『組織論レビュー』
組織学会(編)2013年
(・引用/要約 ○関根の独り言)
『組織論レビュー:組織とスタッフのダイナミズム』
===
●まえがき
・上質のプレーンヨーグルトのようなレビュー論文。
素材そのものの上質さが伝わってきて、その旨さがギュッと凝縮。
○うまい例えだなー。
===
●国際人的資源管理論における日本企業批判
・海外派遣者の役割:
1)知識移転 2)コントロール 3)学習
・日本企業は、TCN(Third country national)を活用していない
・日本企業の本国志向型の人的資源管理の問題点(Kopp 1994)
本国側:
1)国際経験を持つ人材が不足している
2)海外で働きたいという人が少ない
3)帰任者が本国組織に戻ることが難しい
現地側:
1)日本人がマネジメントの上位にいるため、優秀な人材を惹きつけられない
2)本国人が仕事の中枢を担うため、現地従業員の離職率が高くなる
3)海外派遣者と現地従業員とのコミュニケーション問題
4)現地従業員が昇進できない
・米国企業における海外派遣者の失敗率の高さ(Kobrin 1988)
・日本企業の国際人的資源管理の特徴:
1)海外派遣者が多い
2)TCNが少ない
3)受け入れ派遣者(日本親会社が海外子会社からの派遣人材を受け入れ)
が少ない
===
●海外派遣帰任者のキャリアマネジメント
・帰任者(Repatriate)
・文化的適応のWカーブ
(派遣先でのカルチャーショックと帰国時の帰国ショック)
・「ストレス-適応-成長モデル」異文化でストレスを受け、それに対処する
ことで現地に適応し、それを繰り返すことで個人は成長する
・組織社会化を、内藤(2011)は帰任者適応に応用し、海外派遣帰任者の
再適応過程が、同一の企業や組織における社会化を再度経ることに着目して
「組織再社会化」の概念を提示。
===
●組織研究の視座からのプロフェッショナル研究レビュー
・Abbott(1988)は、プロフェッション間競争の鍵として、彼らの抽象化能力
(Abstraction ability)に注目。抽象化能力は社会に存在する具体的問題を
自らの専門領域に適するように分類、解釈、定義する力であり、この優劣が
プロフェッションのステイタスや存続可能性を決める。
Abbottによると、推論こそが純粋にプロフェッショナル的仕事だという。
・知識習得コスト、知識の質の担保、組織間移転の問題。
組織特殊資産の形成とトレーニング(小池1991)
教育投資負担をめぐる組織と個人の駆け引き(Cappelli 1999)
===
●心理的契約研究の過去・現在・未来
・Schein(1965,1978)によれば、心理的契約は、組織と従業員の関係が開始
された時点で成立するのではなく、組織社会化の期間を通じて組織と
従業員とが相互に調整しあう中で、お互いに対する期待を徐々に形成、
批准させていくものだという。
・Rousseau(1989)が定義する心理的契約とは、組織と従業員の間に
相互期待に関する合意が成立しているという、従業員の知覚である。
・マーチとサイモン(1958)が主張したように、義務と誘因の交換から、
組織と人の関係が成り立つととらえている理解が、心理的契約概念の基盤。
===
●組織成員のアイデンティフィケーション
・組織アイデンティフィケーションに再び焦点があてられる転換点は、
Ashforth & Mael(1989)が、社会的アイデンティティ理論および
自己カテゴリー化理論に依拠し、成員性についての認知と自己概念の結び
つきから、組織アイデンティフィケーションを捉える枠組みを提示したこと。
・組織からの分離によって自己定義を図る ディスアイデンティフィケーション
・職務関連の様々な変数と組織アイデンティフィケーションとの間に有意な
関係が認められており、組織成員の組織アイデンティフィケーションが、
組織に有益な結果をもたらすことが期待される。
===
『組織論レビュー:外部環境と経営組織』
===
●組織アイデンティティ論の発生と発展
・自分たちらしさ identity of organization
・組織アイデンティティは、組織の構成員による自己認識であるが、組織の
外部からの影響を受けて形成され、変化する。
・組織アイデンティティ論の展開を決定づけた初期の論文2つ:
1)Albert & Whetten(1985)
組織アイデンティティを、中核性、特異性、持続性の3つで規定
2)Ashforth & Mael(1989)
「我々-彼ら」間の認知的区別を重視する社会的アイデンティティ論を
組織論に応用
===
●ダイナミック・ケイパビリティ
・ダイナミックマネジリアルケイパビリティ:経営者が組織の資源や能力を
構築し、統合し、再構成する能力。これが異なるので、経営者間の意思決定
に違いが生じると想定。
・資源の探索(Exploration)と活用(Exploitation)
===
●技術の社会的形成
・アクターネットワーク理論に特徴的なのは、ネットワークを構成する
アクターとして社会的存在(Human actor)も物的存在(Non-human actor)
も同列に扱う点。
===
●資源依存パースペクティブの理論的展開とその評価
・組織間関係を通じて、組織は自らでは生み出すことが困難な知識、行為や
資源が確保でき、そして自らの慣性の存在が顕在化、意識化されるという
利点がある(吉田1991、2004)
===
●経営組織のコンピューターシミュレーション
・Harrison & Carroll(1991)は、組織文化伝達のプロセスを明らかにするため
採用、社会化、離職を考慮したシミュレーション分析を行っている。
その結果、急成長と高離職率が実は文化的安定性を促すことを明らかにした。
急成長により社会化の影響を受けやすい新人が大量に入社することになるし
高離職率により社会化の抵抗勢力が退出するので、文化的安定性が増すと
している。
○面白いなー。確かにそうかも。ただ長く勤めてくれる人がいない中で
文化の伝承者(新人に伝える人)もきつくないのかな。
===
コメントフォーム