『Transfer of Training』
M.L.Broad and J.W.Newstrom 1992
○「研修の転移」で引用されることが多い本。
組織側が「研修の転移」を促すためにできることは何か。
(・要約 ○関根の独り言)
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Preface
・我々は、HRDプロフェッショナルの新たな姿として、manager of
transfer of training「研修転移の管理者」を提示したい。
・本書では、効果的な研修デザインや研修デリバリーについては
触れない。
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Part I Laying the Groundwork
Ch1 HRD and the Transfer Problem
・研修は設計し運営するのに高い金額がかかる。
研修は最後の選択肢であって、最初ではない。
・控えめに言っても、年間$50 billion がアメリカの公式な研修の
直接的、間接的費用として使われている。
これは一人当たり年間$400にあたる。
・「研修の転移」とは、OJTやOffJTで得た知識や技術を、
仕事に効果的、継続的に適用することである。
・“Transfer problem”転移問題
研修直後は、内容の40%のみが転移し、6か月後には25%のみ、
1年後には、15%のみが転移していると、HRD専門家は感じている。
・本書では“Stimulated transfer”刺激による転移
を目指す。
・本書では、“Transfer Partnership”の発達を促進したい。
現場管理職、トレーナー、受講者の3者の協力。
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Ch2 Barriers to Transfer of Training
・研修トレーナーから見た転移の障害:
1)仕事における補強の欠如
2)職場環境での妨害
3)支援的でない組織風土
・転移の障害を、2つの軸で見る:TimingとResource
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Ch3 Managing Transfer of Training
・パフォーマンス向上に関する7つの決定:
○「知識とスキルの必要性」に対して、「研修」という打ち手をうつ。
結構シンプル。
・トレーナーの役割3つ:
1)戦略資源
2)HRDの専門家
3)研修転移のマネジャー
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Ch4 The Transfer Matrix: Key Roles and Times to Support Transfer
・研修転移において、最も使われている/最も影響力がある
「時間」と「役割者」
○これ分かりやすくていいな~。
・最も使われているのは
1)研修中のトレーナー
2)研修前のトレーナー
3)研修中の受講者
・最も影響力があるのは
1)研修前のマネジャー
2)研修前のトレーナー
3)研修後のマネジャー
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Part II Identifying Transfer Strategies
Ch5 Transfer Strategies before Training
・研修の転移に関しては、プロアクティブに常に先を読んで考えるべき。
・研修ニーズ分析に、マネジャーと受講者を関与させる。
・マネジャーにオリエンテーションセッションを提供する。
(受講生が受ける研修の短縮説明会。思い出させる効果もあり)
・受講生に、研修の重要性を説明する。
・マネジャーがコーチングスキルを身につけられるようにする。
・事前課題を提供し、できていなければ参加を認めない。
・研修を受けるべき適切な受講生を選ぶ。
受講生は選ばれた基準を知るべき。
・以前、当該研修を受けて職場で上手に活用している人達と、
研修受講者候補が会って話を聞く機会を作る。
・職場の同僚を、研修に一緒に参加させる。
・マネジャーと受講者間で研修契約書を結ばせる。
・トレーナーは、HRDプログラムを、組織の戦略計画に結びつける。
・トレーナーは、研修内に多くの練習ができるよう設計する。
・ピアコーチングができるよう研修を設計する。
・受講生自身が「自分はなぜこの研修に参加するのか」
「この研修に参加して自分は何が得られるのか」等を考える。
○研修前にできそうなネタが多い!
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Ch6 Transfer Strategies during Training
・研修中の職場からの連絡等、途中妨害を防ぐ。
○確かにそう。研修中にかかってきた携帯電話に対応されると、
これだけで研修のリズム等が崩れる。
・経営陣が、研修を支援していることを示す。
・受講生に認定、修了証を渡す。
・Relapse prevention 逆戻り予防のために、マネジャーが受講生の
行動計画を共有する機会を作る。
・トレーナーは、Application-oriented objectives を考える。
現場での適用目標。
・研修中のWIIFM What’s in it for me? に応える。
・Thorndikeらは、受講生は2つの方法で研修転移を図るとした
1)Transfer through principles 原則を通じて
2)Use of Identical elements 同一要素を用いて
・受講生に、研修後にスキルを活用している姿を描かせる。
・職場で研修内容を思い出せるようJob performance aidsを提供する。
(カード等)
・逆戻り予防策セッションを、研修最後に行う。
・研修受講者同士で、Buddy 仲間を作る。
・受講生自身が「研修で学んだこと」「現場でどう使うか」のノートを
作る。
・受講生自身が、どう活用するかの行動計画を立てる。
人は誰かにやらされるよりも、自分でやることを好む。
・逆戻りを予想し、逆戻り予防策を考える。
「一つか二つは逆戻りしても、全部は逆戻りさせないと自分に誓う」
・「上司への手紙(決意表明)」を受講生が送る。
○研修中にできそうなことも、色々ヒントが多い。
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Ch7 Transfer Strategies after Training
・研修後のマネジャーのかかわりが、影響力が強いのに、最も
使われていない要素である。
・研修後に、受講生とマネジャーが、1対1のミーティングを行う。
・「Reality check」をマネジャーが行う。
・新しく得たスキルを練習する機会を与える。
・肯定的なフィードバックを与える。
・ロールモデルを提供する。
・受講生が、研修内容を職場の同僚に説明する機会を与える。
・Refresher sessions フォローセッション参加の機会を与える。
・トレーナーは、研修の回数をこなすのに一生懸命になり、
各回参加者との接点がおろそかになりやすい。
○これは確かにあるよねー。これを防ぐために「研修開発ラボ」では、
「しつこいフォロー」にこだわる。
・トレーナーは受講生に対して「皆さんは成功するために必要なスキル
と能力を持っている」と勇気づけることが重要。
・研修後のフォローアップサポートを提供する。
・研修後の評価調査を行うことで、思い出させる。
・Refresher/Problem-solving sessions 問題解決セッションを行う。
○「指導員フォロー研修」はこの位置づけ。
・受講生自身が学んだ内容の復習を行う。
・受講生同士のBuddy関係を維持する。
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Ch8 Relapse Prevention:
A Special Action-Planning Strategy during Training
・職場環境はえてして、受講者の新しい学習に対して、非支援的であり
敵対的な環境である。
・R.Marxは、逆戻り予防策のセッションを、研修最後に入れ込むことを
提唱した。
・逆戻り予防のプロセス:
1)逆戻りがあることを認識
2)逆戻りしてしまいそうな領域の確定
3)使えそうなCoping skillsの分析
4)対策の計画
5)仕事中のフォローアップ
・Lapse とは、新しく学習した行動の代わりに、以前の効果的でない
習慣に戻ってしまうこと。
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Part III Using and Supporting Transfer in the Organization
Ch9 Managing Transfer of Training: Applications in Organizations
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Ch10 Building and Managing the Transfer System
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Part IV Appendices
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○この本、いいね~。読んでて面白かった。
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