○12月6日(月)池田先生@東大の勉強会に向けて読んでいる文献。
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Bandura,A.(1994) Self-efficacy.
・Self-efficacy beliefs 自己効力信念は、人々がいかに感じ、考え、動機付け、行動するかを決める。
・Sources of self-efficacy 自己効力感の源:
1)Mastery experiences 達成経験
2)Vicarious experiences provided by social models 社会的モデルによる代理経験
3)Social persuasion 社会的説得
4)Somatice and emotional states 身体的、感情的状態
・自己効力感が、人間の機能に影響を及ぼす4つの心理学的プロセス:
1)Cognitive 認知
2)Motivational 動機付け
3)Affective 情緒的
4)Seletion 選別的
・人間の達成とポジティブな健康状態には、楽観的な自己効力の感覚が必要であることが、多くの研究から分かってきた。
・イノベーティブな達成も、レジリエントな効力感が必要である。幾度否定されても挑戦する。
・人生における自己効力感の発達と実践。
・最初は家族中心、次は友人中心の関係性の中で、自己効力感が経験される。
・学校では、教員自身の効力感が重要。
・思春期は、危険な行動の実験も行われる。
・人生は、静的なものではない。
・自己効力感の修養と維持が必要。
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Pajares,F.(1997) Current Directions in Self-efficacy Research.
・Bandura(1977)が、最初に、自己効力感の概念を提示してから20年たつ。
・Bandura(1986)は、自己効力感を、SCT:Social Cognitive Theory社会的認知理論の枠組みの中に入れた。
・Bandura(1986)のSCTでは、個人は、思考、感情、意欲、行動のコントロールを可能にする自己システムを持つと考える。
・BanduraのReciprocal determinism互恵的決定論?
・人間は、環境や社会システムのProducts生産物でもあり、Producer生産者でもある。
・自己効力感と、Outcome expectations結果期待は、違う
・自己効力の信念は、レベル、一般化可能性、強さによって変わる。
・Self-concept と、自己効力感は、似ているという実証研究もある(例:Skaalvik & Rankin,1996)。
・20年間の研究知見から、Bandura(1986)のスキルの効果やパフォーマンスに対して、自己効力感が媒介するという主張は裏付けられていると言える。
・自己効力感は、キャリア選択にも影響する。
・Collective efficacy 集合的効力感に関する研究も期待される。
・この20年間の研究により、Bandura(1986)の主張、自己効力感は、人間機能において影響的な役割を果たしているというのは、強められている。
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Stajkovic,A.D. & Luthans, F. (1998) Self-Efficacy and Work-Related Performance: A Meta-Analysis.
・自己効力感に関するレビュー論文はあるが、量的なメタ分析論文はまだ無い。
・1977年から、1996年までの実証研究を検索。114の実証研究をメタ分析。
・自己効力感とパフォーマンスの相関関係は、G(r+)=.38 であった。
・自己効力感は、パフォーマンスを、かなりの程度予測すると言える。
・今回のメタ分析で得られた「average correlation 平均相関係数.38」を、「Effect size効果量」に変換すると、d.=.82 となり、これは、パフォーマンスが28%増すということを指す。パフォーマンスが28%増す原因が、自己効力感であるならば、これはかなりの影響力であると言えるだろう。
・目標設定は、10.39%(Wood et al.1987)、フィードバック介入は、13.6%(Kluger & DeNisi,1996)、組織行動修正は、17%(Stajkovic & Luthans,1997)であるからだ。
・本メタ分析では、課題の複雑性が、強い調整効果を持つことが明らかになった。
・図
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Stajkovic,A.D. & Luthans, F. (1998) Social Cognitive Theory and Self-Efficacy: going beyond traditional motivational and behavioral approaches.
・Bandura(1986)が、SCTを提唱。自己統制という認知概念を含むSCTのスコープは、行動主義と社会的学習よりも、広く複雑であった。
・SCTでは、組織行動を、互恵的因果関係でとらえる。従業員は、個人の特性、行動、環境の生産物でもあり、生産者でもある。
・SCTでは、人間は5つのCapability 能力をもつと考える:
1)Symbolizing 象徴化
2)Forethought 先読み
3)Vicarious Learning 代理学習
4)Self-regulatory 自己統制
5)Self-reflective 自己内省
・自己効力感は、Self-esteem、Expectancy、Locus of Controlと似たものと捉えられるが、違う概念である。
・我々が行ったメタ分析(上記1998)でも、自己効力感と仕事に関係するパフォーマンスとの間には、強い正の関係があった。
・SCTは、伝統的な動機付けと行動主義のアプローチを拡張するものである。
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Bandura,A.(1999) A social cognitive theory of personality.
・エージェント視点では、人は自己組織的、能動的、自己内省的、自己調整的な存在であると考える。
・SCTでは、人は、独立的な行為者でも、単純に環境に影響される機械的な運び手でも無いと考える。
・Triadic reciprocal causation(Bandura,1986)三者間相互作用説
・心理学の大きな動きとして、(ピアジェのような)汎用的な構造よりも、領域固有な知識構造、自己概念、コンピテンシーを見るようになった。
・一般的には、agent 主体と、object 対象を分けて考える。SCTでは、この2分法に疑問を呈する。
・Trait 特性理論者たちは、「Big Five」を、個人構造の汎用的な特徴として提示している。
・しかし、これらsupertraits 超特性は、習慣的な行動の塊であると言える。質問項目によって、特定の行動や表現を問われた結果でしかない。例えば、Conscientiousness 勤勉さを測る質問は「仕事をやり遂げる生産的な人間か」「目標達成に向けて一生懸命働くか」「自分に与えられた課題に勤勉に取り組むか」等である。
・これらは、personality structure 個人構造でもなく、これらの行動が個人を形成するわけでもない。
・伝統的な特性測定よりも、Big Fiveのほうが、より人間行動を予測するわけではない(Pervin,1994)。
・人間の基本的能力として5つある:
1)Symbolic Capability
2)Vicarious Capability
3)Forethought Capability
4)Self-Regulatory Capability
5)Self-Reflective Capability
・Self-Reflective Capabilityの中でも、Perceived self-efficacy 自己効力認知こそ、人間の動機づけや、行動への影響の中心となるものはない。
・人々は、自分の行動によって、期待される結果を生み出せると信じない限り、困難に立ち向かおうとはしない。
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Benight, C.C. & Bandura, A. (2004) Social Congnitive Theory of Posttraumatic Recovery: the role of perceived self-efficacy.
・SCTは、適応と変化に対して、Reactive 反応的ではなく、Agentic model エージェント(主体的?)モデルを採用している。
・Coping Self-efficacy 自己効力対応?の高さは、トラウマ後のストレスの発達を防いでくれる。
・自己効力感が強い女性ほど、DVの配偶者から離れることができている。
・多くの研究で、自己効力感が、トラウマ後の回復の媒介変数であることが、一貫して支持されている。
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Judge et al.(2007) Self-Efficacy and Work-Related Performance: The Integral Role of Individual Differences.
・SCTは、「世界で聞かれる理論」(Smith,2002)と表現されている。
・SCTの中心変数「自己効力感」は、この25年の間に、10,000件も研究されている。
・SCTは「21世紀初頭まで生き残っているグランドセオリーと銘打たれた数少ない理論の一つ」(Zimmeman & Schunk,2003)とまで言われている。
・メタ分析の結果、自己効力感は、パフォーマンスに対して強く関係している(p=.34)(Stajkovic & Luthans, 1998).
・しかし、個人特性の違いと自己効力感との関係はまだ明らかになっていない。
・本メタ分析では、個人の違いと自己効力感との関係を精査する。
・1887年から2002年までの研究を検索。そのうえで、Stajkovic & Luthans(1998)のメタ分析でカバーされていなかった1997年から2003年までの実証研究を検索。メタ分析し、パスモデルを抽出。
・図2
・自己効力感(=.13)よりも、GMA:General Mental Ability 一般的なメンタル能力(=.52)、勤勉さ(=.26)、経験(=.26)の方が、パフォーマンスを強く予測した。
・自己効力感は、タスクや職務の複雑性が低い時は、パフォーマンスとより強く関係した。
・個人の違い(Big5等)を分析に入れると、自己効力感とパフォーマンスの関係が減少した。
・Chen et al.(2000)は、自己効力感には「パフォーマンスとの間に、強い正の関係がある」としたが、これは言い過ぎだったのかもしれない。
・個人の違いは、自己効力感と同じぐらい重要と言える。
・従来、自己効力感は、個人の違いのmediator 媒介変数と見られてきたが、今後はmoderators 調整変数として見ることも必要である。
・勤勉性が高い個人にとって、自己効力感の重要性は低いのかもしれない。
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Cetin,F. & Askun, D.(2018) The effect of occupational self-efficacy on work performance through intrinsic work motivation.
・トルコ人のブルーワーカー76名に対して、10週間の縦断的調査を実施。HLMで分析。
・職務自己効力感が、内的モチベーションを高め、仕事パフォーマンスに、影響していた。
・Judge et al.(2007)では、個人の違いが、自己効力感と同じぐらい重要とされた。
・本研究では、自己効力感が、仕事パフォーマンスを予測していた。
・集団主義のトルコ社会の中でも、自己効力感が影響していた。
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