キャリア発達の心理学 仕事・組織・生涯発達

お薦めの本

キャリア発達の心理学 仕事・組織・生涯発達

○キャリアに関するレビュー論文集。
  最近の研究の全体像が一挙につかめて分かりやすい!

(・引用/要約 ○関根の独り言)
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●序章 
・キャリア=成人の人生において、仕事を行うこととともに
  進行する、組織が職業のいずれかに関連した一連の活動
  ならびに経験
・キャリアの段階モデル 
  各段階には個人が達成すべき課題がある
・Erikson(1963) 8段階 発達段階説
・Levinson(1978) ライフストラクチャー(生活構造)
・本書は、キャリア(職業)心理学と組織心理学、組織行動論の  
 視点を統合する構成となっている
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●1章 職業の選択
・個人-環境適合理論(Person-Environment Fit Theory)
  Holland(1959,1973)6角形モデル
・自己概念発達理論 
  職業的発達の過程を自己概念の成熟、発達から捉える
・職業分類の次元:対人的か対物的仕事か
・Schein(1978)は、キャリア初期段階の重要性を指摘。
  この時期に「キャリアアンカー」を形成することが、
  その後のキャリア発達を方向づけるとした。
・既存の職業の多くは、自己実現を図りたいとする若者にとって
  魅力のないものとみなされている可能性が高い。
・米国では「職業→企業」日本では「企業→職業」選択
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●2章 組織社会化
・組織への適応(Adaptation)
・組織社会化=組織への新規参入者が組織の規範、価値、文化を
  習得し、期待されている役割を遂行し、職務遂行上必要な
  技能を獲得することによって組織に適応すること
・RJP=組織や職務の現実的情報を「うすめて」与えること
    ワクチン効果 
・組織社会化の課題は、文化的(Cultural)、役割的(Role)、
  技能的(Technical)の3つに区分できる
・傾性的アプローチ:
  個人が獲得したパーソナリティーによって説明
・組織社会化の達成度
  ○どのように測定するか
・組織参入当初、比較的高いレベルの組織社会化達成度が、
  3年目から5年目にかけて低下し、9年目頃からより高いレベル  
 に上昇する、いわゆる「J字型」カーブが示されることが殆ど。
  ○組織コミットメントの結果と似ている
 「中だるみ仮説」「疑念仮説」
・社会化戦術 5組のペアとなる基本次元(計10種類)
  ○6つとしなかった理由は。Sequentialを抜いている。
・組織社会化達成の結果:
  組織コミットメント、職務満足、離転職意思、生産性遂行
・組織社会化研究の多くは、組織コミュニケーション研究の
  影響を色濃く受けている
・Chaoら(1994)の6次元尺度(34項目)
・再社会化 
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●3章 組織コミットメント 
・成員が高いレベルの組織コミットメントを形成することは、
  組織の成長や生き残りの上で不可欠である。
・組織そのものは決して消滅することはないであろう。
・個人が、疎外を避けるために、所属先組織に対して、心理的な
  コミットメントを形成するのは自然であり、そのことで
  心理的安寧間を享受する。
・組織へのコミットメントは、組織にとって望ましい結果を
  示す傾向がある。
・3次元コミットメント尺度:
  情動的(Affective)、
  継続的(Continuance)、
  規範的(Normative)
・心理的契約=組織によって具体化される個人と組織の間の
  交換条件に関連した個人自身の信念(Rousseau, 1995)
・組織および集団へのコミットメント
  =同一化(Identification)Freud 
   ○Freud(フロイト)の文献をチェック
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●4章 仕事への動機づけ
・仕事に対する動機づけの理論は、内容理論と過程理論に大別。
・Alderfer(1972)のERG理論:
  生存(Existence)関係(Relatedness)成長(Growth)
・Herzbergら(1959)は、仕事に対して積極的に動機付けとなる
  要因(動機づけ要因)と不満となる要因(衛生要因)とは
  別のものと仮定。
・McClelland(1961)は、仕事の場面での主要な動機または欲求と
  して①達成欲求、②権力欲求、③親和欲求の3種を提示。
・Adams(1965)の公平理論 報酬の絶対額ではなく、
  他者と比べて自分の報酬が多いか少ないかによって影響される
・動機づけ理論は、「強化理論」に始まり、「欲求理論」を経て、
  「認知理論」へと進展。
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●5章 職務満足
・「仕事が好き」という感情反応は「職務満足」Job satisfaction、
 「仕事が嫌い」は「職務不満足」Job dissatisfaction
・職務満足は「情動反応」または「欲求充足」のいずれかによって
  もたらされると考えられてきた。
・全体的職務満足と領域別職務満足
・Herzbergは、働く個人に対して「臨界事例法」
 (Critical Incident method)を用いた面接調査法を実施。
・職務満足の反対は、職務不満足では無い
・遺伝的な傾性(気質)は職務満足の少なくとも一部分を、長期に
  渡り決定している可能性が示唆される。このような「傾性が、
  組織における個人の心理、行動を決定する」とする視点を
  「傾性的アプローチ」(Dispositional approach)という。
・職務満足が、生産性を高めるという関係は成立しにくい。
・心理的に健康な人(心理的安寧感)ほど、仕事そのものに対する
  満足度が高いことが示唆される。
・傾性尺度を選抜に用いることで、将来的に同一職務下で、不満足を
  訴えにくい志願者を優先して採用する、いわゆる「入口管理」
  (Entry management)において重要な意味を有する。
   ○合理的だけど、違和感。
・組織と個人をつなぐものとしての職務。
  職務そのものという中核次元は不変である可能性が高い。
・360度フィードバック、メンタリングなどのより新しいツールとの
  併用を前提に、指標としての職務満足の重要性は高まっていく
  ものと予想される。
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●6章 メンタリング
・メンターがプロテジェに対しておこなう様々な支援行動すべてを
  まとめて「メンタリング」(Mentoring)という言葉で表す。
・メンタリング行動の構成概念は、Kramの提唱する2機能が基礎にある
・メンタリング=メンターとプロティジの間に順位や経験、知識の
  豊かさなどの上下関係と信頼関係が存在し、少なくとも
  プロテジェより成熟している人が、現時点において未熟な
  プロテジェに対して行うキャリア形成および心理、社会的側面
  への支援行動
・類似する概念との相違は、各概念の意味する目的にある。
・OJTの主目的はあくまでも現在遂行しなければならない職務に
  必要な知識、態度、スキルの習得にあり、非常に短期的視点に
  立った育成、支援行動であると言える。
 さらにOJTの基本は、上司である管理、監督者の部下に対する
  日常の管理行動であることも読みとれる(寺澤1989)
・メンタリングの「部分的関係モデル」(Phillips-Jones, 1982他)
・メンタリングの効果:キャリア、学習、組織内影響力、業績や
  職務満足、意欲の向上
・メンタリングを受けようとする人ほど、内的なローカスオブ
  コントロールを示す傾向がある
 メンタリングを行おうとする人ほど、愛他主義や自己効力感が
  強い傾向がある。
・組織への新規参入者の適応促進手段としてのメンタリングへの期待
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●7章 ワークグループ
・ワークグループの理論は、主に社会学や社会心理学を背景に発展
・社会的コンタクト理論:メンバー間の接触頻度が高まるほど、
  感情的な結びつきが強くなる
・自分と誰を比較するかによって、満足感に格差が生じる。これが
  社会的比較に基づく相対的剥奪理論の基本的な考え方。
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●8章 ジェンダー化する組織
・日本の経営組織では、採用の方法や採用者数、配置および異動、
  職務配分、教育訓練、賃金、昇進などが男女で大きく異なる
  ことは半ば常識とも言える。
・コース別人事管理制度は、組織のジェンダー化の顕著な例。
・新古典派経済学では、従業員個人の技能や経験、勤続年数また
  コミットメントなどを生産性を高める間接的要因とし、
  これらを「人的資本」と呼んでいる(Becker, 1964)。
・社会的学習理論の中心概念は、報酬と制裁である。
  行動が強化される際の「第三者」と「模倣」の役割に着目し、
  行動主義心理学を更に発展させている。
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●9章 職業性ストレス
・ストレッサー(外的要因)とストレイン(受け手の反応)を
  分けて考える必要がある。
・研究で良く用いられてきた調整要因として「ストレスコーピング」
 「ソーシャルサポート」「タイプA行動」がある。
・ストレス対策として、環境調整法と適応力養成法の
  2つのアプローチがある。
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●10章 失業とその影響
・失業は、雇用から獲得できる様々な機能を剥奪するものである為、
  失業は個人の心理的状態に対して否定的な影響を与える。
・失業が個人とその家族にもたらす影響
  ○読むと恐ろしくなる
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投稿者:関根雅泰

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