『Turning Learning Into Action』 E.Weber(2014)
○研修転移を実現する具体的方法論。
研修後の「一対一電話コーチング」
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(・要約 ○関根の独り言)
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Introduction
・研修の80~90%が、日々の仕事に活用されていないという危機。
・L&DマネジャーとCEOが研修を購入するのは、研修により職場での行動変化
が起こり、それによって問題が解決されることを期待するからである。
・本書では「Less training(研修を少なくする)」が答えだと考えている。
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Part One The Learning Transfer Challenge
Ch.1 The evolution of training
・ほとんど全てのインストラクショナルデザインのモデルは、
ADDIEモデルの変形である。
・「70/20/10」モデルを、研修が現場で活かされない言い訳として
使うべきではない。
結局、10%しか研修が役立たないなら、80~90%の研修が現場で
実践されなくても仕方ない、みたいな言い訳に。
○確かにそういう面はあるかも。研修講師側にも。
この「70/20/10モデル」に救われてきた面が。
ただ、日本ではこのモデルにより、
どう70%の経験をデザインするかとか、
20%の重要性を持つ指導、薫陶を活かすために、
マネジャーに研修をやりましょう(!?)みたいな感じもあるかも。
・研修における「Missing link 失われた環」は
「Transfer of Learning 学習の転移」である。
・効果的な研修には、2つの転移が必要である:
1)研修受講者に対する転移(学習)
2)職場に対する転移(実践)
ADDIEモデルは、1)には有効だが、2)に対する解決策ではない。
・Behaviour change 行動変化 が、成果向上のためにも重要。
・これまで「学習転移」は事業部側の責任と見られてきた。
・これからは、人材開発部門がその責務を負うべき。
○今後は確かにそうかも。
・マネジャーは、もういっぱいいっぱいである。
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Ch.2 Learning’s missing link
– why it has been missing for so long
・なぜ「転移」がミッシングリンクだったのか、5つの理由が考えられる:
1)オーナーシップが無い
2)間違った目標
3)内容に対する脅迫観念
4)評価に対する脅迫観念
5)変化ではなく、学習に焦点
・研修の真の意味での「Finish line 最終ゴール」は、参加者の行動変化
である。
ADDIEでは、各段階で違ったゴールを設定している。
・成人教育理論では、変化を実践するよう人々をリマインドすることは
できないと考えている
○こういう理論や研究結果って、成人教育論であったかな? 確認したい。
「リマインド(思い出させる)」は、転移にはつながらないということ?
「L3評価の頻度が、転移に効果的」という研究結果もある。
これはリマインド効果と言える。 もう少し調べてみよう。
・Reflection内省は、行動変化にとって非常に重要。
それは研修内でもそうだが、研修後定期的に内省する機会が重要。
・L3の行動評価がしばしば行われていない。
このL3が効果的な研修のカギを握ると、筆者は考えている。
・Jack and Patti Phillipsは、ROIまで評価するのは、全ての研修のうち
5~10%であるという。
・「Happy sheets(L1,L2だけの研修直後アンケート」が簡単すぎて、
ROIが複雑すぎるなら、その間をとってケーススタディーや成功談が
選択肢となろう。
ケーススタディーによる評価は、R.Brinkerhoffによって提唱された。
もし参加者が彼らの成功体験をケーススタディーとして書き出し、
そこに研修で学んだことをどういかしたかを書けるならば、それによって
参加者が学んだことを使ったと言えるのではないかと考えるのである。
ただこれも、ハッピーシートやテストと同じぐらいの効果しかないと、
筆者は考える。
・真に重要な研修評価とは、そこに効果的な行動変化があったのか、
学習が職場で適用されたのか、という点だけである。
・我々は、学習イベント(研修)の後で、観察可能な行動変化が職場で
あったのかという点に、研修評価の焦点をあてるべきである。
・D.カークパトリックの息子 J.Kirkpatrick(2011)は、L3の行動評価こそ
が、学習と成果をつなぐミッシングリンクであるとした。
筆者も同意する。
・変化は、イベントではなく、プロセスである。
一定期間の間に起るものである。
○言われてみればそうだよな。
よく「A-ha(気づき)Moment」って言うけど、それはあくまできっかけ
(変化の最初)であって、その後、その状態が「Maintenance維持」される
こと(=転移)が必要。
一瞬「アハ」と思って、少し変わったとしても、その後の持続がなければ、
変化したとは言えない。
・E.DeciとR.Ryan(1980s)は、Self-Determination Theory(SDT)を提唱。
人の3つのニーズによって活発化される内的動機づけについて説明:
1)自律性 2)コンピテンス 3)関係性
・自分でコントロールできず、他者との関係性が断たれる(職場から離れて
行われる)研修が、いかに人を動機づけないかがわかるだろう。
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Ch.3 Learning’s missing link: the solutions so far
・ミッシングリンクは、学習転移である。
・転移無しの学習は、不完全である。
・一般的に学習転移を促す方法としてよく上がるのが、下記9つである:
1)マネジャーが、研修のフォローアップをしている
2)フォローアップとして、参加者同士の意見交換の場を設けている
3)半日のフォローアップセッションを設けている
4)エグゼクティブ向けコーチングを実施している
5)アクションラーニングを行っている
6)Eラーニングと組み合わせている
7)SNSを使っている
8)参加者が職場に研修内容を報告している
9)研修前に参加者に予習をさせている
・1)研修が転移しないのは、現場マネジャーの責任ではない。
いい加減、現場マネジャーを責めるのはやめよう。
・2)やらないよりましだが、大きな違いは生まない
・5)ALは学習転移よりも、問題解決に焦点をあてている。
・Broad & Newstrom(1992)は、次の3つが研修転移に重要だとした:
1)研修前のマネジャー 2)研修中の講師 3)研修後のマネジャー
しかし、これらは実証研究の結果ではない。
・M.ノールズが、成人教育論で述べたように、参加者自身が学習の計画と
評価に関与することが重要である。
・大人にとっては、自分の学習をコントロールできることは重要な要素
なのである。
・実際に研修を受け、そのあと何かをするのは、何物でもない参加者自身
なのである。
・そう考えると、参加者自身の他者が重要とする、上記説は間違っている
といわざるを得ない。
・M.Leimbach(2010)は、学習転移を促す11の活動を提唱した。
・本書で紹介するTLAは、その11の活動すべてを網羅している。
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Part Two The Learning Transfer Solution
Ch.4 Turning Learning into Action(R)
・TLAは、研修後に行われる One-on-one conversations一対一の会話である。
・TLAは、Reflection内省を、学習転移プロセスの核においた手法である。
・成果をもたらす内省は、Specific具体的、Structured構造化され、
Accountable説明できるものである。
・学習転移については、各種学習理論では説明しきれていない。
・最も効果的な変化手法は、一対一でのコーチングである。
・TLAは、単なるコーチングではなく、Structure & Flexibility構造と柔軟性
のバランスをもつEnhanced発揚されたコーチングである。
・TLAの3つの要素:
1)Preparation 2)ACTION 3)Evaluation
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Ch.5 Preparation – setting expectation
・参加者が意味ある「Action plan行動計画」を作れるだけの時間を、
研修内で取れていないことが問題。
・参加者とTLAコーチは「TLA学習契約」を結ぶ。
・研修後2週間以内に、第一回目の電話コーチングを行う。
第2回目は、その3~4週間後。第3回目は、その3~4週間後。1回30分×3回。
・TLAは参加者にとって「やられるもの」ではなく、参加者自身が
「コントロールできるもの」
○「研修後のフォローを電話コーチングで」っていう発想はなかったなー。
面白い。
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Ch.6 Preparation – creating the TLA plan
・研修最後の45分~60分間を使って「TLA計画」を立てる。
・できれば、研修講師ではなく、
TLAコーチがこのセッションを担当した方がよい。
次のステージの始まりを、参加者に予感させるから。
・TLA planには、次の5つが含まれる:
1)Target 目標 3つ
2)Success 成果
3)Calibration 評価 現状の点数
4)Why 意味 なぜその目標なのか
5)Next steps 行動 2日以内にとる次のステップ
・TLAプランは変えることも可能。
・TLAコーチは、研修後のTLAプランをコピーし、手元に持っておく。
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Ch.7 Action – the ACTION Conversation model and how to use it
・構造と柔軟性のバランス
・TLAは、構造化された内省。
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Ch.8 Action – the ‘must have’ skills for successful TLA delivery
・TLAコーチが持っておくべき3つのスキル:
1)Asking power questions 力ある質問をする
2)Being listening 聞いている状態になる
3)Using intuition effectively 直観を効果的に使う
・「Queggestion 質問の形をとった提案」はしない。
・集中して、対象者と会話できる、話を聞ける環境に自らを置く。
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Ch.9 Action – helping others to ‘get in the gap’
・相手から出てくる「研修後の実践ができない理由」を、
OARBEDで仕分けする作業を一緒に行う
Ownership
Accountability
Responsibility
Blame
Excuses
Denial
・下3つが出たとしてもOK。それを認めることが大事。
・「より良い結果を得るために、少し違うやり方をするとしたら?」
・「コンサルタントになってみる」ことで、視野を広げる。
筆者自身のデモ音声
http://transferoflearning.com/resources/
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Ch.10 Action – managing the TLA conversations
・現状と目標のギャップに気付く手助けをすることが、TLAコーチの役目
・TLAコーチとの3回の会話の間の実践中の変化が重要。
・1回の会話では、一つの行動のみを取り上げる。
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Ch.11 Evaluation – how to measure and report success
・Jack and Patti Phillipsの調査(2009)では、CEOが重視する研修評価項目
は「Impact」結果であり、現在行われている「受講者数」「研修費用」
「従業員の感想」といった評価は全く重視されていなかった。
・真の研修の成功は、適用または行動変化である。
・Impact dashboard 一枚もので、研修効果を示す。
1)研修プログラム結果(受講者数、NPS、期待合致度等)
2)個人の目標(研修後のTLA計画における)
3)質問結果(TLAコーチングの有無による目標達成度の自己評価)
4)事業数字(例:営業)
5)変化(研修、TLAにより、自身の行動にどんな変化が)
6)変化による便益(変化によって得られたもの)
・Net Promoter Score(NPS)=Promoters%(9~10)-Detractors%(0~6)
・Word cloudsによって、高頻度の発言、言葉を抽出。
http://www.wordle.net/
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Part Three Making Learning Transfer Happen
and The Benefits by Stakeholder
Ch.12 How to roll out TLA successfully
・マネジャーは、自然と効率性に向かう。
そのため、TLAコーチングを彼らが行うと、30分もかけずに、
10分ぐらいで終わらせてしまう。
・講師が、TLAコーチになると、質問より説明中心になりやすい。
また受講者も解決策を講師に質問するようになる。
・学習転移は単なる学習ではなく、行動変化である。
・30分×3回のセッションは、変化のプロセスとして必要。
・研修の目的が、現在進行形の習慣的行動の変化や向上であった場合、
TLAが役立つ。(例:ソフトスキル)
・TLAコーチングにおいては、声だけの電話が最も効果的。
TLAでは、対象者自身が自分に向き合う内省を行う。
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Ch.13 The benefits of TLA by stakeholder
・学習転移は、研修と一緒に購入されるべき。
・現場のマネジャーが、学習転移問題の解決策と考えるのは非現実的。
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Conclusion
・効果的でない研修に対する解決策として、TLAを紹介してきた。
・研修は、学習理論だけでなく、変化理論に基づくべきである。
・研修後に職場での参加者の変化を促すのは、一対一のフォローアップ会話
のみである。
・筆者は、イギリスからオーストラリアに渡った。なぜならシドニー大学が、
コーチングの学位を提供した最初の大学だったからである。
・TLAは、研修後の転移というニッチに絞ったものであるが、
Enhanced coachingは、全てに使える。
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○「研修転移促進策としての研修後の電話コーチング」
これは意外と面白いかも。実現に向けて、もう少し練ってみよう。
あと、この筆者とは一度会いたいな。
機会を見つけてオーストラリアに行ってみよう。
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