○自己効力感に関する日本の文献
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『人間行動の形成と自己制御~新しい社会的学習理論』A.バンデュラ(著)原野・福島(訳)(1971、1974)
・社会的学習理論は、人間と環境との間に生じる相互的影響を特に重視する。
・人の行動は、この行動を引き起こす刺激の与え具合と、行動を変化させる強化の過程の2つによって分析されてきた。
・多くの心理学者、特に行動主義を信奉する人々は、行動の原因は生体にあるのではなく、環境の力に求められるという見解を持つに至った。
・人は観察することによって学習する能力をもっている。
・人は優れた認知能力をもっており、洞察行動と先見的行動の両者が可能。
・人の第三の特徴は、自己制御的作用を働かせることができる点。
・強化は、既に学び取っている行動を制御する強力な手段ではあるけれども、行動を新しく作り出すには、なお不十分な方法である。
・モデリングの現象は、次の4つの下位過程によって決められる:
1)注意過程
2)保持過程
3)運動的再生過程
4)強化と動機づけ過程
・人間の機能は、3つの制御過程に依存している。
1)刺激制御 2)強化制御 3)認知的制御
・最近まで、代理的強化は、伝統的学習理論の中で、全く無視されてきた。
・社会的対比理論によれば、人々は自分と能力の似た準拠モデルを選び、自分とかけ離れているモデルを無視する傾向がある。
・3つの制御システムの各システムが、相互に複雑に依存しあっていることを考えると、今日か理論と認知理論を区別する事にどれだけ価値があるのか、疑問である。
・行動の形成や変容が、その行動結果のみに依存する従来の学習理論を超えて、他人の行動の観察や、表象によっても行動が形成され、変容されるとする。また、直接経験する報酬だけでなく、他人の報酬行動を見たり、あるいは、自らの強化によって、行動が変容される、いわゆる自己制御の立場を、本書は強く主張している。
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『モデリングの心理学~観察学習の理論と方法』A.バンデュラ(編)原野・福島(訳)(1971、1975)
・範例による学習 learning by example
・模倣とか同一視と呼ばれてきた現象に対して、社会的学習理論(Bandura,1968)は、モデリングという言葉を用いる。
・行動主義の最初の提唱者 ワトソンとソーンダイクは、観察学習の存在を否定。
・ミラーとドラード(1941)によって「社会的学習と模倣」が出版された。
・模倣の遂行が起こらない理由は、ピアジェによれば、シェマの分化がまだ十分でないためだとされる。
・「ボボ人形」実験 模倣学習の接近説を支持する結果となった。
・バンデュラ教授の心理学への貢献は、何と言っても、モデリング理論の確立にある。
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「自己効力に関する研究の動向と課題」竹綱・鎌原・沢崎(1988)
・自分の学習行動によって、成績などの結果を変えることができる、という「主観的な統制感」が重要な役割を果たす。
・Bandura(1977)は「ある行動が結果をもたらすかどうか」と「自分がその行動を上手くとれるかどうか」を区別し、後者を「効力期待」と呼び、その重要性を強調した。
・知覚された効力期待のことを、自己効力と呼んだ。
・学習性無力感の考え方や、Locus of Controlの概念は、行動と結果の随伴性の認知に着目したものである。これらは、Bandura(1977)の言う「結果期待」しか見ていないと言える。
・自己効力には3つの次元がある:
1)水準(Level)あるいは、大きさ(Magnitude)
2)強さ(Strength)
3)一般性(Generality)
・自己効力の一般的によく使われる尺度というものは、まだ確立されていない。
・自己効力概念の独自性は、効力期待と結果期待とを区別した点にある。
・自己効力が原因となり、それが後の行動を規定するという方向で、因果関係が想定されている。
・相関係数の情報だけでは、自己効力が原因なのかどうかは分からない。
・自己効力が後の遂行を規定するという、自己効力理論の重要な命題は、明確にすることがかなり難しいのである。
・3通りの研究アプローチによって得られた知見は、自己効力の変化が、遂行の変化を引き起こすといった自己効力の原因性を強く示唆するものである。
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「特性的自己効力感尺度の検討」成田他(1995)
・自己効力感(Self-Efficacy セルフ・エフィカシー)とは、社会的学習理論あるいは社会的認知理論(Bandura,1977)の中核をなす概念の一つであり、個人がある状況において必要な行動を効果的に遂行できる可能性の認知をさす。
・自己効力感には、2つの水準がある:
1)課題や場面に特異的に行動に影響を及ぼす自己効力感
2)具体的な個々の課題や状況に依存せずに、より長期的に、より一般化した日常場面における行動に影響する自己効力感
・2)を、特性的自己効力感(Generalized Self-Efficacy)と名付けることができよう。
・Sherer et al.(1992)のSE尺度を、日本語訳。23項目を使用。
・1524名を分析した結果、SE尺度は、安定した1因子構造であった。
・正規性の仮定をもつ多くのパラメトリックな解析法の使用が可能となり、尺度としては十分に望ましいものである。
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「主観的な感覚としての人格特性的自己効力感尺度(SMSGSE)の開発」 三好(2003)
・成田他(1995)によって開発された尺度
「何かをしようと思ったら、すぐにとりかかる」
「初めは、うまくいかない仕事でも、できるまでやり続ける」
「面白くないことをする時でも、それが終わるまで頑張る」
○Conscience 勤勉性、粘り強さ にも似ている気がする。
・「日常生活において、たいていのことはできるような気がする」という感覚を全般的に抱きやすいか否かを「主観的な感覚としてのGSE」として定義。
・成田他(1995)のSE尺度や、坂野・東條(1986)の一般性セルフ・エフィカシー尺度は、外に現れる行動特性をを測定するための尺度。
・SMSGSEは、努力や意志を強調した6項目となり、安定した1因子構造であった。
「どんな状況に直面しても、私ならうまくそれに対処することができるような感じがする」
「私にとって、最終的にはできないことが多いと思う(R)」
「私が頑張りさえすれば、どんな困難なことでもある程度のことはできるような気がする」
「熱心に取り組めば、私にできないことはないように思う」
「やりたいと思っても、私にはできないことばかりだと感じる(R)」
「非常に困難な状況の中でも、私ならそこから抜け出すことができると思う」
・GSEは、領域固有の自己効力感の情報源であり、個人差を持ち人格特性として個人の中で安定している可能性がある。
・過去の成功と失敗の経験からGSEが形成されるという学習理論に基づいた小さな分析単位からのアプローチだけでなく、人格発達理論を背景としたより大きな分析単位のアプローチを行っていくべき。
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