2011年11月26日(土)明治大学で開催された
経営行動科学学会のシンポジウムを聴講してきました。
私の理解の範囲で、どのような内容だったのかをシェアします。
「質的研究について考える」
2011年11月26日(土)15時10分~17時10分
(・講演)
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●佐藤先生
・量的研究はヒマラヤ山脈のよう 最近メルトダウンが始まっている
質的研究はサバンナのよう 両者の間にはグランドキャニオンのような谷がある
・3つの次元
技法:量的、質的 データ:量的、質的 文体:量的、質的
・これら3つ×2で、8通りの方法論がある
例:技法は量的、データも量的、文体は質的 「Book」のような本
・問題構造化プロセスとしての「定性的分析」
問題の構造化 →データ(インタビューデータ等)収集→データ分析 (質的)
(質的)
→データ(サーベイデータ等)収集→データ分析 (量的)
・つまり、量的研究をやっている人も、問題の構造化プロセスにおいては、
質的方法で行っている。
・大事なのは、「数値に血を通わせる」「物語に規律を与える」ということ
・エスノグラフィーの魅力は、現場密着による手触り感
・アンケートは、あくまでリモートセンシング
・自分は10年で1冊の本を書くペース
・エスノグラフィーのりクスとしては、
-視野の狭窄化による「現場至上主義」
-分析的視点の欠如による「体験談」
・今気になる点としては「マニュアルの反乱」と「バズワード化」
エスノグラフィーが流行り言葉になっている(例:マーケティングエスノグラフィー)
・量的研究の基本も学ぶべき 「数字で語る」という本が参考になる
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●金井先生
(発表で一部使用された資料 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81003449.pdf)
・アクションリサーチ せっかく調べるのだから、相手の役に立ちたい
・シャイン先生は、何をやっても全ては介入になる といっている
(アンケートやインタビューも)
・Interventionは介入というよりも「積極的働きかけ」という訳の方がよい
・ヴァンマーネン先生が、組織社会化に興味をもったきっかけ
「警察をクソだと言っていた友人が、警察に入ったら同じようなクソになった」
・エスノグラフィーはいつも大当たりではない
・シャイン先生のヴァンマーネン化 ヴァンマーネン先生のシャイン化
経営組織論における臨床的(クリニカル)アプローチと民俗誌的
(エスノグラフィック)アプローチ : 定性的研究方法の基礎と多様性を探る
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/00173836.pdf
組織行動論におけるクリニカル・アプローチ
―エドガー・H. シャインのアプローチとアクション・リサーチの一形態―
https://www.b.kobe-u.ac.jp/paper/2011_16.pdf
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●松尾先生
・GTA=定量に近い定性
・理論をデータから生み出そう!という点に共感
・KJ法に近い 「くくって」「関係づける」
・理論をデータから作った後、既存理論と比較する
・GlaserとStraussはケンカ別れしたよう?
・自分(松尾)は、Straussのやり方
・コード化 -オープンコード化 -軸足コード化 -選択コード化
・病院のエスノグラフィーをする中で「ジャーナリストでもいいや」と思った時期があった
「このいい話を伝えたい!」と。
ただ、理論がない。そこでGTAでやってみたら上手くいった 手法のすごさを実感した
・量的はスパッと結果が出て気持いい
質的は分析プロセスの妥当性が示しにくい コーディングプロセスのブラックボックス化
生データを示すことで対処
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●質疑応答
・体験談と良いエスノグラフィーの違いは?
→先行研究から問題設定できているかどうか
【佐藤先生】
・Applied research と Action researchの違い
・付け焼刃になっているのでは
・あらかじめ理論をもたず、先入観をもたずに現場に入った方がよいのか?
→それで本当に気づけるのか。血の小便が出るぐらい、読みこんでから入った方がよい
中途半端な理論をもって現場に入ってはいけない
GlaserはEmerging(自然と浮き出る)StraussはForcingと言っている。
自分(佐藤)は、Straussに共感する
・長い論文でもストーリーがあると読める
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●まとめ
・質的、量的に関係なく、よい研究をすること
・経営学としては、役に立つというAction Researchの視点を忘れてはいけない
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どうもありがとうございました。
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