○Scaffoldingスキャフォルディング(スキャホ)関連論文1
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Re-conceptualizing” scaffolding” and the zone of proximal development in the context of symmetrical collaborative learning
Fernandez,M. et al.,(2001)
・関連した概念であるScaffoldingと、ZPDは、元々、Assymetrical非対称の学習者と教授者の関係で扱われてきた。
・学習者一人では達成できない課題を、教員や大人が支援する。
・本稿では、Symmetrical釣り合いのとれた子供達同士の学習を取り上げ、概念の見直しを提唱したい。
・Bruner(1978)は、Scaffoldingを、認知的支援として説明した。
・Scaffoldingは、ヴィゴツキーの概念であるZPDとも深く関係している。ヴィゴツキーのZPDの定義(1978)からも、学習者と支援者の間には、知的非対称性が示唆されている。
・Wood, Bruner, & Ross(1976)は、専門的なTutor(例:両親)が、子供が比較的難しい課題を達成することを支援する方法の比喩として、最初に提示した。
・ScaffoldingによるTutorの6つの機能があることを主張した。
・Mercer(2000)は、IDZ Intermental Development Zoneという概念を提案した。この概念は、対人コミュニケーションが、学習をいかに支援するかを説明する際に参考になる。
・3種類のTalk話し方:Cumulative、Disputational,Exploratory探索的
・探索的話し方を、子供達に教えたら(=Scaffolding)子供達同士の学習が促され、問題解決につながった。
・言語の使い方を共有することで、Scaffoldingの機能が果たされる。
・Ground rules for talk 話し方のルールを共有することで、お互いを支援しあうことになった。
・ZPDが、グループプロセスにおいても有効に適用された。
・これは、釣り合いのとれた学習者同士によるIDZの適用であったともいえる。
https://www.researchgate.net/profile/Rupert_Wegerif/publication/42788816_Re-conceptualizing_’Scaffolding’_and_the_Zone_of_Proximal_Development_in_the_Context_of_Symmetrical_Collaborative_Learning/links/0046351b0c9ab254a3000000.pdf
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Scaffolding morality: Positioning a socio-cultural construct
Turner,V.D. & Berkowiz,M.W.(2005)
・ヴィゴツキー自身は、Scaffolding足場架けという比喩は使っていない。
・Kaye(1970)が、問題解決において、子供はスキルのある他者に助けられていることを主張。
・Wood, Bruner, & Ross(1976)が、最初に「Scaffolding」という概念を提示した。
・現在、Scaffoldingと、ヴィゴツキーは、同一視されている。
・なぜそうなったのかは明確ではないが、Stone(1988)は、Cazden(1979)が、出版されていない技術レポートの中で、ScaffoldingとヴィゴツキーのZPDを結びつけたと言う。
・今では(2005年当時)Scaffoldingは、学習を手助けするすべてを意味する概念となっている。
・「Self-scaffolding」(Bickhard 1992)という概念まで登場してきた。
・Palincsar(1998)は「ZPDとScaffoldingは、最も使われいるが、全く理解されていない構成物」だと述べている。
・Pinsent(2003)は、生徒は、教師よりも、他の生徒を、Scaffold足場として使いたがることを発見した。
・Character education 性格教育?で、最も使われるClass meetingは、Scaffoldingの基準を満たす。それは、社会的活動であり、言語に頼り、外部支援が必要である。
・Characterとは、Good善を知り、望み、行えることである。
・Karpov(2005)は、西側の研究者達は、ヴィゴツキーの概念を、本来の大きな枠組みから外してしまったと批判している。
・Palincsar(1998)は、Scaffoldingは、とても使いがっての良いメタファーであるが、軽く扱うべきものではないと警告している。
https://www.researchgate.net/profile/Marvin_Berkowitz/publication/238289572_Scaffolding_morality_Positioning_a_socio-cultural_construct/links/5bfdaedca6fdcc35428c984c/Scaffolding-morality-Positioning-a-socio-cultural-construct.pdf
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Vygotsky’s Zone of Proximal Development: Instructional Implications and Teachers’ Professional Development.
Shabani,K.,Khatib,M.,& Ebadi, S.(2010)
・ヴィゴツキー(1978)のZPDは、教師教育にも適用できる。
・日記執筆、同僚とメンター支援、アクションリサーチ、TESOL等が、Scaffoldingとして、教師教育に活用できることを提示したい。
・その反面、Scaffoldingは、ZPDのメタファーとしては限界があることも述べたい。
・ヴィゴツキーは、ZPDの概念を、1920年代後半から、彼が亡くなる1934年まで、主張した。
・ZPDの図
・ZPDは、学習者に模倣の機会を提供する。
・ZPDが「大きい」「小さい」学習者がいる。それは固定されてはいない。
ZPDのサイズは、IQよりも、学習者の発達を予測すると、ヴィゴツキーは、主張した。
・Bronnfenbrenner(1977)は、ヴィゴツキーの同僚、A.N.Leont’evとの会話の中で「アメリカの研究者は、学習者がどのように現状に至ったのかを追求する。USSR(ロシア)の研究者は、学習者がこれからなる姿にどうやって到達するのかを探求している。」という発言があったことを引用している。
・社会文化理論とZPDの概念が、Scaffoldingの基本を形成したと言われている。
・しかし、Scaffoldingは、ZPDの豊潤さの一部しか反映していない(Daniels, 2001)。
・ZPDでは、学習者と教授者の間の協働により、知識とスキルを構築することを重視している。
・Scaffoldingでは、教授者が、Scaffold(足場)を一人でかけている場合が多い。
・Stone(1998)は「足場架け」というメタファーに限界はあるが、使用をやめる必要はないと述べている。
・ヴィゴツキーは、学習者が、今は助けを受けたり、協働で行ったりしていることは、いずれは、独力で出来るようになると考えた。
・Scaffoldingを、教授者が一方的に足場架けを行うものと考えると、それはZPDの考えや、ピアジェの活動的で自主的な探索者である学習者という視点を失ってしまう。
・探索的会話やその他の社会的支援を使い、学習者が自身の学習をコントロールできるよう支援すべきである。
https://files.eric.ed.gov/fulltext/EJ1081990.pdf
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Implications of Vygotsky’s zone of proximal development (ZPD) in teacher education: ZPTD and self-scaffolding
Fani,T. and Ghaemi,F.(2011)
・ヴィゴツキーの理論を理解するには、彼がおかれた時代の政治的環境を見る必要がある。
・ヴィゴツキーは、ロシア革命直後、マルクス主義勃興の時、心理学の研究を始めた。
・マルキシストの哲学では、社会主義、集団主義を重視し、大きな社会のために、個人は犠牲になるべきだという考えがあった。
・また、マルキシストは、歴史に重きを置いた。文化は歴史的に形成されたと考える。
・ヴィゴツキーは、彼の人間発達の考え方を、Sociocultural社会文化的アプローチと呼んだ。個人の発達は、文化の結果であるとし、他社との社会的相互作用を通じて、個人は発達すると考えた。
・ヴィゴツキー(1962)は、ロシアの学校で行われていたIQテストは、学習者の将来の発達可能性よりも、現状を反映するだけと批判するために、ZPDの概念を提唱した。
・ヴィゴツキーのZPDの定義(1978)の中でも「under Adult guidance大人の導き」だけでなく「in collaboration with more capable peers 力ある仲間との協働」が提示されている。
・ZPDにおけるassistance支援は、Scaffolding(Wood et al.,1976)と呼ばれる。
・最近では、ZPDは、教師教育にも使われている。
・Warford(2011)は、Zone of Proximal Teacher Development(ZPTD)を提唱した。
・このアプローチでは、教師教育を、Situated learning状況学習として捉えている。伝統的な、IRE(Teacher initiatec, student responds, teacher evaluates)ではなく、全体的、真正的なアプローチで、教育と学習を見ている。
・ZPTDに影響する要因として、同僚、メンター、環境制限、人工物と技術がある。
・教員が自らのZPTDを向上させるために、日記執筆、Self-scaffolding、アクションリサーチ等をすべきである。
・Ohta(2005)は、ZPDを、対人のみで見るのではなく、テキスト、ワークシート、辞書なども、Scaffoldingになり得ると考えた。
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●講師ビジョンの島村さんから頂戴したメール
関根さん
遅くなりましたが、ブログ拝見しました。スキャホについて大変参考になりました。
(以下参考になった部分)
・ヴィゴツキーは、学習者が、今は助けを受けたり、協働で行ったりしていることは、いずれは、独力で出来るようになると考えた。
・Scaffoldingを、教授者が一方的に足場架けを行うものと考えると、それはZPDの考えや、ピアジェの活動的で自主的な探索者である学習者という視点を失ってしまう。
・探索的会話やその他の社会的支援を使い、学習者が自身の学習をコントロールできるよう支援すべきである。
(感想)
スキャホルディングは、リモートにおいてより意識的に行う重要な要素だと改めて感じました。この足場かけ次第によって、パフォーマンスが上がったり下がったりすることがあると考えるとより丁寧な足場かけをしてしまうと思います。
ただ、上記にあるように、そのアプローチだと自身が主体的に学ぶという視点が失われてしまう可能性があるので、注意が必要だと思いました。相手が様子が見えない中で、どのように足場かけをしていくか、このさじ加減をどうしていくかはこれからより深く考えていきたいと思います。
いつもためになるブログをありがとうございます!
(こちらこそいつもありがとうございます!)
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