2011年冬学期は、「文化・人間情報学基礎III」(東大大学院学際情報学府)
という授業を受けています。
卒業の為の必須授業なのですが「読む文献と発表が多くて大変」という
噂を聞いていて、履修を躊躇していた授業でした。
多くの院生さん達は、修士1年でこの授業をとるのですが、
私は長期履修で3年間通う予定だったのと、大学院と仕事という二重生活のめどが
ついてからにしようということで、修士2年で取ることにしました。
この授業はとって良かったです!
担当教員は、「メディア論」の水越伸先生と
「学習環境デザイン論」の山内祐平先生です。
今回の授業では、次の5人の人物について、各グループで調べ発表します。
・梅棹忠夫
・J.ブルーナー
・W.ベンヤミン
・水越敏行
・N.J.パイク
彼らの生きざま、業績、研究者・思想家としての位置づけ等、文献を読みこみ、
全体像をわしづかみにするのが狙いだそうです。
最初に誰を担当したいか決め、グループを作ります。
一番人気は、梅棹忠夫でした。
私は、一番人気が無かった(すみません)水越敏行先生を選びました。
グループメンバーは、山内研の山田さん@salily1214 と、河田さんのお二人です。
(この二人と組めたので、とても楽しく発表準備を進めることができました)
自分が発表担当でない時も、他グループの発表を聞き、疑問に思ったことや
先生方から与えられる課題に基づき、次の週までに資料にまとめてきます。
うわさ通り負荷は高かったです。
各授業で印象に残った言葉を残しておきます。
●梅棹忠夫
・他人ごととして議論せず、寄り添って考える視点をもってほしい
(なぜこの人が探検していたのか)
・俯瞰的に見ることと、内在的に見ること
・この人が、どのくらいのケタの人かを知る。
・桑原武雄、今西錦司、梅棹忠夫は、ボスキャラ、巨人。
・梅棹さんは、文化と言う言葉を嫌っていた。文明論者。
・生態、Ecologyに着目したのがオリジナリティー。
・自然と文化はくっついている。
・現場から発想するのが京大。
・梅棹時代までは上手くいった。弟子を育てられていない。
この授業を通して、梅棹先生の本を30冊ぐらい買ってしまいました。
私もアメリカでの学部時代、文化人類学を専攻していたので、読んでいて
とても楽しかったです。本を読む楽しさを久しぶりに味わいました。
また、この授業がきっかけで「勝手にウメサオタダオ研」を
お手伝いさせて頂くことになりました。
http://katte2umesao.blog.fc2.com/
●J.ブルーナー
・この人がすごいのは、2回の革命「認知革命・社会文化革命」を起こしたこと
・仮想敵は、行動主義と情報処理的心理学
・彼が何を問題していたのかが分からないと、主張も分からない
・ブルーナーは「心」にこだわりがあった
・認知革命で彼が起こしたかったことが起こらなかった。
「意味」を入れられなかった。だから「文化心理学」を立ち上げた。
・認知科学(三宅なほみ)は、元々教育工学出身。
・認知革命に、情報処理工学、AIが入った。工学系は人数が多い。文系は負ける。
・電子情報通信学>心理学>教育学
・ピアジェは、心理学者と呼ばれることを嫌った。発生的認識論者。
●W.ベンヤミン
・この人はエッセイスト=パンフレティーナ
・ヨーロッパ的な知のあり方
・「複製技術時代における芸術作品」は読むべき
・ベンヤミンは、Critical Pedagogy(批判的教育学)とつながる
「教育というフレームワークにも批判的になれ!」と学習者に伝えたフレイレ
・ユダヤ人 暴力を身近に感じていた
●水越敏行
・大阪大学人間科学部に属していたことは大きい
批判的社会学の人と仲がよかった
・現場と良い関係を作っていた
水越敏行先生の指導を受けると成功すると現場教員は感じていた
外部コンサル的な活動をしていた
・総合学習、情報教育、失敗したのでは?
水越敏行先生の仕事は、学校レベルでは上手くいった
・「ゆとり教育」は、1960年代の学歴社会、
70年代の校内暴力に対応する形で生まれてきた
当初は読売新聞(現在のゆとり教育反対派)を始めとするマスコミも賛意
・「ゆとり教育」は政策的に矛盾:
時間がかかる総合学習を導入/学習時間を3割削減
・元々は週休2日制に学校も加入しないといけない
という労働時間の削減が先に来た
http://twitter.com/#!/kikkasuye/status/149687357459791872
・現在の学力を測る指標は、OECDのPISA これは思考力や応用力を測るもの
グローバルには、総合学習的な方向に向かっている
・「ゆとり世代」の学力が低下したという実証データは無い
応用力がついたという声もある
・実は「総合学習」は実践されていない つまりそれほど影響は無かった
・今の大学生のほうが勉強していると言えるかも
・アカデミックとポリティクスとの関係
αサイトでミクロな実践が上手くいった それをβサイトに展開していく
その際に「政策」が必要になる
日本の研究者は、政策決定に関わらない
アメリカの研究者はロビー活動を通じて、政策決定に関わる
・βサイトへの展開は「運動論」であると否定されやすい
・制度論に行く前に、政策論が必要
・教育学、経営学は現場に近い
http://twitter.com/#!/salily1214/status/149688630624006146
水越敏行先生についてせっかく調べたので、Wikipediaを作ろうと
山田さん達が頑張っています。大したもんです。
●N.J.パイク (1月の授業)
せっかく良いメンバーが集まった授業なので、
授業が終わる1月26日(木)には打ち上げも開催する予定です。
楽しみです。
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