2016年11月2日(水)13時~14時45分
東大授業「経営組織論」(4)採用 に参加。
●事前課題本
(・書籍の要約 ○関根の独り言 -授業での意見)
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④『採用学』服部泰宏(2016)
・本書では、科学によって導かれた良質な(1)ロジックと
(2)エビデンスを紹介し、それをもとに(3)自社の採用を見直し、
再構築するための考え方を届けることを目指す。
・各企業にとっての最適な「解」はその企業が自分自身で導き出すしかない
・企業はなぜ人材を採用するのか?
1)不足人材の獲得 2)組織の活性化
・採用とは、
①企業の目標および経営戦略実現のため
②組織や職場を活性化させるために、
外部から新しい労働力を調達する活動
・日本企業の採用担当者は、意識の上では、採用活動終了後(入社後)
に顕在化する成果にまで配慮した上で業務を行っているが、実際に
それらが担当者の責任として問われているわけではない。
・個人が組織に参入し、うまくやっていくために必要なマッチング
1)期待のマッチング
2)能力のマッチング
3)フィーリングのマッチング
・統計学のメリットは「時間と労力の削減」
部分(サンプル)から全体(母集団)を推測する
採用で使われる「母集団」は、正確には「候補者群」である。
・エントリーシートの提出を義務付けるというやり方が登場したのは
1991年、ソニーがさきがけ。
・1996年に、募集のウェブ化としてリクナビの前身が登場。
・「大規模候補者群仮説」エントリー数が多くなるほど、その中に
優秀な人材が含まれる割合が多くなるはず。
・募集段階で膨大なコストをかけて集めた候補者群を、膨大なコストを
かけて削減している。
・日本の採用の問題の構造
・就職情報サイトによる2つの問題
1)企業の内部から、採用力の一部が失われた
2)見えざる情報のギャップが混入した
・ワナウスが提唱したのが「現実路線の採用 realistic recruitment」
すべての適切な情報をゆがめることなく求職者に対して伝える。
・RJP現実的な職務予告による効果:
①ワクチン効果 ②自己選抜効果・マッチング効果 ③コミットメント効果
・現実路線の採用が効かない場合
1)買い手市場(求職者にとって選択肢が少ない)
2)競争率が低い(採用側にとって選択肢が少ない)
3)仕事内容が明確(情報ギャップが存在しない)
・採用において最初に選抜を行うのは、求職者側。
・募集情報はすべて精査されない。求職者側が理解をサボる可能性。
・主観的フィットネスに対して、ポジティブな影響を与えるのは、
企業側による十分な情報提供と、チャネルの豊富さ、信頼性。
・内定を得た時点での学生の悩みはシンプル
「どの会社が自分にとって良い会社なのかがわからない。自信がもてない」
・「口づて word of mouth」のような非公式なルートから得た情報に
基づいて採用した人材は、企業に長期間とどまる可能性が高い。
・採用と育成は、優秀な人材のプールを確保するという目的を共有
そのために①人材を外部から採用 ②人材を内部で育成
・自社の採用基準は、自社で紡ぎだしていくしかない。
・ブラッドフォード(2005)によれば、能力には、
1)簡単に変化するもの
2)可変的だが変わりにくいもの
3)非常に変わりにくいもの がある。
採用では「変わりにくいもの」「変わりやすいが自社で育成機会の
ないもの」こそ注目すべき能力。
・構造化面接のほうが、非構造化面接より、将来の業績をより正確に予測
・ワークサンプル(実際の仕事を求職者にやらせる)は、将来の業績を
予測するもっとも精度の高い手法。
・45社の採用イノベーション事例
これらの企業では、採用担当と育成担当が兼任になっていることが多い。
・採用力=採用リソースの豊富さ×採用デザイン力
・現場は、ノウハウとそれを裏付けるエビデンスを求めている。
・問いの拡大により、データの活用範囲が広がる。
・面接評価と業績との間には、まったく関係性が見られなかった。
・細分化は知識の生産効率などでは良い面もある。
(他の領域を気にせず、自らの狭い領域の中で文献をレビューし、
その領域の研究者に認められれば良いわけなので)
○まさにそう!でも、これを研究者が言うのは勇気いるな。
・ビジネスパーソンにとって「どこにどんな知識があるのかさっぱり
わからない」状態なのではないだろうか。
○そう!俺も「新人の育成」について分からなかった。
色々教えてもらう中で「経営学 組織社会化」という領域があるのを知った
参考:The Oxford Handbook of Recruitment 研究会(2013)
(服部先生も参加)
https://www.learn-well.com/blog/2013/12/the_oxford_handbook_of_recruit.html
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④’『日本企業の心理的契約:組織と従業員の見えざる約束』
服部泰宏(2011・2013)
・心理的契約 Psychological contracts
・心理的契約とは、従業員による知覚現象。
・評価志向研究において、一貫して報告されていることは、組織側に
よる契約の不履行がかなり頻繁に発生しているということ。
・社会的交換理論と心理的契約の重要な違いは、交換に先立って
当事者間で相互期待に関する合意があるかどうかである。
・日本企業における心理的契約項目を、質的アプローチで探索した。
その結果、32種類の具体的な契約内容が見出された。
うち21が「組織への期待」11が「従業員への期待」であった。
カテゴライズした結果「賃金」「雇用」「仕事内容」「職場環境」
「昇進、キャリア」「教育・訓練」「報酬外」「時間・福利」「評価」
「誠実な対応」という10のカテゴリーが見出された。
・日本企業においても、契約の不履行が頻繁に起こっていた。
○個人よりも、組織のほうが強いってことかな。
・MBA調査:
組織への期待「魅力的仕事の提供」「支援的関係」「WLB提供」
「業績基準の評価」
従業員への期待「人間関係維持」「報酬外業務」「権限受容」
「誠実な態度」
・Z社調査:
組織への期待「関係的契約」「取引的契約」
従業員への期待「誠実な態度」「報酬外業務」「関係維持」
・先行研究同様、調査対象によって抽出される因子が違う。
知覚する契約内容に相違が観られるのは、組織の種類の相違による。
・所属する業界が同じになると、心理的契約はある程度収斂する。
・組織側による契約不履行が発生していること。そのことが、
従業員の態度に対してマイナスの影響を与えていた。
・従業員による「期待の自己調整」こそが、頻繁な契約不履行にも
関わらず、契約関係が維持され続ける理由を説明するもの。
○個人の側が、組織からの仕打ちに対して「仕方ない、そんなもの」
と諦めるから、居続けられるのかも。
・組織内キャリア転機の減少が、心理的契約の弱体化を招く。
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●「就職活動」に関する小説
『何者』 (朝井2015)
○映画「シン・ゴジラ」を見にいった時に、予告編で出ていた映画の原作本。
今の就職活動の様子がわかるかなと思って読んだ。
・就活がつらいものだと言われる理由は2つ:
1)試験に落ち続けること
2)自分をたいしたもののように話し続けなくてはならないこと
・就職サイトがオープンする12月1日が近づいてくると、
自分は就職活動に興味がないちょっと変わった人間です、と
というアピールをしてくる人が出てくる。
・就職活動において怖いのは、確固たるものさしがないこと。
ミスが見えないから、その理由がわからない。
・痛くてカッコ悪い姿であがき続けるっていうことを、
私達に残された最後の方法を、実行し続けている。
○きついよな~。
就活を、「通過儀礼」と捉える向きもあるけど、
これだけ若者を消耗させる仕組みって、どうなんだろう?
若者の角をとって丸くし、早く組織社会化(迅速な社会化)するために、
彼らの自信を打ち砕く「Debasement experiences 価値低下経験」としては
良いのかもしれないけど、本当にそれでいいのかいな。
少なくとも、俺は1995年当時、就活してないし
2020年代に、うちの子供達がしたくなければ、しなくていいと思ってる。
(この本にあるように、
1)就活しようとも 2)しまいとも、周りからは色々言われそうだけど)
別に就活しなくても、有名企業に勤めなくても、
色々な道、選択肢があることを、身近な若い子達には伝えていきたい。
それを選ぶかは本人次第だし、おせっかいおじさんになるとしても。
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●11月2日(水)授業の様子
東大の銀杏、少し色づき始めてました。
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-人材マネジメントの機能
1)採用 recruiting ←2010年代から日本での研究が盛んに
2)育成・社会化 socialization ←1990年~2000年代
3)配置 job rotation ←労働経済学、キャリア論で古くから
海外では、1970年代から研究が続いている
-日本型採用
メンバーシップ判断「おらの村でやっていけるのか」
人事部、若い、きらきら系が採用担当
仕事ができるか?ではなく、
能力(Trainability 訓練可能性 Learnability 学習可能性)
があるかどうかで見る。
その代替指標が、学歴だった。
「厳しい入試を潜り抜けてきた」忍耐力もある。
ところが、AO入試、推薦が増えたおかげで、その指標が
働かなくなってきた。少子化もあり、大学が広き門に。
-ウェブエントリーで、数万人の応募者があるなら、
「選抜コスト」が高くなる
-新卒一括採用
メリット:
採用育成コストの低減(手間が1回で済む)
大量採用による失業率の低下
(真の能力、実力主義採用なら、若年失業率が上がる)
デメリット:
配属リスク、再チャンスなし、非即戦力の育成コスト、同質化
-最近では、インターン採用、アルバイト採用
≒ ワークサンプル
文系でも、研究室指定採用が出てきている。
-海外では、事業部のマネジャーが、欠員を、能力・経験重視で採用
能力を身に着けるコストは、本人が負担。採る企業ではなく。
-Well defined job 良定義職なら、ビッグデータ、AI、
MOOCS採用ができるかも。
その分、グローバルな競争に巻き込まれる。
-採用面接での評価と、その後の業績に相関関係は無し。
若林先生の破壊的な研究。入社後の業績、出世等は、
最初の上司に影響される。
上司が出世すれば、その部下だった人も出世する。
上司のスポンサー(上方影響)効果、メンタリング効果。
-「うまい人事」の人は、
人事の諸機能(制度、労務、採用、育成、配置)を知っている。
最初から「人材育成」一本ではない。
-この授業を受けて、「人事・人材開発」に興味をもった。
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今週もありがとうございました。
来週は、私が「経営学習論(中原2012)」のレジュメを担当します。
かなり気合が入ってます(笑)。
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