「ソーシャルイノベーション」「地域活性」関連本。
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『ソーシャルイノベーションを理論化する』高橋・木村・石黒(2018)
○研修者の凄みや、研究の力強さを感じさせる論文集。
・社会的排除:社会問題を当事者の持つ能力に還元するのではなく、既存の諸制度へのアクセスから排除されているが故に生じる問題として捉える。
・社会的排除に起因する社会問題は、社会企業家による制度変革、すなわち、ソーシャルイノベーションを必要とするのである。
・企業が障がい者に付加価値を見出すCSR市場が形成されていた。
・関係論的転回では、企業家精神を個人に内在する動機ではなく、「創造的破壊」が正統化された近代社会において成立するエージェンシーとして位置付ける。
・農業経営者の取り組みを阻害する関係構造(農協)が、農業には存在する。
・余剰資源を有している農業経営者は、既存の関係構造の下で、十分な利潤を得ているため、6次産業化にそもそも動機づけられない。
・農業経営者を苦しめる構造的不利は、農業経営を支援する一連の施策の副産物である。
・ソーシャルイノベーション論における2つの潮流:
1)新自由主義学派(米国型)
2)社会政策学派(欧州型)
・アメリカ文化では、貨幣増殖を体現するものこそが「信用できる立派な人」という肯定的存在として捉えられる。
・アメリカ人の性格を形作るのに、ピューリタニズムとフロンティアというものの影響が非常に大きな寄与をしている。
・市場主義に依拠しすぎるがあまり、助成金に頼らず、市場での事業収入で経済的に自立することを極端に主張する議論(例:木下2015)、「ソーシャル」のラベルを貼ることができれば、本質的に営利企業であっても社会的企業とみなす風潮(例:渡邊2005)など、偏った議論を生み出すことにもつながった。
○こういう俯瞰的視点が、研究者の強みだよな~。
・「厚生」とは、故事から採られたもので「衣食を十分にし、空腹や寒さに困らないようにし、民の生活を豊かにする」という君主の役割を規定したもの。
・日本では、欧米とは異なる社会性理解として厚生概念が生み出されたため、官民連携における実践という形が、自然と社会政策の遂行の中で実行されていった。
・地域活性化研究において社会起業家のスーパーヒーロー仮説の再生産が行われている。
・海士町で就職するのではなく、海士町に仕事を作る力を持つ若者を育てるために「地域創造コース」を、隠岐島前高校に設置。
・地方自治体は、民間にはない資源にアクセスすることができ、かつ民間の自助努力を取り込むことが可能な、強力な中心的アクターとなりうる。
・まちづくり研究では、カリスマリーダーによる価値共有を、まちづくりの成功要因として説明するという論理構造が形成されている。
・企業家をヒロイックに捉え、企業家に係る人々を敵対者や支援者といった役割を与えることで、予定調和的なビッグストーリーから逃れえないもの。
・まちづくりとは、地域資源の新結合である。
・郷土愛や情熱に基づく説得で動かすことが不可能なアクター(商店街店主)
・空き店舗が、貸店舗として価値を持つことを提示し、使用権を譲り受け管理していくことで、近隣から若手起業家を呼び込んで、シャッター通り商店街の再生を図った。
○研究の分析視点としてはそうだろうけど、動くのは人。
・社会起業家を無自覚に倫理的存在として位置付けてきた。
・市場での解決が、同時に異なる社会的課題を助長する恐れ。
・社会福祉法人は、行政寄付金が人数分入ってくるため、安価で仕事(名刺作成)を受けることができる。民福連携の先駆け。
・社会的企業が諸制度からの圧力に対して戦うために、制度との関りを、一時的に「断つ」
・社会企業家を語る研究者の作法
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『地域が元気になるために本当に必要なこと』高橋・村上・鈴木(2013)
・少数派であるアントレプレナーは、多数派である「縁遠い」人達からの無視、時には抑圧と戦わなければならない。
・本書では、実際に事業を営む起業家ではなく、事業を営む起業家や経営者のために、場所や制度、そして環境などを作り上げる活動をしている人たちにターゲットを当てた。
・地域を離れるほど大きくもなれないが、十分に元気な企業をどれだけたくさん持てるかが、多くの地域経済にとって、活力を維持するための方法である。
・実際に事業を営む人を、第1起業家、環境を整える人を、第2起業家とする。
○この分け方、スッキリする。俺の場合は、1でありつつ、2を目指してるって感じかな。
・アントレプレナーを殺すのに、ナイフはいらない。「絶対に成功しますか?」と言えば良い。
・総論賛成、各論反対。アントレプレナーは、各論でイノベーションを起こす人。
・地域の自立を考えた時、アントレプレナーシップが重要な要素である。
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●講師ビジョン 島村さんからのメール
関根さん
おはようございます。ブログ拝見しました。
最も印象的だったのは、やはり実際に事業を営む人を第一起業家、環境を整える人を第2起業家とする整理です。なんだか、スッキリ、爽快感があります。
地域視点とは別に、弊社の事業を運営する観点で置き換えて読んでみましたが、社内講師を直接、養成する第一の視点と、社内講師を輩出するための仕組みを整える第2の視点、そして、OJTトレーナーを直接、育成する視点と、OJTトレーナを育成するための制度を整える視点で
お客様と商談しているなと改めて感じました。
商談に議論の展開も、第2視点から入り、徐々にそのプロセスの一つとして第1視点をお客様に提案しているなと振り返ることができました。
また、今後は外部講師も育成することも行っていきたいと思っていますので、色々考えるよい機会をいただきました。
次回も楽しみにしております。
(島村さん、いつもありがとうございます!)
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