の方々と一緒に行うことで、
スキナーと他の学者との関係が少しずつ見えてきました。
最後の発表では、スキナー役と他の学者役とに分かれて、寸劇をしました。
12時過ぎ、旅館の前で集合写真を撮って解散です。
皆さん、お疲れ様でした。
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●ふり返り
今回の合宿を通じて、今後の自身の課題が見えてきました。
まず学ぶべきは、
・スキナー、ピアジェ、ヴィゴツキー この3人の偉人について学習していく
(特に、ヴィゴツキーに力を入れて)
次に、自分の強みとなる研究キーワードを持つ
・現時点では「組織社会化」
(これに関して質問されたら、その分野の専門家として答えられるよう)
最後に、「 」主義 と呼ばれるものについて理解を深める
・構成主義、構造主義、行動主義、
まだまだ道は長く険しいですが、千里の道も一歩から、
少しずつ進めていきます!
今後とも皆さまのご指導ご支援のほどよろしくお願いします。
(合宿参加者の皆さん、その間ご配慮下さったお客様、
そしていつも気持ちよく送り出してくれる奥さん、ありがとうございました!)
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◎参考ブログ
●博士課程 舘野さん
(2010年の準備)
http://www.tate-lab.net/mt/2010/09/2010summer-lab.html
●中原先生
(2009年の様子)
http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/08/post_1554.html
●修士課程 安斎さん
(2009年の様子)
http://mind-set.jp/contents/blog/2009/08/alt.htm
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