○バンデューラの「社会的認知理論」関連の文献。まだまだ入口。奥が深そう。
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Bandura,A.(2005) The Evolution of Social Cognitive Theory.
・社会的認知理論は、自己開発、適応、変化に対して、Agentic perspective エージェント視点を持っている。
・この視点でいうと、人々は、自己組織的、能動的、自己調整的、自己省察的であると考える。
・人間の機能は、社会システムに根ざしている。そのため、個人のエージェンシーは、社会文化的影響のある幅広いネットワークの中に位置づけられる。
・私が自身のキャリアを始めた当初、行動主義の影響は大きかった。
・しかし、行動主義では、社会的モデルによる学習を上手く説明できていなかった。
・例えば、Watson(1908)やThorndike(1898)は、観察学習の存在を見落としていた。
・1941年に、Miller & Dollardが、「社会的学習と模倣」を刊行した。
・社会的モデリングは、4つの認知的サブ機能からなっている(Bandura 1971)。
・当初、オペラント条件付けの研究者たちからは、激しく攻撃された。
・社会的モデリングに対する理解不足と誤解があった。
・社会的モデリングは、模倣だけではない。一度、個人が他者により原則を理解すれば、その個人は新しい行動を自分なりに生み出す。
・社会的モデリングは、創造性を生み出さないと言われたが、そんなことは無い。
・社会的モデリングは、認知スキルを構築しないと言われたが、口頭でのモデリングにより、認知スキルも促進される。
・私は「Bobo doll ボボ人形」実験をした研究者として見られてきた。
・行動主義の時代、動機付けは、報酬と罰によって、調整されると考えられた。
・理論家は、他者の行動を説明する際に、その理論を使うが、自分たちの行動をその理論で説明しようとしない。
・私が、アイオワ大学に入った時、そこは、Hullian learning theoryの中心であった。(https://www.oxfordreference.com/view/10.1093/oi/authority.20110803095949552 行動主義の心理学者 C.Hull)
・その後、私はスタンフォード大学の博士課程に進んだ。スタンフォードは、私に多くの自由を与えてくれた。
・見知らぬ同士が、意図せぬ機会に会うことが、チャンスとなることもある。
・私の妻との出会いもそうだった。
・幸運は制御不能なわけではない。
・「準備された心の元に、チャンスは訪れる」という格言もある。
・社会的認知理論では、リアクティブではなく、能動的な主体であると考える。
・1960年代は、人間の機能と変化に関する説明に大幅な変革が行われた時期である。
・Self-efficacyは、Self-esteemや、Locus of controlとも違う。
・社会的認知理論では、3つの異なる種類の人間エージェンシーを区別する:個人、Proxy 代理、集団。
・人々は、完全に自立的に生きているわけではない。
・多くの文化において、Teachという言葉は、Showと同義である(Reichard, 1938)
・モデリングは、全人類的な人間の能力である。
・科学的古典は、批判と反発を受け続けてきた。
・理論は、その概念と実証知見が、挑戦され、誤解され、歪曲されることを覚悟しておいた方が良い。
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「社会的認知理論とカウンセリング」福島(1992)
・カウンセリングを考える手がかりとして、A.Bandura 1986、1989、1991の社会的認知理論を取り上げたい。
・4つの主要過程により、セルフエフィカシー(自己効力)は、人間機能を調整する:
1)認知過程 2)動機づけ過程 3)感情過程 4)選択過程
・社会的認知理論からみると、カウンセリングは、自己調整システムの機能化を目的とする心理的援助活動であると言えよう。
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「社会的学習理論」から「社会的認知理論」へ:Bandura理論の一つの変化 大野木他(1987)
・Banduraは「Social Foundations of thought and action: social cognitive theory(1986)」という本を著し、これまでの「社会的学習理論 social learning theory」を包括し発展させた「社会的認知理論 social cognitive theory」を提唱した。これは大きな変化である。
・Bandura理論の特徴の一つに、人の認知過程の重視があげられる。この色彩は徐々に強められており、それは「社会的学習理論」と称されていたその理論が、近著では「社会的認知理論」と変えられていることに象徴的にあらわされていると言えよう。
・Banduraは、人を外的な環境の単なる一方的な制御の下にあるのではなく、能動的な認知制御者であると捉え、思考、意図などの言語やイメージ等の象徴的表象に基づく自己生成的な認知過程が、人の行動を制御しているとする。
・セルフエフィカシー(自己効力)なる述語が、社会的学習理論の中に登場したのは、1977年のことである。(Bandura 1977)
・セルフエフィカシーの概念は、伝統的な心理療法と、行動論的心理療法の隙間を埋め「行動変容理論の結合を目指す」という発想から提唱された。
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「理論的貢献ができる研究をデザインする:研究パラダイムの理解の重要性」今福(2019)
・理論は、研究エビデンスと実践の橋渡し的な役割を担う。
・現実に対する自分自身の認識論的立ち位置を明確にする。
・研究者自身の立ち位置を、理論を通して明確にする必要性がある。
・研究デザインの第一歩は、現実とは何か、現実をどうとらえるべきかという研究者自身の視点を明らかにすることである。
・実証主義:現実主義、客観主義、実験的・操作的、量的
構成主義:相対主義、主観主義、解釈学的、質的
・教育介入や政策の有効性、正当性の評価に、実証主義の考え方が適合する
・厳密性を緩和したのがポスト実証主義。
・科学的手続きをとったとしても、現実の本質は完全には知り得ないという立場。
・構成主義の考えと関連する学習理論は、二つのカテゴリーに分類される:
1)心理学的構成主義:ピアジェの認知発達理論から発展、個の内的/認知プロセス
2)社会構成主義:デューイやヴィゴツキーの思想により発展、他者との関係性/社会文化的プロセス
・問題解決や省察、経験学習などの理論や、動機づけの原理、社会的認知理論の多くは、心理学的構成主義の考え方が基盤になっている。
・活動理論、拡張的学習、実践共同体は、社会構成主義の考えが基盤になっている。
・社会的認知理論(バンデューラ):他者の行動を観察し、意識的に模倣することで学びを得ることができる。また主体者自身の自己効力感と結果期待が行動遂行とその結果に強く影響することを明らかにした。
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