○バンデューラの論文と、来日時(1982年)の研究紹介本。
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Bandura,A.(1994) Self-efficacy
・自己効力に関する信念が、人々がどのように感じ、考え、動機付け、行動するかを決める。
・自己効力に関する信念は、4つの影響の源から形作られる:
1)達成経験 2)社会的モデルによって提供された代理経験
3)言語説得 4)ストレス反応の軽減
・自己効力に関する信念は、4つの心理的プロセスを通じて、人間の機能に影響する:
1)認知プロセス 2)意欲プロセス 3)情緒プロセス 4)選択プロセス
・Social Cognitive theory 社会的認知理論は、達成経験こそが、個人の変化の主要手段であると考える。
・ポジティブな健康体でいるためには、楽観的な自己効力感が必要であることが、多くの研究で示され始めた。
・多くの反対に曝される革新的な成功には、レジリエントな自己効力感が必要である。
・人生全体にわたる自己効力感の発達と実行
・初期の自己効力経験は、家族中心だが、子供の世界が広がるにつれ、友人の影響が大きくなる。
・子どもの認知スキルの発達は、教員の才能と自己効力感に影響される。
・思春期における心理的混沌。危険な行動経験も増える。
・自己調整に関する効力感が高いほど、職業生活はよりうまくいく。
・人生は、静的なままでいない。
・自己効力感を耕し、メンテナンスすることが必要。
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新装版『社会的学習理論の新展開』祐宗 省三・原野 広太郎・柏木 惠子・春木 豊(編)(2019)
・1950年代、学習に関する本の筆頭格は、ハルの「行動の原理」であろう。
・1960年代、A.バンデューラが、パーソナリティ研究の側面から、攻撃的行動がモデリングによって習得されることを実験的に明示した。
・バンデューラは、人と社会(環境)とのかかわりにおける「自己」の果たす大きな役割を強調している。
・バンデューラが用いた「社会的学習」ということばには、2つの意味が含まれている:
1)学習の様式が社会的:他人を介しての学習
2)学習の内容が社会的:社会的行動を扱ったもの
・社会的学習の中心となるのは「模倣」の現象である。
・バンデューラは、人間が他の動物に比べて著しく異なる点は、観察学習の能力であると考えた。
・臨床的な行動変容の立場からすれば、自己効力はきわめて重要な概念である。なぜなら、やればできるという可能性への予期を、現実的目標に沿って、少しずつ高めていくことが、実際の行動の可能性を高めることにつながるからである。
・バンデューラの社会的学習理論は、人間の行動を決定する要因として、先行要因、結果要因、そして認知的要因の3つを挙げ、それらの要因が複雑に絡みあって、人と行動と環境という三項間の相互作用の循環が形成されると説く。これが、社会的学習理論の大枠である。
・efficacy expectation効力予期、あるいは、perceived self-efficacy自己効力知覚は、3つの次元に沿って変化するとされる:
1)自己効力の大きさ 2)効力予期の強さ 3)一般性
・自信という概念に対して、自己効力は「いま、そのことが自分にできるかどうか」という具体的な一つ一つの行為の遂行可能性の予測に関するものであり、行動に直結したものである。
・自己効力は、各種操作の独立変数と、行動変容の従属変数を結ぶ媒介変数であり、構成概念である。
・自己効力の理論は、暗黙裡に、プラン×自己効力予期=実行 という図式に基礎づけられているように思える。
・Self-efficacyの訳語については、自己可能感、自己効力感、自己確信、自信などがあり、定訳はない。本書では、とりあえず「自己効力」と統一した。
・相互決定主義 reciprocal determinismの考え方は、個人的、環境的、行動の三要因すべてが互いに結びつき、等しく決定要因として、二方向的に影響を及ぼしていくという視点を、人間の行動の理解に積極的に導入した理論である。
・社会的学習理論では、三者間の相互的な関係に基づく相互作用の概念が用いられている。
・人間には、他人の行動を観察することによって学習していく素晴らしい能力がある。
・観察学習は、4つの成分過程に支配されている:
1)注意過程 2)保持過程 3)運動再生過程 4)動機づけ過程
・自己効力とは、積極的に課題に取り組む、自分の力で治ってみせるという認識を意図的に働かせることであり、このことがとりもなおさず、行動の開発や学習への自信や意欲を促すことになるのである。
・身近な小さな目標を与えられ、自分自身を動機づけることによって学習。
・目標とフィードバックの両方を与えた群は、3倍にも達する高い課題遂行量の増加を示した。
・自己効力が高く、自己不満が高い群の課題遂行量が増加した。
・自分に自己効力がないことがわかると、意気消沈して無益なことをするようになる。
・体力(生理的機能)を発揮していくことに対して、自己効力という精神力(心理的機能)が持つ威力を如実に示している。
・相互作用過程
・ピアジェの理論では、模倣が起こらないのは、シェマの分化が十分でないためだと説明するのに対し、社会的学習理論では、刺激に対する注意の不適切さ、保持の失敗、運動能力の不備、不適切な動機付けの結果という4つの下位過程の一部、あるいは全部の未発達さで解釈する。
・ピアジェは、観察者にとって新奇な示範事象は学習されないとする。
バンデューラは、新しい反応が、モデルの観察により、習得される過程を説明しようとした。
・スキナーの徹底的行動主義は、しばしば、S-R理論と混同される。
・日本の伝統的芸道における修行の学習に対する基本的な考え方は、創造的モデリングにある。
・条件が整えば、子供の能力は自然に育っていくという個人的決定論に対して、社会的学習理論では、親や社会との相互作用やモデリングを通して、能力が形成されていく過程をより強調する。
・昭和57年(1982年)7月に来日したバンデューラの講演を中心に、本書で紹介。
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