○研修評価に関する論文2つ。Alliger and Janak(1989)は、もっと早めに読んでおくべきだった。
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Alliger and Janak(1989)
Kirkpatrick’s Levels of Training Criteria: Thirty years later
・約30年前、カークパトリックは、「4ステップ」という評価の記事を書いた。
・カークパトリックモデルの力は、その単純さだった。それは、評価の語彙と分類の大枠を提示した。
・しかし、そのモデルの3つの前提に問題があった。
1)レベルは、上にあがっていく
2)レベルが、因果的につながっている
3)レベルには、正の相関がある。
・その結果、カークパトリックのモデルは、研修評価の「Hierarchical model階層モデル」と見られるようになってしまった。
・本論文では、この3つの前提を検証したい。
1)レベルは、上にあがっていく
・そもそも全ての研修が、4つのレベル全ての変化を目的としていない。
・レベル4が「最高の評価」とみられる。階層の一番上だから。レベル4の測定により、介入効果の金銭的価値を示せれば、HRMマネジャーの権力と影響力を強めることができる。それによって「人事機能のみであった暗黒時代」から、「人的資本という新時代」に入っていける。
2)レベルが、因果的につながっている
・どのように、前のレベルが、次のレベルをひき起こしていると考えるのか?
・レベル2の学習は、研修前から始まっていることもある。レベル1反応の後に、学習が起こるわけではない。
・研修で学習はしても、それは好ましい経験ではないかもしれない。
・反応が学習をひき起こすとはいえない。
・レベル1は、他のレベルとは関係ないと言える。
3)レベルには、正の相関がある。
・1969年から、1989年まで、カークパトリックに関する55の記事があり、そのうちの8つが実際の研修評価をしていた。しかし、その全てにおいて、各レベルの関係は示されていなかった。
・感情的反応は、他のレベルから独立していると考えられる。
・各レベル間の相関は非常に小さい。
・3つの前提には問題があると言える。
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Kraiger, Fore, and Salas(1993)
Application of Cognitive, Skill-based, and Affective Theories of Learning Outcomes to New Methods of Training Evaluation.
・研修評価は、2つの問いに答える必要がある:
1)研修は、目標を達成できたのか(学習課題)
2)この目標達成の結果、仕事でのパフォーマンス向上につながったのか(転移課題)
・この2つの問いは両方重要だが、Campbell(1988)は、評価の最も根本的な課題は「学習」課題であるとした。
・学習を評価するための理論に基づいた概念モデルがない。本論文ではそれを提示したい。
・Training Evaluation研修評価は、受講者が学習結果を達成したのかを測定することであり、
Training Effectiveness研修効果は、研修が狙った結果を達成したかしなかったの理由を探るものである。
・Bloom(1956)と、Gagne(1984)の分類法を参考に、学習結果の3カテゴリーを提示する。
1)Cognitive 認知
(1)Verbal Knowledge 言語知識
・Declarative knowledge 宣言的知識 Whatに関する情報
Procedural knowledge 手続き的知識 Howに関する情報
Strategic or tacit knowledeg 戦略的知識 Which, When, Whyに関する情報
(2)Knowledge Organization 知識組織?
・Mental modelメンタルモデル、知識構造、認知マップ、Task schemata課題スキーマ?
(3)Cognitive strategies 認知戦略
・メタ認知
2)Skill-based 技術
・スキル開発は、ロールプレイでの受講者の表現を観察することで評価されてきた。
・スキル開発においては、3つの段階がある。
①最初のスキル獲得 ②スキルの編集 ③スキルの自動化
(1)Compilation 編集?
・特定の行動観察、Hands-on performance測定、構造的状況インタビューでの評価
(2)Automaticity 自動化
・自動化まで行くと、パフォーマンスは流れるようになり、完成され、個人化される。
3)Affectively based 感情
・Gagne(1984)は、Attitudes態度を、学習結果に入れた。
・不幸なことに、カークパトリック(1976、1987)は、学習の要因としての感情面を無視した。代わりに彼は、Reactio反応という項目で、受講者が研修が好きだったかどうかを評価しようとした。
(1)Attitudinal outcomes 態度結果
・自己評価レポートで測定
(2)Motivational outcomes モチベーション結果
・mastery orientation 学習志向 performance orientation 業績志向?
・多くの研究が、自己効力感と、task performanceに、正の関係があることを示している。(例:Barling & Beattie,1983等)
・研修による行動変化は、自己効力感の強化によって促される。
・自己効力感の拡大は、研修の公式な目標となり得る。
・自己効力感は、受講者が獲得したスキルを、仕事に適用するかどうかを決める要因となる(Bandura 1983)
・研修後の自己効力感は、長期間の転移やスキル維持を予測する(Marx 1982)
・Kraiger & Salas(1992)は、研修後の自己効力感が、3か月後のパフォーマンステストの点数と関係があったことを明らかにした。
・Goal setting 目標設定
・専門家と初心者では、目標の明確さと特定さに違いがある。
・本論文では、学習を「認知、技術、感情を変化させる機能」と定義し、概念モデルを提示した。
・Alliger and Janak(1989)は、カークパトリックのモデルを批判し「反応」は、学習とは無関係なものとし、学習が行動に影響するものととして位置付けた。
・しかし、構成概念の視点から見ると、何故、どのように、そのようなつながりがあるのかの説明がなされていない。
・本論文が、その探索の一助となれば幸いである。
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