2010年12月19日(日)@ 東洋学園大学
人材育成学会 第8回年次大会で研究発表をしました。
タイトルは「OJT行動に関する尺度作成の試み」です。
(発表論文 PDFファイルを見る)
学会でのプレゼンは初めてだったので緊張しました。
(事前に論文や発表資料をチェックして下さった
N先生、M先生、Tさん、Kさん、ありがとうございました!)
=================================
発表の概要は以下の通りです。
●OJTにおける「周囲のかかわり」を見ることができるような尺度の開発
●若手社員の業務能力向上に寄与したOJT行動を示唆
1)仕事を実際にやらせてくれた
2)良かった点や成長した点を見つけてほめてくれた
3)他工場やグループ会社で仕事をする機会を与えてくれた
●今後「2年目社員調査」で今回開発した「OJT行動」尺度を使用
(参加者用配布資料 PDFファイルを見る)
発表後の質疑応答では、以下の質問を頂きました。ありがとうございました。
=================================
(・他者のご発言 ○関根の回答)
・今回の発表では「OJTの中身」を尺度化した
こういうOJTが良いんだということを説明したい
そのための尺度開発の試みという発表だった
・「仕事を実際にやらせてくれた」という発見は、いわば当たり前のことでは?
OJTとは仕事を実際にやらせることなのでは。
○確かにその通り。榊原の尺度でも「権限委譲」の効果が実証されている。
ただ、仕事や職場によっては「実際にやらせてもらえず、見ているだけ」
というOJTもある
そういうOJTをしている先輩、上司に対して
「OJTでは実際にやらせることが効果的」という説明材料になるかも。
・今回の尺度に含まれていた「人脈構築」「部門連繋」「情報共有」は、
時代の変化に伴い仕事や上司からの期待が変化し、仕事が高度化、複雑化
してきたことも関係があるのでは。
今までの仕事であれば「周囲のかかわり」は必要なかったのかも。
(上司と部下の点と点の関係で事足りていたのかも)
・調査対象者が、2~30代と幅広い。
仕事を任されている人もいれば、そうでない人もいるはず。
・「1週間程度の他工場やグループ会社での仕事」が、どのように業務能力向上、
成長に寄与するのか?
○顔なじみになり社内外の人脈が広がることで、その後の仕事が進めやすくなると
いったことが、業務能力向上につながるのでは。
(このあたりは、メカニズム 「周囲のかかわり」→「成長」に関係するかも)
・別の職場を見ることで、視野が広がるといった
認知構造の拡大はあるかもしれない。
・観察しただけでは、新人は仕事を覚え、理解することはできない。
・調査対象にとってOJT指導員は、ラインの課長だったのか、先輩だったのか?
○本調査では、誰をOJT指導員として想起したのかは特定できていない。
・業務能力向上だけでなく、メンタル面での新人のケアといった所も
調査していくのか。
○今後の課題。喫緊の調査では業務能力向上や組織社会化が中心。
質問して下さった方の中には、前職の同僚がいました。
びっくりしましたが嬉しかったです。(Tさん、ありがとうございました!)
=================================
そのあとの発表は、JAXA 宇宙科学研究所の長谷川克也氏による
「若年層の意欲の芽を摘み取る現代の徒弟制度による技術者育成
~プレイングマネジャーがつくる現代風徒弟育成~ 」 でした。
私の研究とも重なる部分が多く、興味深く拝聴しました。
・若手技術者の意欲低下は、受け手ではなく、
育成者側、育成環境に問題がある
・OJTで先輩の背を見ても若年層は育たない
・大学教育のあとに、徒弟制度が待ち伏せしている
・高度技術になればなるほど、やらせてもらえない
・高学歴の技術者は「何かができるという自負」をもって入社してくるが
先輩技術者の「圧倒的な技術差」を見て、精神負担を感じる。
・町工場に非常に高い技能を持った職人が残っているのは、
職人に高度な技能がつくまで
職人に仕事を与え続けた経営者のおかげといってよい
・プレイングマネジャーにOJT担当をあてないだけで、現代風徒弟制度を防止できる
実際、5~6年目をOJT担当にしたところでは、新人の育成が上手くいった
新人ではプレイングマネジャーに質問できないことも5~6年目であれば聞ける。
5~6年目を育てるという意味でも重要。
・正直、宇宙開発技術に関して、若手にやらせられることが少ない。
本人が自分から会議に食い込んでいくか、良い先輩を見つけるか
・小さい実験を任せてもらったり、外に出して、
よその研究所と共同研究をやるのは効果的。
・大プロジェクトだと、人脈は広がるが、成長は少ない。
・生産現場のOJTでは、マニュアルが完備されているが、
研究開発の現場ではマニュアルはない。
徒弟制になってしまい、やらせることもなく、
見て学べスタイルになってしまう。
(ありがとうございました!)
=================================
コメントフォーム