2020年5月11日(月)9時30分~11時30分、Zoomで「サーベイフィードバックの古典を読む」勉強会(4)を行いました。(後半2回の内の2回目)
中原研OB(同)あまね舎の斉藤さんとの共同企画です。(斉藤さん、いつもありがとうございます!)
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・文献の要約(発表者のレジュメから)
– 参加者の意見
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R.Blake and J. Mouton (1966) Some Effects of Managerial Grid Seminar Training on Union and Management Attitudes Toward Supervision.
関根担当
レジュメを見る
-最初に、トップとコミュニケーションを取っておく。あり得るシナリオを考えておく。
-人もトップも変わっていく。長続きさせるための仕組みは。
-その後の継続をどうするか。誰が役割を担っているか。
-リーダーシップを発揮するという名目で、前の担当者の仕事を否定し、新しいことを始めてしまう人もいる。
-組織風土の影響で、サーベイ時期にもよるのでは。
-目立ちすぎると批判され、つぶされる。弱者のゲリラ戦略。
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Clayton P. Alderfer(1977)Improving Organizational Communication Through Long-Term Intergroup Intervention
Sさん
・オープンシステム理論を基に、コミュニケーショングループを作り、8か月間の介入を行った。
・境界の透過性の低さ、高さ。最適な境界透過性があるだろう。
・境界透過性を最適にするために。
-組織の中の少人数グループで、壁ができた。権力が集中し、不満がたまっていく。言いづらくなってくる。役割分担で仕事を与えてもよかったかも。
-ウォーターフォール型だと、境界透過性のコントロールが難しい。
-クロスファンクショナルも一つの方法では。
-人は、自然に境界を作りたがる。自分の存在が不安になる。
-まずは、自分の境界を意識する。
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D.Hopkins(1982)Survey Feedback as an Organisation Development Intervention in Educational Settings: a Review
Kさん
・OD、特にサーベイフィードバックの有効性を示唆。
・ODは、産業組織で用いられてきた。
・教育機関は、組織内の調整と、境界管理の問題があるため、OD介入の対象となる。
・フォロースルー(問題解決→集団的意思決定)が、特に大事。
-学生に対して、サーベイフィードバックをしている。
-アンケートに答えてくれない。モチベーションが下がっている。
-ガチ対話に合う学問領域と、そうでないところがある。大学に、サーベイフィードバックは難しい。事実は一つというパラダイムを持っている教員たち。
-某大では、ODでは無く、IRとして提示。
-質問紙ではなく、インタビューで探っていってもいいかも。
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Ellen Fagenson-Eland, Ellen A. Ensher, W. Warner Burke(2004) ORGANIZATION DEVELOPMENT AND CHANGE INTERVENTIONS A SEVEN-NATION COMPARISON
Iさん
・国によるODの介入方法には違いがあった。
・ただし、文化的特徴から予測した結果にならない場合もあった。
・Hostede(1980)の4つの要素を利用。
・2つの介入:technostructual, Human prosessual
・日本は、男性性、不確実性の回避が高い
-アメリカ流の直接的な交渉術は日本では難しいのでは。
-下手に出て、後ろから刺す。
-「謝罪型リーダーシップ」「拝み倒しリーダーシップ」
-文化の話は、長期的で幅が広い。個人が、どう見たてているかに通じる。
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Boss et al.(2010)Sustainable Change in the Public Sector:The Longitudinal Benefits of Organization Development
Hさん
・1970年代の4年間のOD介入と、その後30年間のデータを基に検証。
・介入群は、上がった後、そのまま継続。比較群は上がらなかった。
・組織トップに組織変革への理解があり、後任者にもそれがhき継がれた。コンサルタントとの信頼関係もあった。
-30年間、信頼するに足るものさしとは。
-ODで良く使われる指標は? ギャラップ社のES指標。
-公共部門であったのが大きい。営利組織は、外の変化に対応せざるを得ない。
-中と外を見る。
-「ODはぬるい」という人もいる。外の売上作りに走り回っていたら、中を見る余裕を持てない。
-保安官のミッションが変わらない。医療も変わらない。
-4年間で成果が出たから、続いたのでは。
-調査を続けていること自体で、変化も持続したのでは。
-30年というタイムスパンのすさまじさ。とるべき数字をとっていた。
参考:中原先生のブログ
権力者のなかには「いじり屋さん」もいる!? : 組織のなかに「変えた感」を出すために、やたらめったら、細かいことをいじくりまわす人たち
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11686
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Taylor & Bright(2011)Open-Mindedness and Defensiveness in Multisource Feedback Processes: A Conceptual Framework
Mさん
・受け手が、開放的か、防衛的かが、多面評価のフィードバックに影響する。
・評価を受ける側の気持ちの問題。
・受け手が、オープンマインドのほうが、自己防衛的になっている多面フィードバックより、効果が上がる。
・「他の人が、自分をどう見ているか、どう予測するか」(Prediction-Other-Comparison)
-受け手を「オープンマインド」にするには?
-Carol Dweck のfixed/ growth mindset のTEDが参考になるのでは。
https://digitalcast.jp/v/21991/
-リモートだと、多面観察がやりづらくなる
-部下が、他の人にどう対応しているのか見えない
-部下の困っていることが見えない、相手が聞いてくるか、相談してこないと。
-「~について、聞いてます?」という耳打ちが無い。何が起こっているか見えない。
-抱え込む系の人が危ない。他の人が助けにくい。
-近くにいると、バタついているのが見える。
-リモートの環境で新たに現場に入ってくる新卒をどう育成するか
-新しい仕事を始めるのか難しい。どんな人か分からない中、仕事をする。
-新人は「成果が出せないなら、態度で示して」が、やりづらくなる。
-リモートワーク環境で、360度評価をどう行うか。
-自己防衛的な受け手への対応は、ODでは特に必要。
-Area of growth 成長領域=あなたの問題
-プロセスが見えないから、360度評価がしにくい。この時代に合ったOD、サーベイFBのやり方があるのでは。
-プロセスが見えないからこそ「成果を嫌味にならないようアピールする」ことも必要では。
参考:中原先生のブログ記事
「弱み」をゴリゴリ指摘されるよりも「Area of Growth」を伸ばしていきたい!? :フィードバックのときの重要ポイント!?
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●4回の勉強会が終わって
-一人では読めない、読まない量だったので、助かった。
-自社で起こっていることを、違う側面で見える。プロセスが見えないのは、人事の課題になる。
-リモート時代の評価:1)何をやったらいくらのJob型 2)自己アピールのやり方を個人が変えて、会社と交渉していく必要性もでてくるのでは。
-この研究会のお陰で、コロナがあったからこそと思える機会になった。
-オンラインでの研究会の進め方も参考になった。
-頑張って参加して良かった。
-うまく伝える技術が必要。オブザーブが難しくなってくる。「言葉の力」が、より求められるのでは。
-このグループとつながれて、前向きになれた。アントレプレナー的に、情報を得ている人たちもいる。オンラインでも繋がれる場があることを実感できた。
-色んなバックグラウンドの人と話せて面白かった。新しい学びに対する恐れを、どう軽減するか。どうサポートするか。
-「理論モデル」を使っていきたい。リモートでも変わらないことはあるのでは。
-深い学びは、対面でないとできないと思っていたが、十分、オンラインで出来た。
-変化があるときこそ、ビジネスチャンス。小さいからこそ動き回れるフットワークで、今回の危機を好機にしたい。今後のビジネスの可能性をたくさん考えられる機会となった。
-今までの研究会は、大学に集まってやってた。オンラインでも効果的に変わらない。境界の透過性を、上手く適切に保てると良いのでは。
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皆さん、ありがとうございました! 次は、また別のオンライン勉強会をしましょう!
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●講師ビジョンの島村さんから頂戴したメール(いつもありがとうございます!)
関根さん、おはようございます。ブログ拝見しました。
サーベイフィードバックについて自分なりの体験からお話しします。
組織に対する何某かの診断結果について上役から提示され、組織のみんなで議論していく対話は経験があります。
私が感じたことは、ただ一つで、本当に部下一人一人が、組織の課題を自分ごとで考えられているのかということです。
意見はするけど、自分がその課題をリードしていく気はないという場合が多いと感じます。組織の課題は、部下の問題でなく、上司陣のやるべき仕事だという考えになってしまうことが多いからです。
サーベイフィードバックをもとしたガチ対話を活かすためにも、上司が常日頃から組織や会社という視点で、部下一人一人に興味を持たせて考えさせるようなことをしていくような足元の取り組みが必要だと考えています。
その意味では、リモート環境下でも、オンライン1on1などを行い、一人ひとりを見て考えさせる努力が必要だと思います。
リモートで成果型になるからマネジメントを軽視していいという話しではないと思いますので、ますます個を把握する努力が、マネジメントサイドに求められますし、個の状況を自ら発信する部下側のセルフリーダーシップが大切になると思います。
いつも参考になるブログありがとうございます!
講師ビジョン
島村
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