「Transfer of Training(研修の転移)研究会」

参考文献

「Transfer of Training(研修の転移)研究会」
2014年3月6日(木)~7日(金)@東大駒場
東京大学 中原先生のお声掛けで「Transfer of Training(研修の転移)研究会」
を開催することになりました。
http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/01/transfer_of_training.html
研修の効果測定、現場実践促進に関する英語文献の輪読会で、
20名の方(研究者、実務家、学生)にご参加頂きました。
読んだ文献の中で「今後使えるかも!」と思った箇所や、
議論の中で参考になったことを、列挙していきます。

中原先生に選んで頂いた21の文献を、ざっくりと3つの塊に分けています。
A. Training Program 研修プログラム
B. Training Evaluation 研修評価
C. Training Transfer 研修転移
(文献全体像 ↓
PDFファイルを開く )
(・文献内容 -研究会で出た話 ○関根の独り言)
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0. Overview by Nakahara 2014
・転移に関する認知科学の古典的定義:
「ある一つのことの学習が、別のことの学習をするのに役立つということ」
(Hilgard & Bower 1966)
・転移に関する最近もっとも用いられる定義:
「学習の転移とは、ある文脈で学習したことを別の新しい文脈で活かすこと
であり、人が社会に適応して生きていくためには欠かすことができない
重要な心的機能である」(Byrnes 1966)
・転移研究の歴史:1)形式陶治説 2)同一要素説 3)一般原理説
・転移に関する人的資源研究の観点:
「研修の中で学んだ知識やスキルを、仕事に役立てること、
さらには、それらを持続することのこと」(Baldin and Ford 1988)
Generalization:仕事に役立てること
Maintenance効果を持続させること
・転移の難しさ:
研修で学んだことの60%から90%は仕事には応用されない
(Phillips and Phillips 2002)
トレーニング直後には学んだことの62%が仕事に活かされる。
しかし、6ヶ月たつと44%になり、一年経つと34%になる。
研修投資の51%は個人の生産性向上、肯定的変化に結びつく。
47%が組織の肯定的変化にむすびつく(Saks 2002)
・参考ブログ:「学んだこと」が「現場で活かされるため」には何が必要か?」
http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/01/post_2167.html
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A. Training Program
1. Burke & Day 1986
A cumulative study of the effectiveness of managerial training
○関根がレジュメを担当
PDFファイルを開く )
・1951年~1982年の文献をメタ分析
・マネジメント研修は、学習と仕事上のパフォーマンスに
「moderately effective 中程度の効果」を持つ
・「人間関係」研修は、主観的な学習評価を高める効果があると言ってよい。
・「モチベーション/価値観」研修は客観的な学習評価に非常に効果的であった。
モチベーションと価値観に変化を促すためのマネジメント研修は、確かに
モチベーション向上と価値観変化に効果があると言える(但し研究は3つだけ)
・「自己意識」研修は、職場における管理行動の変化に効果的であると言える
・「行動模倣」は、主観的な学習評価を高める効果があると言える。
・「講義」「講義と討議」「講義、討議、ロープレ」は、客観的な学習評価を
高める効果があると言える。(但しサンプリングエラーも見られる)

・「講義」手法は、状況をこえて一般化するのに役立つという効果が出た。
このような講義手法のポジティブな効果は、講義手法に対する懸念の声
(Bass & Vaughn 1966他)に一石を投じることになる。
・「リーダーマッチ」は状況をこえて一般化するのに役立つという効果が出た。
費用対効果で考えても、この手法は今後も使われるべきだ。
・「行動模倣」も、主観的な行動評価を高める効果があると言える。
この結果は、Social learning theory社会的学習理論(Bandura 1977)の
実証研究の結果とも整合している。
-このメタ分析では、修正をかけていないので、修正をかけると、
効果量がより高くでる可能性がある
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2. Colllins & Holton 2004
The effectiveness of managerial leadership development programs: a meta
analysis of studies from 1982-2001
・上記の後、1982~2001年の論文をメタ分析
・マネジメント研修は、知識学習に効果的。
SGPPデザイン(単一群プレポストテスト調査)が最も効果的。
・全体として、経営リーダーシップ開発は多様であり、
効果的なものもあれば、悲惨な結果をもたらすものもあった。
-リーダーシップ研修を「知識テスト」で評価することには違和感がある。
リーダーシップに必要なのは知識、スキルだけではない。
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3. Powell & Yalkin 2010
Managerial training effectiveness: a meta-analysis 1952-2002
・1952年~2002年に出された民間企業での
「マネジメント研修」に関する研究(69)に絞ってメタ分析。
・Burke & Day(1986)と、Collins & Holton(2004)のレビューを基盤に。
・分析の結果、効果性については時代による変化はほとんど見られず、
効果量は小さかった。期待するほどの効果はないといえる。
マネジメント研修の効果量は「行動」「成果」に比べて
「学習」が一貫して大きかった。
○マネジメント研修は、知識獲得(学習)には効く。
・研究の手法として、Kirkpatrickの効果測定4段階を参考にした
-統制グループありの研修後テスト型(POWC)
-統制グループありの研修前後テスト型(PPWC)
-1グループのみの研修前後テスト型(SGPP)を、
サブグループ化して分析。
・メタ分析の結果、マネジメント研修は期待するほどの効果を
出していないことが明らかになった。
・1952年から、2002年にかけて、マネジメント研修の効果は
それほどの向上を果たしていない。
・Kirkpatrickの4段階を踏まえた研究のほうが、
そうでないものよりもマネジメント研修の効果が若干高まる。
・マネジャーは、研修を通して学習はしているが、
学んだことを職場で活用していない。
・マネジャーが学んだことを、職場に転移する際に
難しさが発生している。
○「わかったけど、現場でできない、やってない」という状態かな。
-新任マネジャーには効いているという結果。
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4. Wexley & Nemeroff 1975
Effectiveness of positive reinforcement and goal setting as methods of
management development
・27人のマネジャーを、9人ずつ3つのグループに分ける。
Group1:研修+事後評価・目標設定
Group2:研修+事後評価・目標設定・テレコーチング
Group3:統制群(研修なし)
・研修を行なった2グループは、統制群より、マネジャーの考察力や 総合力測定で大きな効果をしめした。
・テレコーチングは役立たなかった。
-荒い研究。従属変数を上げるための介入としてふさわしくない。
-研修受講者に対する目標設定(現場で~をしよう)は効果的と言える。
「気にする、意識する」という効果がありそう。
○研修後の目標設定、自分がどれだけそれらをできているかの
「事後評価」は効くという結果。これも使えそう。
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5. Tews & Tracey 2008
An empirical examination of posttraining on the job supplements for
enhancing the effectiveness of interpersonal skills training
・研修後の補完(サプリメント)の有効性について検証。
研修後のセルフコーチングと、フィードバック。
・4つのグループで実験。
1)室内研修のみ
2)室内研修+セルフコーチング
3)室内研修+フィードバック
4)室内研修+セルフコーチング+フィードバック
・セルフコーチング、フィードバックの2つの補完が有効。
室内研修は相互交流行動に対して有効。
公的な研修中の相互交流は一つの効果になる(Taylor et al. 2005)
・研修中に使ったワークブックを職場で見直すことも有効。
・研修における知識とスキルは、時が経てば衰える(Arthur et al. 1998)
Refresher training 再トレーニングが必要。
-何もやらなければ、研修は忘れ去られる。
ただ、どこまでフォローすればOKなのか。
研修の守備範囲はどのくらいか? 半年ぐらい?
Fade out問題もある。どこまで面倒をみればよいのか。
○LWの指導員研修の場合、指導員期間である1年間が一つの目安。
その間をフォローしていく。
○マネジメント研修においては「知識教育」と「行動模倣」が使えそう。
研修後では「目標設定」「事後チェック」「ワークブックでのふり返り」
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B. Training Evaluation 研修評価
6. Alliger et al. 1997
A meta-analysis of the relations among training criteria
・Reaction(反応)を「Affective感情的」と「Utility実用的」と分けて
34の文献をメタ分析。
・「感情的反応」より「実用的反応」のほうがより「学習」や「成果」に
関係していた。
・感情としての反応
「この研修は、楽しかったですか?」顧客としての受講者、口コミの喚起。
・有用性の判断としての反応
「この研修は、仕事に役立つ内容でしたか?」実用度や役立ち度。
・カークパトリックは行動の変化すべてを「Behavior」としたが、研修の
結果を行動で示すことと、実際の仕事での行動を明確に分けていない。
そこで、研修中での行動変化のみをレベル2(学習)にいれた。
(例:シミュレーション、ロールプレイ)
・実用的反応に対して、受講者は暗黙的に職場環境を考慮して
回答するのではないか。
-Utilityは、現場を知らないと答えられない。(例:新人では難しい)
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7. Sitzman et al. 2008
A review and meta-analysis of the nomological network of trainee
reactions
・研修参加者の「Reaction反応」に関するレビューとメタ分析の報告。
・インストラクションのスタイルと対人の交互作用が、反応をよく予測する
変数であった。
反応は、動機づけや自己効力感の研修前後の変化を有意に予測していた。
・講師のインストラクションスタイルが、immediacy(社会的、心理的距離を
縮めるようなコミュニケーションスタイル)に特徴づけられたものである
場合、参加者の反応は良くなる。
・研修前の参加意欲が高い参加者が「この研修、面白い!」と反応すると、
さらに研修後の意欲や自己効力感が高まる。
・研修内容に満足していると、学習効果も高い。
-「研修面白かったね!」という人は、学習もしている。
-講師に対する距離を近く感じると、反応が良くなる。
・Alliger et al(1997)では、反応の有効性の側面のほうが、結果との関係性が
示されていたが、本研究で行った追加分析では、反応の「感情面」「有効性」
に関して2郡間には違いが見られなかった。
○「この研修、楽しい!」「この講師、面白い!(距離が近い)」という
反応は、学習も促している。嬉しい知見。
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8. Tharenon et al. 2007
A review and critique of research on training and organizational-level
outcomes
・研修は人と組織のパフォーマンスに対しては、ある一定の影響を与えることが
できるが、利益率など財務的な成果に対して影響を与えることは極めて少ない
・研修に多くの時間を費やしている会社が、必ずしも財務的な成果を得ている
とは限らない。
-研修評価の視点
1)個人→組織 (Kirkpatrick 反応→学習→職場活用→成果・ROI)
2)事業ニーズ→個人パフォーマンス→研修(パフォーマンスコンサル)
3)個人・組織パフォーマンスの背景にある関係性→介入(組織開発)
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9. Aguinis & Kreiger 2009
Benefits of training and development for individuals and teams,
organizations, and society
・2000年以降のトレーニングと発達に関する研究をレビュー。
・個人、チーム、組織、社会に対するトレーニングの効果に焦点。
・Arthur et al(2003)のメタ分析の結果、
最も効果的な研修プログラムは、認知的スキルと対人関係スキルの双方を
含む研修であった。
・Barber(2004)の質的研究の結果、
OJTは、イノベーションと暗黙知の獲得に効果があった。
・Aragon-Sanchez et al(2003)の量的調査の結果、
OJTと社内トレーナーが研修をしている企業が有効性と利益にポジティブに関連
・Fowlkes et al(2000)
経験のある熟達者に対して、研修ニーズのヒアリングをすることが重要。

(例:新人に対してどんな研修が必要か、熟達者に聞く)
・研修効果を最大化するには、経験豊富な熟達者を用いたニーズの測定と、
受講者の準備と動機づけの2つの方法がある。
・Heimbeck et al(2003)
失敗の機会を与えられた受講生は、失敗が許されない環境に置かれた受講生
よりも明らかに高い成果を出した。
・Morgan & Casper(2000)
研修に対する全体的な好感度と有用性が重要 (→研修の継続受講)
-研修の直接的効果としては「知識獲得」が多い。
間接的効果としてチームに与える影響が面白い。
新人を育てることで、周りが育つという間接効果。
学習する雰囲気のある職場に配属されると、新人が伸びる。
-あえて間接効果を狙う研修もある。
組織には「効きやすいポイント」がある。
-これをすれば、こういう効果があるという研究が多い。
Whyを説明するメカニズム、理論、モデルがない。
○研修前の企画段階で、新人が育った姿ともいえる「熟達者」に
「研修ニーズ」をヒアリングすること。
研修前の段階で、受講生に準備をさせ、研修参加意欲を高めること。
この2つが研修効果の最大化につながるというのは、大事な知見。
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10. Chochard & Davoine 2011
Variables influencing the return on investment in management training
programs: a utility analysis of 10 Swiss cases
・マネジメント研修の投資対効果(ROI)を分析。-55%~1996%の結果。
すべての研修において何らかの効果が見られた。
その効果は、研修対象、期間、テーマによって変化した。
・Utility analysis効果分析を用いて、研修を通じて向上したコンピテンシーに
着目し分析を実施(研修→コンピテンシー→研修効果)
・マネジメント研修の効果は、専門技能や営業研修より低い効果となった。
・評価者研修が、リーダーシップやマネジメント研修に比して、高いROIを 生み出していた。
・短い研修のほうが、ROIは高かった。
・熟練者よりも、新任レベルのマネジャーに対して効果的であった。
-研修によって、従業員価値を上げる、コンピテンシーに値付けをする。
コンピテンシーが上がると、給料が上がる。
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11. Akrofi, Clarke & Vernon 2011
Validation of a comprehensive executive learning and development measure
・経営陣に対するL&D(学習と能力開発)の評価尺度4次元を開発。
・経営幹部のL&Dでは、インフォーマルで仕事に直結した部分の役割が大きいと
想定していたが、全体的な視点でみるとフォーマルな学習機会が大きな役割を
果たしていることが明らかになった。
-新しいことを学んでもらうには、新しいことに対応する力を身につけるには?
○俺は「捨てること」と「結びつけること」かな。
20代よりも30代での環境変化のほうがきつかった。
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C. Training Transfer 研修転移
12. Baldwin & Ford 1988
transfer of trainig : A review of directions for future research
・1907年~1987年の研修転移に関するレビュー論文
・転移とは、学習内容の
1)Generalization 適用、一般化
2)Maintenance 維持 である。
・転移のモデル
「受講者の特性」「研修デザイン」「職場環境」が、
「学習と保持」に影響し、それが「転移(適用と維持)」に影響する。
・研修デザインにおいては
1)学習内容の一致性
2)一般原理の教授
3)刺激の多様性
4)実施の条件 を検討。
・Hucqynski & Lewis(1980)は、研修前の上司との会話、研修後の上司の支援が
最も転移に役立つとした。
・ただ、何を「支援」とするのかの概念の開発は遅れている。
またどのようなスキルが「上司の支援」によって最も影響するのかも未調査。
-上司にできる最大の支援はジョブアサインメント(仕事の割り当て)
-新人が成長した群とそうでない群をわけて、どんな支援を上司に
してもらったかを見るのも面白いかも。
-上司の最大の支援は「邪魔しない」ことかもしれない。
-いい意味で「研修慣れ」している受講者は、研修内容をどう職場で活用できる
か分かっている。研修中の質問も鋭いものが多い。
○転移を促すような働きかけを、なるべく研修中にも盛り込んでいく。
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13. Baldwin, Ford & Blume 2009
Transfer of training 1988-2008: an updated review and agenda for future
research
・1988年~2008年の研修転移に関するレビュー論文
・転移研究はこの20年間で進歩してきた。
・肯定的、否定的モデルは、記憶の保持と転移に効果的であった(Baldwin 1992)
・研修後の介入に関する研究も増えた:逆戻り予防、自己管理、目標設定、
セルフトーク、講師による研修後のフォローアップ。
・職場環境は、研修転移の促進剤でもあり障害ともなりうる。
・自己効力感は、転移の重要な変数である。
・Yelon & Ford(1999)は、研修内容を2軸で提示:
Open skillとClosed skill、管理監督下と自律的。
このうち、自律的なOpen skillのトレーニングに困難さがある。
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14. Holton, Bates & Ruona 2000
Development of a generalized learning transfer system inventory
・「学習転移システムLTSI」尺度の開発。
・16因子と、「風土」「仕事への有用性」「報酬」の2次因子を提示。
-だいぶ網羅された感はあるが、これ以外の要素もあるのでは?
例えば、研修内容と受講者の知識水準の合致度など。
-研修直後に、50問以上の質問紙調査を行っている企業もある。
15問ぐらいがちょうどよいのかもしれないが。
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15. Rouiller & Goldstein 1993
The relationship between organizational transfer climate and positive
transfer of training
・Transfer climate転移風土の概念を説明。
・転移風土は、研修で学習した内容を積極的に職場へと転移させる潜在的な
促進剤となりうる。
・転移風土の2つの要素:
1)Situational Cues 状況的きっかけ/状況キュー
2)Consequences 結果
・研修での学習は、転移に関係し、
業務での転移行動は、のちの業務パフォーマンスに関係する。
・「状況的きっかけ」「結果」も転移の説明変数になりうる。
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16. Cromwell & Kolb 2004
An examination of work-environment support factors affecting transfer of
supervisory skills training to the workplace
・4つの環境要因
1)組織の支援
2)上司の支援
3)同僚の支援
4)受講者支援ネットワーク が高い場合、知識スキルの転移が高まった。
・Gregore et al(1998)
研修に参加する助けをして、戻ってきたら活躍の場を用意することが
上司の役割。これが研修のインパクトを増やすことにつながる。
・転移がうまくいかない理由:挑戦を恐れる、革新がないなど
(Gilley et al 2002)
・受講者支援ネットワークは、1か月、3か月、1年の期間では有用性がなかった。
-研修参加前に、報告時間を上司と確保した上で研修に参加させている。
-上司もその研修を受けていると話が早い。
○指導員研修受講者が、管理職になるようになると、一貫した流れになりそう。
-どんな集団を作ると、どんな効果がでるのかは、教育学ではわからない。
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17. Saks & Belcourt 2006
An investigation of training activities and transfer of training in
organizations
・150社の研修担当者への調査から、研修で使用した資料を仕事に活用している
従業員の割合は、
1)研修直後:62% 2)半年後:44% 3)1年後:34% であった
・学習転移を容易にすることを目的とした活動は、研修前後よりも、研修中に
行われていたが、研修前後のほうがより強く転移を促していた。
・研修前の活動:
1)受講生へのインプットと関与
2)上司の関与
3)研修受講ポリシー
4)受講生の準備状態
・研修中の活動:研修中の活動
・研修後の活動:
1)上司の支援
2)組織の支援
3)評価
4)説明責任とフィードバック
○研修前後にできそうなことのヒントが多い!

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18. Velada et al. 2007
The effects of training design, individual characterics and work
environment on transfer of training
・182名の従業員に縦断的調査を行った結果、
転移デザイン、自己効力感、研修の保持、フィードバックが、
研修の転移に関係していたが、上司の支援は関係していなかった。
・既存研究で効果があるとされてきた上司支援が、本研究では その効果を示さなかった。
本研究では研修後の上司支援(ミーティングやフィードバック)のみに
着目していたが、研修前や研修中の上司支援に着目すれば、
違った結果となっていたかもしれない。
○面白い結果。「研修後の上司支援」が、研修転移に効いていない。

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19. Burke & Hutchins 2008
A study of best practices in training transfer and proposed model of
transfer
・ASTDの専門家らが考える「学習転移のベストプラクティス」データを収集。
・5つの活動を抽出:
1)上司によるサポートと強化の実施
2)コーチングと実践の機会提供
3)参加を促す双方向の活動の導入
4)研修後のスキル評価の実施
5)研修と仕事との関連づけ
-研修の良しあしを、何で測るのか?(学部生からの素朴な質問)
○俺は、関係者の満足度を目指してるかも(受講生、企画者、現場上司)
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20. Lyso, Mjoen &Levin 2011
Using collaborative action learning projects to increase the impact of
management development
・ALがうまくいった事例では
1)研修参加理由の明確化
2)直属長の支援
3)周囲の関与 があった
-ALは幅広い。何がALなのか不明確。
-ALではコンテンツをデザインしにくい。
-ALは教室を否定。仕事の中に学びがある。LearningぽいWork。失敗できる仕事
レバンスは、アクション、ふり返り、他者の重要性を提示。
-課長になってからの1年間ぐらいのフォローが大事。
部長による課長へのOJTはほとんどない。
仕事の割り当て方、目標設定、部下の育て方等、
部長が課長に教えるべきことは多い。
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21. Saks & Burke 2012
An investigation into the relationship between training evaluation and
the transfer of training
・研修評価を頻繁に行った方が、転移が増すことが明らかになった。
・Kirkpatrick(1994)の4レベルで言うと「行動」レベルの評価だけが、
転移に効果的。
レベル1:反応:この研修を受けて良かったですか?
(アンケートなどの主観的評価)
レベル2:学習:この研修で何を学びましたか?
(知識テストなど)
レベル3:行動:この研修でどんな風に行動が変わりましたか?
(現場に帰ったあとの質問紙調査、観察など)
レベル4:成果:この研修で、どんな成果があがりましたか?
(経営指標の評価など)
・「反応」は「成果」とは無相関であったが「学習」とは相関があった。
「学習」は「成果」と関連していた。
最も相関が高かったのは「行動」と「成果」であった。
-評価は研修プログラムの改善よりも、組織内のアカウンタビリティと
認知の増加という観点で考えるべきかも。
-行動レベルの評価を遅延質問紙で把握することが増えてきている。
-研修目標の明示と、その思い出しを強化すべき(自動メールの活用)
-自己効力感は行動に効くので、これもアンケートで聞いておく。
○2007年のASTDでカークパトリック教授の話を聞いた時の様子:
https://www.learn-well.com/blog/2007/06/post_31.html
===
以上です。
今回の知見を再度ふり返って、弊社が主に関わっている
「指導員研修の転移」を促進するために、何ができそうかを
別途考えてみます。
ご参加くださった皆さん、ありがとうございました。
お声掛けくださった中原先生、
進行役の舘野さん、懇親会を準備してくださった保田さん、
場所を提供してくださったKALSのN先生、ありがとうございました。
(2日間、家をあける父ちゃんを快く送り出してくれた家族のみんな、
ありがとう!)
今回の研究会も、とても楽しかったので、また機会があれば企画したいと思いました。

投稿者:関根雅泰

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