『経営戦略 全史』
三谷 宏治 (著) 2013年
○面白くて、一気に読んだ! さすが三谷宏治さんの本。
巨人達の架空の対話、各項のつなげ方も上手い!ぐいぐい引き込まれる。
(・要約 ○関根の独り言)
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・経営戦略史は、60年代に始まったポジショニング派が80年代までは圧倒的で
それ以降は、ケイパビリティ派が優勢。
これは大テイラー主義とも言われる「定量的分析」と、大メイヨー主義と
仮に名づける「人間的議論」の戦いでもあった。
・テイラー、メイヨー、フェイヨル。この3人が作り上げた「考え方」が
経営戦略論すべてのベース。
●近代マネジメントの3つの源流
・テイラーこそが全ての源流。
・モチベーション研究、リーダーシップ研究等は、すべて人間関係論の
そしてメイヨーの子どもたち。
・テイラーは工場を管理し、フェイヨルは企業を統治した。
・管理者による○○が生産性向上につながる
テイラー:分析とマニュアル
メイヨー:作業者との対話
フェイヨル:経営・管理プロセスの遂行
●近代マネジメントの創世
・バーナードは、世界恐慌で苦しむトップたちを「経営者の役割」で鼓舞。
・ドラッカーは、「マネジメントの伝道師」
・アンゾフは「ギャップ分析」「アンゾフ・マトリックス」を提唱。
ほとんどの戦略コンセプトは、アンゾフによってその原型が生み出された
・チャンドラーが見出したのは、経営者にとって「事業戦略」は変えやすく、
「組織戦略」は変えにくいから、事業戦略にそって組織戦略を立案、実行
していくのが無難ということ。
「組織は戦略に従う」と言いたかったわけではない。
・バウアーはマッキンゼーを作り「事業部制の導入支援」を主力商品にした。
・アンドルーズはSWOT分析を作ったが、企業戦略はアートだと考えていた。
・SWOTの機会、脅威ひとつひとつに、強みと弱みをかけあわせていく
TOWS分析は、戦略オプション出しに使える。
・PLC理論(4ステージ)に、イノベーション普及理論(顧客の5パターン)に
マーケティングミックスが組み合わされ、PLC戦略が生まれた。
●ポジショニング派の大発展
・経営戦略史に日本が登場したのは、J.アベグレンの「日本の経営」(1958)
・BCGの「成長・シェアマトリックス」により、経営者は部下の事業部長達と
戦う武器をもてた。
・「負け犬」ではなく、今後成長が期待される「子犬」としておけば
よかったかも。 低成長市場は、PLCで言う黎明期ステージかもしれない。
・ポーターは、ポジショニングを重視。「儲けられる市場」を選んで、かつ
競合に対して「儲かる位置取り」をすること。
・状況は5力で分析できる。戦略は3パターンに類型化できる。
ポーターこそ、大テイラー主義の権化。
●ケイパビリティ派の群雄割拠
・パスカルによると、ホンダのアメリカ進出に明示的な戦略はなく、
失敗を重ねる中、創発的に戦略が生まれてきた。「ホンダ効果」
・ピーターズの「エクセレントカンパニー」により、企業の統計的調査と
ストーリーを組み合わせたビジネス書というジャンルができた。
・ストークの「タイムベース戦略」:付加価値の向上(差別化)と
コストの低下(コストリーダーシップ)は、二律背反ではなく、
時間短縮により、同時に実現できる。
・ハマーの「リエンジニアリング」は、抜本的改革ではなく、事業スリム化、
雇用削減の道具にされた。
・ハメルは、自社と競合を見比べて、自社のコアコンピタンスを見極め、
それが効きそうな市場を開拓せよと主張した。
・バーニーらは、企業間でパフォーマンスに差があるのは、経営資源の使い方
の効率に差があるからだと考えた。
●ポジショニングとケイパビリティの統合と整合
・ポジショニング重視か、ケイパビリティ重視かは「場合による」としたのが
ミンツバーグの「コンフィギュレーション(組み合わせる)」という考え方
・BSCは、ポジショニング(顧客の視点)と
ケイパビリティ(業務・学習の視点)をつなぎ、更にそれを財務指標にまで
つなげようとした偉大な試み。
・ブルーオーシャン戦略:良い戦略とは敵のいない新しい市場を創り出すこと
●21世紀の経営環境と戦略諸論
・エヴァンスは、インターネットのもたらす本質的な変化は、これまで
トレードオフの関係にあった「リーチ」と「リッチネス」の両立が可能に
なったことであるとした。
・「情報の拡散」の大部分は「弱いつながり」がもたらしている。
・ソーシャルな課題の解決
クリステンセンの「教育×破壊的イノベーション」
ITの力を借りて、子供たちにあった自在なプログラムを提供しようと提唱。
●最後の答え「アダプティブ戦略」
・ワッツによると、大失敗の要因は、
1)過去と現在を必然と考えたがる
2)結果に目が眩む
3)自分に甘い
・ゆえにこれらから逃れるためには、
1)過去(成功)から学ばない
2)結果(成功)だけで見ない
3)自分で自分を評価しない
「未来ではなく、現在に対応する」という戦略。
・過去に学ぶのではなく、今の智慧を集める。
予測、推測するのではなく、実際にやってみる、が社会学からの答え。
・クリステンセンは「破壊的イノベーション」は、遠く離れた所からひそかに
始まるとした。リーダー企業はイノベーションに乗り遅れて「担当の変更」
が起こらないように、一見無駄な試行錯誤を小さく色々やってみるしかない
・やってみなくちゃわからない「試行錯誤型」経営が最後の答え。
・スタートアップに必要なのは「商品開発」と「顧客開発」のみ。
・ビジョンに向かって、ピボット(軌道修正)を繰り返す。
●全体俯瞰のためのB3Cフレームワーク
○ほんと面白い!
○ただ、うちみたいな小企業にとっては、
やっぱり「ランチェスター戦略」が一番はまる。
https://www.learn-well.com/blog/2013/06/post_386.html
実際に「今日の飯を稼ぎ、明日の飯の種を作る」ために
何をすればよいか明確だから。
ここで取り上げられている戦略は、考える材料としては参考になるけど
「じゃー、うちみたいな小さい会社でどう使う」となると、難しい。
(自分の応用力が足りないだけかもしれませんが・・・)
「やっぱり試行錯誤が大事だよ」というのが、本当に経営学の
最後の答えだとしたら、ちょっと悲しい。「そりゃ、そうだけど・・・」
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