AOMに参加したことがきっかけで、OCBに関する論文をいくつか読んでいます。
(・要約 ○関根の独り言)
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●Organizational Citizenship Behaviors: A Critical Review of the
Theoretical and Empirical Literature and Suggestions for
Future Research
P.Podsakoff et al.(2000)
http://myweb.usf.edu/~jdorio/Organizational%20citizenship%20behaviors%20a%20critical%20review%20of%20the%20theoretical%20and%20empirical%20literature%20and%20suggestions%20for%20future%20research.pdf
○OCBのレビュー論文。似た概念との違いを整理し、OCBを発生させる要因と
OCBによる効果についてまとめている。
・OCBと似た概念として、以下がある:
Extra-role behavior 役割外行動
Prosocial organizational behaviors 向社会的組織行動?
Orgnizational spontaneity 組織自発性
Contextual performance 文脈的パフォーマンス
・同じアイデアや概念が、違う研究者によって、違う名称にされてしまう。
・OCBの種類として、7次元がある:
1)Helping 援助
2)Sportsmanship スポーツマンシップ
3)Organizational loyalty 組織忠誠心
4)Organizational compliance 組織従順性
5)Individual initiative 個人自発性
6)Civic virtue 市民道徳
7)Self-development 自己開発
・OCBの先行要因としての4つ:
1)個人特性 2)仕事特性 3)組織特性 4)リーダー行動
・メタ分析の結果からも、リーダー行動が、OCBに大きな影響を及ぼしている
・OCBの結果として2つ:
1)上司による部下評価に対してのOCBの効果
2)組織パフォーマンスに対してのOCBの効果
・OCBは確かに、上司の部下評価に影響を及ぼしている。
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●日本の職場にとっての組織市民行動
田中堅一郎 日本労働研究雑誌 No.627 October 2012
・組織や職場には誰にも割り当てられていない職務が常に相当数存在する。
職場で実際に行われている職務に必要な全ての活動を、フォーマルな
組織図や分掌規定で完全に網羅することは事実上不可能である。
・OCBをしやすい従業員は、過去の研究結果から見ると、一般的に自分の仕事
に積極的で、退職意図や欠勤率もおしなべて低い。また業績評価も高い
傾向にある。
・Podsakoff et al(2009)のメタ分析によれば、組織市民行動と組織全体の
業績とはかなり高い相関関係を示している。
従業員がOCBを盛んに行うほど、組織全体の様々な業績指標が高い傾向を
示すことは間違いない。
・そもそもOCBに相当するものの多くは、日本の職場には伝統的に根付いて
いたと思われる。
・90年代以前の日本の職場では、組織のためによかれと自発的に働くことは
自明のことであって「組織市民行動」などと称するまでもなかった。
・本来日本の職場に根付いていたはずの組織市民行動が、いつの間にか
行われなくなってしまったのは何故だろう。
○成果主義の影響もあるだろうし、雇用形態の多様化の影響もあるだろう。
ただ、その中でも毎年入ってくる新人への周囲のOCBは比較的残っている
と思う。
・成果主義的賃金制度の下では、明示的に報酬を受けない行動(すなわちOCB)
に対する従業員のモチベーションを失わせかねない。
・Spitzmuller et al.(2008)によれば、OCBを規定する要因として、
性格特性としての調和性と誠実性、職務満足感、公正感、組織コミットメント、
ポジティブな感情がある。
・Eatough et al.(2009)によるメタ分析によれば、職務負担の過剰感が
あったり、職務上役割葛藤が生じた時に、OCBは有意に減少する。
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●組織市民行動を規定する集団的アイデンティティ要因と動機要因の探究
潮村公弘、松岡瑞希 人文科学論集. 信州大学人文学部 編 2005年
・Niehoff(2000)は、3つの動機、達成、親和、権力を用いて、動機的側面
から、OCBのモデルを提案している。
・OCBは一般的に美徳的な行動と考えられている。
しかし、西田(1997)は、OCBの多くは自分自身の為に行われているという
結果を面接調査から得ている。
・田中ら(1998)は、OCBが功利的コミットメントの影響を受けるという
結果から、OCBが「見返り」を期待して行われるという可能性を示唆。
・西田(1997)のOCB尺度を用いた。
・職場集団において、OCBは「内因的な過程動機」「内的自己概念動機」
によって規定されることが明らかになた。
・内因的な過程動機に基づく仕事や課題には恵まれていない人ほど、OCBを
積極的に行うことを通して、自身の役割や仕事、課題の価値を見出している
というダイナミクスが推量される。
○ちょっと悲しい結果。大した仕事をさせてもらえない人ほど、職場における
自分の存在価値を示すために、OCBを行う。
自身の納得感と、他者に対する印象管理の側面もあるのかも。
・大学生サークルにおいて、OCBは「内因的な過程動機」「内的自己概念動機」
「内集団の評価」によって規定される。
・行動自体の魅力に動機づけられていない人ほど、OCBを行う。
より高いレベルに到達したいと思っている人ほど、OCBを行う。
自分が属しているサークルを高く評価している人ほど、OCBを行う。
・OCBとモチベーションにおいて、内因的な過程は負の、内的自己概念は正の
有意な関係性をもっていた。
内因的な過程動機が低い人ほど、OCBを行う。
内的自己概念(自分の内部評価)を高めたい人ほど、OCBを行う。
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参考:AOMでのOCBに関する話
LMXとOCB
https://www.learn-well.com/blog/2013/08/aom_3_lmxocb.html
組織コミットメントとOCB
https://www.learn-well.com/blog/2013/08/aom_4commitmentocb.html
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