The Oxford Handbook of Organizational Socialization 2012
オックスフォード ハンドブック 「組織社会化」
○組織社会化の主要な研究テーマを網羅。
よくまとまっていて分かりやすいレビュー論文集。
(・引用 ○関根の独り言)
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Ch.1 Facilitating Organizational Socialization:
An Introduction
・組織社会化を、個人が新しい仕事役割に適応するために
必要は、知識、スキル、態度、行動を獲得する過程と定義
・ASTDやSHRMなどの実践家の団体で、Onboarding という
組織社会化と似た概念が取り上げられ始めている
・Onboardingオンボーディング(新人を組織に乗り込ませる)
はより狭い概念で、組織による特定の実践をさす。
組織社会化はより広い概念である。
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Ch.2 From Past to Present and Into the Future:
A Hitchhiker’s Guide to the Socialization Literature
・個人が組織での役割を果たす為に必要な社会的知識、技術を
獲得するプロセス
(Van Maanen & Schein, 1979, p.211)が最もよく使われる定義
・社会化は、個人がキャリアにおいて境界を越える際
全てに起こる
・いつ社会化が始まるのか。社会化ステージモデルでは、
「予期的社会化」という概念も提唱されている。
いつ社会化が終わるのかも分かりにくい。
・制度的社会化戦術は、多くの肯定的な結果に関連しており、
個人的社会化戦術は、役割革新に関連している
(Allen & Mayer,1990a; Baker,1995)
・社会化研究に重要な理論として3つ。
1)不確実性減少とコントロール欲求
2)個人-環境フィット理論
3)社会的アイデンティティ(同一化)理論
・社会化は「Learning the ropes」と言われるよう、
学習課題、認知課題と捉えられてきた。
・社会化ステージモデル
予期、直面、適応、安定
・組織社会化の研究者は、職業的社会化研究のエスノグラフィー
から多くのヒントを得るであろう
・Van Maanen & Scheinの焦点は、
1970年代は「プロセス」に、1980年代は「コンテンツ」に。
・Top 10 socialization Reads
○5つは読んでた。まだ半分。残りも読もう。
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Ch.3 Getting Newcomers on Board: A Review of Socialization
Practices and Introduction to Socialization Resource Theory
・Van Maanen & Schein(1979)が表現したように、社会化は
特定の組織役割を学ぶ過程である(「Learn the ropes」)
・組織によって提供される出来事と活動が、本章の焦点である。
・Socializatio Practices(社会化実践)5つ:
1)Orientation オリエンテーションプログラム
2)Training(研修)プログラム
3)Socialization Tactics 社会化戦術
4)Job characteristics 仕事の特徴
5)Socialization Agents 社会化エージェント
○各分野の先行研究をレビューし、総括を加えている。
分かりやすい。
・Wanous & Reichers(2000)は、オリエンテーションプログラム
として「ROPES」を提唱。
・Van Maanen & Schein(1979)の6つの戦術次元
1)Collective 集団的 - Individual 個人的
2)Formal 公式的 - Informal 非公式的
3)Sequential 連続的 - Random 非連続的
4)Fixed 固定的 - Variable 可変的
5)Serial 継続的 - Disjunctive 断続的
6)Investiture 付加的 - Divestiture 剥奪的
・Jones(1986)は、2つのまとまりに集約:
1)Institutionalized 制度的
2)Individualized 個人的
・Jones(1986)は、更に3つの要素に集約:
1)Social社会的
2)Context文脈的
3)Content内容的
・Van Maanen & Schein(1979)と違い、Jones(1986)は、
fixed と Investiture 戦術が、役割維持反応を
Variable と Divestiture 戦術が、役割革新反応に
つながると考えた。
そのため、Jonesが提示した枠組みは、上記2次元において
Van Maanen & Scheinとは反対になっている。
○そう!ここが前から疑問だった。かすかなズレがある。
・最近のメタ分析でも、制度的社会化戦術はいくつかの変数に
影響がある。
・Rollag et al.(2005)は、新人が他の職場メンバーと
関わりを持たざるを得なくなるような
「Network Assignments」を出すことで、新人がより早く
職場メンバーと関係を構築できることを発見した。
・社会化エージェントが果たす役割に関する研究は少ない。
彼らが実際に何をしているのか、何をすべきなのかが
分かっていない状況にある。
現時点で分かっていることは、社会化エージェントは、
新人の学習を促進するような情報を提供していることと、
彼らは新人のストレスを軽減し肯定的な職務姿勢につながる
重要な支援の源であるということである。
・社会化エージェントの研究は上司と職場メンバーに焦点が
あてられ、その他の可能性あるエージェントについては
ほとんど光が当てられていない。
(例:他部署のメンバー、部下、顧客、クライアント等)
・Socialization Resource Theory(SRT)社会化資源理論は、
組織社会化とオンボーディングに対するアプローチとして、
新人が仕事、役割、職場集団、組織に成功裏に適応するために
必要な資源に焦点をあてたものである。
17次元に整理されている。
○新人への質問項目がついているのが参考になる。
自社の組織社会化施策(実践)状況について尋ねる項目。
○中原先生の授業でのコメント:
Social Resource Theoryが、Theoryであるなら、17項目の関係を
説明する必要がある。
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Ch.4 Newcomer Proactive Behavior:
Can There Be Too Much of a Good Thing?
・新人の能動性は、3つのカテゴリーに分けられる:
1)Change Role or Environment 役割や環境を変える
例:仕事のやり方をかえる、仕事の再定義、実験する
2)Change Self 自身を変える
例:直接質問、情報探索、フィードバック探索、間接質問、観察、ロールモデル作り
3)Mutual Development 双方の発展
例:上司との関係構築、資源交換、人脈構築
・能動性は、革新、リーダーシップ、仕事習熟、キャリア成功等につながる。
・他での勤務経験や年齢が上の新人ほど、上手に能動性を発揮している。
・能動性には、リスクもある。
あまりに質問や情報探索しすぎることで、「ずうずうしさ」や「あせりすぎ」と
いった感情を周囲に持たせる可能性あり。
上司と部下間の境界があいまいになるリスクもある。
・能動的に動くことでのコストが高いと新人が感じると、新人は
間接質問や観察等の手段を使う。
・組織が制度的社会化戦術を使うことで、新人が能動性を発揮せずとも
必要な情報を得られる場合もある。
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Ch.5 Getting the Right Connections? The Consequences and
Antecedents of Social Networks in Newcomer Socialization
・新人の人的ネットワークは、新人が意味形成を行うために
必要な情報と観察対象として重要な資源である。
・新人は、スポンサーシップあるいは「ソーシャルキャピタル
を借りる」(例:Burt,1998)ことで、彼らの人的ネット
ワークを更に広げることができる。
・新人のスポンサーシップとネットワーク発達に関する研究は
皆無である(Sparrowe & Liden, 1997参照)
・上司が人的ネットワーク内で、新人に正統的に「ソーシャル
キャピタルを貸せる」ポジションにあることが、スポンサー
シップを発揮するためには必要である
(Sparrowe & Liden,2005)。
○面白いなー。
自分が組織内で構築してきた人脈を、新人に分け与える。
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Ch.6 Organizational Socialization Outcomes:
Now and Into the Future
・これまでの研究で、戦術と社会化の関係については明らかに
されてきた。
しかし、新人が仕事に適応することを手助けするために、
組織が活用する実際のプログラムとメカニズムについては
まだあまり明らかになっていない。
・まずは社会化に成功することが、新人がチェンジエージェント
として組織の変革を担うための必要条件であると言える。
新人が変化を促す役割に関する研究は少ない。
○組織社会化の結果(近位、遠位)を測る指標を提示。
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Ch.7 The Odd One Out:
How Newcomers Who are Different Become Adjusted
・新人のダイバーシティ(多様性)は3種類ある:
1)Separation 分離(ポジションや意見の違い)
2)Variety 多様さ(知識や経験の違い)
3)Disparity 相違(社会的地位の違い?)
○Variety diversityが、様々な社会化プロセスにおいて
高い価値を示す?
・社会化研究においては「Social acceptance社会的受容」が、
新人の適応において最も重要なOutocomes結果であるとされて
きた。
他メンバーと「違う」個人は、低い社会的受容を経験すること
が多い。
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Ch.8 Content and Development of Newcomer Person-Organization
Fit: An Agenda for Future Research
・POフィットは、個人と組織の文化の調和/一致あるいは、
個人と組織の価値の合致に関する概念である。
・新人は入社後「ハネムーン」期間を経て
「Hangover二日酔い?」(例:職務満足の低下)に至る。
・入社後の3~6カ月間が、新人の適応において重要である
(例:Bauer & Green,1994他)
この期間の後、新人の知覚には主だった入社後の変化が
みられなくなる(Lance, Vandenberg, & Self, 2000)
・メンターと過ごした新人が最もPOフィットに変化が見られた。
新人の価値は、メンターに近いものとなったのである。
・制度的(5つ)社会化戦術と剥奪的戦術(6つ目)は、新人の
価値に変化を起こす可能性があり、
個人的(5つ)社会化戦術と付与的戦術(6つ目)は、新人の
直接の組織環境に変化あるいは、新人の環境の見方に変化を
起こす可能性がある
○ここちょっと分からない。
この文献でも、6次元目の扱いは別物になっている。
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Ch.9 The Role of Time in Socialization Dynamics
・Ashforth(2012)は、近位の新人適応を「役割の明確化」
「課題習熟」「社会的統合」そして「役割革新」と定義。
○4つ目は異質だよなー。めったに起こらないのでは。
・Event time(出来事時間)には、「驚き」(Louis,1980)、
「転換点」(Bullis & Bach,1989)、「Critical incidents」
(Gundry,1993)のような概念が含まれる。
・Rentsch(1990)は「小さな出来事が大きなメッセージを運ぶ」
と表現した。
・Jones(1986)の制度的社会化、個人的社会化
○共に5つしかあげていない。6つ目には触れていない。
・制度的社会化による心理的安心感は、質問や実験をする
社会的コストを減らすため、新人の能動性が高まるという
研究結果が多い(例:Ashforth et al.2007b他)
・Swift socialization 迅速な社会化
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Ch.10 This is How We Do Research Around Here:
Socializing Methodological and Measurement Issues
・重回帰分析で、代替説明をコントロールする方法も
組織研究では良くつかわれる。
その際は、第三の説明変数を見誤り、真の原因をつきとめ
られないという問題を避ける必要がある。
そのためにも先行研究を通して、可能性の高い第3の変数を
もっておくべきだ。
・量的調査を補完する目的で、質的手法を使う。その際は、
量的調査の結果の背後にある「理由」の説明に、質的調査
を活用する。
○俺の修論もこれを目指そう
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Ch.11 The Impact of Socializing Newcomers on Insiders
・新人が組織に入ってくることは、変化のチャンスとなる
可能性がある。
・既存社員が新人の入社にどのように反応するかの研究は
少ない(Bauer & Green,1998)
・社会化エージェントとなることで、既存社員は、自身を
「親切で育成に積極的な組織市民」として見るようになる
(Feldman,1994他)。
このセルフイメージの拡大は、新人のメンタリングに
積極的に関わっている既存社員ほど起こりやすい
(Hallier & James, 1999他)。
・既存社員も新人に組織がどのように動いているのかを説明
することで、自身のスキーマを再構築し、センスメーキング
(意味形成)が促進される(Weick, 1977)。
・新人の採用、選別、社会化を通して、既存社員は外部環境を
Scanning概観する機会を得る(Sutton & Louis,1987)。
・既存社員は、特に新人の採用過程を通して、組織の優先課題
が何かを知ることになる。
・社会化プロセスが、Individualizedであるほど、新人は
Proactive能動的となる。
○これは他のレビューと違う。他はInstitutionalizedが
新人の能動性に正の効果を示すと言っている。
Ashforth et al., 2007のモデルもそう。
・「破壊的な新人」が入ってくることによる悪影響もある。
・社会化の既存社員への影響は、社会化研究の
次のフロンティアである。
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Ch.12 The Perspective of Host Country Nationals in
Socializing Expatriates:
The Importance of Foreign-Local Relations
・社会化と海外勤務者の適応には共通点が多い。
・海外勤務の失敗は確かにあるし、コストも高い。
「失敗」としては
-アサインメントの途中で帰国
-現地への知識転移の失敗 がある
・海外勤務研究においては、
「Stressor-Stress-Strain」の枠組みが使われてきた。
・海外勤務者に焦点をあてた研究がほとんどで、
Host Countory Nationals(HCN)の視点に立った研究は
ほとんどない
・社会化研究の枠組みである「社会化戦術」→「学習」→「適応」
のうち、「学習」という視点が、海外勤務研究にはほとんどない。
・HCNとの協働は、海外勤務者にとって重要。
ただ、HCNにはそのためのモチベーションが働きにくい。
海外勤務者の支援は、彼らのジョブディスクリプションにはない。
○社会化研究の「学習」の視点が、海外勤務研究には欠けている
という指摘は面白いなー。これから読みこんでいこう。
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Ch.13 Socializing the “Other” Organizational Newcomers
-Customers, Clients, and Guests
・世界経済は、サービス産業中心になってきている。
サービス産業においては、新規を含む顧客との数多い
相互作用が必要になる。
・顧客が「Partial employees部分的従業員」になることもある
(Mills & Morris, 1986)
・自主的で、社会化された顧客に対しては、
企業内の資源をそれほど使わずに済む(Bateson, 2002他)。
・適切な社会化は、高い顧客満足にも通じる
(Kelley et al.,1992)。
○これ面白いなー。社会化の概念を、新規顧客の獲得、
既存顧客の維持に適用する。確かに使えるかも。
・制度的社会化戦術は、顧客満足の向上と関係がある
(Fonner & Timmerman, 2009)。
・「要る時は、人を。要らない時は、技術で。」
保険会社の広告。
○直接的な接触を望まない顧客は、まずはウェブ等で
こちらを調べてくる。
・4社の事例:ブルーナイル社、アップルストアー、
ハーレイダビッドソン、ウィロークリーク教会
・新しい教会に行くのは、居心地が悪く、ストレスフルな経験
となる。
○「よくわからない」「居心地が悪い」「緊張する」
「居場所が無い」「どう振る舞えばよいか」といった
ストレスフルな環境に入る人達を対象とする場合、
組織社会化の概念は役立つのかも。
Closed community 一見さんお断り、敷居の高い場所等。
そこでの立ち居振る舞いの仕方を教えてくれる。
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Ch.14 Are Organizations On Board with Best Practices
Onboarding?
・効果的で効率的に新人を社会化する必要性が増加してきている
(Klein & Heuser, 2008)。
その理由の一つとして、雇用関係の変化と従業員移動の増大が
ある。
・Onboardingとは、組織またはそのエージェントが、新人の適応を
促す為の全ての公式、非公式の実践、プログラム、方針をさす。
・Onboardingは、数時間から数カ月間の期間限定の活動であり、
3つの目的を持つ
1)Inform 情報提供
2)Welcome 歓迎
3)Guide ガイド、指導?
・特定のオンボーディング実践に関する研究は少ない
・Inform-Welcome-Guide フレームワーク
(オンボーディング活動の一覧)
・OJTを受けることと、一定期間同僚を観察する機会を与えられる
ことは、新人にとって有益性が高いものと受け止められる
(Klein et al.,2010)
・新人をGuide導く4種のエージェント:人事担当、同僚、上司、
メンター。
・研究者は、具体的なオンボーディング活動を検討していない。
実践者は、オンボーディング活動の実証的研究をしていない。
両者のギャップを埋めていくことが必要。
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Ch.15 The Development of a Comprehensive Onboarding Program
at a Big Ten Research University
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Ch.16 Socializing Leadership Talent: Ensuring Successful
Transitions into Senior Management Roles
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Ch.17 Socializing Socialization: Everything is Connected
-Especially Recruiting, Hiring, and Accelerating Talent
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Ch.18 Developing Organizational Cultural Competence through
Montoring: Onboarding the Menttium Way
・Menttium社における一対一とグループメンタリングの事例
・営業のグループメンタリングにおいて、メンティーと近い立場の
営業経験2年未満の者がメンターとなる。
・メンティーの進捗状況を確認するための調査とチェックポイント
質問紙がある。
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Ch.19 Moving Forward: Next Step for Advancing the Research
and Practice of Employee Socialization
・新人適応の先行要因として3つの変数が主に研究されてきた
1)組織の戦術、実践
2)新人の特徴と行動
3)同僚と部下の役割
・既存社員が新人を社会化する際の時間と労力についても
将来の研究は見て行くべきである。
・社会化の根底を流れるメカニズムはまだよくわかっていない。
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○大分での夏休み中に、頑張って読んで良かった!
組織社会化の過去の研究群と今後の研究の方向性を一望できる。
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