戦略不全の論理 2008年
三品 和広
○事業観をもった長命社長が、高収益企業を作る。
短命のサラリーマン社長下で、戦略不全に陥る。
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(・引用/要約 ○関根の独り言)
・日本企業は、実務技能を形成するキャリアのシステムを
築き上げてきた
・経営の実権が、創業経営者から操業経営者の手に移るに
つれ、日本企業の経営は戦略性を失うに至った。
●第1部 戦略不全の実態
・戦略⇔大規模複雑性
・「エクセレントカンパニー」と「ビジョナリーカンパニー」
帰納ベースでの選定がいかに恣意的かを示している。
・日本型企業モデルは、モーティベーション問題に対して
最強の解を用意する。
長期にわたって関連性のある仕事、または技能蓄積や
学習のきくキャリアのパスを構成員に提供し、その中で
構成員自らが仕事の意味を深く理解、更には創造する
ことを尊重する。
・米国型企業モデルは、コーディネーション問題に対して
最強の解を用意する。
・モーティベーションを第一義とする日本型企業モデルは
慢性戦略不全のリスクを甘受して、構成員の技能の蓄積
と活用を最大限に促進するという別の目的の為に設計
されていることになる。
・仕事の面白さを競うならば、軍配が上がるのは日本企業
・超長期で企業業績を評価するという発想が本書を貫く
工夫の1つ。
・日本企業は総体として、1960年以降の40年間、一貫して
収益のじり貧状態に歯止めをかけることができていない
・利益なき繁忙 利益なき拡大
売上のいたずらな拡大からくる低収益
・事業ドメインが明確。明快な得意技。基幹事業を深耕。
・企業は一般的傾向として収穫逓減の法則に晒されている
この傾向に打ち勝つことこそ、戦略の本質。
・チャンドラー 規模の拡大:多角化、垂直統合、国際化
・企業はその効率を業務プロセスの定型化に負っている。
定形化するゆえに、企業は経済性を発揮する。
●第2部 戦略とは何か
・競争の構造が致命的に悪い所では、努力が報われること
はありえない。
・避けるべき市場を避けて、いかに好ましい市場に
経営資源を集める化。
利益の出やすい構造を選択するという発想も重要。
・目隠しをして象に触れる。帰納論の限界。
・戦略の要諦の1つは、構造に恵まれた市場で事業を
構築すること。
・「似て非なるもの=異質化」舞台裏での差別化。
・高収益企業が高収益たるゆえんは、戦略を担いうる
強い経営者の存在ぬきにしては語ることができない。
・戦略とは能動的に構えることであり、受動的に判断する
ことである。
・判断のよりどころ、準拠枠 = 事業観
・戦略=経営者のもつ事業観
・企業戦略論の系譜:計画、構成、構想
・事業戦略論の系譜:構造、構築、構図
●第3部 戦略不全の背景と処方箋
・戦略不全が起こる理由→戦略が難しいから
・良い戦略は、それが知れたときに「ばかな」という反応
が周囲から返ってくるものでなくてはならない反面、
その成功が明らかになった暁には「なるほど」という
反応をさそうものでなくてはならない。
・常理に照らせば非合理であると同時に、理外の理に
照らせば合理でなければならないのである。
○「ストーリーとしての競争戦略」でもでてきたなー。
・モノづくりの現場には「効率の罠」と呼ぶべき落とし穴
がそんざいする。会社の為に良かれと思って自主性を
発揮する従業員は、無防備のままではこの落とし穴に
陥落してしまう。
○部分最適の罠ともいえるかな。
・判断こそが、結局のところ超長期における企業の業績を
決定的に左右する。その判断を下せるのは、経営者その
人にしかできない仕事である。
・1980年前後から多くの短命社長が登場。
・その背景には、所有と経営の分離という現象がある。
この変化に適応する術をいまだに持ち合わせていない。
これこそが、戦略不全の核心的な病原にほかならない。
・競争を勝ち抜いてきた企業は、長命社長に牽引された
からこそ競争に勝つことができた。
・オーナー経営者がサラリーマン経営者に変わった。
・優秀な大卒新入社員を素材にして、経営者を作り上げる
方法論をいまだに持ち合わせていない。
○サラリーマン経営者で長期政権は難しいだろうなー。
・トップは語るよりも聞く。
・株主と経営陣の関係。本社と事業部の関係。
・事業部長職の任期は3年前後。
・事業部長は、組織のマネジメントには優れている。
真のリーダーは、働く組織に従属しない人。
・職能部長としては最強でも、そういう人が事業経営や
企業経営に転じると、一変して弱点だらけとなる。
・管理職は分業体制の頂点に立ち、経営職は統合を担う。
・経営職は直属の部下をもたない奇妙な存在。
管理職は職場のボスで人を動かして仕事をする。
・経営職は不確実性に対処し、管理職は複雑性に対処する
・経営職に求められるのは、完成度の高い事業観。
・リーダーシップ論に従うならば、人間(精神)を鍛える
ことに関心が向かうので、ある種の体験をさせるという
発想になりがちである。
しかしながら、体験を与えれば、戦闘機が操縦できる
ようになるものであろうか。
戦略のできる経営者は、時間をかけて組織的に作り込む
必要がある。
○経営者と共に過ごす 徒弟制のようなものがいいのか。
・基本辞書が白紙状態の新入社員を対象に、研修とOJTを
組み合わせて意味解釈の体系を教え込む。
更には上司の指導を通して「こうすればああなる」と
いう因果関係の体系を身につけさせる。
○会社における「意味解釈」と「因果関係」の体系を学ぶ
ことで、その会社で「使える」人間になる・・・
・日本企業の現場の強さ、実務能力の高さは、そういう
基本辞書をもつ人の集団が支えている。
○大中企業の経営:操業
ベンチャー、小企業の経営:創業 かも。
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